試合終了のアナウンスが響き、りほは安心したように息を吐く。
「これ、アンツィオ側がミスしてなかったらどうなってたやら……」
今回の試合で、アンツィオ高校はダミーを使うという戦法を取った。偵察に向かった戦車の目を欺き、嘘の作戦をチラチラと見せながら裏をかこうとした。
だが、どうやら配置する数を間違えたらしく、途中からはみほ達大洗女子学園も態勢を立て直すことが出来たのである。
今回の試合も見所はあったのだが、ミスしていなかったらまた面白い戦いになっていただろうと、りほは考えるのであった。
試合を終えて数日後。りほは杏から呼び出しを受けて生徒会室に来ていた。ソファに座るよう促され、お茶と干し芋を出される。
「……りほさん。お話があります」
「真剣な顔をして、どうしたんだい?」
「私たちが戦車道を始めた理由を、お話ししたいと思っています」
「っ!」
そして杏の口から語られたのは、衝撃の事実だった。
学園艦統廃合政策。学園艦を減らすことで維持費などを削減するという政策の対象に、大洗女子学園も含まれていたのだ。
文科省の役人曰く、目立つ功績も無く、比較的古い艦であり入学する生徒も減少しているから。そこを言われれば痛い所だが、それでもいきなり廃校にしますと言われて、ハイそうですかと頷ける訳がない。
そこで杏が考えたのが……
「戦車道の全国大会優勝、か」
「無謀だとは分かってます。でも、やらなきゃならないんです」
「…………そうかい」
だがこの時、りほの背中は冷や汗でびっしょりと濡れていた。それは、自分の仕事内容が原因だった。
彼女の主な仕事は、戦車の整備や修理である。大会では整備スタッフの班長を務める程の腕前だ。しかし、彼女にはもう一つの仕事があった。
それは、廃校となった学校から、戦車を回収するという作業。生徒から見れば、戦車を奪う立場にも就いていたのだ。
「(この学校が廃校になったら、アタシはみほちゃんから、戦車を奪わないといけなくなる……)」
だが、本当にそれで良いのだろうか。りほは今まで投げ掛けられた言葉を思い出していた。
『戦車を返せ』
『思い出を取らないで』
『泥棒』
『人でなし』
もっと単純に、死ねと言われて殴られた事だってある。みほが新たな仲間と共に乗ってきた戦車達を自分が回収する立場になった時、みほはどんな顔をするだろうか。仲間たちは何と言うのだろうか。
「……教えてくれて、ありがとうね。分かった。最大の力を以て、戦車達を整備するよ」
杏たちにはそう言ったものの、りほの頭からは、最悪の未来予想図が離れることは無かった。
最悪の未来予想図に蝕まれ、りほはとうとう、かつての仲間に助けを求める。悩みを打ち明けるりほに対する、仲間の答えとは。
次回『再会する者たち』
……すみません、少しアニメの次回予告っぽくしてみました。