赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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第十四話

深夜十一時三十分、オカルト研究部の部室。

俺はスマホで新しい友達とメールのやり取りをしていた。

ネット上で知り合ったんだが、ビックリする位意気投合した。

今度気の合いそうな友人を紹介する目的でオフ会を企画している。

 

ボンボンとのレーティングゲームまであと三十分。

グレモリー眷属はみな思い思いに決戦の時を待っている。

まあ、俺自身は緊張する理由もないので気楽なもんだ。

 

「みんなが寝静まった頃~♪」

 

歌なんか歌ってみる。

緊張感?

そんなもん俺が出さなくてもみんな自分で感じてるだろうよ。

それにあれは最低限は必須だがそれ以上は邪魔にしかならん。

 

 

 

 

「これで良しっと。ふー、ん?」

 

ふと画面から目線を上げると塔城が熱心に読書をしている。

 

「塔城は何読んでんだ?」

「・・・」

 

すっ、と読んでいた本の表紙をこちらに向ける。

タイトルは―――『男は猫耳のどこに惹かれるのか?PART4』。

・・・少なくとも過去三作は読んだのか。

 

「・・・面白いか?それ」

「後学のために」

「そ、そうか」

「先輩は―――」

「あん?」

「先輩は猫は好きですか?」

「ああ、うちでも一匹世話してるのがいる。犬よりは断然猫派だな。なんかこう普段気ままにしてつれない分、甘えられると悶えそうになるんだよな。」

「そうですか。―――やはりつんでれというのが核心の様ですね。PART33でも最終的には原点回帰でしたし。」

 

最後の方は小声だったから聞き取れなかった。

 

「なんだって?」

「・・・・」

「お~い」

 

塔城はふむふむと頷いてまた読書に戻ってしまった。

 

 

 

「・・・・」

「先輩?姫島先輩?」

 

姫島はティーカップを持ったままぼーっと中身を覗いていた。

 

「青江君。こめんなさい。少し緊張していましたわ」

「緊張?アンタはしないと思ってたが・・・なにかあったのか?」

 

いつでもニコニコ笑いながら何とかしてしまうお姉さんってキャラだと思ってたが。

 

「今までは・・・正直リアスの傍に居られるなら、彼女の夫の愛人でいいと思っていましたわ。私みたいな半端者はそんなものだって諦めて、利口な振りをしていました。自分は大人なんだから世の中の不条理なんて分かってますって」

「・・・・」

「でも、最近。今まで夢にも思わなかった・・・いえ、考えようとしなかった・・・普通の女の子みたいな夢を見るんです。ふふっ、可笑しいでしょう?今まで馬鹿にしていた少女マンガまで買って来て。どこかの誰かさんが思わせぶりなことばかりするから」

「で、今回負けたらどうしようってか?はっ」

 

彼女の手からティーカップを奪い取って中身を飲み干す。

 

「そんときゃこう考えろ。『ああ、これが囚われのお姫様ね?王子様はまだかしら?』ってな」

 

伏せられていた目がこちらを向く。

 

「俺は欲しいものは自分で獲りに行く。ククク、逃げても追っかけるぜ?」

「あなたは、本当に。・・・期待しますわよ?」

「うんにゃ、覚悟しとけ」

 

 

 

 

「あはは、君はいつでもマイペースだね」

「うむ、揺るがない男と呼んでくれ」

 

それまで壁にもたれかかり、目を閉じていた木場が話しかけてきた。

学生服の上に手甲と脛当てを装備しているが騎士というには軽装過ぎて、どちらかというとRPGの正統派勇者みたいだ。

 

「自信のほどは?」

「さあ?合宿で得たものは大きかったと思うけど、相手は若手悪魔の筆頭だ。どこまでやれるのか見当もつかないよ。」

「勝負ってのはどれも時の運、負けるときは負けるもんさ。」

 

結局のところ、戦いは運だ。

サイコロを振って出た目で競うのとそう変わらない。

相手と自分の相性、相手の癖、自分の癖、戦闘中の閃き、直観、装備、コンディション、選んだ戦法etc・・・。

無限にある要素の中から『運よく』有利なものを引いた者の勝ちだ。

故に鍛錬とは勝率を上げるために行う。

サイコロの『2が出れば勝つ』という状況を『2か3が出れば勝つ』に変えるために。

 

「絶対に約束された勝利はない。」

「うん」

 

「だが―――」

「だけど―――」

 

「「絶対に負けてはならない戦いはある」」

 

二人同時に同じことを言う。

 

「「・・・・・」」

「ククク」

「ふふふ。・・・ハッピーアイスクリーム?」

 

また懐かしい物を。

 

「今度奢ってやる。」

「うん、楽しみにしているよ。」

 

デートの約束を取り付けた!(????)

 

「兵藤はどうだ、いけそうか?」

「・・・・・。」

 

げしっ

 

「あだぁ!!なにすんだ、青江!!」

「緊張しすぎだド阿呆。お前がそんなに緊張してどうする」

 

ソファの上で俯いていた兵藤の背中を軽く蹴っ飛ばす。

 

「そ、そんなこと言ったってこの戦いには部長の人生が・・・ッ」

 

人生、ねえ?

そりゃあ『グレモリーの』戦う理由だ。

どこまで行っても所詮は他人事、『兵藤一誠の』戦う理由たりえない。

こいつそんな事にも、なんで自分が勝ちたいのかもあやふやだからここまで来ても腹くくれねえんだよ。

俺の癒しのためにもこいつに負けてもらっちゃ困るんだが・・・。

 

「そうとも、この戦いに負ければグレモリー先輩はあの焼き鳥の淫乱肉奴隷だ」

「い、いんらっ!?」

 

顔を真っ赤にした兵藤に追い打ちをかける。

 

「・・・考えても見ろ、花よ蝶よと育てられた貴族のお姫様。勿論処女だ。そしてあの美貌とプロポーション・・・男なら自分色に染める事を一度は夢見るだろう。」

「ごくり」

「あのボンボンは女遊びの経験は相当だ。見たろ?あのディープキス。こますのはプロと考えていい。まずはあの胸だな具体的には――――」

 

俺は兵藤に『美人令嬢調教記録~最初はあんなに嫌だったのに、私どうして・・・~』を懇切丁寧に具体的に事細かに語って聞かせた。

 

「・・・・どうだ?」

「うごごごごごごごごご、あの焼き鳥絶対に許さん!!」

 

血涙を流しながら地面を殴りつける兵藤。

 

「そこまではならないわよ・・・多分」

 

温度の低いジト目でグレモリーが反論してくる。

 

「やっぱり絶対負けるわけにはいかない!!」

「なんでだ?」

「え?」

 

ほんと、兵藤といえばこの間抜け顔だな。

 

「・・・約束したんだ。合宿の夜に」

「その口約束はそこまでのものなのか?ゲームの経験も、これが初めてなのに。普通は負けて当然じゃないか?」

「だって俺は部長に命を――」

「なら他の人間ならいいのか?彼女もいつかは結婚するだろう。そのたびに反対して喧嘩ふっかけんのか?」

「それは」

「今回の件、お前が嫌なのはなんだ?何にそんなに怒ってる?」

「・・・・・」

「そこまでよ。わけのわからない言葉でイッセーを惑わせないで」

「部長、俺・・・」

「大丈夫、今回負けたとしても、貴方が私の眷属であることに変わりないわ」

「・・・はい」

 

 

 

「みなさん、準備はお済みになられましたか?もう間もなく開始時刻です」

 

魔方陣から例の銀髪メイドが現れた。

彼女によると戦闘は異空間に用意された戦闘フィールドで行われるそうだ。

いくら壊しても大丈夫とは、便利なもんだ。

 

「あの、部長」

「何かしら?」

「部長にはもう一人、『僧侶』がいますよね?その人は?」

 

兵藤がグレモリーに質問した。

『僧侶』・・・ギャスパーのことか。

当然だな、ここまでの大勝負に欠番がいるというのは納得できない話だろう。

質問と同時に室内の雰囲気が重くなった。

 

「残念だけど、もう一名の『僧侶』は参加できないわ。いずれ、そのことについても話す時が来るでしょうね。」

「グレモリー先輩、そいつはこのことを知ってんのか?」

「ええ、合宿前に事情は説明してあるわ。」

 

やはりギャスパーがいなくなったことに気付いていない。

彼女自身も今回の件でいっぱいいっぱいだったのだろうが、この様子だとあいつを放置することが半ば慣例化していそうだ。

 

「ちっ」

「???どうかしたの?」

「いや、何でもねえよ。俺も出ていく。シトリー側と一緒に中継を見る手はずになってるからな。・・・兵藤、こっち来い」

「ああ」

 

他の奴らから少し離れた位置に兵藤を連れてゆく。

聞き取られないように気を配りながら小声で話しかける。

 

「これ、持ってけ」

 

もとから用意していたあるものを兵藤に手渡す。

 

「え・・・これって!?」

「しっ、こいつぁ切り札だ。いざって時まで取っておけ」

「でも、部長には―――」

「・・・お前に切り札はあるか?」

「切り札?」

「お前だってあの合宿だけで上級悪魔を越えられたなんて思っちゃいないだろ?その差をひっくり返す手立てはあんのかって聞いてんだ。具体的には禁手化とか。それはダメ押しに使え」

 

俺自身も禁手化に至ってはいる。

ミハイルの研究資料に度々出てきていたからどういうものなのかも知っている。

 

「・・・一応は使える」

「一応?」

「ああ、お前の用意してくれたプランのおかげで俺は部長の予想以上に強くなったらしい」

 

俺が担当したのは体の使い方についての強化プランだ。

どうやら結果はなかなかのものだったようだ。

 

「・・・昨日の夜、ドライグから聞いた」

「ドライグ?」

「俺の神器に宿ってるドラゴンだ。俺の強さが一定に達したおかげで会話できるようになったみたいだ」

 

人格のある神器もあるのか・・・やだなあ、それ。

 

「結論だけ言えば俺も禁手化できる。でも、いろんな過程をすっ飛ばす分代償が必要だって」

「なるほどな。・・・使うか?」

「ああ」

「グレモリーのために?」

「ああ」

 

う~む、このきりっとした顔を普段からしてりゃあもてるだろうになあ。

ってかここまで覚悟できてんのにまだ気づいてないとか・・・はあ。

 

「もーいい、メンドクサイ。言うぞ、お前が今回の件で気に入らないところ。お前は相手が『自分以外の男』だから嫌なんだよ」

「は?」

「惚れてる女の縁談をぶち壊したい。それだけだ」

「ちょちょちょちょ、ちょっと待て。なにそれ?」

「よーく考えてみろ、主とか下僕とか抜きにして。一人の女としてのリアス・グレモリーを」

「・・・・・」

 

目を瞑ってじっと考え始める。

 

「・・・あ。そうだわ、うん。俺は部長に惚れてんだ」

「だろ?」

「でも、そんな理由で―――」

「『世界平和のために』なんてのよりよっぽど強い動機になりそうだがなあ?」

「悪魔の未来が―――」

「焼き鳥を小指で潰せるくらいになれ」

「・・・」

「それに、ここでカッコいいとこみせりゃあ・・・相手は惚れるかもよ?」

「よっし、やろう!!」

 

目から迷いが全くなくなった。

だが、俺は現金だとは思わない。

 

「もう一個選別だ。腕出せ」

「お、おう」

「動くなよ・・・『青の聖痕』」

「うわ、うわ、きもっ!?」

 

俺の神器『青の聖痕』の刺青が蠢いて、一部が兵藤の皮膚に移動した。

 

「なんだよ、これ」

「俺の神器だ。効果は秘密。ご利益はばっちしだ」

「うさんくせー」

 

腕をくるくる回しながら刺青を眺める。

 

「時間掛け過ぎた。いって来い」

「おし、ありがとな」

「貸し一つな」

「一つでいいのか?」

「じゃあ三つ」

 

 

 

兵藤は魔方陣の方へ駆けてゆく。

 

「よっしゃーーーー!!みんなぁ、いくぜーーー!!!」

 

他のメンツは急にハイテンションになった兵藤にギョッとしていた。

・・・空回りしなきゃいいんだが。

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