赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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第一話

目を開く。目の前にある顔は恐らく母のものだろう。女性が口を開く。

「青江さん、元気な男の子ですよ~。」

・・・違ったようだ。

 

 

自分の意志では体を動かせない。

母に抱かれているのだろうが、顔を見ることもできない。どうせなら美人がいいな。

横で泣いてるのは父だろう。俺は前世でも子持ちでなかったが、ドラマで号泣するのは大抵父親だった。

「お父さんもそんなに泣いてるとシュウスケに笑われるよ。」

そうか、俺の名はシュウスケになるのか。いいな、合格だカッコいい。ネーミングセンスはグッドだ。

一生使う名前だどうせなら気に入ったのがいい。

 

・・・泣いてたのは祖父だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キング・クリムゾン!・・・すまん、やってみたかった。

俺の名前は青江秀介。八ヶ月の赤子だ。ぴちぴちだ。

S県在住、家族構成は母、祖父のみ。父親はいなかった。理由は知らん、興味ないし聞く術もない。

みんな喜べ母は美人だ。うっかりヒロインにしたいと心の魔剣が動いたくらいだ。

こんないい女がフリーなのはもったいない。本当に頂こうか?

今は赤ん坊ライフをしっかりと満喫している。

赤ん坊のうちは暇かと思ったが、そんな事はない。赤ん坊は赤ん坊で寝るのに忙しいのだ。ZZZ

 

勿論、公約通り自らを限界まで鍛えるつもりだ。

体は動かせないが脳はいける。

昔やったゲーム中にあった、分割思考に挑戦してみた。

結果を言おう。駄目だった。こんな感じ。

 

1『お?いけたんじゃないか?』

2『まじで?』

3『いけんじゃね?』

4『これで我が覇道も・・クク』

5『ヤダここムサイわよ』

6『ママとヤりたい』

7『確かに』

8『殺す犯す殺す犯す殺す犯す』

 

1『よし、じゃあ役割分担すんぞ』

2『ん?今どういう状況?』

3『あ?何しきってんの?』

4『我こそがこの世界の王よ』

5『もっと可愛い服が着たいわ。スカートとか。』

6『ママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱい』

7『あれはいい物だ』

8『ひひっひっひひひっひひh』

 

1『主人格は俺だぞ』

2『ここは何処?』

3『はぁ?アホか、オレに決まってんだろォが』

4『面白い。我と覇を競うか』

5『何で男の体にしたのよ!信じらん無い!!』

6『ママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱいママのおっぱい』

7『6番を全面支援する!!』

8『血、血、血がほしい。』

 

1『落ち着けって!!』

2『僕は誰?』

3『やんのかコラ。死にさらせやぁぁァアア!!!』

4『闇の炎に抱かれて消えろ!!』

5『キー!!こうなったらタイで手術よ!』

6『ママぱいママぱいママぱい』

7『深いな・・・。今新たな言葉が生まれた、喝采せよ!!』

8『まズハ、ォオまえラだだだだだだだd』

 

なんか脳内が大惨事になった。というかこれ全部俺ん中にいんのか・・・。

 

 

というわけで現在は高速思考に挑戦中だ。時間は山ほどある、気長に行こう。

 

 

「秀君~。ご飯の時間よ~。」

おお、もうそんな時間か。母が入室してくる。

食事かククッ、離乳食ではない。

まだ八ヶ月だからな、乳離れしていない。

最初は羞恥心が勝っていたが、最近は乳離れが名残惜しく感じている。

この時間こそ、赤ん坊ながら三大欲求の内二つ、どれとは言わんが満たせる瞬間なのだ。

「んっ、く・・ふ。ぁあ・・、はっ・・・・ひうっ、ああああ、~~~~ッ!!」

「んくっ、んくっ、んくっ・・・・げぷ」

・・・・・・・、なにか?ぼくは食事してるだけですが?

顔を上気させた母が身だしなみを整える。

「はぁ・・・。こんなの父さんにいえないわ。」

祖父も同じ家に住んでいる。見事に典型的な頑固じじいだ。だが、母と俺を溺愛しているのは確かだ。

先日もベビーカーを二台とビデオカメラと動画機能つきデジカメ(かぶってる)、オムツ二年分位を買ってきた。無言でテーブルの上に置いてった。

古武術の師範代だそうで、かなりの腕前だとか。なるほどたしかに見た目は老獪な武人である。正直この顔が号泣したところは見てみたかった。

 

まあ、八ヶ月ではこんなもんだ。もっぱらの悩みはいつ喋るかということだな。

ああ、腹が張ると眠くなる・・・・

「おやすみ」

お休みなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

~一歳~

お喋りは少し前に始めた。

この位になれば片言くらい話してもいいだろう。

最初に発した言葉は無難に“お母さん”にした。

もっとも滑舌が悪かったため“かぁかん”になってしまったが。

母はそれはもう嬉しそうに祖父に報告していた。喜んでもらえて何よりだ。

しかし、それからしばらく爺さんが暇さえあれば俺を抱いて

「私がお前の祖父だ。」

と言ってくるようになった。一度母が

「父さんも名前呼んでほしいでしょ?」

と聞いたが、

「いや、話し相手になったほうが知能の発達にいいと聞いた。」

としかめっ面で答えていた。

分かっている、分かっているんだ爺さん。できるなら俺もあんたの願いを叶えてやりたい。

だがな、

 

 

誰もあんたのこと“お爺ちゃん”って呼んだことないんだよ!!!

 

一歳児が知らない言葉を話すわけにもいかない。

 

 

 

 

 

 

~一歳半~

さすがに赤ん坊ライフも飽きてきた。

早い子供は十ヶ月で歩き始めるそうだが、この頃の這い這いは後の足腰の強さに関係してくるとか。

あんまり早く歩き始めるとその経験が少なくなるそうだ。うろ覚えの豆知識だがな。

なので二歳くらいまでは這うことにしている。

しかし、這えるようになったのは大きな進展だ。まだ肉体は幼いのですぐスタミナ切れになるが、寝たままでは見えなかったものが見られるようになった。今いるのはなかなか大きな武家屋敷風の家の一室だ。

やったね!特典はしっかり生きてるよ.

 

そうそう、神器についてだが・・・あった。

どっかで見たような能力だが恐ろしく使い勝手が悪い。

名前は分からん。あのかっこいい名前は誰が付けるんだ?

 

 

 

 

 

 

「お誕生日おめでと~♪」

母さんがクラッカーを鳴らす。

隣に座る爺さんは

「やはり子供の成長は早いな、和葉の時もそうだった。」

と頷く。その頭にはポンポン付きの帽子がチョコンとのっている。ちなみに和葉は母の名だ。

目の前には十本のロウソクの立ったケーキが鎮座している。手作りとは思えないクオリティだ。何気に母のスペックは高い。一人でこの広い家と道場の掃除、家事全般をこなしているのだからその性能は推して知るべしである。

そう、今日はこの青江秀介十歳の誕生日である。

大丈夫だ、雑なスタンドですっ飛ばすつもりはない。

では、この四年間をダイジェストでどうぞ。

 

 

 

~二歳寸前~

今日は爺さんの友人である芳江婆さんが遊びに来ている。爺さんの幼馴染みだそうでよく昔話をしようとして爺さんに止められている。話によると爺さんは若い頃そうとうな朴念仁だったそうで片っ端からフラグを立ててはそれを気付かず放置していたらしい。かく言う芳江婆さんもその一人らしく、最後まで俺の祖母と張り合っていたのだとか。

その芳江婆さんだが、実は母の家事、育児の先生だったりする。俺も何度か世話になっていて、我が家のお婆ちゃんポジションについている。...爺さん、外堀埋められてってるぞ?

芳江婆さんは俺を抱いてよく話しかけてくる。

今日も抱いたまま、俺に昔話をする。

「秀介さんはお爺ちゃんみたいになってはいけませんよ?」

ん?...きっ来たー!!!

すかさず爺さんの方を向いて

「じぃじ?」

と呼んでやる。

目を見開いた爺さんは

「うむ」

そう言ってすたすた去って行ってしまった。あれ?

 

 

その日のご飯は特上寿司だった。

 

 

 

 

~秀介、大地に立つ~

立った。お寿司美味しかった。

 

 

~三歳~

......このノリで俺の成長日記を書くのか?面倒だな。

やめだ。

 

 

 

というわけで俺は今十歳だ。

鍛練は高速思考、肺活量、柔軟性、呼吸法、体幹、歩法等を重点的に行っている。まずは単純な筋力よりも体の使い方を学ぶ方が先決だ。そろそろ武術の型稽古も始める。妥協はしない。

 

母さんからは門限を守るなら行き先を告げた上で外出する事を許されている。当然、正直に言ったことはない。

今回は近所の山に来ている。鍛練のためであるが、子供の視点というのは面白い。つい本来の目的を忘れてしまう。全てが大きく見えるのは勿論、気になった事にとことん時間をかけられるのは子供の特権だと思う。今日も気が付くとダンゴムシを三時間近く追いかけてしまっていた。林のかなり奥なので薄暗い。ん?人影がある。あれは白衣か?

 

「くそっくそっくそっ!バルパーのやつ、俺をコケにしやがって!神器の研究のサンプルが一つだけだと!?それも使い道の無いゴミじゃないか!しかも人工!?失敗作を押し付けただけだろうが!何が『期待している』だ!アザゼルもアザゼルだ.........」

 

何やらまだ言い足りない様だがもはやただの愚痴と化している。

だが神器とな?実に興味深い。それにアザゼルか...何か不能にしてくるメタボなおっさん風悪魔だった気がする。となると悪魔関係者か?おっと、こっちに来るようだ。隠れねば。

 

その後、あとをつけて行くと町外れの寂れた教会に入っていった。

悪魔と教会は接点が無さそうだが、愉悦神父の例もある。

自ら死亡フラグに飛び込むこともないだろう。

 

 

 

それからは特に何事もなく俺は成長していった。

爺さんには青江流護身殺法という訳のわからん流派を叩きこまれた。

常に実戦を考えた稽古で、骨が折れるなんて日常茶飯事。何度か失明しかけたこともある。

問題は爺さんに虐待しているという自覚は無く、本当に俺のためと思っている。母も爺さんを止めないし、小さい頃から自分で鍛錬していなければ死んでいたかもしれない。

それでも俺の第二の人生は充実していた。前世とは違う。チート能力なんざ無いが俺の選択は間違っていなかった、そう思える。

 

 

 

 

 

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