今回はいよいよフロストドラゴンとの対峙です。
ちょっと可哀想な場面もありますが
結果オーライなのでご安心を。
もう60話を超えましたね。
早いものです…。
何度も言いますが、ありがとうございます。
まだまだ続きますよー!とは言いません。
そろそろ終わりが見えています。
もう少し、お付き合いくださいね。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
(しかし助かったなぁ…)
リユロを道案内に、後ろをついて歩いていた鈴木は安堵していた。
フロストドラゴンの巣なんだから近くまで行けばドラゴンが飛びまくっているか付近は氷に覆われていると考えていたのだ。
(ゲームじゃないんだからわざわざそんな見つかる様な設定になってないよな)
そうなのだ。
此処が私たちの根城ですよ、みたいな事は現実にはあり得ない。
「そろそろですよ」
リユロが警戒する。
それを受けて鈴木は指輪を1つ取り出して渡す。
「これは?」
「一応、お守りみたいなものですよ。付けていれば大抵の攻撃は無効に出来ます」
「…はぁ」
リユロは半信半疑で指輪をはめる。
「おぉ!」途端に全身が白く輝きすぐに元に戻った。
「どうです?」
「…何か力が湧き出る様な…」
「じゃあ試して見ましょう」
そう言うと鈴木は軽く電撃をリユロに放つ。
「うわっ!な、な、なにするんですか!」
「なんともないでしょう?」
鈴木は涼しい顔だ。
「え?…本当だ、なんともない」
リユロは身体のあちこちを見たが擦り傷1つ付いてなかった。
「その体毛は金属なのでしょう?それが電撃を受けても大丈夫なら大抵は問題ありませんよ」
(なんともあったらどうなったんだろう…)
リユロは青褪めたが幸いクアゴアの顔色は鈴木には分からない。
リユロの驚きを他所に鈴木は孫たちに金属は電気を通すんだと教えている。
(生きた教育ってやつだな)とても満足そうに頷く。
「ところでそのお孫さんたちは生まれながらに魔法が使えるのですか?」
道中で偶々出くわしたフロストジャイアントとの一戦を思い出しながらリユロは聞いて来た。
「それが詳しい事はわからんのですよ。気が付いたらこうやって浮いてましてね…ハハハ」
(笑い事じゃないだろう!)
リユロは激しく突っ込んだ。
そうなのだ。
話は少しだけ遡る。
3メートルは悠に超えたフロストジャイアントにこの骸骨は全く動じず、こう言った。
「丁度良い。ほら練習台があっちから来てくれたよ」
「え〜!何も悪い事してないのにやっつけちゃうの?」
「そんなの可哀想だよ〜」
「お前たちは本当に優しいな…。でも大丈夫。直ぐに分かる」
その言葉が終わらない内にジャイアントはいきなり攻撃して来た。
「な?話して分かる相手とそうでない者が居るんだよ。コイツはそうでない方。覚えておきなさい、そう言う相手には先ずは殴って様子を見る。これはじぃじの古い友だちから教わった方法なんだ」
リユロは一体どんな友だちなのか大変興味があったが
状況はそんな呑気なものではなかった。
「じゃあ軽くファイアーボール撃って見て、軽くだよ」
「ふぁいあーぼーる」
気のない声と共に火の球が放たれる。
フロストジャイアントは数メートル吹き飛ばされる。
「ああ!強い強い!それじゃあ一撃で死んでしまうよ?」
「ごめんなさ〜い」
リユロは目の前の出来事は夢だと思った。
幼児が欠伸でもするかの様に詠唱したらフロストジャイアントが吹き飛んだのだ。
吹き飛ばされたフロストジャイアントは怒り狂って突進して来る。
「ああ、ほら怒っちゃったでしょう?」
(そら怒るだろ!)
リユロは生まれて初めて敵に同情した。
「じゃ、今度はヘルフレイムいってみようか。今度は火力をちゃんと調節するんだよ」
「ふぁ〜い」
「へるふれいむ」
またもや気のない声と共にその小さな指先にこれまた小さな小さな炎が出来た。
するとその炎はフロストジャイアントの方へ飛んで行き着弾した途端に全身を包み込んだ。
「ウ!ギャアアアアア!」
のたうち回って火を消そうとするが全く消えない。
「ヨシ!大変良く出来ました。合格です」
鈴木は嬉しそうにそう言うと「ブリザード」と唱えた。
忽ちフロストジャイアントが今度は氷に覆われて炎は消える。
「じゃあ最後はフロストジャイアントさんの傷を治してあげようね」
「ふぁ〜い」
「ひーる」
見る間に傷が癒えて行く。
フロストジャイアントには何が起こったか全く理解は出来ていなかったが、周りにはその戦意が完全に消失しているのはハッキリわかった。
そして怯えた目でキッズを見ていた。
「ゴメンね。でもあなたが悪いんだよ」
「そうだよ。先ずはお話しなくちゃ」
(そいつら喋れねーよ!)2度目のツッコミだ。
「リユロさん、コイツらも悪さするのか?」
「い、いえ。ドラゴンと違って飛びませんから殆ど接点はありません」
「そうか…でも一応念を押すか…」
鈴木はジャイアントの前にリユロを立たせて言った。
「あー、コレ、仲間、叩く、タメ、わかった?」
(え〜!仲間にされちゃった?恨み買った?)
リユロは心臓が止まりそうだった。
「これで大丈夫」
(どこが!?)
「ウゴォ〜」
力無くそう言うとフロストジャイアントは逃げる様に去って行った。
(無事に帰ったら絶対に人里には近づかない様に厳命しよう)
リユロは堅くそう誓った。
ーーーーー
(なのに…何故だ!?)
「あ〜、こちらはクアゴア族の族長をやっているリユロさんです」
「パチパチ」「パチパチ」
フロストドラゴンの根城まであと少しだったが
丁度日が暮れそうになったのだ。
エンリとの約束は絶対だ。
しかしリユロを送ってまた転移するのも面倒くさい。
鈴木は面倒なのは嫌いなのだ。
「一晩、ウチに泊まりなよ」
その言葉がリユロには
「もう用が無いから死んでよ」と聞こえた。
ちっこいのの母親はどうみても人間じゃない。
加えて他にも人間じゃないのが2体居る。
戦士風の3人と髪が2色の少女は凄い殺気を出して警戒している。
(いつ殺されても不思議じゃない)
「へへ。どうも、私がリユロです。へへ、よろしくお願いします」
「クアゴア族ってみんなああなのかな?」
「なんかこう言っちゃなんだけど」
「卑屈よね」
娘たちは勝手な事を囁き合う。
リユロは酔えなかった。
次々に酒を勧められてかなり杯を空けたのだが
全く酔っていない。
「それでチビちゃんたちフロストジャイアントをやっつけたんですか?」
「やっつけたって人聞きが悪い…練習に付き合って貰ったんだよ。なぁリユロさん」
「…はぁ(一歩間違ったら確実に死んでましたがね)」
「まぁ!それは良かったわね!ちゃんとありがとう言った?」
「ひーるで治してたげたよ」
「そう、偉いわ。ママも嬉しいわよ」
(俺?俺が変なの?違うよね?この母親がおかしいよね?)
「父上、これは先が楽しみですねぇ」
「おばちゃんもウカウカしてられないぞ」
(親戚?おばちゃんってアンタも子供だろ?人間の事はよく分からんが…)
「へ〜、クアゴアさんてば石を食べるんだぁ〜」
(来た!)
「…はぁ、一応」
「美味しいのぉ〜?」
「…そこそこ」
「とかなんとか言ってぇ〜。ウチのお父さんを騙そうとか思ってないよねぇ〜?そんな事したら………殺すよ?」
「コラ!クーレ!お客さんに失礼じゃないか!」
「だってぇ〜」
「…いえ、ワタシ、全然気にしてませんから」
「すいません。根はとても良い子なんですが昔苦労しましてどうも疑り深いんですよ…ハハハ」
そう言ってクーレの頭を撫でる。
(良い子だって?嘘だね。殺すって言った時の目は常人の目じゃなかった。それに皆んなこのアンデッドの事をお父さんと呼んでる…この村全体がアンデッド村なのか?)
恐怖が全身を包み込む、やっぱり絶対に山を降りたりしない様に言わなくては。
「じゃあ明日も早いし、そろそろお開きにしようか」
(ああ…やっと解放される…眠れるんだ)
リユロの長い長い1日がやっと終わった。
ーーーーー
「お弁当持った?あ、リユロさんの分もありますからね」
「いってきまーす」
「ハイ、いってらっしゃい」
リユロの悪夢は朝になっても覚めなかった。
フロストドラゴンの根城に乗り込むと言うのに
まるで散歩に行く様な雰囲気だ。
(俺がシッカリとしなくちゃ駄目だ)
「ん?枕が変わって眠られなかったのか?」
鈴木が心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫ですよ(アンタらさえ無茶しなけりゃな)」
「心配要らないって。話せば分かるさ」
「…はぁ」
リユロは前日のフロストジャイアントの目を思い出していた。怯えた子犬の様な目を。
「じ、じゃあ打ち合わせ通り。最初に私が行って話して来ますから合図をしたら入って来て下さい」
「承知」「りょーかーい」
ーーーーー
「オラサーダルク様、クアゴアのリユロがお目通りを願っております」
「…リユロが?貢ぎ物を持ってくるにはまだ日があるだろう…何用か?まあよい、通せ」
「これはオラサーダルク様、お元気そうで何より」
「下手な世辞は良い。さっさと用件を申せ。フロストジャイアントの馬鹿どもが暴れたか?退治してやろうか?それなりの報酬はいただくがな」
(よく言うぜ…散々俺らから搾り取ってる癖に)
「いえいえ、本日はオラサーダルク様に是非ご紹介したい者たちが居りまして、やって参りました」
「…貴様、何を企んでおる」
「いえ…私は別に…」
「問答無用!城門を閉めよ!警戒体制をひけ!」
オラサーダルクの声が終わらぬ内に1匹のドラゴンが
土煙を上げながら門から飛ばされて来た。
(え?合図してからって…)
「ったく…人が入ろうとしてるのに急に門を閉めたら
危ないじゃないか…手でも挟んだらどうするんだ?」
「…アンデッド!リユロ…貴様!裏切ったな!」
「いや…私は何も…」
「おいおい、リユロさんは何も悪くないぞ?ここまでの道案内をしてくれただけだ」
「黙れアンデッド!貴様には聞いておらん!」
「じぃじ、コレって1発殴るパターン?」
「オラサーダルク様!どうか落ち着いて!それにサトルさんもちょっと待って!」
血で血を洗う抗争まで待ったなし、リユロは必死だった。
「おい、お前、オラサーダルクって言うのか?湖のリザードマンと言えば俺の来た理由がわかるか?」
オラサーダルクはニヤリと笑い
「そう言う事か…アヤツら魂と引き換えにアンデッドを召喚したのか」
「身体はデカいが脳みそは小さいみたいだな」
「ナニ!?」
「お前には主従関係しか頭に無いのか?残念ながら俺は召喚されたのでも使役されているのでもない。自分の意志でここに来た」
「何のためのだ!?」
「やはり脳みそが少ないみたいだな…わからんのなら教えてやろう。今日限り傍若無人な振る舞いは止めろ。関わりを持ちたいなら友好的な手段でやれ。俺はそれを言いに来た」
「フッ…何を言い出すかと思えば。馬鹿は貴様だろう。何故、強者が弱者に気を使わねばならん?世の中はな、強者が弱者を支配して成り立つのだ」
「…ほう。世の中の仕組みを持ち出したか。ならば問おう。その強者とやらより更に上が現れたらどうなる?」
「知れた事よ。従うまで」
「言質は取ったぞ。他のドラゴンどもも聞いたな?お前らの長が今そう言ったぞ?」
「お前みたいなアンデッドに我が長が負ける訳がない」
「そうだ!そうだ!」
「オラサーダルク様、さっさとやってしまって下さい」
オラサーダルクはゆっくりと立ち上がる。
「と言う訳だ。覚悟は出来ているんだろう?もう一度あの世に帰るが良い!」
「ヤレヤレだな…慌てるな、お前如きトカゲの親玉に本気など出したら後で笑い物だ。お前には孫たちの実戦練習の仕上げを手伝って貰う」
「どこまでもふざけたアンデッドだ…まあ良い、俺は慈悲深いのでな、お前の最期の望みとして聞いてやろう」
「お〜い!トカゲさんが遊んでくれるって。お前たちの凄い魔法が見たいらしいからたっぷり見せてあげなさい」
「ふぁ〜い」
(終わった…骨も残らないわ)
リユロは無惨に灰になるオラサーダルクを予見した。
「よーし!じゃあ練習開始っ!」
ーーーーー
蹂躙。
一方的だった。
オラサーダルクのブレスも翼で巻き起こす暴風も
強靭な尻尾での殴打も、全てが防がれた。
五つ子は縦横無尽に飛び回り、あらゆる攻撃魔法を撃ち込んだ。それはまるで魔法の見本市だった。
教科書のページを捲る様に次々と詠唱しては撃ち込む。
オラサーダルクが立てなくなると回復魔法が飛び
攻撃が再開される。
何度も何度も繰り返される蹂躙。
オラサーダルクの妻と思われる雌のドラゴンは懇願した、どうか殺してやってくれと。
そして、遂に。
「サトルさん、もう…十分です」
「は〜い!終了で〜す。良い子は後片付けしてくださ〜い」
「ふぁ〜い」
「マキシマイズマジック!ヒール!」
「ワイデンマジック!ヒール!」
オラサーダルクの傷は完全に癒え、その地獄を見ていたドラゴンたちの心も癒えた。
(やはりな…この子たちのヒールは心の傷も癒す)
鈴木は広場の一件からそんな気がしていた。
攻撃魔法、治癒魔法、強化魔法、その垣根が無いのではないか?
五つ子の魔法はこれまでの概念を覆す魔法。
肉体的な効果しか生まない筈のヒールが精神まで癒やしてしまう。
「実験は成功だ」
「オラサーダルクよ」
「なんでしょう、我が主よ」
「言った様に俺はお前たちを従える気はない。自由に生きるが良い、だが二度とあの様な真似をするな。各種族、助け合ってやって行くのだ」
「しかし…フロストジャイアントが」
「問題無い。リユロさん話してやってくれ」
「オラサーダルクさん?で良いですね。フロストジャイアントはさっきのあなたの様にお嬢ちゃんたちにコテンパンにやられたので二度と人目に付く場所には現れないでしょう」
全てを理解したオラサーダルクは鈴木に聞いて来た。
「あなた様はリザードマンに恩でもあるのですか?」
「いいや、違うよ。そこのリユロさんにもな」
「では何故こんな山頂までわざわざ?」
すると五つ子がその問いに元気に答えた。
「誰かが困って居たら助けるのが当たり前!」
お疲れ様でした。
リユロさんって亜人版ジルクニフみたいでしょ?
実際、原作では親友になってたし。
似た者同士?
そんな理由で登場して欲しかったのです。
だって、イジると面白そうじゃないですか。
そうそう。
書き忘れてましたが、最初にキッズに見つかったクアゴアさん。
可愛いって言われてましたよね。
イメージとしては、道路工事の現場に看板あるでしょう?あれに安全第一の黄色いヘルメット被ってまん丸のサングラスかけてるモグラの絵。あれです。一本だけ前歯出てるやつ。
え?わかりにくいって?
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。