今日もどこかでELダイバー   作:アルキメです。

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思い立ったら吉日なので初投稿ですわ!


19人目『トキ』

 19人目に発見されたELダイバー『トキ』は、一時に流行ったブレイクデカールや初心者狩りを行うガンプラに対する憂いや怒りの想いを基に生まれたとされている。

 そのためか、彼女の性質は『乱れを正す』という風紀委員や自警団に近しいものとなっている。

 前髪をきっちり切り揃えた長めの赤茶色の髪を白いリボンでまとめ、薄い黒色の軍服めいたスーツを着こなす姿はまさしく風紀委員然としていた。

 だが、ほぼほぼ脚を露出させた丈の短い赤色のスカートのせいで、そういった真面目そうな印象を台無しにしていた。

 160cmほどもある身長で、丈の短いスカートを揺らしながらGBNを見回る危うい後ろ姿こそ風紀の乱れではないかと思われるが、彼女はそういう部分にはまったく無自覚であったし、また無知であった。

 そんなトキは自身の生まれた場所であり、生活拠点でもあるガンダム00の世界観を再現した『ディメンション・A.D.(アンノドミニ)』の高層マンション――簡単に言えば沙慈·クロスロードが住んでいた建物――を出て、GBNセントラル・エリア・ロビーで赤茶の瞳を輝かせて日課の見回りをしていた。

 なのだが――

 

「退屈ですねぇ……」

 

 セントラルロビー外周部。そこに設けられたベンチに腰を下ろして、ぐうたれていた。

 ここ最近はあまりにも平和なため、至って問題がないのが現状だ。

 ブレイクデカールは彼女が生まれる2年前に根絶され、今では自分たちをリアルへサルベージするビルドデカールとして役立っているし、初心者狩りはそもそもシステムアップデートに伴う対策や改善でハイリスクで旨味もなくなり、あるいは狙いをつけた初心者に返り討ちにあうということが多く、トキの出番はないも同然であった。

 それが一番望ましいものだとはトキ自身、理解はしているも、自分の基が基だけにやはり少しばかりの寂寥を感じることもあった。

 ぐでぇっとベンチの上で仰向けになり、青い空に手をかざす。

 

「いいことなんですけどね……」

 

 指と指の隙間を通って刺し込む陽の光がトキの頬を照らす。

 平和であることは良いこと。それは紛れもない事実であり、誰もが望んでいることだ。

 それでも心のどこかでは多少の――自分が必要とされるハプニングが起きることも、望んでいた。

 それが不正や違反に対する憂いや怒りから生まれたトキの存在意義を証明するためだと思っていたからだ。

 だから時々、何事もないこのGBNの日常に、言いようのない不安を、不満を感じてしまうことがある。

 

「んなぁ~! ダメですダメダメ! 心の乱れは秩序の乱れ! ……あいたぁっ!?」

 

 上半身を起こし、矛盾した思考を弾き飛ばすように自分の頬をパシンと叩く。

 思ったよりも強く叩きすぎて、ジンジンと尾を引く結構な痛みに涙目になったが、気持ちを切り替えるのに十分だった。

 その頭上をAGE-1グランサの装甲を纏ったGバウンサーと、クロスボーン・ガンダムX1とリボーンズガンダムのミキシングビルド機が通り過ぎていった。

 

 ⁎

 

 ELバースセンターという施設が在る。

 第二次有志連合戦以降、GBN運営陣によって設立された保護施設で、発見・保護されたELダイバーはここでGBNに登録され、この電子の世界に存在を明確に刻まれるのだ。

 この他にもELダイバーの人格データを転用するためのビルドデカールや、リアルの世界でも活動可能なモビルドールの制作も担っている。

 トキもまた、19人目のELダイバーとしてここでお世話になった一人だ。

 

「こんにちは~」

「やぁ、こんにちはトキくん」

 

 ひょっこりを顔を出して挨拶をすれば、そこにはくたびれた顔のエルフチックな男性がいた。

 彼の名はコーイチ。

 ELバースセンターに勤務するスタッフの一人で、主にモビルドールの制作を担当している。

 かつてはブレイクデカールと主犯格としてGBNを騒がせ、紆余曲折の末、現在は彼と同じスタッフとして活動している『シバ・ツカサ(アンシュ)』とは旧知の仲らしく、トキのモビルドール製作の際にはかなり話し込んでいたのを今でも記憶している。

 白髪を乱雑にかき上げながら、微笑みを浮かべてトキを迎える姿は、どこかなよなよした雰囲気だ。

 

「いつ見ても頼りなさそうですね」

「いきなり手厳しいね!?」

「もっとしゃんとしたほうがいいですよ。本当は頼りになるんですから」

「褒められているんだよね? まぁ、考えておくよ。それで今日は何をしに来たんだい? 定期検査ならまだ先だけど……」

 

 トキは元気よく、しゅっと手を挙げる。

 

「補給です!」

「……なるほどね」

 

 その言葉に、コーイチは眼鏡をくいっと上げる。

 カツ、カツと靴音を立てて、近場の棚からボックス型アイテムを取り出す。

 側面には『菓子三昧』という文字がファンシーなフォントでプリントされていた。

 

「おぉ! これが例の!」

「GBNに出店している有名なお菓子屋さんのパーティーボックス、手に入れるの思ったよりも苦労したよ」

 

 蓋を開ければ、キャンディ、ラムネ、スナック、せんべいなど、様々な種類のお菓子で溢れていた。

 どれもコーイチの言葉通り、GBNにも店舗を進出させている有名な菓子店のお菓子であった。

 これは言わばそれらを詰め込んだパーティー用の商品で、有名どころの味を楽しめる上にカロリーを気にする必要のないGBNにおいては絶大な人気を誇っていた。

 コーイチはトキに頼まれてこの菓子三昧を買いに行っていたのである。

 

「わぁぁぁ……ありがとうございますコーイチさん!」

 

 菓子三昧を受け取り、子供のように瞳を輝かせながら、トキは感謝した。

 見た目こそ高校生くらいだが、彼女もまた他のELダイバー同様に生まれて間もないのだ。

 ある程度の知識は備わっているとはいえ、やはり所々に幼さが見え隠れしていた。

 人というのは、彼女たちのそういったところに母性や父性をくすぐられるのだろう。

 そこでふと、コーイチはトキに菓子三昧を求められた時のことを思い出す。

 あの後、ぶっきらぼうにツカサから人の混まない時間帯と最短到達ルートを書かれたメモを渡されたのだ。

 

「ふふ、あいつも弱いなぁ」

「何がです?」

「いや、何でもないよ。それより、あんまり食べすぎないように。僕たちのような普通のダイバーには直接影響はなくとも、君たちはまだそういった部分で不明なところ多いんだから」

「解ってますとも! ほわぁ~、温泉宿黒丸の温泉まんじゅうまで……あ、こっちは椎谷堂のごまおせんべい!? うわーうわー選り取り見取りですよコーイチさん!」

「まぁ、うん。気をつけてもらえればいいか」

 

 涎を垂らしながら見入っているトキに、半ば呆れながらコーイチは微笑する。

 保護された当初を回想すれば、彼女はずいぶん明るくなったと感慨深げに頷く。

 

(あの時はとにかくすごかったなぁ)

 

 あの時のトキは、自身の生まれの理由ゆえに、それがほとんど失われていたことへの混乱で、すぐにでも飛び出さんばかりに暴れていたことを思い出す。

 そんな彼女がサラを始めとしたELダイバーたちと、自分たち一般的なダイバーたちと交流を重ねるうちに、段々と今の調子に落ち着いていったのだ。

 我が子の成長を見守る父親のような眼差しで、コーイチは思わず涙ぐみそうになった。

 

「あ、そういえばコーイチさん」

「なんだい?」

「これ、菓子三昧を頂いたお礼です」

 

 差し出された包装を受け取れば、それはドライフルーツを盛り込んだマカロンでレアチーズを挟んだスイーツだった。

 

「ありがとう。ってこれ、君の嫌いなやつじゃないか」

「き、嫌いじゃないですよ!? ちょっと苦手なだけです!」

「……そういうことにしておくよ」

 

 貰ったマカロンを懐にしまいながら、コーイチは「ありがとう」と返した。

 

「これからまた見回りをするのかい?」

「もちろんです。秩序の乱れは世界の乱れ! 例えタイミング悪くとも、行動はしてこそなのです!」

「程々にね」

「はい! それと後見人の件、よろしくおねがいしますね!」

「わかってるよ。気をつけてね」

 

 むおー! とやる気を滾らせながら、ふたたび見回りに戻る彼女の後ろ姿をコーイチは軽く手を振って見送った。

 その後のGBNセントラル・エリア・ロビーでは、アホ面――にこやかな笑顔でお菓子を頬張りながら見回りをするトキがいた。

 因みに怪しいという理由でヤスが追い回されたが、お詫びにチョコエッグを貰ったことで後はマギーさんに任せて、早々と切り上げとなったそうだ。

 19人目のELダイバー『トキ』。彼女はつまり、ポンコツだった。




 作中、トキの頭上を飛んでいったグランサアーマーのGバウンサーとクロスボーン・ガンダムX1とリボーンズガンダムのミキシングビルド機は、まるぱな♪様の二次創作品『ガンダムビルドダイバーズ-戦場の白い運命-』に出てくるウルズくんの『Gグランド』とオリスくんの『クロスリボーンガンダム』ですわ。

【トキ】
 GBNの「乱れを正す」という想念から生まれた19人目のELダイバー。
 一人称は『私』 二人称『あなた』『きみ』『~さん』『呼び捨て』など。
 長めの赤茶の髪を白いリボンで纏め、薄い黒色の軍服めいたスーツを着た少女型。
 ほぼほぼ脚と言われるほど丈が短い赤いスカートで、正すよりも乱しているような気もするが本人は無自覚。
 性格は真面目だが、生まれて間もないこともあり幼さが強い。
 いわゆる「アホの子」と形容されるほど、どこか抜けている。
 日々GBNを見回りしながら自警団的活動をしているが、特に大きな乱れはなく、ちょっとした事では長々としたお説教を避けるためお菓子や好みのものを渡して手身近に澄ませてしまうパターンが多い。
 Gチューバーも存じており、ちのちゃんやチェリーちゃんなどの配信を観ていたりする。
 リアルの世界をもっと見てみたいという理由から『後見人』を探しているが、ELダイバーをペット感覚で見做している者も多く、未だに見つかっていない。
「こらー! そこのダイバー、止まりなさーい!」
「うぇ? 何ですこれ? ははーん、さては賄賂というやつですねぇ? でもダメですよ! こんなもので私の目をごまかそうなんて――そ、それはちのさんとチェリーさんのかわいい切り抜き集!? どこでそれを……ゴホン、えー、いや、今回はあくまで注意だけなので、今後は気をつけるように! あとこれは証拠物品として没収! 没収です! ふへへへへ……」

【ドレッドノートガンダム・ルーラー】
 トキのモビルドール姿。通称『ドレッドノートR』
 ドレッドノートガンダムをベースにしたガンプラで、女性的なシルエットをしている。
 その姿はほぼドレッドノートイータ。
 トキと同じ薄めの黒と赤のカラーリング。
 背部両側に長定規型多目的武装『ルーラーユニット』を搭載。
 これはビームバスター砲/ビームライフル/ビームソード/ビームランスの複数の機能が組み込まれている。
 また三角定規型の『トライアングルルーラー』をシールドとして装備。
 アルミューレ・リュミエールとして機能する他、発振状態を変えることでビームナックルとしても使用できる。
 手持ち武装には『コンパストアームズ』を装備。
 通常は閉じたコンパス型の鈍器で、先端にニードルスピアーが内蔵されている。
 分割、展開することで長大なスピアーと化す。
 片側にはビーム発振器があり、物理とビーム属性の二つを兼ね揃えている。
 状況に応じてコンパストアームズを展開することでトリッキーな戦闘を行える。
 腰部には『XM1プリスティスビームリーマー』を改造した笛型の『ホイッスルリーマー』を搭載している。笛を吹いたような音が特徴。
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