今回は、リメイク前とは大きく異なる所がありますので、リメイク前を知ってる方はご了承ください。
夜、家に帰ってきてからのりほは項垂れていた。杏から告げられた廃校の話と、自分の職場での立場、そしてみほの叔母と言う立場に囲まれているからであった。
「次の試合の相手は、プラウダ……」
運命の時と言っても過言ではない、昨年の因縁の相手。戦車の性能はもちろん、隊長のカチューシャや副隊長のノンナの実力は相当の物である。
もし準決勝で敗れたら、大洗女子学園は廃校。みほ達の戦車をりほは回収しなければならない。そう考えたとき、彼女達の悲しそうな顔を想像してしまう。
「…………」
りほが取り出したのは、携帯電話。ビールでも飲んで酔っぱらってしまおうと思っても、気分は暗くなるばかり。だからこそ、彼女が最も信頼している仲間に、助けを求めたかった。
『やぁ、りほ。電話をくれるなんて久しぶりじゃないかな?』
電話に応じたのは、ミチコと同じくりほの仲間だ。
「お前の所で飲みたい気分でね。ミチコも誘おうと思ってるんだ」
『私の所で? まぁ、久々に3人で飲もうじゃないか』
「突然ですまないね。酒は持ってくるよ」
『ふっ。楽しみにしてるよ』
電話を切ったりほは、机に突っ伏したまま眠ってしまった。
とある工場。そこには、大量のスクラップが積まれており、その残骸は全て戦車であった。
此処は、損傷が酷く新品と引き替えになった戦車が行き着く、人呼んで「戦車の墓場」である。りほとミチコはその中を慣れたように歩いていき、作業員の泊まり込む寮へと向かっていた。
「相変わらず鉄臭いねぇ」
「んなこと言って、本当は懐かしいんだろミチコ?」
「てへっ、バレた?」
墓場と呼ばれるこの場所の実態は、戦車の改造工場である。りほ達が会いに行く人物は、対空戦車を戦車道仕様に改造したり、ここに眠る廃戦車たちを蘇らせることも出来る。そのため、りほにとって仕事上つき合いが多いとも言える。
寮に着いたりほとミチコは、件の人物の部屋のインターホンを鳴らす。
「カナエー。来たぞー」
『今開けるよ』
そうしてドアを開けたのは、茶髪の女性。作業に邪魔だからと首の辺りで髪を切り揃えている。
カナエと呼ばれた女性は、ミチコと同様にりほの戦友だった女性だ。今は改造屋と呼ばれる商売をしている。
「ほれ、酒持ってきたぞ」
「ツマミもあるよ~ん」
「それは何よりだ。掃除も終えたところだし、さぁ上がって上がって」
こうして、黒森峰OG三人による飲み会が始まった。
3本目の缶ビールを飲み終えたところで、カナエが本題を出した。
「りほ。何か悩みでもあるのかい?」
「……気付いてたか」
「まぁね。悩んでる時のりほは、何かを指でトントンと小さく叩く」
「あたいも気付いてたよ? 缶をトントンしてた」
「マジかぁ……。実は、さ……」
りほは、姪のいる学校が廃校になりそうな事、もしも廃校になったら自分が彼女たちの戦車を没収しなければならないことを告白した。もし、そうなってしまったら……。最悪な結末を想像してしまうのだと語った。
「…………りほ」
「ん?」
その瞬間、りほの顔面に液体がかけられた。先程までカナエとミチコが開けていたビールである。
「ぶっ、ぷっ! 何すんだ!」
「ふざけんじゃないよ! あんたはそれでも、
「丸くなったどころか、あの時の鋭さを失くしてしまったか? だとしたら笑い物だな」
ミチコが叫んだ亡霊チームとは、りほが黒森峰女学園の生徒だった時に他の学校で噂されたチームである。
黒森峰らしからぬ戦い方で相手を一方的に追い詰めたというのに、翌年から姿を消した幻のチーム。それを率いていたのがりほである。
「やりたくなけりゃ、やらなきゃ良いだろうが!
「だ、だけど、今のあたしは……」
「戦車道連盟のスタッフだから、か? りほ、忘れたとは言わせないよ。『古い伝統の狗に成り下がる気はない』……昔あんたが言った。なのに、なんで戦車道連盟の狗になってんだ」
りほは俯く。昔、西住流の戦い方にこだわり続ける黒森峰戦車道に嫌気がさし、命令無視を繰り返してわずか一年で除隊になった。
自分はもう大人だ。昔のようにはいかない。そう考え、諦めていた。だが自分にアドバイスを求める杏たちはまだ諦めていない。
「……まだ、だよな」
「ん?」
「まだあの子達は諦めてないよなぁ……!」
「(ふふ、あの時の調子を取り戻したか)」
りほの目はギラギラと光り、昔を思い起こさせるその顔にミチコとカナエは小さく笑った。
「ありがとね。お陰で吹っ切れた」
「だとしたら、飲み直しといくかぁ!」
「次の試合に備えて、だね」
3人の乙女の飲み会は、遅くまで続いた。
次回の更新はまだ未定です。気長にお待ちください。