旧ボーダーの帰還者 作:しゃけとにじます
迅と合流した三雲は、共にイレギュラー門の原因を調べる為に移動していた。
「さぁこの先に、イレギュラー門の原因を知る人間がいる」
「迅さんの知ってる人ですか!?」
「そうとも言えるし、そうで無いとも言えるかな」
「……え?」
「どっちもメガネくんの知り合いだと思うし、片方は俺の知ってる人ってことさ」
「ぼくの……⁉︎ どういう意味ですか⁉︎」
(ここは……)
三雲と迅がついた場所。それは立入禁止警戒区域の中だった。それも一昨日、空閑遊真がトリオン兵を倒した場所だった。そしてそこには、自分が知る二人の人物がいた。空閑遊真と城戸友里、二人は三雲達がやって来たことに気付いたのか、こちらへと振り返った。三雲はこちらを見る友里の表情が、酷く驚いたものに変わっていた事に気付いた。そして、その口から溢れた言葉を耳にした。
「迅……さん?」
「……久しぶり、友里」
それに対し、迅は柔らかい笑みを浮かべてそう返した。
迅悠一。
五年前、俺がこの世界から消えた日まで、ボーダーと呼ばれる組織で共に活動していた二歳上の後輩。例え髪型や雰囲気など色々変わっていても、俺にはこの人がそうだと分かった。特長的なサングラスなど所々最上さんを彷彿とさせるのは、きっと師である最上さんに似たんだろう。
「本当に、迅さんだ……」
気付けば、俺の左眼からは涙が溢れていた。思えばこっちに帰ってきてから忙しくて、地球に帰ってきた事をまったく実感出来なかった。それを今、昔の仲間と会えた事でやっと実感出来た。
「くっ……くうっ……うぅぅぅ」
涙だけじゃなく声まで抑えられない。涙越しに見える迅さんの顔が、あまりに優しいものだから、泣きじゃくった顔を見られたくなくて、思わず両腕で隠し、空を見上げた。
そんな俺を、迅さんが抱きしめた。
「ただいま……迅さん」
「あぁ……お帰り、友里」
「……本当にお見苦しい所をお見せ致しました」
俺はこの場で土下座をした。
振り返ってみると、この歳で人前で泣くのは流石に恥ずかしかった。遊真や三雲も気を遣って泣き止むまで喋らなかったし、本当に申し訳なく思う。穴があったら入りたいというのはこう言う事だろう……
「そういえば友里、これを渡しておかないと」
そう言って迅さんは、俺の方に手を出した。その手には、なんと俺のトリガーと同じような、赤色のボーダーのトリガーがあった。俺のは既に赤色が変色したり、所々目に見える形での破損もしているが、この赤色のトリガーは完全に新品だ。
「これは……どうして?」
「友里のトリガーは五年前の物だし壊れてるだろ? これは友里が使ってた奴と同じ装備だし、最新のだから機能も良くなってる。友里がちゃんと戦っても壊れたりしないよ」
「それは嬉しいんですけど……トリガーをボーダーじゃ無い人間に渡すのってダメなんじゃ……」
「そこは安心していい。今のボーダーが出来る時に、行方不明中の隊員として登録してあるからな。それにもしバレても、友里だったら城戸さんも怒らないだろうしね」
「俺としては、迅さんが怒られないなら良いんですけど……」
「あはは、実力派エリートだから問題ないさ。そうだ、代わりと言っちゃなんだけど、友里が使っていたトリガーをくれないか? そのトリガー、ちょっと壊れすぎてて危険なんだ」
5年間、いやそれより前から使っているから多少愛着はあったが、迅さんがそう言うのならそうなんだろう。それに、確かに色々と壊れているのは使っている俺が分かっているので、渡すことに異論は無かった。
トリガーを回収して迅さんは、遊真の方を向いた。
「そう言えば自己紹介してなかったな。俺の名前は迅悠一。よろしく」
「友里の仲間の人だな。おれは空閑遊真。背は低いけど15歳だよ」
「空閑遊真。じゃあ改めて遊真にも礼を言わないと」
「友里をこっちに連れて来たことなら礼はいらないよ。こっちにも目的があったし。それに、今はそれよりもこいつを何とかしなきゃ」
そう言って遊真が持ち上げたのは、六本足に頭だけでは無く、上の背中にも目が付いているのが特徴の小型トリオン兵「ラッド」だった。それは腹部に穴が空いており、現在機能を停止しているが……
「でもそれは確か、隠密偵察用の筈じゃ……」
『本来はその通りだが、これは門発生装置を備えた改造型のようだ』
レプリカはそう言うと、俺達の前に現れた。
「初めましてジン。私はレプリカ、ユーマのお目付役だ」
「おお、これはどうもはじめまして」
『詳しくは私が説明しよう。まずこれは、さっき言った通り隠密偵察用の小型トリオン兵ラッドに門発生装置を備えた改造型だ。昨日と一昨日の現場を調べたところ、バムスターの腹部に格納されていたらしい。一体掘り起こして行動プログラムを解析してみた。
ラッドはバムスターから分離した後地中に隠れ、周囲に人がいなくなってから移動を始め散らばっていく。人間の多い場所付近で門の起動準備に入り、近くを通る人間からすこしずつトリオンを集めて門を開く。ボーダー隊員の近くで門が開くことが多いのは高いトリオン能力を持つ人間からは大量のトリオンを得られるからだろう』
「じゃあつまり、そのラッドを全部倒せば……」
「いや〜きついと思うぞ」
『ラッドは攻撃力を持たないいわゆる雑魚だが、その数は膨大だ。今探知できるだけでも数千体が街に潜伏している』
「数千……!」
「全部殺そうと思ったら何十日もかかりそうだな」
渋そうな顔をしながら言う遊真。しかし、対照的に迅さんの表情は真逆で、凄く頼りになる顔つきだった。
「いや、めちゃくちゃ助かった。こっからは、ボーダーの仕事だな」
主人公のトリガーの色は、アニメで小南のトリガーの色が赤なのでお揃いです。
めちゃくちゃこれからのことを考えてたら時間だけが進んでゆく・・・