戦車を発見した翌日。車庫に並ぶ戦車を見て、杏の隣にいるりほが呟く。
「……5両か。ギリギリ大会に出場出来る数だね」
「はい。有名なティーガーとかあれば良かったんですけど」
「あれは高いからねぇ。重量の関係で足周りが壊れやすいし、初心者向けとは言えないかな。にしても、戦車の国籍もバラバラとは、面白い事になりそうだね」
見つかった戦車の内の1両、水の中から見つかったと言うⅢ号突撃砲を見る。
「ふむ……。この子は最初に見ないとね。一度バラバラにして細かい部品もチェックしないと」
「では、私は自動車部を呼んできます」
「あぁ、頼むよ」
杏が去ったのを見て、再びりほは戦車たちと向き合う。そっとⅣ号戦車の装甲を撫でた。
「……お前たちを完璧に整備する。長い眠りから覚める時だよ」
りほは思い出す。かつて姉と自分を手こずらせた高校の1つ、それが大洗であったことを。だからこそ突然、大会出場校の名簿から大洗の文字が消えた時は、驚愕したものだ。なぜ大洗が戦車道を辞めたのか。それは今となっても分からない。
だが、僅かに残った戦車たちが、再び日の光を浴びようとしている。その目を覚まさせるのは自分だ。
「(今夜は徹夜になるかもね。気合い入れるとするか!)」
作業用手袋を締め直し、杏が連れてきた自動車部の元へと向かった。
その頃みほは、共に戦車道を取る事になった沙織と華、そして戦車を一緒に探していくうちに仲良くなった秋山優花里の4人で、夕食会を開くことになった。
「ちょっと散らかってるけど、どうぞ上がって?」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
「失礼します! ……お、おぉぉ!」
最後に上がったのは優花里だったが、リビングのテレビ台に飾られている物を見て、感激の声を上げた。
「こ、これは! 計画までは立てられたものの、様々な理由から実現することのなかった、“陸上戦艦„の異名を持つ戦車『ラーテ』のプラモじゃないですか!」
「な、何これ、こんな大きな戦車があるの……?」
「大砲が2つ付いて、強そうですね」
「何せ、シャルンホルスト級戦艦の主砲を流用してますからね。班長殿とはいつか、熱く語り合いたいものです!」
「りほお姉ちゃんもきっと喜ぶよ! お姉ちゃんは戦車だけじゃなくて、戦闘機とか軍艦とかロボットとか、色んなプラモ作ってるから」
優花里は何のプラモなのか説明し、沙織はその大きさに顔が引きつり、華は純粋に感想を述べる。
叔母と共にこの大洗学園艦に来て、このように友達と笑いあえる事に、みほは内心感激していた。
今日は戦車の洗浄をすることになったのだが、それが終わった後に叔母のりほが紹介された。
『派遣整備士の西住りほだ。そうだなぁ、あたしの事を呼ぶときは……』
みほと区別しやすいようにと、りほは班長と呼ばれるようになったのである。
「ねえねえ、みぽりん。ご飯みんなで作ろう?」
「うん!」
その後、皆で夕飯を作りながら談笑し、みほは改めて友達が出来たことを喜んだ。
なお、その事を知ったりほが実家にも伝え、しほが嬉し泣きしたのは余談である。
本編にはあまり関係の無い、りほの設定
・りほの好きな戦車は、計画のみで実現しなかった超巨大戦車ラーテ。他に多砲塔戦車も好き。
・りほの趣味の1つにアニメ鑑賞があるが、お気に入りの作品は『装甲騎兵ボト〇ズ』。