赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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うーん、今回も場面のつなげ方に失敗した。



戦闘校舎のフェニックス
第十話


「うおぉぉぉぉぉぉっ」

 

兵藤がランニングのラストスパートをかける。

 

「朝から叫ぶな。近所迷惑だ」

「ほら、イッセー。叫びの割にスピードが落ちてきているわ。しっかりしなさい。あと一キロくらいよ」

 

後ろからグレモリーが自転車でついてきている。

俺と兵藤は早朝の住宅街をジャージ姿でランニング中だ。

肉体を鍛えるにはどうしたらいいかと兵藤から聞かれたので、とりあえず今日は俺のトレーニングに付き合わせている。

 

「ハーレム王に、俺は・・げほ・・なる」

「志は結構だが、今のお前じゃ無理だ。人間の俺より確実に弱い」

「そうよ、悪魔の世界は力が全て。今のあなたは弱いわ。でもだからと言って焦っても駄目。何事も基礎が大事、一歩一歩でも積み重なれば大きな力になる」

「はいっ!!」

 

なんだかんだ言いながらも兵藤は十キロ走り切った。

俺も息は上がっているが、ペースは走り始めから変わらなかったな。

 

「お、まえ、ホントに人間、だよな?」

「マラソン選手のがもっと早い」

「イッセー、あなたの神器は地力がものをいうの。発動させた時を楽しみにして、今は頑張りなさい」

 

兵藤の神器・赤龍帝の籠手は十秒ごとに能力を倍加する代物だそうだ。

何そのチート。

・・・例えばだ。戦闘力一のやつがいるとする。

そいつがこれを発動させると一分後には六十四。

これだけ見ても驚異的だが・・・

もしも修行して五になるとする。

一分経てば三百二十。

修行の効率も規格外だ。

 

「この後はいつもどうしているのかしら?」

「この後は普段なら重り付きの木刀を素振りするんだが・・・今日は兵藤もいるしな。よし、兵藤かかってこい。組手するぞ」

「はあ?」

「面白そうね、貴方の実力を直で見たいわ。アーシアもそろそろ来るころだし、怪我しても大丈夫よ」

 

完全に怪我する事前提だな。

おっ、噂をすれば影。

向こうからアーシアが駆けてくる。

 

「お待たせしましたぁ。・・あう!!」

 

べしゃりと聞こえてきそうなほどの勢いでアーシアが転んだ。

よく転ぶ子だ。バランス感覚のトレーニングをやらせた方がいいかもな。

 

「だ、大丈夫か?アーシア」

 

いち早く駆け寄って兵藤が助け起こす。

アーシア大好きだよな、あいつ。

一度失っているから余計なのかもしれない。

アーシアも頬を赤らめて兵藤に服を払ってもらっているし・・・・。

見るからにお似合いなんだよなあ。

 

「今日はお二人がトレーニングするって聞いて・・・。私も何か出来ないかなぁって」

「くうぅ!この俺が美少女からそんな事言ってもらえるなんて!!その気持ちだけで俺の胸は一杯だぁ!!」

「イッセー、休憩は終わりよ。アーシアもこっちに来なさい。青江君、お願いできるかしら?」

「あ、ああ」

 

妙にグレモリーの機嫌が悪い。

アーシアが来てから態度が刺々しくなった。

さっきとは明らかに態度が違う。

まさか兵藤とアーシアに嫉妬してるのか?

・・・・まさかな・・。

 

 

 

 

「ギ、ギブアップ」

 

俺にキャメルクラッチをくらっていた兵藤がタップする。

 

「七戦七敗・・・イッセーも悪魔化して身体能力が上がっている筈なのにね」

「確かに腕力と打たれ強さはなかなかのモンだ。だが、体の使い方がダメダメだ。下手な筋トレよりもそちらの方に力を入れた方がいいかもしれない」

「なるほどね・・・参考になるわ」

「・・・・・・・・」

「はわわっ、イッセーさんが泡を吹いてますぅぅ!!?」

「おっと、わりい。・・それでな、俺が体の動かし方を覚えるためにこんなメニューを・・・」

「へえ、面白そうね。詳しく聞かせて頂戴」

 

これからしばらく、二人で絶対イッセー改造計画について語り合った。

 

「おおまかにはこんなもんだろ」

「ええ、これから私の方でも悪魔の訓練と並行して取り入れてみるわ」

「悪魔の訓練?」

「魔力操作とかいろいろあるのよ」

 

俺たちが話し終えて振り返ると

 

「イッセーさん気をしっかり!こんなところでお別れなんて絶対いやですぅ・・・」

「・・・・・・」

 

半べそかいて『聖母の微笑み』をかけるアーシアと、膝枕されて気を失っている兵藤が。

 

「なにやってんだ?」

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす」

 

ある日、俺は突然グレモリーに部室に呼び出された。

部室に入ると全員が揃っている。

グレモリーはいつもの様にソファーに座り紅茶を飲んでいる。

木場は読書、塔城は羊羹、姫島は花瓶の水を取り替えていた。

 

「それで?結局どうするのかしら?」

「というと?」

「うちの部活に入るのか、ということよ」

「眷属にはならんがいいのか?」

 

結局俺は彼女の眷属にはならなかった。

そんな俺が悪魔の活動に加わる事なんて・・・

 

「悪魔としての仕事だけがすべてじゃないわ。それに神器持ちを野放しにするのも、土地の管理者として避けたいの」

「・・・分かった。入部させてもらおう」

「そう、それじゃあ入部届を。別にここに縛られなくてもいいわ。掛け持ちもオッケーよ」

 

そう言って渡されたのは羊皮紙と羽ペン。

これはどこに提出されるんだ?

 

「危ない契約じゃねえよな」

「様式美というものよ」

 

初めて持ったが羽ペンというのは使い辛い。

ボールペンでいいだろこんなもん。

 

「そういえば」

 

入部届を書きながらふと

 

「なにかしら?」

「お前らバルパー・ガリレイって知ってるか?教会関係者だと思うんだが」

「いえ、知らないわ。みんなはどう?」

「・・・知りません」

「僕も知らないよ」

「存じ上げませんわ」

「そうか」

 

そんなに有名な奴ではないのか?

だとしたらもう一生見つからんかもな。

 

「それじゃもう一人。『閃光』のバラキエルって奴は?」

 

パリンッ

 

姫島の持っていた花瓶が砕ける。

そして恐ろしいまでの殺気をこちらに向けてきた。

 

「その方がどうしたんですの?」

 

顔は笑みの形を作ってはいるが声は固い。

なんだ?悪魔にとってはやばい奴なのか?

 

「・・・どこでその名前を知ったのかしら?」

「いや、たまたま」

「・・・それは堕天使の幹部の名前よ」

 

なに?人間では無かったのか。

そう言えばミハイルも雑種とか言ってたな。

堕天使の幹部か・・・夕麻に聞いてみるか。

 

「・・・・・・」

 

部室の空気は重い。

どうやらおもっきり地雷を踏んだらしい。

パンパンッ

 

「この話はここまで。青江君、書けたかしら」

「ほれ」

「・・・・・・・確かに」

 

そう言って彼女は羊皮紙を丸めて引き出しにしまう。

 

「なんか、悪かったな」

「いえ、大丈夫ですわ。入部、歓迎いたします」

 

そう言っていつもの表情に戻り微笑む。

姫島と因縁があるのだろう。彼女の前ではこの話はしないようにしよう。

命が危ない。

 

 

 

そんなこんなで俺はオカルト部に入部した。

 

それからの一か月はなんかアホみたいに濃厚だった。

アーシアの転校、そして兵藤家へのホームステイ。

俺、元浜と松田、そして『ミルたん』なる魔法少女の出会いと別れ。

抑えきれない木場へのときめき。

おっぱい紙芝居屋との激闘。

いろいろあった。語りつくすには一つ五千字じゃ足りないだろう。

 

「でなぁ、兵藤のやつアーシアと朝登校してきてさあ。あいつ絶対調子に乗ってるって」

 

コクコク

 

「わかるよ?学園の嫌われ者が急に美少女と同棲なんて浮かれちまうよ」

 

コクコク

 

「夜も一緒に悪魔の仕事してるらしいし、アーシアも好き好きオーラ全開だし」

 

コクコク

 

「それをさ、アーシアが幸せそうな顔で報告してくんのよ。美少女の他の男との惚気なんて―――」

「・・・アーシア先輩の事、気になってたんですか?」

 

今まで黙々と食べていた塔城が突然反応する。

 

「え?聞いてたの?」

「ずっと私に話しかけてたじゃないですか」

「適当に相槌うってるもんかと」

 

だってこっちも見ずに大福食ってんだぜ?

話しかけても頷くだけだったし。

お菓子の差し入れした後の習慣になってたから、最近は話しかけてる感覚じゃなかった。

思い返すとすごく失礼だ。慣れってのは怖い。

 

「悪い。聞き流してるかと思ってずっと一人で喋ってたわ。つまらんかったろ?」

「・・・・いえ、私は元々おしゃべりな方ではないですし」

 

俺は部室のソファーに寝転がり、塔城は隣に座ってお菓子を食べる。

ここんとこの昼休みはほぼ毎日のようにこうしてだらけていた。

 

「それに・・・」

「ん?」

「こののんびりした空気は嫌いじゃないです」

「・・・・」

 

さわっ

気が付くと俺は塔城の髪を撫でていた。

絹の様になめらかで気持ちいい・・・じゃない。

 

「スマン、つい・・・」

 

やばい、なんとなく虎徹を相手する感覚で撫でちまった。

慌てて手をひっこめ―――

がしっ

塔城が手を掴んで引き止める。

 

「お?」

「・・・・嫌ではないです」

「そうか」

 

めっちゃ嬉しい。

顔には出さないが俺の脳内は有頂天だ。

だが塔城はまだ手を放そうとしない。

 

「塔城?」

「嫌ではないです」

「あ、ああ」

「・・・・・・・・・」

 

これは撫でろって事か?

恐る恐る耳の横に手を差し入れ、軽く梳くようになでる。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

塔城の顔を逆さまに見ながら撫でてゆく。

彼女は目を閉じてじっと受け入れている。

次第にエスカレートし、俺は軽く頭皮を掻くように触りはじめた。

カリカリ

相手も大福を手放してされるがまま。

 

「「・・・・・・・」」

 

俺は昼休みが終わるまで撫で続けた。

これが・・・・・・癒しというものかッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、今日はデートしないか?」

「はあ?」

 

二人で洗濯物を畳みながら夕麻に提案する。

 

「何言ってるのよ、そんな事できるはずないじゃない。貴方、私を殺す気?」

「いやな?俺らヤル事ヤったじゃん?」

「んなっ!?あ、あれはあんたが無理やり!!」

「完全に誘ってたろ。ネットでわざわざ濃厚な濡れ場のある映画借りてきて、深夜に二人で見た後香水付けて寝るとか」

「それは・・・その!!」

「最初から寝たふりだったしな」

 

ホントに寝てたら欠伸とかはしないんだよ。

 

「・・・・・・・」

「それに俺の神器もあって最後の方はお前から―――――」

「あー、あー、あー。聞こえない聞こえない。」

 

耳をふさいで背中を向ける。

 

「お前ってボンテージとか着てた割には―――」

「もういいでしょ!!そうです、誘いましたぁ!!すごく期待してました!もういいでしょ!?」

「まあ聞け」

 

立ち上がろうとした彼女の手を掴んで引き止める。

 

「そんな俺たちがだ、デートは一回しかこなしてない。いろいろすっ飛ばし過ぎだろう?」

「それは・・・て、提案は魅力的よ?でも私は―――」

「じゃーん。この黒縁メガネと帽子を被れば大丈夫だって。一人じゃあ駄目かもだが、一緒なら俺がフォローできる」

 

暗い聖堂内で初対面のヤツとの戦いだったんだ、兵藤も顔の記憶はおぼろげだろうし。

話を聞く限り、木場も塔城も直接対峙していない。

 

「な?俺とデートしてくれよ」

 

 

 

 

「鍵かけたか?」

「ええ」

 

二人で部屋を後にする。

夕麻は久しぶりの外出で緊張しているのだろう。

声は硬い。

 

「前回のデートをもう一回辿ってみるってのでいいか?」

「そ、そうね」

 

いくらなんでも緊張しすぎだろ。ガチガチじゃねえか。

 

「ほら、いくぞ」

「え!?ちょっ」

 

もじもじしていた夕麻の手を掴んで引っ張る。

料理の練習をしている彼女の手にはいくつか絆創膏が貼られていた。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~~、何名様ですか?」

「二名で、窓際空いてるか?」

「・・・・・」

 

俺たちは前回と同じ喫茶店をえらんだ。

しかし、席に着き注文をした後お互い無言だった。

夕麻もうつむいたまま、おしぼりを開いたり畳んだりしている。

 

「・・・どうした。やっぱり嫌だったか?」

「そうじゃない!・・そうじゃないのよ」

「・・・」

「私は貴方を騙すつもりで近づいた。でも、途中から楽しくなって・・・自分が演技をしているのか素で楽しんでるのか分からなくなってた。だから、だから分かんないのよ!!前回とどう違えば本当の自分なのかっ!!」

「・・・・・」

 

それきり彼女は再び口を閉じ、うつむいてしまう。

 

「お待たせしましたぁ。ご注文の品をお持ちしました・・・・あら?お客様、前も女の子といらしてませんでした?まさか浮気?」

 

料理を運んできたウェイターが話しかけてきた。

どうやらひと月前のことを覚えていたらしい。記憶力いいな。

 

「ちげえよ。おんなじ子だ」

「そうなんですか、よかった。でも喧嘩は駄目ですよ?お二人が一か月前も楽しそうでしたから、スタッフでこっそり噂してたんです。頑張ってくださいねっ」

 

そう言ってウィンクしたウェイターはニヤニヤしながら厨房へ戻っていった。

夕麻と顔を見合わせる。

 

「「・・・・・プッ」」

 

「クククク」

「あはははは」

 

二人で笑い合う。

 

「なんか、悩んでるのがアホらしくなったわ」

「だな」

「いいわ、こうなったら思いっきり楽しんでやる!!」

 

そう言って彼女はチョコパフェをかきこむ。

 

「お手柔らかにな・・クク」

 

 

予定通り、俺たちは前回の再現をした。

結果?

 

 

 

野暮なこと聞くんじゃねえよ、分かんだろ?

 

 

 

 

 

 

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