今回は、カメさんチームの38(t)がヘッツァーへと改造されるお話です。
プラウダ高校との試合を終えた大洗女子学園。決勝戦の相手は、全国大会9連覇を成し遂げているという黒森峰女学園だ。使用する戦車はドイツ戦車が多く、その圧倒的火力と堅牢な装甲をもって相手をねじ伏せてくる。
しかも隊長は、西住みほの姉である西住まほ。異例の早さで隊長に任命されるほどの実力者だ。
先の試合の途中でみほ達が知ったこと。それは、全国大会で優勝しなければ、大洗女子学園は廃校になるというものだった。国の政策である『学園艦統合計画』の対象として選ばれてしまったのである。
最初こそ、その事実に皆が落ち込んだ。しかし、引っ込み思案な所のあるみほが、中々恥ずかしい踊りであるあんこう踊りをやった事で、士気を取り戻したのだ。
試合が終わった今も、全国大会優勝を目標に全員が練習に励んでいた。
「しかし、三式中戦車チヌまであるとはね……」
「たまたま見つけたみたいなんだけどね。でも、何で残ってたんだろう?」
「昔は大火力・重装甲の戦車が好まれてたらしいからねぇ。チヌはお世辞にも装甲が良いとは言えないし、それで買い取り手が見つからなかったんじゃないかな」
作業服に身を包むりほと、その隣にいるみほが話をしていた。目の前にあるのは三式中戦車チヌ。新たに加わったネトゲ三人衆こと、アリクイさんチームが使用することになった戦車だ。
この他にも、自動車部であり戦車整備も担当してくれるレオポンさんチームも参戦。使用する戦車はポルシェティーガーだ。
「さーて、チヌの整備も終わった。あとは38(t)の改造か……」
生徒会ことカメさんチームが使う戦車、38(t)。杏の提案により改造キットを使って強化をすることになったのだが、ヘッツァー駆逐戦車のキットが届いたのだ。
流石のりほも、戦車の外観をも変えてしまうような大規模改造は出来ない。と言うより、38(t)からヘッツァーへ改造したという史実が存在していない。
「……あいつに頼むしかないか」
「りほ姉ちゃん?」
「みほちゃん。カメさんチームの3人を呼んできな。この戦車を、改造工場へ持っていく」
りほの頭の中には、魔改造を得意とする友の姿があった。
遠くから重機の動く音が響き、錆びた鉄とオイルの臭いがツンと鼻を突く。38(t)を乗せたトラックは、運転手のりほと、助手席と後部席に座るカメさんチーム、そしてみほを乗せて工場へ向かっていた。
「辺り一面、戦車だらけ……」
「こんな所があったなんて……」
柚子や桃が、窓から見える光景に唖然とする。いつもは干し芋をかじってる杏も、流石に外の臭いが強いためか食欲が出ないようだ。
「知らなかったろ? ここは戦車道連盟が買い取った土地で、新品と引き換えになった廃戦車たちが辿り着く場所なのさ。関係者はここを、『戦車の墓場』と呼んでいる」
「戦車の、墓場……」
「だが、ここは単なるゴミ置き場じゃない。今から会いに行く奴の手によって、様々な改造・強化を施される工場でもあるんだ。あたしの戦友でもあるんだが、改造の腕はピカイチだよ。趣味でオープントップの車輌を戦車道仕様に改造しちまうくらいだからね」
「りほ姉ちゃんがそこまで褒めるなんて、そんなに凄い人なんだ」
「あぁ。ほら、そろそろ着くよ」
遠くに見えていたクレーンは、徐々に近づいてきた。
駐車係に案内されると、専用のスペースに停まってりほ達は降りる。そしてクレーンによって38(t)がトラックから降ろされると、りほの目的とする人物が姿を現した。
「やぁ、りほ。ご指名ありがとう」
「依頼をするのはあたしじゃないよ。この子達さ」
りほが親指でみほ達を指すと、彼女達は慌てて礼をした。
「大洗女子学園の子達だね。次の決勝戦に向けて、戦車を改造したいと見たけど」
「はい。こちらのキットを使って、38(t)を改造したいのですが」
杏が書類を渡すと、カナエは右人差し指でこめかみを軽く叩きながら呟く。
「38(t)からヘッツァーへの改造か。こりゃまた随分と手強いな」
その呟きを聞いた桃が、少し慌てる。
「ですが、相手は黒森峰女学園です。少しでも火力は欲しいですし、その、予算が……」
「なるほど。いや、出来ないとは言わないさ。原型を無くすほどの改造なんて慣れてる」
「で、では!」
みほ達の顔が明るくなったが、カナエは目付きを鋭くする。
「ただし。私は自分の改造に誇りを持ってる。私にとって戦車の改造というのは、
要するに、改造にかなりの時間を貰う。締め切りを設けたり急かすような振る舞いをするなら、すぐさま送り返す。中途半端な改造ほど、見るに耐えないものは無いからね」
カナエの気迫は強く、平気そうな顔をしてるのはりほだけだ。だが、みほと杏が彼女の前に立った。
「ヘッツァーへの改造を、お願いします」
「大会に間に合わないかもしれないのに?」
「でも貴女は、大会に間に合わないとも言ってません。私たちは信用します。誇りを持ってると言われたならば、私たちは信頼するのが筋というものです」
みほの言葉にカナエは暫く黙り込む。そして、彼女達に背を向けた。
「あ、あのっ!」
「早めに来たのは正解だったね。その依頼、しっかりと承った」
手を振りながら去る姿にポカンとしていると、りほが2人の肩に手を置いた。
「良かったじゃないか。あいつ、君たちを試してたんだよ」
「え?」
「確かにカナエは、締め切りとかを設けられるのを嫌うさ。だけど、『期限内に最高の仕事をするのがプロ』って信念も持ってる。早めに来て正解っていうのは、そう言うことさ」
「じゃあ、大会に間に合うってこと!?」
「そう言うことさ」
その事に安心するみほ達を見て、りほは微笑んだ。
「(あいつ、カッコつけやがって)」
そして、カッコつけたような去り方をした友人に苦笑するのだった。
カナエは職人気質な所がありますが、懇願されて設けられた締め切りを拒否するほどの頑固ではありません。大会までに間に合わせたいという思いを汲み取って、引き受けてくれました。
次回から黒森峰戦の裏側を書く予定ですが、更新日は未定です。時間を見つけ次第書けるよう意識します。