昼食のホットドッグを食べ終え、りほはスタッフ専用テントで試合の様子を見ていた。
「凄いッスね姐さん! サンダースが大洗の動きを先読みしてるッス!」
後輩が試合の展開に興奮しているようだが、その動きをりほは不審に思っていた。
「……良すぎる」
「え?」
「動きが
大洗の戦車がほんの少しでも動くと、サンダースは即座に動いて先回りしている。その行動があまりにも迅速すぎるために、りほは不審に思ったのだ。
「(この不気味な正確さ、まるでカンニングしてるようだね。……ん? カンニング? まさか!)」
りほはテントから出ると、双眼鏡を取り出して会場の空を探す。
「……やっぱりか」
「姐さん、どうしたんスか?」
「見ろよ。無線傍受機だ」
「えぇっ!?」
後輩が双眼鏡を受けとり確認すると、遠くの空に、試合開始前にはなかった無線傍受機が浮かんでいた。
「あれってアリなんスか!? これじゃあ大洗は一方的に作戦読まれてるじゃないッスか!」
「淑女の戦車道としては無しだろうが、あたしはアリだと思ってるね」
「えぇ!?」
後輩が驚いた理由は2つ。1つはりほが無線傍受を肯定していること。もう1つは……りほが獰猛な笑みを浮かべている事だった。
驚きの表情を浮かべている後輩をよそに、りほはタブレット端末を使って、無線傍受をしている下手人を割り出す。
「サンダースの隊長さんは、良くも悪くも正々堂々としてるから、無線傍受をするとは思えない。傍受機があの位置にあるとしたら、近くで浮かべているのは……なるほど。フラッグ車か。クックックッ……! 中々やるじゃないか、その嬢ちゃんは」
「な、何故ッスか?」
「ルールの穴を突いたからだよ。『無線傍受をしてはいけない』なんて書いてないからねぇ」
「けど、だからって……」
「確かに、戦車道はスポーツ競技みたいなもんだから、正々堂々が好まれるだろうさ。だけど戦車道をやる人間に求められるスキルの1つには、状況把握だって含まれるんだ。乱暴な言い方をすれば、『無線傍受に気付けない奴が悪い』とも言える」
「そんな……」
「けど、そろそろ大洗も気付くんじゃないかねぇ。サンダースは綺麗に動きすぎた。何事もほどほどにって事だね」
問題は、無線傍受に気付いた上でどう動くのか。それが鍵となる。
「(さーて、みほちゃん。どう動く? それに無線傍受を突破しても、まだ壁は立ちはだかってるよ?)」
タブレット端末に表示される各戦車の動きを見ながら、サンダースの編成を思い出す。その中に、第二の壁が存在するのだ。
「(連合軍最強の砲といっても過言じゃない、17ポンド砲。そいつを搭載したシャーマン・ファイアフライ。しかも砲手は凄腕のスナイパーと来た。さぁ、どうなるかね)」
獰猛な笑みを浮かべる中で、りほは無意識に舌なめずりした。
読んでいただきありがとうございました。次回もお待ちください。