投稿する順番を間違えてしまいました。
本当にすみません。
ああ、冷汗が。
感想に下さった方、本当にありがとうございます。
『おい、クソガキ』
声が聞こえる。
「ああ?」
気付くと目の前には赤い壁がそびえ立っていた。
なんだこりゃ?
『貴様、相棒に何をした?』
「相棒?」
声は上から聞こえてくる。
上?
見上げるとそこには赤い龍の頭部があった。
壁だと思っていたのは鱗でおおわれた胴体だったようだ。
でけえ・・・。誇張抜きで本当に小山位ある。
『聞いているのか?』
「聞こえてるよ。・・・お前がドライグか?」
『フン、頭の巡りは悪くないようだな』
「接点のありそうな赤い龍なんざ一つしか思い当たらねえよ」
――ウェルシュ・ドラゴン、赤龍帝ドライグ―――
兵藤の神器に封印された伝説のドラゴン。
ウェールズ地方では未だに守り神の様な扱いを受けている存在。
「で?兵藤の神器が俺に何の用だ?」
『惚けるな、貴様が施したあの青い刺青・・・あれは何だ?最初はダメージを減らすものだと思っていたが、代償を支払う際に半分は貴様が支払っている。今現在俺との対話ができるのもその影響だ』
「なるほどな・・・代償って何だったんだ?」
『本来であれば相棒の腕一本がドラゴンの、俺の腕に置き換わるはずだった。だが実際は相棒の皮膚の一部、貴様の眼球一個が支払われた』
「俺の目はどうなったんだ?失明したのか?」
『言っただろう。『置き換わった』と・・・お前の目は俺の、ドラゴンの目に置き換わった』
そうドライグが言った途端、右目の景色が切り替わり、片方の視界が自分を見下ろすものになった。
これはドライグの視点?
「・・・あの刺青は俺の神器、その禁手化だ。能力は他人に降りかかる災いを使用者が引き受けること」
『なに?では軽減されていたダメージは・・・』
「俺が受けていた。常時半分、致命的なものは全部と設定していた」
『なぜそこまでした?貴様には何のメリットがある?』
「メリット・・・ねえ。あいつに勝ってもらった方が都合がよかった。それだけだ」
『まさか本当にそれだけではなかろう?・・・まあいい、今回貴様に呼びかけたのは警告だ』
警告?
『この目に映る世界は、全てが緩慢に動いているように見えるはずだ』
「ほう?」
それが本当ならばうれしい誤算だ。意図せずして魔眼を手にしたようなものだ。
『だが、本来俺の目は人間にも、悪魔にも過ぎた代物、性能が高すぎる。長時間の使用はやめておけ』
「もしも使い過ぎれば?」
『貴様の脳が焼け付くことだろう。本来からかけ離れた量と速度で情報を処理するんだからな』
脳が焼け付く・・・悪くて死亡、良くて廃人ってとこか。
「普段はどうしていればいいんだ?」
『閉じていれば問題ないだろう』
そんなんでいいのか?
封印とかが必要かと思ったが・・・
『性能のいい目、というだけで魔眼ではないからな』
そんなものかと納得していると、ドライグと俺だけだった世界に光が差した。
青い光・・・。
冷色系の色なのにどこか温かい。
『時間切れだな。・・・最後に聞いておく。貴様にとって兵藤一誠は何者だ?』
「認識的には世界の中心、個人的には・・・あー、ただの友人だよ」
その返事を最後に、俺の意識は急速に引き上げられるのだった。
「グッ―――」
目を覚ますと、俺は生徒会室のソファーの上で眠っていた。
気を失っていたのか・・・。
「目が覚めましたか?」
体を起こし声に振り向くと、窓辺に寄りかかりこちらを見つめる生徒会長がいた。
青白い月を背にしたその姿はまるで一枚の絵画の様だった。
一瞬、見惚れてぼーっとしてしまった。
「っ?どこか痛むのですか?」
「いや、大丈夫だ・・・綺麗だな」
「?・・・ああ、確かに今日は月がきれいですね」
そうじゃないんだが・・・まあいい。
「状況は?兵藤は勝ったのか?」
「はい。今回のレーティングゲーム、勝者はリアス・グレモリーです」
そうか。勝ったか。
これで焼き鳥(名前なんだっけ?)とグレモリーの縁談は破談。
塔城も姫島も大丈夫だろう。
次に俺は自分の体に意識を向ける。
・・・体の傷が無くなっている。という事は――
「俺は悪魔化したのか」
「はい。人間であった青江秀介は死に、シトリー眷属の『兵士』となりました。」
「最後の記憶は兵藤への焼き鳥の全力を『請け負った』ところまでだ」
「・・・あの一撃を兵藤君が受けた瞬間、貴方は全身ケロイド状態の焼死体になりました」
うへェ。そいつは自分でも覚えてる。
皮膚の中が膨れてむくむ感覚、気管が張り付いて呼吸できない苦しさ、眼球が熱で変質し視界が白濁する―――。
止めよう。精神衛生上非常によろしくない。
暫くは火がトラウマになりそうだ。
「会長も、済まなかった。グロテスクなものを見せた。気持ち悪かったろう?」
「いいえ。・・・貴方は文字通り命を懸けて友を救った。その結果が気持ち悪いはずがありません」
「あー、別に友情の為って訳じゃあ―――」
「ふふふふふふ。・・・ええ、分かっていますとも。ですがあなたの行動は結果的に多くの者に益をもたらした。それはとても尊い事だと、私は思います」
くっ、なんだこれ。俺を褒め殺すつもりか?
やめて、そんな慈愛の目で見つめないで!!
「あとは―――」
そうだ、代償!!
右目を持っていかれたという実感はあった。
さっきのドライグとの対話もただの夢だったなんてことはないだろう。
だが、両目とも視界は―――
「ぎ――――あ――」
頭がいてェ!!
右の眼窩からナイフでも突っ込まれているような、それでいて掻きまわされるような痛みが続く。
「青江、青江!?」
会長が慌てて駆け寄ってきて背中を擦ってくれるが気にしている余裕がない。
「ふー」
暫くして痛みはようやく治まった。
「・・・会長、鏡持ってきてくれないか?」
「鏡・・・ですか?」
いぶかしみながらも自身の鞄から手鏡を持ってきてくれる。
・・・意外とファンシーな趣味だな。
受けとって中を覗き込む。
「その目・・・」
「ああ、どうやって誤魔化そう?」
右の眼窩には赤い眼―――虹彩が赤だとかじゃない。
白目は一切なく、全てが虹彩でできているかのようだ。
瞳孔が縦に裂けた爬虫類独特の目。
ドラゴンの目。
「うぃーっす」
「いらっしゃい、青江君」
オカルト研究部の部室に入ると、部員たちは飲み物勝手に楽しそうにおしゃべりをしていた。
軽い祝勝会ってとこか。
ドリンクを片手に木場が歩み寄ってくる。
「おつかれさん」
受け取りつつあたりを見回す。
兵藤とグレモリーがいない。
「主役二人はどこ行った?」
「テラスにいる。兵藤君はずっと君のおかげだって言っていたよ。でも今は―――」
窓から少し様子が伺えるが・・・フン、なかなかいい雰囲気じゃないか。
もらったドリンクに口をつける。
―――ジンジャエールか。
「大丈夫だって、そこまで野暮じゃねえよ」
「シュースケさん!!」
こちらに気付いたアーシアも駆け寄って来た。
後ろからは姫島もついてきている。
「どーだった?初めての戦いは?」
「はい!すごく緊張しました!」
喧嘩なんてしたことのないであろう彼女だ。
心理的負担は大きかったろう。
ポンポンと頭を撫でながらねぎらう。
「イッセーさんがとってもかっこよかったんですッ!でも、部長さんもそれを見ていて・・・お二人の距離がずっと近くなった気も――」
「あー、うん。今度相談に乗ってやるから」
恋敵の出現に戦々恐々って感じか?
俺としてはアーシアに頑張ってほしいと思うんだが・・・まああいつはハーレム王志望だ。なんとかなんだろ。
「姫島先輩も大丈夫か?結構派手に爆破されてたけど」
「言わないでくださいな。結構気にしてますのよ?」
「勝ったからいいじゃねえか。これはチーム戦だ。確実に先輩たちは勝利に貢献してる。それにまだ次があるんだ、次勝てよ」
俺の言葉に全員が頷く。
それぞれに今回の試合、至らなかったと自覚しているところがあるのだろう。
「そう・・・ですわね。ああでも、心残りといえばもう一つ・・・お姫様になり損ねましたわ」
「お姫様?」
木場が首をかしげる。
「ああ、それは―――」
くいっくいっ
「ん?」
「先輩」
袖を引かれたのでそちらを向くと、塔城が俺の袖口をつまんでいた。
「どうした?」
「先輩、私も頑張りました」
「うむ、見ていたぞ。偉かったな」
しかし彼女はまだじっとこちらを見つめてくる。
心なしか不満そうだ。なんだ?
「頑張りました」
「あ、ああ」
どうすりゃいいんだ?
こちらが困惑していると、チラリと塔城の目がアーシアに向けられた。
これは―――そういう事なのか?
ポンポン
塔城の頭も、アーシアと同じように撫でてやる。
「あ、・・・・・・・・」
彼女は目を閉じて受け入れた。
おかしいな・・・俺はナデポを貰った覚えがないんだが・・・。
「いらっしゃい。よく来てくれたわね」
テラスから二人が戻って来た。
「おめでとさん。デビュー戦で勝利とは、幸先いいじゃねえか」
「そうね。・・・いずれ戦う時はよろしくお願いするわ。シトリー眷属の『兵士』さん?」
「ええええええええええっ!?あ、青江も悪魔になったのか!?」
「ああ、グレモリー先輩にフられたんでな。別の悪魔に眷属にしてもらった」
「人聞きの悪い事言わないでちょうだい。・・・朱乃?小猫もなんでそんなに睨むのかしら?」
賑やかだねえ。
「青江、悪い。借りてたあの光の剣、壊れちまった」
「いいって。もとからそのつもりだったんだ。役に立ったか?」
「ああ、もちろん。この刺青もありがとな。よくわからないけど、こいつに助けられてたのは分かってる」
ふん。
俺はぐるりとあたりを見回した。
「グレモリー先輩、ほかの眷属になったけど―――」
「大丈夫よ。追い出したりはしないわ」
「感謝する」
心配事は無くなったな。
悪魔としての生。
人間よりもずっと長い生。
「楽しいねえ」
こいつらとなら退屈しなさそうだ。
俺は残りのジンジャエールを一気に飲み干した。
「青江、その眼帯似合ってないぞ?どうしたんだ?」
うるせえよ。