なお、この小説では聖グロ戦とマジノ戦の後に全国大会という流れにしていますので、ご了承ください。
聖グロリアーナ女学院との練習試合から数週間が経った。りほは大洗女子学園のグラウンドに設けられた高台から、双眼鏡で様子を見ていた。
「うーむ。やっぱりあたしの思った通りだ」
りほの視線の先には、前までの派手なカラーから一転し、発見された時と同じ塗装が施された戦車たちが走っていた。
「(チーム名もあんこうとかカバさんとかウサギさんとか、可愛らしくて呼びやすい名前になったし、練習試合前よりも真剣さを感じるね)」
試合中に戦車を捨てて逃げた一年生チームことウサギさんチームも、試合後にみほに対して謝罪した。今では戦争映画などから戦術を研究したり、みほ達あんこうチームのメンバーからそれぞれアドバイスを貰いに行ったりと、真剣に取り組んでいる。
「(だけど、全国大会までまだ日はある。もう一戦くらいは練習試合が出来るかもしれないが……)」
果たして次はどことやるのか? りほはそれが気になっていた。
その日の夜。みほから、次の練習試合の相手を聞かされた。
「マジノ女学院か。フランス戦車だから、結構硬いぞぉ?」
「向こうは、防衛戦を得意としているくらいだからね」
りほはそれを聞いて、ある話を思い出した。
「(確か、最近のマジノは隊長が替わって、戦術も変化してるって後輩が言ってたな。けど……)」
缶ビールに口をつけながらみほを見ると、彼女はどのように立ち回るか等を考えているようだ。りほは、後輩が話していた対戦校の変化を教えるのを止めた。
「(必ずしも相手が評判通りに動くとは限らない。戦いは常に千変万化って事を知る良い機会だ)」
そう心の中で呟くと、つまみのウインナーにマスタードをつけて食べる。我ながら良い茹で加減で、噛むと皮が弾けて肉汁が広がった。
「そう言えば、その練習試合って何日なんだい?」
「今週の土曜日なんだけど……」
「あー、ごめんよ。この日は仕事が入ってるから整備班として参加できないや」
聖グロの時はスケジュールも空いていたために練習試合のスタッフとして参加できたが、りほは他にも戦車道連盟としての仕事を持っている。大洗とマジノとの練習試合がある日は残念なことに、その仕事が入っていたのだ。
しかしりほは、眉間に皺を寄せるとビールを一気に飲み干した。
「(はぁ……。今回の仕事は、出来ればやりたくないんだよねぇ……)」
整備士としての仕事を誇りに思っているりほですら嫌悪するその内容。それは……廃校となった学校から、戦車を回収する作業であった。
土曜日。りほを含めた戦車道連盟のスタッフは、軽い整備を終えたあと、戦車達をトレーラーに乗せていた。
この戦車達は、廃校となった学校の戦車道チームが所有していた車輌である。
「班長。全戦車の回収、完了しました」
「……そうかい」
りほだけではない。連盟のスタッフ全員の表情が沈んでいる。彼女達の後ろでは、戦車道をやっていたであろう生徒達が、涙を流し、啜り泣いていた。
「……では、こちらの戦車は全て、私たちの方でお預かりいたします」
りほは心を痛めながらも、そのように告げる。その時、一人の生徒がりほに突進してきた。
「ぐっ!」
「ふざけんな! 私達の戦車を持ってくなよ! そりゃあ試合で負けることもあったさ! だけど、だけど、それでも私達にとって相棒なんだよ! 返せよ……! 今すぐ戦車を返せよ!」
「ちょっと、駄目だって!」
「ふざけんなぁ! 私達から何もかも奪いやがって……! 文科省も連盟もくたばれぇ!」
他の生徒に羽交い締めにされながらも、なおりほへの罵倒を止めない女子。すると、隊長らしき生徒がやって来て、頭を下げた。
「戦車達を、よろしく、お願い……しま、す……!」
徐々に涙ぐみ震えるその願いに、りほは「分かりました」としか言えなかった。
戦車道連盟本部へ向かう道中、りほは助手席でボーッとしていた。運転席のスタッフが声をかける。
「嫌になりますよね、本当に……」
「戦車を直す仕事は、あたしにとって誇りさ。けれど……戦車を奪うこの仕事だけは、誇りになんて思えないね」
政府が行なっている、学園艦の統合計画。それは簡単に言えば、維持費削減のために学園艦の数を減らす、すなわち廃校にすると言う政策である。
「青春を過ごす子供達から、青春を奪うんじゃないよ。まったく……」
りほは不機嫌にそう呟いた。
もしもりほが、戦車道大作戦に登場していたら~部隊編成~
車長の場合:「リーダーって柄じゃないけどねぇ。まぁ任せな!」
砲手の場合:「砲手か。こう見えて当てるのは得意さ!」
通信手の場合:「通信手か……あまり上手くないが、やってみよう」
装填手の場合:「装填かい? 整備で鍛えた腕を見せてあげるよ」
操縦手の場合:「あたしの操縦は派手だよぉ? 振り落とされないようにね!」