骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

今回で最終話になります。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その68 そして最終話。

「この前は悪かったな、サトル」

「…お前なぁ。礼を言うのに呼び出すってどう言う事よ?」

「ハハ、そう言うなって。あれから裁判やら会議やらで分刻みなんだよ。それで来て貰ったんだ」

「どうなった?」

「クーデターの連中か?まだ若いからな、情状酌量の余地ありって事で禁固刑になったよ。まぁ300年は出て来れないけどね」

「それって長い方なのか?」

「僕たちの寿命からすると妥当かな。幸い死人も出なかったのも判決理由の1つなんだけどね」

「そうか…ツアーの国事だからな俺は口出しはしない。それで…そんな事をわざわざ言う為に呼んだんじゃないんだろ?」

「僕は永久評議員を辞めたよ」

「永久なのにか?」

「ケジメだよ。実際、他国へ迷惑をかけたんだし。でもそれは表向きの理由だ」

「旅にでも出るのか?」

「分かるかい?」

「孫たちが女神になって各大陸へ飛んだ。この地にも長女が居る。使命はもう終わった。と言う所か?」

「正真正銘の女神様が降臨されたのに、老ぼれのドラゴンは隠居しても良いだろう?」

「…そうだな。気ままな一人旅か?」

「最初はね。でも見所のあるのは仲間にして行くつもりだよ」

「寂しがりめ」

「君に言われたくはないなぁ」

「そうか…じゃあ元気でな」

「君もね」

 

ーーーーーー

 

「だからぁ。横でブツブツ言うのは止めてくれ。魚が逃げるじゃないか」

「酷いじゃないですか父上。可愛い姪っ子たちの旅立ちなんですよ?私とキーノが戻るまで待ってくれても…」

「だからそれは何度も謝ったじゃないか。"流れ"みたいなもんがあってな…」

「私はイイんですよ、我慢もしましょう。…だけどキーノがあれから3日!3日も寝室から出て来なかったんですからね!」

「…それは変だろ?」

「何がです?」

「いや、だって。旅立ったが毎晩帰って来てるじゃないか。ママの手料理が1番とかなんとか言って」

「それでも、です!イベントなんですからね」

「わかった、わかった、今度から気をつけるって…それよりお前、どう思う?今回の一件」

「所謂、レベルアップとかではないでしょう。それに妹たちから貰ったアイテム、明らかにこの世界やユグドラシルのマジックアイテムとは違います」

「だったらやはり、神か?」

「とても非現実的ですが唯一辻褄が合うのがそれですね」

「お前も見ただろう?カトリーヌが連れている天使」

「あれらもそうです。召喚された天使とは違い各々が意思を持っております。あの軍団が本気ならナザリックでも危ないかと」

「………」

「どう…されました?」

「いや、なに。世の中にはまだまだ知らない摩訶不思議な事があるなぁ、とな」

「ですね。私も今回は大層驚きました、それに…あっ!父上!引いてる!引いてますよ!」

「ナニ!?あ!ホントだ!」

鈴木がゆっくり竿を引き上げると魚が食いついていた。

「とうとうやりましたね、父上」

「これも女神の力かな」

「フフフ」

「ハハハ」

父子は嬉しそうに笑い合い、魚を湖に戻した。

 

ーーーーー

 

「陛下、カルネ村に女神が現れたそうですよ」

「またサトルの仕業だろう?どうせまた召喚したんだよ」

「それが…どうやら違うそうなのです」

「では何だと言うのだ。新たなプレイヤーとか言う者たちか?」

「それが…そのぉ…」

「なんだ?ニンブル、お前らしくもない。ハッキリ言わんか」

「サトル殿のお孫さんが…その…女神になった」

「お前、今から休暇をやるから何処か静かな所で静養しろ。すまんな、忙しさでお前がそれ程病んでいるとは気づいてやれなかった」

「私は至って正気ですっ!」

「いいか?あの子たちはヒトの子として生まれ母親の乳でアンデッドになったんだぞ?それが女神になるなんて…ありえる…のか」

 

「ありえるのだよ、ジル」

 

ゲートが開き鈴木とカトリーヌが姿を現す。

 

ジルクニフはカトリーヌの姿を見た途端、その前に跪いた。

いや、ジルクニフだけではない。

その場に居た全員が同じ様に跪いていた。

 

(確かジルは耐性効果のあるネックレスをしていた筈。それが効かんとは…しかもパッシブスキルだぞ?)

「ジルおじ様、どうぞ楽にして下さいな。皆さんも」

カトリーヌが微笑むと部屋の空気は一変した。

「ジルおじ様、いえ、ジルクニフ皇帝陛下。この地は私が守護する事になりました。今日はそのご挨拶です」

「本物の…女神…様」

「はい、本物の、です」

(凄いオーラ…こんなの初めて。同じ部屋に居るだけで心が洗われる様だわ)

レイナースはまだ顔を上げられない。

(なんなんだ?顔をまともに見られねぇ。ガキん時に悪戯して親父に怒られてる様だ)

バジウッドは冷や汗を拭おうともせず、ジッと床を見つめていた。

(これが…神の力…ですか。姿が見えた途端に頭の中で誰かの声が聞こえた。跪け、頭を下げろ)

ニンブルもまた微動だに出来ない。

 

「カルカさんには先に祝福を授けました。生まれてくる子をしっかり導いて下さいね。そうすれば必ずその子は名君も呼ばれる様になります」

 

「はっ!このジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。しかとお言葉拝受いたしました!」

 

(スゲーよ…ジル、マジじゃん)

「じ、じゃあなジル。また俺だけで来るわ、さいなら」

そう言い残して鈴木は慌ててゲートで去って行った。

 

「凄い迫力でしたね陛下」

「ああ…息が出来ないかと思ったぞ」

「それより良かったじゃないですか、カルカ様」

「…お前…知らないのか?神との約束は悪魔との契約より、ある意味で恐ろしいのだ」

「そうなんですかい?」

「ああ、悪魔とのそれは破ればペナルティを払うだけで済むがな、神との約束を破ればその存在そのものがペナルティになる、地獄の責め苦に苦しみ死ぬ事も許されない。無論、助けてくれる神は居ない。それからな、これは周りにも周知させねばならんが。我が子を誑かす様な事は悪魔の誘惑とみなされ粛清の対象になるからくれぐれも注意してくれよ」

「陛下のですかい?」

「アホ。私からなら逃げられる。相手は神だ。決して逃げられない。これはエライ事だ。徳を積まねば…結構やって来たからなぁ…」

ジルクニフの悩みがまた1つ増えた。

 

ーーーーー

 

「…しかし、毎晩毎晩帰って来るってのもなぁ〜」

「だってぇ〜、寝室のドア閉めるのと同時に家のドアを開けられるんだもん」

「ゲートを使える俺は気持ちは分かるよ。ただなぁ〜」

「じぃじは私たちが帰ってくるのがイヤなの?」

「いや、そーゆー事じゃなくてな。神様との約束だろ?それを果たすって言う凄い大きな使命みたいな、それがまるでパン屋のバイトに行ってるみたいな軽さがなぁどうなの?って」

「仕方ないじゃない。実際、行ってみて分かったんだけど殆どやる事無いんだよね。私たちが空から降りるだけで皆んな拝んじゃてさぁ。何でも言う事聞いてくれて平和になるんだよ、それでこれからもズッと居て我々をお見守り下さいって決まり文句」

「そーそー、何処へも行かないって言っても信じてくんないんだよね。やれ神殿建てるだの貢ぎ物は何がイイだの。神殿なんかじゃ寝られないよね〜、落ち着かなくて」

「だから帰ってくんの。やっぱ家が落ち着くし村の皆んなとも会えるしね」

「じぃじはちゃんと仕事してるか心配なんでしょう?大丈夫、ちょっとやってるって。こないだも変な病気で全滅しかかってた国があって、調べたら悪魔に取り憑かれてたから除霊してあげたんだよ。そしたらそこの王様が是非この国の守り神になってくれって、いつもの流れで困った」

「いくら説明しても分かってくれないんだよね。自分たちだけが良かったら良いって考えがそもそも駄目だって言ってるのに…」

「でね、じぃじ。無断で悪かったんだけど、じぃじの言葉を勝手に使ってるんだよ」

「言葉?使ってる?」

「うん。経典って言うのかな、色々と長いのは結局は間違って伝わったりするから駄目なの。それでね、じぃじの言葉を使う事にしたんだよ」

「あれ…か?」

鈴木はウインクする。

「そう…あれ、だよ」

五つ子もウインクを返す。

 

「誰かが困っていたら、助けるのは当たり前」

 

ーーーーー

 

「父上、本当に行くので?」

「お前は嫌なら残って良いぞ」

「…いえ、キーノには泣かれましたが、それもやっと納得させましたから」

「よく納得したなぁ」

「お土産を絶対持って帰る、それと、週に一度は必ず戻る」

「…なんかそんなのばっかりだなぁ。なんか冒険を遠足と履き違えていないか?」

「私も興味がありますし」

「だろ?これは俺とお前しか出来ないからな」

「私たちには空気が不要ですからね」

「あと飲食な」

「それで父上、とりあえずは月を目指すので?」

「うん、今回の冒険は大気圏突破が絶対条件だからな。それが出来なきゃ始まらない」

「それで私なりに方法を考えて参りました」

「期待してるぞ」

「先ずはフライとファイアーボールで垂直に飛びます、この時に地上で核爆発を起こして勢いをもらいましょう。これで突破出来る計算です」

「素晴らしい!素晴らしいぞ、流石我が息子」

「それでですね。宇宙に出たらほんの少しの推進力で進みますので私たちの魔法でなんとでもなるでしょう」

「まあ魔力切れ起こしても1日経てば回復するしな」

「ではそろそろ行きますか?」

「行こう!」

 

ーーーーー

 

「居ないな…」

「何がです?」

「ウサギだよ、餅をついてるウサギ」

 

ーーーーー

 

「…ここも居ない」

「今度は何です?」

「ほら、タブラさんみたいな格好の生物だよ」

「至高の御方のタブラ様ですか?」

「うんそう。タコみたいなの」

 

ーーーーー

 

「今度も見つかりませんか?」

「がっかりだよ。今度こそ見つかると思ったんだけどなぁ」

「それで今回のはどの様な外見なのです?」

「う〜ん、そーだなー。一言で言うとお前に似てるかな?」

「私に、ですか?」

「目はもうちょっと釣り目なんだけどツルンとしてて、手足も長い。あと色はグレー」

「それが?」

「ワレワレハ、キンセイジンダ。って言う」

「なんですか?それ…」

 

ーーーーー

 

「そろそろ帰りますか」

「だなー、ウサギも火星人もグレイも見つからなかったしなー」

「キーノに怒られますよ、お土産って言っても石ころしか無いし…」

「でも…宇宙って凄いだろ?」

「村の皆んなにも見せてあげたいですね」

「月に別荘でも作るか?」

「何と言ってもこちらには女神が5人も居ますから」

「なんでもアリだな」

「なんでもアリです」

 

骨と卵は声をあげて笑った。

心の底から笑った。

ファンタジーは何でもアリだ。

主人公は絶対死なない。

 

「息子よ」

 

「なんでしょう父上」

 

「宇宙征服なんて面白いかも知れないな」

 

ーーーーー完ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

本当にお疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。

短い間でしたが、モノを書くと言う体験をさせてもらいました。
それも偏に感想や評価、しおりなどで支えてくださった
読者様のおかげです。

また書きたくなったら投稿します。
その時は「ああ、こいつまた書いたんだ」と思って
読んでみて下さいね。

では、そんな日が来る事を願って
キーボードを閉じます。

全ての人の明日が素晴らしい明日でありますように。

すごろく

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