サンダースとの戦いを終え、より一層練習に励む大洗女子学園の戦車道チーム。その間りほは、タブレットを見ながら唸っていた。
「(ふむ、アンツィオ高校がマジノ女学院を倒したか。つまり、次のみほちゃん達の)相手はアンツィオか)」
それは2回戦目の相手についての情報だった。アンツィオ高校はイタリアを思わせる雰囲気の学校だ。戦車道は活発では無かったのだが、それを全国大会に出場できるレベルまで成長させた人物がいる。
「(
しかし、気になる事があった。それはアンツィオ高校が使用している戦車についてだった。
少し話は逸れるが、戦車道の大会などでは、試合の数日前に使用する戦車を登録する必要がある。規定に反した車輌を使用していないか、どのような戦車を使うかなどを把握することで、大会運営スタッフが動きやすいようにしているのだ。
話を戻すと、アンツィオ高校は一回戦で、豆戦車とも呼ばれるカルロ・ヴェローチェと、自走砲のセモヴェンテを使用している。しかし二回戦での使用戦車の申請において、1輌だけ変更があったのだ。
次の試合で使用する戦車が変更になるというのは、おかしな事ではない。修理が間に合わず、代理の戦車で試合に出ることを余儀なくされる場合などもあるためだ。よって登録の変更も認められている。
だが、修理が間に合わない戦車がアンツィオにあると言う情報は来ていない。この事からりほが察したのは―――
「二回戦目から本格的に使う戦車があると言うことか……」
『前試合で使用してない戦車を、その次の試合で使ってはいけない』とは書かれていない。このアンチョビという生徒も、規定の穴を突いたと言えるだろう。
どのような戦車が登録されているかは知っているが、スタッフが生徒に教えることは禁止されている。情報を入手するのは生徒自身で行なわせるためである。
「しかし1輌だけじゃ、ね。どのような作戦を立てるのやら……」
アンツィオ高校に関しては置いておき、今度はもう一人の姪の試合を見る。その感想は一言に尽きた。
「知波単の連中は、相変わらずの突撃戦法だねぇ」
まほが率いる黒森峰は、日本戦車を使用する知波単学園との対戦だったようだ。しかし、試合映像を見る限り、黒森峰の一方的な砲撃で次々と日本戦車は白旗を上げていく。
知波単学園は練度も高く、隊長の人柄のおかげで士気も高い。悪くはないのだが、突撃という伝統があるためにその長所が隠れてしまっている。
「突撃の使いどころを、“斬り込み隊長„は教えたのかねぇ」
かつて自分が荒れていた時代に戦った、『知波単の斬り込み隊長』と呼ばれた女。彼女はどうしてるかと、りほは懐かしい気持ちになった。
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