ポケモン剣盾の世界に転生したと思ったら原作から5年後のガラル地方だった件 作:ヤコト
1 俺の知らないガラル
浅いまどろみの中、どこかからか声が聞こえた。
「ポケットモンスターの世界へようこそ!!」
おぼつかない手つきでその声の出所、枕の横に置いてあったスマートフォンを手にする。
「我々はポケットモンスター、ちぢめてポケモンと共に力を合わせ、暮らしている!」
寝ぼけた目を擦り、それでも少しずつ意識がはっきりすると、強い違和感に襲われた。
そう、ついさっきまで自分の身に起きていたことは、"ありふれた日常"などではなかったことを。
アルバイトの帰り道、赤信号の中飛び出した子供をとっさに庇い、車に轢かれた。
我ながら鈍臭かったと思う。車に轢かれた瞬間、確かに自分の死を確信した。
目の前が真っ暗になったかと思うとなぜか体に痛みはなく、謎の空間で知らないおじいさんと二人きり。
そのおじいさんから「お前はあそこで死ぬ予定じゃなかった」「わしの不手際」「代わりにお前さんが一番好きなゲームの世界に転生させてやるぞい」
などと一方的につげられ、再び視界が暗転。
正直、徹頭徹尾理解不能だが、もし仮にあのおじいさんの言うことが本当ならばここは…。
「そしてポケモンを育て、戦わせ、競い合う人たちをポケモントレーナーと言うだろう!」
スマホから歓声が聞こえる。先程からポケモンのオープニングでよく聞くような文言が流れている。
まさか、本当にポケモンの世界に?確かに自分が一番好きなゲームはポケモンではあるのだが…。
「では、ガラル地方最強のトレーナー、チャンピオンを紹介しよう!!」
…ガラル!?剣盾のか!?じゃあここは剣盾の世界!?ってことは今喋ってるのって、まさか!?
まどろみから抜け出し覚醒した自分はとにかく"情報"を求めた。スマホから聞こえたセリフには聞き覚えがあったのだ。
ガラル地方のリーグ委員長、ローズがチャンピオン、ダンデを紹介するシーン。ポケモン剣盾のオープニングだ。
枕に突っ伏していた頭を上げ、上体を起こし、スマホの画面にかぶり付く。自分の推理が当たっているなら、スタジアムで太った中年男性が口上を述べているはずだ。
しかし。
スタジアムで口上を述べていたのは。
ローズではなく。
チャンピオンであるはずの、ダンデだった。
そして。
「チャンピオンユウリ!カモン!!」
ダンデの熱い前説に応えるかのように、"ユウリ"がスタジアムへ堂々と現れた。
「ユウリ!今日こそあんたを倒したる!エキシビジョンだけど全力で行くよ!」
突如画面に映った黒髪ロングでセクシーな格好をしたお姉さん。ダンデやユウリと違い見覚えの無いキャラだ。
「どんな試合でも負けないよ!マリィ!」
…え?今、マリィって言った?…は?え?
「インテレオン キョダイマックス!!」
ユウリの側に控えていたインテレオンに赤い光が集まり、そして巨大化、キョダイマックスしていく。
「シュアァァァァァァァァッッ!!」
黒髪ロングのお姉さん…恐らくマリィもオーロンゲをキョダイマックスさせ、いよいよ戦いの火蓋が切られた。
スタジアムのボルテージがみるみる上がっていく中、その試合のストリームを部屋で一人眺めていた自分は、空いた口が塞がらなかった。
「…俺の知ってるガラルじゃない…」
初投稿です。
不定期でのんびり更新していくのでよろしくお願いします。