みほ達が学園のどこかにあると言う戦車を探している間、杏は戦車道連盟に電話をかけていた。
「お忙しいところ申し訳ありません。大洗女子学園の生徒会長をしている、角谷杏です」
『派遣整備士の西住りほだ。姪のみほちゃんが世話になってるね』
「まだスカウトしたばかりで接点は少ないですけどね。恐らく彼女から話は聞いていると思いますが、私たちは戦車道を始めました」
『そのようだね。しかも、履修者への特典もかなり豪華で、みほちゃんは何があったのか気にしてるみたいだったよ』
「はい。どうしても全国大会で優勝しなければならないので、その為には参加者が一人でも多く必要なんです」
その時、一瞬だけ間が空いた。
『……あんた、今の戦車道全国大会の現状を知ってて、そう言ってるのかい?』
「勿論です。“数と質の高い強豪校のみが参加している„……」
『そうだ。そんな状況で初心者がいきなり優勝を目指すってのは、ハッキリ言って無謀だよ』
「それでも、です。優勝しなければ、私たちには後がありません」
『……藁をも掴む思いで、か』
「……はい。私たちは戦車に関しては初心者です。放置されていた戦車の整備は、私たちの方の自動車部に頼もうとも思っていますが。やはり専門的な知識を持つ人の力も借りたいんです」
『なるほど。みほちゃんと居ることの多いあたしだからこそ頼めるって事か』
「どうか、整備のやり方だけでも教えてもらう事は出来ないでしょうか」
再び沈黙が訪れる。心臓がドクドクと強く鼓動しているのを杏は感じていた。
そして、りほの答えは……。
『戦車が見つかり次第、また連絡しな。どんな戦車か名前も教えてくれると助かる』
「っ! それでは……」
『すぐに修理とはいかない。戦車ごとのカタログや部品なんかも用意しなきゃならないから、少し時間はもらうよ』
「ありがとうございます……!」
『それじゃあね。みほちゃんのことも頼んだよ』
外からの協力者が得られるかもしれないと言う事に、杏は内心ガッツポーズをしていた。
その後、見つかった戦車を見ながら、杏はみほと話をしていた。
「西住ちゃん。実はさっき、君の叔母さんに電話をしたんだ」
「え?」
「私たち、戦車道はおろか、戦車の車種でさえずぶの素人なんだ。今回見つかった戦車の名前教えてくれないかな? りほさんにそれを伝えないといけないから」
「わ、分かりました! えっと、38(t)にⅣ号戦車に……」
みほが告げていく名前を、杏はメモしていく。
「それにしても、このⅢ号突撃砲だっけ? この子大丈夫かなぁ? 水の中にあったんでしょ?」
「うーん、りほお姉ちゃんにそこも見てもらわないと……」
「後は、M3リーはウサギ小屋にあったみたいだし、草とか隙間に入ってないか調べないとねぇ」
「あと、全部洗わないと……」
「戦車だけに?」
「……………………」
「……ごめん」
取り組み始めた戦車道だが、まだ乗ることが叶わない現状に、杏は内心ため息をついた。
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