赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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第十三話

「んう・・・」

 

背中に背負った少女が目を覚ます。

 

「起きたか」

「!?ここは、外で・・・うわ、うわ、うわ――――」

「落ち着け」

 

目覚めた瞬間にパニックになって叫びそうになる。

こいつの引きこもりは筋金入りだな。

 

「なんで、僕が、そ・・外に?」

「あのまま旧校舎に放っておくわけにもいかんだろう。お互いかなり汚れてるしな」

「汚れ?・・・・・ご、ごめんなさいごめんなさい!!」

 

顔を赤くして背中で暴れはじめる。

小柄でも悪魔、俺よりも力が強い。気を抜くと落としてしまいそうだ。

 

「落ち着けって言ってんだろ。耳元で騒ぐな、ホントに落とすぞ?」

「でも、僕今汚いです」

「俺は気にしない。それに今さらだ」

「う・・・。じゃあ、その、今どこに向かっているんですか?」

「俺の部屋だ。体洗って、服着替えて、詳しい話はそれからだ」

「・・・・・」

「安心しろ。悪いようにはせん。風呂も同居人にまかせるさ」

 

女の子が男の部屋に連れ込まれて、風呂に入れられるなんて恐怖しか感じないだろう。

 

「同居人?」

「ああ、女の子だ。結構きつい性格だがなんとかなんだろ」

 

 

 

 

 

「元の所に戻して来なさい」

 

玄関に仁王立ちした夕麻が開口一番にそう言った。

 

「いや、犬猫じゃないんだから・・・」

「おんなじよ。寧ろ余計にタチが悪い」

「ひっ」

 

夕麻はじろりと連れてきた子を見下ろす。

見下ろされた彼女は俺の後ろに隠れてしまう。

 

「ほら、怯えてんじゃねえか」

「その子、悪魔でしょ?私もいるのに悪魔をうちに連れ込むなんてあなた正気?」

「・・・・やっぱ分かるか」

「当然でしょ?その子、かなりの力を・・・・っていうか私以上よ?」

 

ふむ、夕麻以上か・・・。こいつは中級堕天使の中でも上の方だと言っていた。

となると悪魔の中でも貴族クラスなんじゃないか?

 

「あ、あの青江・・・さん?」

「あん?」

 

俺の後ろに隠れたまま、服の裾を引っ張ってくる。

 

「この人が同居人さん・・ですよね?」

「そうだ」

「悪魔の事知ってるって・・・」

「こいつは堕天使だ」

「だ・・てん・・・し」

 

愕然とそうつぶやくと俺の服から手を放してしまう。

 

「だ、だましたんですか!?最初からこのつもりで―――」

「あーもー、メンドクサイ!!夕麻、とりあえず中に入れろ。ほら、お前も。信用できんならこれでも持ってろ」

 

無理やり夕麻を押しのけて、少女には愛用の短剣を持たせる。

そのまま少女の手を引いてずかずか踏み入った。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

部屋のリビングに入ると、テーブルにはかなり豪華な料理が乗っていた。

部屋の中も様々な飾りつけがなされており、ちょっとしたパーティーみたいになっている。

 

「なんだこりゃ」

「これは・・・その・・。えっと、わ、私も最近ようやくまともに料理できるようになってきたじゃない?」

「・・・・・」

「それで、助けてもらったお礼というか・・・なんというか・・」

 

そのまま夕麻はうつむいてしまう。

俺は彼女に近寄り頭をくしゃりと撫でた。

 

「お前、ほんっと乙女だよなあ」

 

そのまま髪を梳いてやる。

 

「うるさいわね。やめてよ、髪がぐちゃぐちゃになるじゃない」

 

そう言いつつも払い除けないところがまた・・・

 

「あの・・・」

 

あ、拾って来た彼女の事忘れてた。

彼女はリビングの入り口から半分だけ顔を覗かせている。

そこまで怯えることもないだろう。

・・・いつまでも彼女って呼ぶのも変だな。

 

「お前の名前は?」

「あ・・・・ギャスパー・ヴラディです」

 

ギャスパーか。そんなお化けいたなあ。

 

「お二人は恋人同士なんですか?」

「こ、こいっ!?」

「そうだ」

「え!?」

 

驚いてこちらを向く夕麻。

なんでお前が驚くんだよ。

 

「ちがうのか?」

「え!?でも、え!?」

「まあいいや。夕麻、こいつを風呂に入れてやってくれ」

「あ、あの・・・僕は」

 

二人は動き出さない。

ギャスパーはもじもじしているし、夕麻は―――

 

「え?でも、そんな・・・・えへへ。じゃなくて、え?こ、恋?」

 

なにやら一人でぶつぶつつぶやいて悶えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ~~。ギャスパーにはああ言ったが、どうしたもんか」

 

ソファーに座ってコーヒーを飲む。

二人は今、風呂に入っている。ギャスパーもやたらと抵抗していたが夕麻が無理やり連れてった。

俺は服が汚れていただけだったので着替えるだけで良かった。

 

ギャスパーの神器が暴走するのは彼女自身の精神のせい。

だが、恐らく彼女は他人と接触した経験が極端に少ない。

いきなり学校に通わせてもそこかしこで時間を停めてしまうのがオチだろう。

とりあえずはリハビリを――――

 

「うわあああああああああああああん!!」

 

ドバンッ!!

 

風呂場の扉が勢いよく開かれ、中から胸までバスタオルを巻いたギャスパーが飛び出てくる。

そしてそのまま俺の後ろに回り込むとしゃがんで隠れてしまう。

 

「どうしたんだ?」

 

尋ねてはみるが、ギャスパーは首をふるふると振るだけで答えない。

まさか夕麻にいじめられたのか?心当たりがありすぎる。

サプライズパーティーに失敗して、帰って来たと思ったら見知らぬ美少女を部屋に連れ込む。

俺って実は最低野郎?

 

「なんなのよ、もう!!」

 

続いて頭と体にタオルを巻いた夕麻も出てくる。

 

「すまん、夕麻。今日の埋め合わせは必ず―――」

「その子、神器持ち?」

「・・・ギャスパー、お前また停めたな?」

「う・・・ひっく。ごめんなさあい。でも・・僕・・」

「その子、男の子よ」

 

・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 

・・・・・・・。

 

「はあ?」

 

こいつが男!?こんなに美少女で、女の格好してるのに?

 

「おいおい冗談は」

「確かめてみたら?」

「・・・・」

 

ずぼっ

 

「ひゃうっ」

 

タオルの中に手を突っ込む。

 

「ん、く・・・あ・・・」

 

ギャスパーは顔を赤らめて悶えている。

 

「ふ・・あ・・」

「ふむ・・・小さいな」

 

だが、存在している。

彼女、いや彼ことギャスパー・ヴラディは女装少年だった。

 

「まじで??」

 

 

 

 

 

 

 

「んで?なんで女装なんか?」

 

ギャスパーはあのまま服だけを着替えた。

風呂には後で一人で入り直してもらうことにした。

今俺たちは二人でテーブルについている。

夕麻の作ってくれた料理はかなり量を作っていたらしく、一人増えても大丈夫だそうだ。

彼女自身は料理を温めたりしてくれている。

手伝うと言ったが、『お礼にならないでしょ』と断られてしまった。

 

「だって、女の子の制服の方が可愛いんだもん」

「なるほど」

 

確かに似合っていた。

だが、引きこもりで誰にも見せないままの女装癖とは上級者だな。

 

「気持ち悪いですよね?がっかりですよね?せっかく連れてきたのに女の子じゃないなんて・・・。」

「いや、似合ってるぞ?」

「ふぇ?」

「似合ってるって。お前は可愛いよ」

「で、でも、僕男の子だよ?」

「だから?」

 

似合ってて可愛いからいいじゃねえか。

何を気にしてるんだ?こいつ。

本気でさっぱり分からん。

 

「女だから連れてきたってわけじゃない。まあ、下心が無かったとは言わんが、その容姿なら文句なしだ」

「じゃあ、ホントに一緒にいてくれるの?僕を強くしてくれるの?」

 

不安、そしてそれを上回る期待をひしひしと感じる。

 

「お前、俺が説得するために手加減してた。本当はギリギリで放すつもりで、殺す気は無かったとか思ってる?」

「違うんですか?」

「違う。もしお前が抵抗しなければ、俺はそのままお前を殺していた」

「っ」

 

生きるつもりもない、命がかかっているのに自分で何とかしない。

そんな奴に説教垂れるほど暇じゃない。

絶望していながらも、それでも生きたいと抵抗したからこそ俺はこいつが気に入ったんだ。

 

「だが、今の俺はお前が気に入っている。だから約束した。お前にはその価値があると思ったから」

「~~~~~~~~っ」

 

顔を赤らめる姿もかあいいなあ。

 

ドンッ

 

テーブルの上に料理が置かれる。

かなり荒々しく置かれたが、幸いこぼれる事は無かった。

 

「おまちどうさま」

 

夕麻がジト目で睨んでくる。

 

「なんだよ」

「べつに・・・・・この変態」

「・・・・はっはあ~ん。お前、妬いてんの?」

 

ブオン

 

「何か言った?」

「何でもないでしゅ」

 

光の槍を突きつけられた。

幻痛が・・・・ポンポン痛い。

 

 

 

 

 

 

「「いただきます」」

「い、いただきます」

 

まずはシチューをいただく。

うん、ニンジンもちゃんと柔らかいし、鶏肉の味もよく出ている。

 

「うまい。上達したな」

「そ、そうかしら?」

 

しばらくカチャカチャと食事の音が響く。

あら?ギャスパーはうつむいたまま料理に手を付けていないな。

 

「どうした?食べないのか?」

「いいんですか?」

 

ギャスパーは夕麻の方を向いて尋ねる。

 

「いいわよ。どうせ二人じゃ食べきれないし、何気に二人以上の食事って初めてなのよ」

「友達いなかったのな」

「うるさいわね」

「ぼ、僕もこんなお食事は初めてですっ」

「そう。初めてが素人料理で悪いわね」

 

口調とは裏腹に彼女の表情は穏やかだ。

 

「はぐ、もぐ・・・。美味しいです!!」

「ああもうほら、口元からシチューが垂れてるわ。こっち向きなさい」

「ふあ?・・・んぐっ」

 

ギャスパーの口元に付いたシチューを夕麻はティッシュで拭ってやった。

なんだ、結構うまくやってけそうじゃん。

ふと夕麻がこちらを向く。

 

「なによ、その目」

「ん?慈愛の目」

 

 

 

 

料理は本当においしかった。

俺の仕事が無くなってしまいそうで不安になるくらいには。

 

「食ったな」

「ええ、少し食べ過ぎたわ」

 

俺と夕麻は二人でベッドルームにいた。

ギャスパーは風呂に入っている。

 

「で?話って?」

「ギャスパーについてだ」

 

俺は彼女にギャスパーの抱える神器とその問題。

どういういきさつで連れてくることになったのかを説明した。

 

「それでな?しばらくあいつをここに泊めてやりたいんだが」

「ここに?」

「ああ」

「カプセルホテルとかじゃ駄目なの?」

「あいつには対人能力のリハビリが必要だ。幸いにも俺とお前には気を許してくれている。さっきもちゃんと笑えてたからな」

 

食事中にもちゃんと会話に参加していたし、緊張はしていただろうが笑ってもいた。

 

「このまま俺たちに心を開くことが改善の第一歩だと思う」

「・・・・はあ。分かったわよ」

 

渋々といった様子で了承してくれた。

 

「二人きりじゃなくて残念か?」

「そういうわけじゃ―――」

「ほぼ毎日にゃんにゃんしてたもんな?」

 

ここ一か月はホントにほぼ毎日だった。

吹っ切れたのか夕麻の方から誘ってくることもあったし、なかなかハードなものに手を出しつつもある。

 

「それはっ・・・そうね。少し残念だわ」

「やけに素直だな」

「もうあなたに嵌ってるのは否定できないもの」

「クククク、調教の成果ってか?」

「はいはいそうですそうです。私は貴方にめろめろよ~」

 

ここまで開けすけになっていながらも、好意を表すことに照れるというのはツンデレの鏡だな。

 

「お風呂、ありがとうございました」

「おう、ゆっくりつか――――」

 

風呂からギャスパーが出てきた。

良く温まった肌はほんのり桜色に上気している。

今着ているのは夕麻のピンク色のパジャマだ。

なんか、鼻血出そう。

 

「ギャスパー、夕麻が許可してくれた。お前、しばらくここに泊れ」

「い、いいんですか?」

「ああ、俺は学校もあるが夕麻はここから出られない。相手してやってくれ」

「出られない?」

「忘れたか?こいつは堕天使。ここはグレモリーの管轄地だ」

「あ・・・・」

 

得心したという顔でうなずく。

 

「グレモリー先輩にこいつの事、バラすか?」

 

こいつにとっては彼女が主だ。連絡するのが筋だろう。

もしバレたら俺たちはたたじゃ済まない。

 

「し、しません。先輩には感謝してるけど・・・どちらかと言われれば、お二人です」

 

嬉しいこと言ってくれるねえ。夕麻も平気そうな顔をしているが、少し口元が緩んでいる。

 

「じゃ、どこで寝るかな」

 

この部屋にはベッドが一つしかない。

夕麻が来てからキングサイズにしたが、流石に二つ置くスペースは無い。

 

「兄様と姉様は一緒に寝るんですか?」

「兄様?」

 

確かに食事中に『師匠』か『兄貴』と呼べと言ったがそう来たか。

天元突破な兄貴みたいなの想像してたんだが・・・・

 

「だ、だめでしたか?」

 

目を潤ませて上目づかいで見上げてくる。

 

ツー

 

「おっと鼻血が」

「なにやってんのよ」

「・・・そう言うお前も出てんぞ。鼻血」

「「・・・・・」」

 

お互いに指摘しあい、気まずい空気が流れる。

 

「なあ、さっきの話の続きなんだが・・・」

「なに?」

「コロンブス的な提案がある」

「言ってみて」

 

一息。

 

「この世には3Pという言葉がある」

「!?」

 

二人で顔を見合わせて、同時にギャスパーを見る。

 

「??兄様?姉様?」

 

小首を傾げながら見上げてくるギャスパー。

座り方も女の子座りだ。

 

プパア

 

二人同時に鼻血が出た。

 

「その提案、乗ったわ」

「よし、それじゃあ・・・・・・・・・ギャスパー」

「はい?」

 

パンッ

 

二人で合唱。

 

「「いただきます」」

 

俺たちは欲望のままに生きる!!!!

 

「え?ちょ、姉様!?兄様!?・・・・あ、だめ、そこは・・・んう・・・・あ~~~~~っ」

 

 

 

このあと滅茶苦茶ピーした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

朝チュンは伝統です。

昨晩はめっちゃ楽しんだ。もう、びっくりするくらいハッスルした。

ギャスパーも堕ちた。結構簡単に。

最後は三人で頑張った。何かは聞かないでください。

 

「ん・・・」

 

俺の気配を感じたのか夕麻も目覚めた。

俺たちは俺、ギャスパー、夕麻の順番で川の字で眠っていた。

もちろん全裸だ。

ギャスパーは夕麻の胸に縋り付いて眠っている。

 

「おはよう、起きたか」

「おはよう。・・・・うう、腰痛い」

「昨日は凄かったからな」

「んん・・・兄様・・・姉様・・」

 

夕麻にしがみついたギャスパーが腕に力を込める。

 

「ずいぶん懐かれたな」

「ふふ、この子いいわね」

 

さらさらした金色の頭を撫でつつ呟く。

 

「昼間の間、頼むな」

「しょうがないわね。まかされてあげるわよ」

 

そう言って寝顔を眺める顔はとても穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、忘れてた。俺、今度悪魔になるんだ」

「へえ・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

このあと滅茶苦茶にされた。

物理で。

 

ピロートークでは誤魔化しきれなかったか・・・・

 

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