提督「手を出してはダメだダメだダメだ…(ブツブツ」   作:笑顔号

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初めにお詫びを。
今回の話を8割ほど書いた時に1話との矛盾に気づき、こちらの話を変えるのは根本からの変更になってしまうことから1話を少し変更しました。
ただ1話の時雨の登場した一行を無くしたのみのため作品全体には影響はありませんのでご安心下さい。
今後はこういうことが無いよう気を付けます…。


第5話

私には休暇という概念はほとんどない。唯一夏と冬に数日ずつ休みはあるが、基本的にはこの鎮守府内にいる必要がある。それもそうだ。今の世の中、いつ深海棲艦が攻めてくるかわからない中、私がしっかり週二で休みを取れるはずもない。それに今は「提督」という職につく人間は圧倒的に足りていない。「提督」には必ず適性が必要になり、その適性を持つ者自体が少ないのだから仕方がない…。

 

話を戻そう。そうだ。私にはほぼ休暇が無い。だから一日布団でゴロゴロとするいうことが出来ないのだ。だが、だからと言ってずっと仕事をし続ける訳ではない。そりゃ、そんなことをしてみろ。体がもたなくなる。(かつてそれで倒れたが、それはもう反省しいる…)

 

確かにするべき仕事は多いが慣れれば、秘書艦と分担して、一般市民と変わりない就業時間で1日の仕事を終えることができる(約8時間×週7の時点でおなじとは言えないが…)。まあ、時期によってはもっと仕事量はあるが…。

 

そんな提督としての仕事だが、いつも鎮守府内にいるということで利点もある。臨機応変が利くのだ。昼に数時間仕事をしなくても、夜にまとめて仕事をすることができる。そのような利点を使って私は昼間によく長めの休憩をとる。そしていつからか、その休憩時間が駆逐艦とのコミュニケーションを取る時間となっている。

 

そして今日もまた…

 

「提督さーん。早くこっちくるっぽい!」

 

夕立がそれはもう帰宅した時の飼い犬のようにしっぽをぶんぶん振りながら(幻覚)、提督をソファの中央に座らせた。

 

「ごめんね提督。夕立ったら早く提督と遊びたいばかりに…」

 

時雨が申し訳なさそうに答える。

 

さて、今日は時雨と夕立の日か…。白露型は他にも居るがこの二人はだいたいいつも一緒だ。休憩時間もおよそ二人で来る。しかし今日は部屋の中なのだな…。いつもは外で何かしらすることが多いんだが…。

 

「今日はね、提督さんとお話がしたいっぽい!」

 

夕立はそう言うと提督のすぐ右隣に座った。

 

「夕立…。ちょっと近くはないかい…。こっちにもソファはあるんだし。」

 

時雨は提督の正面にあるソファに腰かけた。

 

「えー。時雨も反対側に座れば問題ないっぽい!ね?提督さんもそのほうがいいよね?」

 

夕立は距離感が近い駆逐艦筆頭である。数ヶ月に改二となってから、少し大人びた容姿になったが中身はまだ子供のようだ…。しかし提督にとってはそれによって色々と苦労が増えることとなっている(何とはいわないが)。

 

夕立はこの距離感に無意識すぎるんだよな…。ただ時雨は逆に遠慮し過ぎるところがある…。しかし、潮のこともあるし…、いや今回はソファに座るだけだからな…。

 

「そうだな。私は全然構わないぞ。むしろこんな機会も中々ないことだ。こちらへきなさい。」

 

提督はこちらへ手招く。

 

「な、なら…遠慮なくそっちに座らせて貰おうかな…」

 

そう言うと時雨は立ち上がりこちらへ来た。

 

少し言い方が強引過ぎただろうか?いや、やはり遠慮がちな子はこのくらい言ってあげる方がいい。

 

トコトコ…、ポスッ

 

そして提督の左隣にちょこんと腰かけた。

 

それからはしばらく色々な話をした。昨日のご飯の話や夕立がMVPを取った時の話、時雨が寝惚けて夕立の布団で一緒に寝た話まで何の脈絡もないが、楽しく話し込んだ。そして1時間が経とうとした頃…。

 

「あっ、そういえば提督さん。時雨のこと抱きしめてあげてほしいっぽい!」

 

唐突に夕立はそう言った。

 

「ちょっと夕立!?」

 

そしてその後時雨は観念したかのように話始めた。

 

時雨は少し前初めて恋愛漫画を読んだそうだ。その中のヒロインと男性が抱き合うシーンを見ていたところ、「僕もいつか…」らしきことを呟いたらしい。そこにたまたま夕立が来て、時雨は異性に抱きしめて欲しい→私はよく提督さんに抱き付いている→なら提督さんにお願いすれば?、となったらしい。流石は夕立だ。なんというか単純な思考をしている…。

 

「…ということなんだ。だから提督は気にしなくていいんだ。」

 

「えーっ。もったいないっぽい!提督さんにギュッとされるの気持ちいいっぽい!」

 

時雨は断るが、夕立はどうにかして抱き付いて欲しいらしい…。しかし時雨は頑なに動かず…それを見かねた夕立は提督に耳打ちをした。

 

「提督さん。時雨はあぁいってるけど、本当は抱きしめてほしいっぽい。最近時雨は他の子が提督にくっついてるのをいつも気にしてるわ。あれは間違いなく羨ましがってるっぽい。(ボソッ」

 

「いや…しかしだな。あくまで時雨は断っているわけだから私から抱きつくのは倫理的に良くないのでは…?」

 

彼女達からくるのはまだ良い。だが、私からというのは…そうでなくとセクハラなどに敏感な世の中だ…。(もうすでにもっとダメなことをしている気が…)

 

躊躇する提督を見て、夕立はしびれを切らした。

 

「あーもう。時雨も提督もじれったいっぽい!」

 

ドン

 

そう言うと夕立は提督を時雨に向かって突き飛ばした。

 

「おわっ!」

 

「えっ、きゃっ!」

 

ドサッ

 

さて、どうなったか説明しよう。夕立に押された提督は時雨をソファに押し倒す形になった。時雨はソファに仰向けになり、提督はそれに覆い被さっている。とっさに出した提督の左手は時雨の顔の横に手をつき、いわゆる壁ドンのような形に。そして、二人の顔の距離はそれこそ唇同士が触れそうなほど近くにあった。

 

…っ、あっ時雨は綺麗な睫毛をしているなー(現実逃避)

 

提督はこの状況を理解すると考えることを放棄し、その場に固まった。

 

「…っ。///」

 

一方の時雨は顔を真っ赤にさせ、硬直していた。そして数秒、いや十数秒そのままだったろうか。

 

「あっあの…提督…。そろそろ僕も恥ずかしいかな?」

 

流石に我慢できなかったのか、時雨はそう切り出した。

 

「……!あぁ、すまない。今離れる。」

 

提督はさっと時雨から離れる。

 

「あっ…。」

 

時雨は、その時ふと少し寂しさを感じた。

 

…なんだろう。この気持ちは?提督の顔があんなに近くにあって恥ずかしさもあったけどこの胸のドキドキと安心感。それから離れてしまった時の寂しさ…。そういえば、夕立はよく提督に抱きしめて欲しいとお願いしているけど、「なんだかポカポカして安心感もある」って言ってたっけ。僕も…しっかりと抱きしめられたら………ゴクッ。

 

時雨はこれまで提督とは良い距離感(物理)で接してきた。他の駆逐艦達は距離感(物理)が近い子が多い中でおとなしい部類に入るだろう。しかし、決して近づくことに嫌悪感があるとかではなかった。ただ恥ずかしさと本人の遠慮しがちな性格から自分から提督に近づくことができなかったのだ。しかし今日、心の奥で感じたこの気持ちによって何か目覚めてしまったようだ…。

 

「あっ…あの提督?もし、提督が嫌じゃなければだけど…、一度抱きしめて…ほしいかな。」

 

時雨は提督との接近によって感じた高揚感に安心感を、もし抱きしめられることでのゼロ距離で提督を感じれた時はどれほどこの気持ちを感じられるだろうか、とその欲望が恥ずかしさを上回った。

 

「ついに時雨も素直になったっぽい!?」

 

「えっと。時雨?」

 

夕立は素直になった時雨を驚きとともに喜んだ。一方の提督は急に積極的になった時雨に戸惑いをみせた。

 

どうした時雨。押し倒した時にどこか頭でも打ってしまったか。もしそうなら大変だ。

 

提督はどこか頭を打ったのでは、と少し焦った。そんな提督に時雨は…

 

「提督。えいっ!」

 

ボフッ、ギュゥゥゥ。

 

時雨は提督の胸にめがけて抱きついた。

 

「!!」

 

そんな時雨に提督はどうしようか戸惑った。

 

「…フゥ。ねぇ提督も抱きしめてほしいな…。」

 

「あぁ…。」

 

時雨は提督の胸に埋めた顔を提督に向けるとそうお願いした。提督はそんな時雨にもう今は言うことを聞くしかないと悟った。

 

ギュ。

 

提督は時雨を抱きしめた。

 

「!!」

 

あぁ…!これは…他の駆逐艦達がおねだりするのも納得だ…。この高揚感!そして安心感!あぁ提督が僕の全てを包み込んで…。でももっと密着したい…。もっと…。

 

「提督…。もっと強く抱きしめてほしいな…。」

 

時雨の今の脳内にはもう遠慮という言葉はなかった。そして提督が強く抱きしめると。

 

「…!!」

 

これは…たまらない!ただなんだろう…。お腹の奥の方があつくなっているみたいだ…。

 

それからしばらく時雨は抱きしめられ続けた。夕立も初めは時雨が素直になったことを喜びニコニコと二人を見守っていたが、時雨が離れようとせず時間が経つにつれそわそわし始めた。そして…

 

「時雨長いっぽい!夕立だってそんなに抱きしめられたことない!そろそろ変わるっぽい!」

 

「やだ。」

 

夕立は一向に離れようとしない時雨に非難した。しかし時雨はそんな言葉を意に介すこともせずに…

 

「提督。頭も撫でてほしいな…。」

 

「あぁ。ただそろそろ終わらないか…?」

 

「やだ。」

 

ここまで約15分。一向に終わらないことに提督もそう提案するが、時雨はまだまだおわりそうにない。提督はとりあえず頭を撫でる。

 

ナデナデ

 

「!!!」

 

この感覚は…。もっと提督を…提督成分を…。

 

時雨は新しい扉を開けようとしていた。

 

「しーぐーれー。」

 

夕立は時雨を引き剥がそうとするが全く動じようとしない時雨。さらに時雨は…

 

「提督。私もたまには褒めてほしいな…。」

 

さて、二人はソファに座ったまま抱き合っている。初めは時雨は提督の胸に顔を埋めていたが、今は提督の顔の横に顔がある。つまり提督が話すと時雨の耳元で話すこととなる。

 

一方提督は機械のように時雨の言うことを聞くことに徹していた。時雨サイズであろうと当たるところが15分も当たり続けているのだ(失礼)。さらに女性特有のいい匂いも相まって…、つまり提督は理性と戦っていた。そしてできるだけ意識しないように無になるよう努めた。

 

そして提督は…

 

「時雨…。いつもありがとう。時雨はこの鎮守府で本当によく働いてくれている。私も何度も助けられてきた。これからも私の元でずっといて欲しい。」

 

「ゾクゾクゾク!!」ビクッ、ビクン!

 

時雨は提督の言葉に未知の感覚に陥った。そして、ふっと力が抜ける。

 

提督は急に抱きしめる力を緩めた時雨にやっと満足したのか、と思い同じく力を緩めた。しかし…

 

フラ~、ドサッ

 

時雨は身体に力が入らず、ソファに倒れこんだ。

 

「時雨!?」

 

「っぽい!?」

 

唐突な出来事に夕立と提督は驚いた。

 

「大丈夫か時雨!」

 

「ハァ…ハァ…ハァ…。大丈夫だよ…。ちょっと立ちくらみがしただけだから。」

 

時雨は肌を紅潮させながら答えた。提督は時雨を医務室に連れていこうと提案したが時雨は「大丈夫だから…」といいながら、その後休憩時間も終わり二人と提督は別れた。

 


 

それから時雨は、提督と二人きりもしくは夕立と三人になる時に限り提督に抱きしめることをお願いするようになる。夕立以外に見られるのはまだ恥ずかしさがあるようだ…。

 

そしてもうひとつ。この出来事以来、夕立は時折夜中になると一つ上のベッドで寝る時雨から艶かしい声が聞こえることがあるとかないとか…。

 

 

 




私は時雨が一番好きです(唐突)。
もうね…たまらんのですよ…。時雨について色々と語りたいのですが話すとおわりそうに無いので止めておきます笑

それから誤字の報告ありがとうございます。またポジティブな感想やお気に入り100件越え、UA1万越えなどたいへん作者の活力になっております。本当にありがとうございます。

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