骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

さて、今回は2つのエピソードです。
日帰り冒険を満喫している一行に
イベントが次々と起こります。
しかしご安心あれ。
村を疎かにはしません。
何せ"日帰り"ですから(笑)

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その60 安全第一。

芝生に座って木陰でお弁当を食べた鈴木たちは

エンリのリクエスト通りお昼寝する事になった。

滅多に歩かない幼女たちはアッと言う間に寝息をたて始めた。

孫たちの寝顔を見ていた鈴木はそっと骨の指で頬っぺたを押した。

 

プニ

 

(や、や、柔らかいっ!なんだこれ!)

 

プニプニ

 

(オイオイ!マジかよ!こんな柔らかい物がこの世にあるのか!?)

 

プニプニプニ

 

(笑顔なんか見ても腹が膨れない…か。満腹に…な…っち…まった…ぞ…)

 

ーーーーー

 

「それでそのまま、お父さんも眠ってしまったの?」

エンリは呆れ顔で父に尋ねた。

「ああ…俺も驚いたよ、まさか眠るなんてな…」

睡眠を必要としないアンデッドが寝たのだ。

孫たちに起こされた鈴木は始め何が起こったのか理解出来なかった。

「常識を覆す大事件だろ?」

「また大袈裟な…。まぁ約束通り夜には帰って来てくれたからそれは良かったですけどね」

「良い場所だったぞ。今度は皆で出掛けても良いな」

「じゃあ明日はそこからのスタート?」

「そうだな…正確にはそこから少し進んだからそこからだ」

「大丈夫なんですか?そんなゆっくりした行程で…」

「リザードマンも次に襲って来なければそれでイイって言ってたから慌てないさ」

「ならイイんですけど。それとお兄さんが騒いでましたよ。言ってなかったんですか?」

「毎晩帰るし別にイイかなと思って言ってない」

「あ〜、だからだ。父上が隠し事をしたって」

「それこそ大袈裟なんだよアイツは」

「明日はちゃんと説明してから行って下さいね。私もグルだって事になってますから」

「面倒だなぁ〜」

「頼みますよ。お兄さんが嘆くとキーノちゃんもそれが可哀想だって騒ぎ出すんですから」

「…なんなんだあの夫婦は」

「あと何かありました?」

「何かって……あ!そうだ!あの子ら鳥と喋れるんだぞ?」

「ええ、知ってますよ」

「お前…知ってますって…言えよそんな大事な事」

「だってそんな大した事じゃないって思ってたんですもん」

「お前ドンドン感覚が変になってるぞ?子供が鳥を話せるのが大した事ないって…」

「ピニスンさんたちも話せますし」

「あれらは精霊だろう!」

「ウチの子たちもアンデッドですよ?」

「駄目だ…お前と話してるとこちらが変じゃないかと思えてくる」

「じゃあ私はそろそろ寝ますよ。明日のお弁当もあるし」

「おう。おやすみ」

「おやすみなさい」

 

何気ない父娘の日常会話の内容が全く何気なくない。

鈴木は少し首を傾げたが、直ぐに呟いた。

「ま、いっか」

 

ーーーーー

 

少し斜面が急になって来たのでキッズはいつも通り

フワフワ浮かんで"登山"していた。

無論、鈴木もフライを使っている。

「吹き下ろしの風がある時があるからな。気をつけてな」

「ふきおろし?」

「そうだ。山の上から急に吹いてくる風だ。お前たちは軽いから飛ばされてしまうかも知れないからな」

「ふぁ〜い」

「そんな訳だから高く飛ぶな」

「ふぁ〜い」

(気温も低くなって来たな…一応温度に耐性があるローブを着せているが気をつけてやらんとな。風邪でも引いたら大変だ)

はたしてアンデッドが風邪を引くのか不明だが今の鈴木は孫を連れた何処にでも居るお爺ちゃんだった。

「じぃじ!なんか居る!」

突然1人が大声を出した。

「じぃじの後ろに隠れなさい!」

鈴木は自らのローブでキッズを包み込む。

「何処だ?」

「あの…穴のとこ」

指差す方を見ると地面にポッカリ穴が開いている。

「どんな風だった?」

「なんかね…黒っぽくてモゾモゾしたの」

「…黒っぽくてモゾモゾ?」

鈴木は頭の中でユグドラシルモンスター図鑑のページを高速で捲る。

(なんだ?黒くてモゾモゾ…黒くて…あー!わからん!)

「1匹だったか?」

「うん。見えたのは1つだった…」

(どうする?やり過ごすか?…しかし未踏の地だからな知らないモンスターのテリトリーに入ってしまったとも考えられるし…種族の偵察部隊…だとしたら知的生物の可能性も…)

「あ!また出た!」

「ナニ!?」

「ほら、あそこ!」

瞬時に視力を最大限に上昇させる。

(熊?…いや、もっと小さいな…子供ぐらい…か?)

「お前たちはここに居なさい。様子を見てくる」

最大限の魔法バリアを張り目標へ飛ぶ。

「おい!お前!待て!逃げるな!」

「ヒエッ!こ、殺さないで!」

(コイツ、喋る)

「心配するな、お前が攻撃しなければこちらからは何もしない」

「ほ、本当か?そんな事を言って食ったりしないだろうな?」

「本当だ。ほら俺はアンデッドだから物は食わん」

「ヒエッ!アンデッド!殺される!」

「あーもー面倒くさい奴だなぁー。どうしたら信じるんだ?」

「じぃじ、どうしたの?」

「お前たち!来ちゃ駄目だって!」

「あ…天使だ」

「ほへ?」

チラッとキッズたちを見て漸く正面を向いた。

(も、モグラ?)

「可愛いー!」「モグラさんだぁー!」

モグラ擬きは妙なサングラスの様な物をかけていた。

黄色いヘルメットを被れば工事現場の看板に描いてありそうな風態だ。

(確かにちょっと可愛いかも)

 

「あの…俺…いや、ボクはクアゴアって種族です」

 

ーーーーー

 

「粗茶ですが…」

そう言っ雌?と思われるクアゴアがお茶らしき物と

ピカピカに磨かれた石を持って来た。

「こりゃどうも」

(お茶はわかるが…この石はどうするんだ?)

鈴木は小さな皿に乗せられた石を見つめる。

「甘い!」「じぃじ、甘いよ!」

キッズは早速飲み物に口を付けて言った。

「こ、こら!お行儀が悪いぞ」

(いきなり何飲んでんだか…お腹壊したらどうすんだ)

鈴木は気が気ではない。

飲み物を運んできた雌はニッコリ笑って

「そう?それはよかったわ。この石も美味しいわよ」

(食べるのか!?)

「な、なにぶん遠方から来たものでな…その…この石は食べられるのか?それとも石に見えるが違う食べ物か?」

「石ですわ」

(そんな硬いもん食ったら歯が欠ける…いや、そんな問題じゃないよな)

困惑していると声がした。

「お待たせして申し訳ない。私が種族を纏めているぺ・リユロと言います」

声の方へ顔を向けると一際体格の良いクアゴアが立っていた。

「これはご丁寧に。私はサトル・スズキ。見ての通りアンデッドでして麓の湖のそのまた向こうの森を抜けた村から来ました。そしてこれらは私の孫です」

「こんにちは!」「初めまして!」

ペコリと頭を下げる。

挨拶は生活の基本だからとエンリに教えられたキッズはとても礼儀正しかった。

「…アンデッドの…孫?」

驚くリユロに鈴木は簡単な説明をする。

「…なるほど。我々は日光が苦手でしてな。こうして地下住まいなもので地上の事情にはどうも疎くて…。そうですかアンデッド種にも家族があるのですか…」

「いやいや、お恥ずかしい」

一体何が恥ずかしいのか鈴木はとりあえず頭をかいた。

「ところでリユロさん、で宜しいかな?先程から気になっていたのだが…この石は…その…食べられるのですか?」

「ハハ!これは失礼!気を利かせて出したつもりでしょうが、我々の種族以外は石なんぞ食べませんわな」

「…と言う事はあなた達はこれを食べる?」

「そうです。子供の時から色々な鉱石を食べてそれに依って様々な特性を得ます」

「…ほう…それは興味深いですな…鉱石を…」

鈴木は初めて聞く話に興味津々だ。

(世の中は広いな…。それに随分と友好的な種族じゃないか。ドワーフを滅ぼしたって聞いていたが…)

「どうしました?」

「…いや、なに…別に」

「ドワーフの滅亡の話ですか?」

「……どうして、そうだと?」

キッズを後ろにやって、鈴木は身構える。

リユロはヤレヤレと言う表情で石を1つ口に入れた。

「噂ですよ、噂。出所は想像ついているのですが、その話は我々の耳にも入っていますのでね」

「否定しないので?」

「出来ない…が正解です。情け無い話ですがね」

「なにやら複雑なワケがありそうですな」

「聞いていただけますか?」

「私たちで良ければ」

 

ーーーーー

 

「それでお父さんはまた問題を抱えて帰って来たんですか?」

クーレは鈴木の肩を叩きながら背中越しに聞いて来た。

「父上らしいですね」

対面のパンドラズアクターが紅茶を啜りながら満足気に言う。

「お!お前はわかるか!」

「当然です」

「もう!なんなんですか!2人して…。兄上、説明してください」

「今更ですよクーレ。貴女もよく知っている父上の信条です」

暫く考えていたクーレはポンと膝を叩いた。

「あ〜。例の?」

「そうです、例の、です」

堪らずキーノが口を挟む。

「もう!なんなの!意地悪しないで教えてよ!」

「ハハ、別に意地悪ではありません。父上の信条…それはたった一つ、誰かが困っていたら助けるのは当たり前」

鈴木は照れて頭をポリポリかく。

ガゼフは何故か目頭を押さえている。

パンドラズアクターはそれを横目に鈴木に向かって

「しかし父上。怪我の功名と言いますかドワーフ生存の可能性の話は聞き捨てなりませんな」

「そうなんだよ」

他の3人は詳しい話を聞きたそうに黙っている。

その空気を読んでパンドラズアクターが説明を始める。

「ルーン文字と言うものがありましてね。ドワーフはそれを刻める種族なのです。そしてそのルーン文字を刻んだ道具は魔化と同じ様な効果を生むのですよ。更に使い手の魔力にも関係しないので当然魔力切れもない」

「でもそれって殆どお伽噺なのでしょう?」

「だよねキーノちゃんの言う通り。法国でもそんな話は聞いた事があるけど実際にその文字を見た者と言う人は居なかったもん」

そこで鈴木がニヤリと笑い、袋から短剣を1つ取り出した。

「持っているのか!?」

ガゼフが飛びつく。

「これ1本だけだがな」

ガゼフは短剣を手に取り繁々と見た。

「おお!なるほど何か文字の様なのが刻まれてる」

「それがルーン文字だよ。例えばお前に渡した剣な、あれは俺が魔力を込めたかは切れ味は鈍らないよな。あと戦士長時代に持ってた王国の至宝の剣。あれの効果も込めようと思えば可能なんだ」

「実際にあったとはな…」

「父上、これはフロストドラゴンの一件が片付いたら山狩りですね」

「そうなんだよ。クアゴアたちの話ではフロストドラゴンはあっちこっちで無茶をしてるらしくてな。彼らもまた被害者だった。だからドワーフ探索の手伝いは約束してくれたよ」

「同じ地下を行動範囲にしているなら新しい手掛かりは十分に期待出来ますね」

「…でもさぁ…その…言い難いんだけど。そのクアゴアたちって信用出来るの?」

「そうだ、クーレの言う通りだ。お義父さんは妙に人が良い面があるからな」

「お前ら2人は苦労人だからそう言うと思った。だけど心配要らんよ」

「やけに自信満々じゃないか」

「まぁ聞けガゼフ。キッズたちがな、全然警戒しなかったんだよ。無論、無垢だから騙されやすいとも言えるが俺はその本能を信じる」

「本能?」

「幼児の持つ危険に対する本能だよ。胡散臭い奴には懐かんだろう?それだ」

「確かに赤ん坊は悪い奴には抱かれないよな、めちゃ泣きして」

「あ〜アタシらも行きたくなっちゃったよ!」

「父上、私だけでも」

「ぱんくん、ずる〜い!」

 

カルネ村ファミリーの夜は賑やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

アンデッドは精神が強制的に沈静化するらしいです。
だったらその精神が徹底的に安定化したら…。
身体を機能させる必要がなくなる。
すなわち睡眠に近い状態になる。
疲れたから眠るのではなく。
起きている必要がないから別の状態になる。


じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
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