骨と卵   作:すごろく

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その66 噴火。

「お前が首謀者か?」

鈴木は威厳たっぷりの魔王ロールで尋ねる。

「そうよ。我が次代の竜王になる男だ」

一際身体の大きなドラゴンがグイと前に出る。

「フン、身体はデカいがオツムはガキか…」

「そんな安い挑発には乗らんぞ。黙って首を差し出せ…」

「そうすれば仲間の命は助ける、か?下らん。この首もやらんし村にも手出しはさせん。お前には俺の実験に付き合ってもらう」

「はぁ?実験だぁ?この期に及んで気でも違ったか?」

「生憎正気でな。なぁに、ちょっとしたレベルアップの検証さ。…まあお前もお喋りにも飽きただろう、そろそろヤルか?」

 

ーーーーー

 

灼熱のブレスが襲い掛かるが、巻き起こる風の魔法で効果は半減され届いたブレスも結界で蹴散らされる。

戸惑うドラゴンへ間髪入れずデバフ魔法が飛び鎧は剥がされて行く。

アルシェとセリーは5人娘に強化を多重にかける。

 

「マキシマイズマジック!トルネードサンダー!」

5人から放たれた雷撃は重なり渦を巻く。

 

「おお!これぞ、深淵!この様は魔法は見た事も聞いた事もない!」

フールーダは興奮で倒れそうだ。

「どうだ?爺さん、びっくりしたろ?威力は掛ける5じゃないぞ?」

鈴木は得意顔。

 

「まだ、やるか?」

後ろのドラゴンへ鈴木が声を掛ける。

一撃でリーダーを沈められたドラゴンたちは言葉も無い。

「賢明な判断だ。なぁに心配は要らん、ちゃんと傷は治してやる。その後でツアーへ引き渡す、裁きは国で受けろ」

 

ドラゴンたちは慌てて飛び立った。

 

「追わなくていいのか?」

ガセフが寄って来る。

「ん?ツアーの事だ、ちゃんと調べはついているだろうさ。

逃げきれん」

 

「じぃじ!見ててくれたぁ!?」

5人が飛び付いてくる。

「ああ!見たとも!皆んな凄いぞ!じぃじはビックリだ!それにアルシェもセリーとの連携も見事だった」

「うん!お姉ちゃんたちが後ろはしっかりするから気にせず前に集中しなさいって言ってくれてたの」

「うんうん、そうか、そうか。皆んな強くな…」

 

『ゴゴゴゴゴ〜』

 

地鳴りと共に大地が揺れる。

 

(地震?)

 

次の瞬間。

 

『ドッ!バーンッ!』

 

「キャー!」

 

山が怒りを爆発させた。

 

ーーーーー

 

「建物の中へ!早く!」

鈴木は叫んだ。

(噴石は防げるだろうが…)

「ウォールズオブスケルトン!」

即座に防護壁を張る。

「クーレ!ガセフ!ブレイン!ピニスンたちを頼む!」

「了解っ!」

「エンリ!避難したら直ぐに人数の確認だ!」

「はいっ!」

焼けた噴石が降り注ぐ。

(マズいっ!これでは防ぎ切らん…ゲートで…)

ゲートを使って帝国へ避難させようとした時。

「じぃじ!あれ!」

指差す先に目をやるとフロストドラゴンの一団が此方へ向かって来ていた。

「オラサーダル!?」

よく見ると、その背にはクアゴアやリザードマン、足にはフロストジャイアントが掴まっている。

「サトル様!」

「無事だったか!」

「何とか飛び立てました。途中でこの者たちを拾って少し手間取りましたが…」

「お陰で助かりました。いくら地下に暮らす者とてあの爆発では…」

「我らとて同じ事。なす術もなく焼け死ぬところでした」

「それで…そいつらも?」

鈴木はチラッとフロストジャイアントを見る。

「昨日の敵はなんとやら…同じ山に暮らす者ですから。それに」

「それに?」

「我らと同じ冷気を操れますから、何かの役に立つかと」

「…成る程。兎に角、今はクアゴアとリザードマンはあの建物へ避難しろ。ドラゴンとジャイアントは…俺にはよく分からんから良い様に対処してくれ」

「承知!者共!我らが力を見せてくれようぞ!」

そう号令をかけると冷気のブレスを噴石へ吐く、

それをジャイアントたちは氷の礫で粉砕していく。

(…ほう!冷やして砕くか…おっと、感心している場合じゃないな)

「チビたち!お前たちも避難しろ!」

「ヤダもん!戦うもん!」

「駄目だ!」

「ヤダもん!皆んなを守るンだもん!」

「駄目だと…」

 

「グァああああああーっ!」

 

ーーーーー

 

(今度はナンだ!?)

鈴木は音のした方を見ると森の深くから

動物たちが逃げて来る。

「何事だ!?」

思わず大声を出す。

五つ子は逃げてきた動物に事情を聞く。

「じぃじ!森からデッカい木がこっちへ来るって!」

「木!?」

「破滅の竜王だ!」

「このタイミングでかっ!?」

「恐らくは今の噴火で目覚めたのでしょう。これはマズい」

「強いのか?」

「噴石なら対処は出来ますが…伝説の竜王では…」

(なんと言う事だ…これ程の大所帯ではもはやゲートは使えん…。ヤレるか?)

 

「分かった!じぃじの言う通りにするんだぞ!決して無理や無茶はいかん!いいな!」

「ふぁ〜い!」

 

ーーーーー

 

「リュラリュース殿!さっさと逃げるでござるよ!」

「し、しかし…この状況で一体何処へ逃げると言うのじゃ!もう駄目じゃ…儂を放ってお主だけでも逃げてくれ」

「村でござる!例の村ならなんとかなるかも知れないでござる。命が助かるなら土下座でもなんでもするでござるよ!さぁ!某の背に乗るでござる!」

「すまんのぉ」

「昔からの馴染みでござろう!遠慮は要らんでござる。それよりしっかり掴まって欲しいでござる、一世一代の全速でござるっ!」

 

ーーーーー

 

「ガセフ!ブレイン!クーレ!俺たちは破滅の竜王を相手する!ドラゴンたちと協力して噴石を頼む!」

「任せとけ!石ころ1つ建物にゃ当てねーよ!」

「さぁ!ありったけの武技を使ってやる!」

「石ころなんか、スッといってドス!よ」

 

「ウインドカッター!」

「ファイアーボール!」

「ライトニング!」

「アシッドレイン!」

「クリスタルウエッジ!」

数十メートルはあろうかと思う巨木に魔法が降り注ぐ。

「いいぞ!切って切って切りまくれ!ヘルフレイム!」

鈴木は切り飛ばされた巨大な枝を片っ端から焼き尽くす。

手足とも言うべき枝を飛ばされた竜王は青い樹液を撒き散らかしながらのたうち回る。

(破滅の竜王などと言うから…ただのデカい木じゃないか)

鈴木はふぅ〜と安堵の息を吐く。

 

「グォおおおおおーっ!」

 

一声吠えると切られた枝は見る見る伸びて

元通りになった。

「チッ!再生能力か…しかし、こちらは6人だ。この勝負貰った!」

 

再び闘いは始まり魔法が飛び交う。

切り飛ばされ燃やされ、そして再生する。

幾度も繰り返す闘いに終りは見えない。

五つ子も肩で息をし始める。

(おかしい…いくら巨木と言ってももう数十回は繰り返しているんだぞ!俺の魔力も…)

 

「お使い下され!」

フールーダは自らの魔力を鈴木へ注ぎ込む。

「アルシェ!行くよ!」

「オッケー!ウーとクーも力を貸してね!」

5人はありったけの魔力を五つ子へ渡す。

 

「負けちゃ駄目よ!ママがついてる!」

「セリー!頑張ってね!」

 

(マズい!ここままでは共倒れだ!…何かある筈だ…奴の弱点は…)

魔力切れ寸前の鈴木は朦朧とする頭で必死に考える。

 

「サトル!土だよ!奴は大地から生命力を吸い上げてる!

根を絶たないといくらでも枝は生えて来るよ!」

居ても立ってもいられないピニスンが必死に叫ぶ。

 

(…根を絶つと言っても、一体何処まで根を張っているのか見当も付かんぞ!それにもう俺の魔力も…、クソっ!ここまでか!)

遂に鈴木の魔力は尽きてしまう。

 

「クソがぁーっ!」

鈴木は仰向けに倒れ天に吠えた。

 

ーーーーー

 

「お姉ちゃん、じぃじが!」

「分かってる!それより聞こえた?」

「え!?お姉ちゃんにも聞こえてたの?てっきり空耳だと…」

「わたしたちも聞こえたわ」

全身樹液塗れの五つ子が一箇所へ集まる。

「あと何回?」

「多分…5回は無理」

「ピニスンさんの話は聞いたよね?」

「やってみる?」

「それしか無いよ。もう切っても切っても駄目だし」

 

5人は手を繋ぎ輪になる。

 

『私たちにお話ししてくれた、あなた。どうぞ、力をお貸し下さい。村や森の皆んなを助ける力をお貸し下さい。その代わりに私たち5人はあなたの使徒となる事を誓います。』

 

5人は輪になったままクルクルと回転し始めた。

すると金色に輝く粒子が生み出され始めた。

 

「ガセフ…ありゃあ…」

「わからん…魔法…なのか」

「違う!昔習った事がある…あれはエンジェルリング」

「「エンジェルリング?」」

「天使の輪、神に連なる者だけに作る事が出来る奇跡の輪」

そう言うとクレマンティーヌは膝を折り祈り始めた。

「…クーレ、お前…一体」

「ガセフ、貴方も祈って。ブレイン、貴方もよ。ほら、気がつかない?噴石が止んでる」

「あ…本当だ」

「今、神様が降りて来てる。法国の言うプレイヤーなんかと違う本物の神様よ。あの子たちは神様と話をしてる。さあ!祈って!」

ブレインはふと横を見ると驚愕した。

ドラゴンやジャイアントも膝を折り頭を垂れている。

そして逃げて来た動物たちまでも。

「これが…神の奇跡ってやつか…」

 

ーーーーー

 

「間に合ったようじゃのツアー」

「そんな事より…リグリット…あれ…は」

「…まさか…いや…間違いない。儂も初めて見たが、伝説のエンジェルリングじゃ」

「あれはお伽噺なんじゃ…」

「実際見た者が居らんでの…そう呼ばれても仕方ない。

曰く、その者青き衣を纏いて金色の輪を作る。おお!お伽噺ではなかったのじゃ…」

そう言うとリグリットもまた一心に祈りだした。

 

ーーーーー

 

(…気を失っていた?)

鈴木はむくりと立ち上がった。

(ハッ!そうだ!チビたちが!)

急いで空を見上げた鈴木は驚きのあまり声が出なかった。

「………」

 

金色の輪は破滅の竜王を囲めるほどに大きくなっていた。

5人は瞳を閉じ何かを念じている。

輪はゆっくりと破滅の竜王を取り囲み回転を始める。

凄まじ音と共に根元から巨木は引き抜かれ宙に浮かんだ。

すると今度は徐々に輪は小さく成りだし幹を締め付け始めた。

「ギリリリリーっ!」

巨木は妙な声を出し暴れるが輪から逃れられない。

 

そして、遂に。

 

「メリッ」

鈍い音が鳴り真っ二つに折れる。

 

輪は縦に広がり2つに折れた巨木を包み込んでゆき

やがてスッポリと完全に包み込んだ。

球体になった輪はみるみる小さくなってゆき。

 

「パーンッ!」

小さな破裂音と共に弾け飛んだ。

そしてあたり一面に金色の粉が降り注ぐ。

 

「あ、あれ…」

ようやく声が出た鈴木は五つ子を見た。

 

五つ子の周りには一際金粉が舞い白く輝き出す。

幼女だった外見は少女になり、背中に純白の翼が生える。

5人はフワリと翼を羽ばたかせ鈴木の前に降り立つ。

 

「じぃじ。全て終わりました」

ニッコリと微笑む。

 

「あ…ああ」

そう答えるのが精一杯の鈴木。

思考回路は完全にパンクしている。

 

「もう大丈夫ですよ」

今度は動物たちに微笑みかける。

動物たちは一斉に喜びの声をあげ、小鳥たちは5人の周りを嬉しそうに飛び回る。

 

(夢…でも…見ているのか)

 

小鳥と戯れる少女たちは一枚の絵画の様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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