機動戦士ガンダムSEED もう一人の英雄 作:どこかの超電磁砲
ラクス達が人質に取られていると思っているザフト側は必ず襲撃してくるとショウマは予測していた。ショウマはザフト側に彼女達を返還しようと考え、行動を開始する……身柄を拘束されているレイラもザフト側に返す為に、ショウマは先に彼女を助けることにした。
「…………」
「――――眠れないのか?レイラさん」
「ショウマさん……!どうして!」
「しっ!……今は黙って付いてきて」
檻の鍵を解除してレイラを解放したショウマはラクス達の部屋を目指す。
「ショウマさん、一体何を……」
「あんたやラクスさん達をザフト側に返すんだよ」
「……!」
「どっちみち、このままだとアークエンジェルはピンチのままだ。いつ落とされても可笑しくないからね……それに可愛い貴女を放ってはおけないからな」
「ショウマさん……貴方は変わってますよ……」
警戒しながらラクス達の部屋を目指すショウマ。すると前方からキラがラクス・シェリル・マリアを連れて走る姿が見える。
「ショウマ!……それにレイラさんも!」
「キラ……まさか」
「…………うん」
どうやらキラも同じ考えらしく、ショウマとキラは結託して彼女達を連れて格納庫を目指してゆく。怪しまれないようにゆっくりと進んでゆく。
「貴方達、こんなことして何になるというの?」
「え……」
「マリアさん……」
格納庫を目指す道中でマリアがそう口にした。ザフト側に自分達を返してくれるのは嬉しいが、しかしキラやショウマにメリットがないとマリアはそう思った。マリアの問いに返答を迷うキラだがショウマは答える。
「何もないですよ……ただ、あんた達は歌姫である前に民間人だ。それを人質にするってのは嫌だからな……キラもそうだろ?」
「うん……」
「そういう事さ」
「…………なるほど。でも、一つ忠告しておくわ。いづれ貴方達の優しさは自らを苦しめるだけよ……それだけは覚えておいて」
マリアの言葉……その言葉に重みがあるのを感じたキラとショウマはひとまず頷きながらも、今は彼女達を返還する為に走る。
「ショウマ、さすがにこの人数だと誤魔化し切れないよ!」
「――――心配すんな。こんな時の為にある助っ人を呼んである」
「え……それって……」
「連合やザフトにも属さない、スペースパイレーツにな」
アークエンジェルの後方にヴェサリウスなどの艦が動きを止めている中で、一隻の戦艦が近づいていた。黒くペイントされた戦艦"バロノーク"はアークエンジェルとヴェサリウスの間に割って入って来る。
「これは……艦長!アークエンジェル後方に"ビシディアン"です!」
「なんですって!……何故宇宙海賊がこんな所に!」
アークエンジェルのブリッジが慌ただしくなっている頃、ヴェサリウスのブリッジでも同様だった。
「クルーゼ隊長!奴等は!」
「ちぃ……お邪魔虫とはまさに奴等の事だ……構わん!MSを出撃させろ!奴等は撃墜しても構わん!」
想定外の事態にラウは舌打ちする。足付き……アークエンジェルを追いかけている中でのビシディアンの出現。ヴェサリウスからアスランのイージスとジン数機が発進する。バロノークからも黒いジン4機が出撃する――――そして、ビシディアンの首領であるアセムもまた、ダークハウンドで出撃する。
《気を付けろアスラン!あの未確認MSは恐らくビシディアンの首領が乗っている。本気で掛かれ!さもなくば、殺られるぞ!》
「はっ!……宇宙海賊……そんな奴等に!」
「GAT-X303 イージスか……!」
ラウの警告を聞き、アスランはダークハウンドに迫る。一方でアークエンジェルでも出撃準備に入る。その際にラクス達も連れてショウマとキラはそれぞれ機体に乗り込む。
「オイ!!何してる!!」
「すまないなマードックさん……今は黙って見ててくれ!」
ショウマはレイラとマリアの二人と共にブリッツに乗り込む。キラはラクスとシェリルと共にストライクへと乗り込む。マードックからキラ達が歌姫達を連れて出撃しようとしていることをナタルは知り、二人に通信を繋げた。
『キラ・ヤマト!ショウマ・イズル!何をするつもりだ!』
「わりぃな。けど……」
「僕達はこんなこと望んじゃいないんだ……」
カタパルトに入り、翔真のブリッツが先に発進する。そしてキラのストライクもエールストライカーを装備して発進する。今アークエンジェルの後方ではビシディアンのMSとザフトのMSが戦闘を行っていた。
「キラ……イージスがいる……あとは頼めるか」
《うん。さあ早く》
ストライクが近づく。ショウマはコクピットを開けるとレイラとマリアをストライクの方に行ってくれと誘導する。
「ショウマさん……ありがとう……でも貴方は優し過ぎます……」
「確かにね……でも、貴方のような人がこの戦争を終わらせることが出来るのかもしれないわね」
「え……」
「……気にしないで。ただの戯れ言よ……」
マリアとレイラはストライクの掌に乗る。そしてストライクはイージスの元に向かう。そしてイージスと戦っていたダークハウンドがブリッツに迫る。
《よっ……全く……無茶を言ってくれたな》
「仕方ないさ。こんな時じゃないと、色々面倒なんでな」
ショウマとアセムは互いに戦う素振りを見せる――――――一方キラはアスランの操るイージスの元に来ていた。
「キラ……」
「キラ様……」
「大丈夫……もし……もしアスランなら」
ストライクはイージスの前で止まる。イージスはシールドを構えてビームライフルを構えた。キラはイージスのパイロットがアスランだと確信すると通信を繋げた。
「アスラン……ザラ……だな」
《―――――ああ……っ!人が乗っている!》
「今……コクピットとストライクの手にはラクス・クライン嬢、シェリルさん、マリアさんとレイラさんがいる」
《なんだと!……どういう真似だキラ!》
「待ってくれアスラン……彼女達を……彼女達を連れて行ってくれ!」
《な、に……》
キラの駆るストライクはビームライフルを手放し、攻撃の意志がない事を見せる。アスランはそんなキラの行動に自らも武装を解除してコクピットを開いた。
「こんにちは、アスラン……うふふ」
「ラクス……」
「さあ行って……シェリルさんや二人も」
「はい……ありがとうございますね、キラ様」
「キラ……短い間だったけど楽しかったわ。また会える?」
「シェリル……さん……」
「もしまた会えたら、私のコンサートに招待してあげるわ!……私の歌を一杯聞かせて上げるんだから!」
「…………はい」
「だからそれまでは生きて……それまで、これを持っていて」
「シェリルさん……」
シェリルは自分の名前が刻まれたドッグタグをキラに渡した。それを渡した後シェリルもイージスの元へ。これで彼女達を返還したと、思っているとアスランから再び通信が入る。
「キラ!お前も来い!」
「っ!……アスラン……」
「お前が地球軍にいる理由が何処にある!俺達が戦う理由なんて、ないはずだ!」
「…………そうだけど…………でもあの艦には僕の友達がいるんだ……守る為に僕はっ!」
本当はアスランと戦いたくない……しかし彼が敵であることに変わりはない。アークエンジェルには工業ガレッジで出来た友達や同じモビルスーツのパイロットであるショウマもいる……自分だけ、アスランと戦わずに逃げることはしない……キラは精一杯にそう言った。
「……そうか……なら……次戦場で会った時は俺がお前を討つ!!」
「「「「…………!」」」」
「…………僕もだ……アスラン……」
アスランの決意……ラクス達は複雑な表情を浮かべる。キラはそのままイージスから離れてゆく。アセムはタイミングを見計らい、戦闘区域から離脱する。
《坊主共!ひとまず戦闘は終わった。宇宙海賊のおかげでこちらはなんとか無傷だ……だが、帰ったらありがたい説教だからな?》
「は、はい……まあ当然か」
「ははは……ショウマ、僕もいるから……ね?」
ストライク、ブリッツ、メビウス・ゼロはアークエンジェルへ帰還する。そしてビシディアンとの戦闘で戦力を失ったザフト軍もひとまずは退却してゆく。