赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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個人的に結構大きな出来事があったため、更新が遅れました。
申し訳ない。


第二十話

「駄目です」

「はい」

 

会長は資料から顔もあげずに返事をした。

事件への介入許可を貰いに行ったんだが、取り合ってもくれない。

さっきゼノヴィア達に関与しないって言ったばかりだもんな。

今回の件、勝手に介入したと会長の耳に入れば尻叩きどころではないだろう。

最悪はぐれ悪魔になるかもしれない。

 

「悩ましいねェ」

「青江君」

 

生徒会室をあとにした俺は廊下に出たとたんに呼び止められた。

木場か…。

 

「どうしたんだ?こんなとこで」

「君を待っていたんだ」

「俺を?」

「心当たりがあるみたいだったからね。あの男…バルパー・ガリレイに」

 

そういうことか…。

 

「分かったからその殺気やめろ。ほら、周りがみんなビビってる」

 

学校一の王子様が一人で廊下に立ってりゃあ、そら注目を集めるだろう。

現に見える範囲でも廊下の陰に三人いる。

そして全員が王子の様子に何事かとオロオロしていた。

 

「………」

 

それでも、周りなど知ったことかと殺気を緩めない。

 

「はぁ…場所を変える。ついてこい」

 

 

 

 

チリンチリン

 

「いらっしゃいませ~♪何名様でしょうか?」

「二人。できるだけ奥の席を頼む」

 

木場を連れて入ったのは喫茶店。

 

「なんにする?お、アイスあんじゃん。奢るぜ?」

「……」

「すんませーん」

 

近くを歩いていた店員さんを呼び止める。

 

「はい。ご注文はお決まりでしょうか?」

「コーヒーを二つと…あー、このアイスクリーム」

「かしこまりましたぁ!!…今日は違う方とデートですか?」

「アンタは…」

 

確か夕麻と初デートの時にいた子だ。

 

「見りゃわかんだろ。相手は男だ」

「でもでも、女の子みたいに綺麗ですし…まさか禁断の?きゃー」

 

彼女は身もだえしながら厨房に引っこんでいった。

しばらくすると

 

『きゃーーーーー』

 

何重にも重なった嬌声が聞こえてきた。

おおかた他のスタッフに自分の妄想をぶちまけたのだろう。

悪い気はしない。(あれ?)

 

「で?何が聞きたい?」

 

いままで無言を貫いていた木場に問いかける。

 

「君とバルパーの関係を」

「関係…あー。人違いでした、じゃあ駄目か?」

「ふざけないでくれっ!!!」

 

ガチャンッ

木場は思わず、といったふうに立ち上がる。

勢いでお冷がこぼれてしまった。

あわててやってこようとする店員を手で制して俺は木場に尋ねた。

 

「どうしてそこまで聖剣に執着する?」

「…君のことだ、おおよその見当はついているんだろう?」

「ああ、だがお前の口からは聞いていない」

 

俺が知りたいのはただの概要ではない。

こいつが、木場祐斗がどう感じているのかが知りたい。

 

「お前に事情がある様に、俺にも俺で奴には因縁がある。自分だけ情報を引き出そうってのはちょっと虫のいい話じゃないか?」

「それは…」

「別にいいだろう?お互い少しでも手がかりが欲しいんだ。情報交換といこうじゃないか」

 

俺の言い分が至極真っ当なものだと思ったのだろう。

木場は再び腰を下ろして目を閉じた。

 

「「………」」

 

店員が濡れたテーブルを拭いてゆく。

俺たちは互いに一言も話さずそれをじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「…わかったよ。…じゃあ、まずは僕の話を聞いてくれ」

 

どれ位経っただろうか?それまでじっと目を瞑っていた木場が口を開いた。

語られたのは、自分の生い立ちと聖剣との因縁。

 

 

 

 

『聖剣計画』―――聖剣に適合できる人間を人為的に造り出そうとした計画。

木場自身も被験者であり、同年代の子供たちも大勢いたこと。

過酷な実験に信仰を支えに耐えた事、検体同士互いに励まし合ったこと。

 

「僕たちは信じていた。聖剣に適合し、神の使徒として生きられることを。そうすれば、身寄りのない僕たちにも居場所ができると思った。…でも、結果は―――」

 

研究の打ち切り、そして被検体の処分。

木場以外は全滅だったそうだ。

仲間たちは全員が毒ガスを浴びせられ、木場の目の前でもがき苦しみながら死んでいった。

 

「僕は仇を討たなくちゃならない。死んでいった仲間たちの無念を晴らすためにも。そのために僕だけが生き残ったんだと思っているし、これまでもそれだけのために生きてきた」

 

自分の手のひらをじっと見つめ、自分に言い聞かせるようにつぶやく。

 

「そう…そのために悪魔なり、力を蓄えた」

「……」

 

思いつめた様な木場の顔を見て俺は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重おおおォォォォォぉぉおいっッッ!!

想像以上にへヴィだったっ!!

小説として呼んでた時はギャグ路線だとおもってたんだけどなー。

 

「僕の話はこれで全部だよ」

「そうか…」

「次は君の番だ。…ここではぐらかすことは許さないよ?」

「大丈夫だ。…だが」

「?」

 

まいったな、この空気じゃ適当なこと言えん。

 

「あー、すまん。俺は今のあいつには詳しくない。だから今の潜伏先についても手がかりすらない。

「…君もあの聖剣使いから聞いて驚いていたみたいだったからね。そこにはもともと期待していなかったよ」

「俺の話は無駄になるかもしれん…それでも聞くか?」

「バルパー・ガリレイの人物像が知りたい」

 

こちらを見つめてくる木場の目は真剣そのものだ。

憎しみだけが募っていたこれまでと違い、復讐の対象が出来た…か。

俺はテーブルの上のグラスを手にし、軽く口を湿らせた。

 

「わかった。…端的に言うとな?母さんと爺さんの仇だ」

「っ!?」

 

木場が目を見開き、息をのんだ。

 

「どういう、ことだい?」

「俺もお前と似たようなもんでな?あのジジイが人為的に生み出したんだ。高位な存在の遺伝子を使ってな」

「なっ!?それじゃあ君は元から人間ではなかった!?」

「いや、どうも俺は失敗作だったらしい。区別な力も持たず、人間として生まれた。それに――」

 

ミハイルは俺が片手間に作られたと言っていた。

よって本命は他にある。

十中八九それが『聖剣計画』。

 

「俺は本命ではなかったらしい。大して期待もしてなかったみたいだ。それでも失敗作は許せんかったらしい。あのジジイの処分ってのが何を意味するか、よく分かってるだろ?」

「…」

 

 

 

 

 

 

「「……」」

「あの男は――」

 

木場がうつむいたまま喋りはじめた。

こちらからはその表情は伺えない。

 

「ん?」

「あの男との決着は僕が自分で着ける。あの男を殺すのは僕だ。譲れない。君には悪いけど、たとえ敵対しても『おう、そうしろそうしろ』――え?」

 

ぽかんとした表情で顔を上げた。

大きな瞳と半開きの口がちゃーみんぐ。

 

「バルパーはお前が倒せ。協力もしてやる」

「な…君にとっても仇だろう!?君の恨みはそんなッ―――」

 

激昂する木場を手で制する。

俺と木場は同じ奪われた者同士。

俺が復讐を軽んじる事で、自分の復讐までも否定されたと感じたのだろう。

勿論俺の中で爺さんや母さんがどうでもいい存在なわけがない。

だが、

 

「俺の中では復讐に大したメリットがない。殺した所で二人が戻ってくるわけでもなし、ちょっとすっきりする位だろう。勿論最初は俺自身の手でと思ったが、お前の話を聞いて気が変わった」

「それは…、それは憐れんでいるのかッ!?僕を、同胞たちを!!」

「…お前の中で同胞の無念を晴らすというのはそんなに軽い物なのか?」

 

ジャキン!!

 

首筋に木場の生み出した魔剣があてがわれる。

もうほんの少し力を加えれば―――

 

「それ以上言うな」

「怒ったのか?」

 

首筋が軽く斬れた。

流れる血が少しこそばゆい。

 

「お前が本当に無念を晴らしたいなら、一人でやるなんて選択肢は出ないはずだ。一人よりも複数の方が確率は上がる。ましてや俺は首を譲ってやると言っているんだぞ?これ以上の協力者はそういない」

「くっ」

「その気があるのならお前は手段を選んではならない。俺をもっと憐れませろ、手伝いたいと思わせろ。本当に譲れないならプライドも捨てろ。それができないなら―――」

 

首に当てられた刃をつかむ。

俯きそうになる顔を髪を掴んで引上げ、目を合わせて言ってやる。

 

「そんな軽い復讐、やめちまえ。お前は人の命を奪おうとしているんだ」

 

復讐、無念を晴らす、敵討ち―――どう言いつくろったところでこいつのやろうとしていることは殺人だ。

この俺が人を殺すななんて言ったらお笑い草。

だが中途半端な理由での殺人は許せない。

 

「同胞は関係ない。お前が決めろ。他者に動機を求めるな」

 

それが快楽のため、金のため、不快感、守るため―――復讐のため…なんだっていい。

ただ、他に責任を転嫁することが許せない。

これは木場祐斗の復讐。死者は何も願わない。

 

「ま、俺が言いたいのはそんなとこ」

 

パッと手を放して椅子に座り直す。

 

「どうして君は―――」

 

木場も少し落ち着いたようで口を開いた。

 

prprprprprpr

 

と、突然電話が鳴り始めた。

 

「…僕のだね。もしもし?ああ、ごめん。いま―――わかった。すぐに行く」

 

最初は何か断るつもりだったようだが、急に顔が険しくなる。

 

「誰だ?」

「兵藤君。いま聖剣使いと一緒らしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……話は分かったよ。正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

「おい木場」

「分かっているよ。手段は選ばない」

 

何事かと慌てて待ち合わせ場所のファミレスに向かってみれば、塔城と兵藤、そして何故か匙までもがいた。

何でも兵藤が自発的に動いて聖剣使い達との共同戦線に漕ぎ着けたらしい。

んで、肝心の聖剣使い二人組はというと―――

 

「もうみゅうまけ(そういうわけ)…んぐ、だ。しかしっはぐ…むいむんないいむんなな(随分な言い分だな)」

「やはり、聖剣計画の―――あー!!ゼノヴィアそれ私のケーキ!!」

「二つもあるんだから、一つくらいいいだろう」

「駄目よ!!二つ食べたいから二つ頼んだの!!」

「では、もう一つ注文しよう。それなら構わんだろう?」

「ええ、そうねっ。それがいいわ!!あ、だったらついでにこのモンブランも頼もっかな~」

「ふむ、モンブラン。私にもひとつ頼む」

「ええ。すみませーん。ショートケーキ一つとモンブラン…五つお願いしまーす」

 

状況の説明を兵藤達に任せてひたすら食っていた。

ってかお前は四つ食うんかい!

テーブル脇には山と積まれた皿がそびえ立っている。

お子様ランチなどに見られる例の旗も万国旗が作れそうなほどに集まっていた。普通一皿一本だよな、あれ。

 

「教会は清貧を尊ぶと思っていたが…」

「みゅのおみにみみにさかりゃうことまなみしゃ(主のお導きに逆らうことはないさ)」

「みゅも、ももぐもめむみみ、んぐ!?げほっみ、みず~」(主よ、あなたのお恵みに感謝します)」

「食うか喋るかどっちかにしろ」

「んぐっ…そうか、では――――」

 

やっと手を止めたか。

未だに目線はこちらと料理を行き来しているが。

今回、兵藤から始まった協力体制を再度確認するために俺は口を開いた。

 

「はあ、とりあえずエクスカリバーについては共同―――」

「がつがつがつがつ」

 

そうか、そっちを選んだか。

 

―――ああ、偉大なる主よ、あなたのしもべに禁欲の教授を願います。

 

この俺を今(さいな)んでいる頭痛は祈りによるものだけではないはずだ。

 

「…話を聞いているだけでいい。同意なら頷け」

 

コクコク

 

二人の聖剣使いは同時に首を振った。

ゼノヴィアの口からはみ出たスパゲッティが俺の顔にミートソースのしぶきを浴びせる。

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

話が終わっても食欲に屈した乙女の進撃は止まらない。

周囲からの目線も痛い。

ホールスタッフはこの席に専属が控えているくらいだ。

彼は一歩も動かずただただ聞こえる注文を入力するのみ。

 

「なんだか彼女たちを敵視しているのが馬鹿馬鹿しくなってきたよ」

「お前らが来る前もずっと食ってたんだぜ?話がひと段落ついたと思ったらまた…お会計って言いたくない」

「イッセーさん…。あの、私もお小遣いから出しますから!!」

「いやいやいや、アーシアに出させるわけには」

「俺は何のためにここにいるんだ?割り勘要因?ああああ、時間が、生徒会が、会長があああ!!」

 

事態の収拾も途中から投げてしまった。

 

「うまいか~?ほれほれ~」

「う~、にゃん」

 

塔城の口にデラックスパフェを運びながら、俺は顔のソースを拭っていた。

 

 

 

 

 

お会計38960円。

俺は涙を流す兵藤にそっと半額を握らせた。

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