赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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第二十二話

「ふう、今日も収穫なし…か」

 

匙がため息をつきながら肩を落とす。

何気に木場の事情を知ってからはこいつが一番積極的だ。

 

「くそッ、どこにいるんだよあいつら!!」

「落ち着けって」

「分かってる。わかってるんだけどよぉ」

 

兵藤は苛立ち紛れに近くの壁を殴る。

兵藤達は部活が深夜行われるので放課後の時間しか参加できない。

深夜は仕事が昼間にある俺と匙の二人で担当することになっている。

 

「…あとは俺たちに任せろ。一番気を付けるべきは―――」

「どうしたんだい?」

「…」

 

この感覚は何だ?初めてのはずだがどこか懐かしい。

 

「??」

 

どうやら分かるのは俺だけ――

 

「ッ!?」

 

慌てて兵藤を蹴っ飛ばして塔城を抱き寄せる。

直後、俺たちがさっきまで立っていた場所に黄金の軌跡が走った。

 

「…何も感じませんでした。この人、殺気が…ない?」

 

腕の中の塔城が呟くが同意見だ。俺が気付けたのもあの得体のしれない感覚のおかげ。

だがさっきの一撃は避けなければ確実に死んでいた。

こいつは―――敵だ。

 

「木場ァ!!」

「分かってる!!」

 

流石というべきか、すぐに立て直した木場がすぐさま襲撃者に切りかかった。

 

「…」

 

相手は無言のまま木場の魔剣を迎え撃ち

 

 

 

 

バキィィン!!

 

そのまま一撃で粉砕した。

 

「くっ!!」

 

木場はある程度予想していたのだろう。

すぐに新しい剣を出して戦闘を続行しようとする。

 

「『天閃』」

 

襲撃者が何事か呟いた瞬間、爆発的に加速した。

あの切っ先すら霞むスピードには覚えがある。

しかし

 

「フリードじゃない?」

 

そう。格好こそはエクソシストのものだが、フリードよりも一回り小柄なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手は木場をはるかに上回る速度で追い打ちを掛けてゆく。

出した剣は出した瞬間に砕かれ、木場は防戦一方。

 

「青江ッ!お前も加勢に行けよ!!」

「無理だ。あれに素手で介入することはできない。辛うじて保っている均衡を壊してしまう。お前はいつでも譲渡出来るように準備をしておけ」

「そんなッ!?」

 

とはいえ、このままでは木場が押し負ける。

 

「匙!!」

「応よっ!!伸びろ、ラインよ!」

 

匙がそう叫ぶと手に出現した奴の神器から黒い触手が伸びた。

蛇のように伸びたソレは相手の腕に絡みついた。

 

「よっしゃ!」

 

匙はそのまま触手を全力で引き寄せた。

 

「ッ!?」

 

力はそんなに強くないのか謎の聖剣使いは体勢を崩す。

木場はその隙をついて距離を開けた。

よし、

 

「木場、俺にも一本寄越せ。できる限り頑丈なやつ。形状はスパタ」

「わかった。でも、限界まで強度を上げても僕の魔剣では」

「分かってるさ」

 

木場から受け取りつつも相手から目を離さない。

どうせ大きい剣を使ってもすぐに砕かれる。それなら取り回しのきく方がいい。

この形状を選んだのにもちゃんと理由があるのだ。

 

「…」

 

二人で聖剣使いと対峙する。

顔は上半分が銀色の仮面で隠されているが、見える部分から推察するにかなり若い。

華奢さと金髪をシニヨンにしていることから、恐らく少女。

 

「七分の一でこの強さ、すべて破壊するのは修羅の道…か」

「ここで殺されちゃあ元も子もない。加勢するぞ」

「うん。こいつには、今の僕一人では敵わない。悔しいけどね」

「木場、青江!俺の神器で可能な限りこいつの力を吸い取る!!お前たちは時間を稼いでくれ!!」

 

匙が大声で叫んだ。

アイツの神器『黒い龍脈』は接続したものの力を吸い取る者だったはず。

触手の強度もなかなかだと聞いた。

しかし匙よ…ソレは相手に伝えてもいいのか?もっとこう、こっそりと―――

 

「…」

 

ふと、相手の視線感じた。

俺を見ている?

さっきから感じる感覚は完全にこいつから発せられている。

俺の知り合い…なのか?

俺から目を離した聖剣使いは、自身の腕に巻きついた匙の触手をじっと見つめ――

 

ブツン

 

何の苦も無く切断した。

 

「なっ、そんな。俺の触手をあんな簡単に!?」

「…匙先輩、役立たず」

「何やってんだよ、匙ッ!?」

 

…なんか匙が可哀想になって来た。

 

「ガチンコバトルしかねぇって事か」

「僕としては望むところなんだけどね」

 

俺たちが同時に切りかかろうとしたその時―――

 

「ほう、魔剣使い。…いや、さっきから多く使い分けているところを見ると『魔剣創造』か。使い手次第で無類の力を発揮する神器だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗がりから三人の男たちが現れた。

やたらデカい筋肉質のハゲと俺たちより少し下くらいの年齢の少年。

二人に共通するのは血の様に赤い瞳。

そして…忘れもしないあの男。

 

「バルパー・ガリレイ…」

「なんだって!?」

「あいつが、木場の同胞たちの仇…」

 

木場が殺気を爆発させて今にも飛び掛かろうとしている。

 

「悪魔の中に私を知っている者がいようとはな。貴様、何者だ?」

「覚えてないのか?まぁ、会ったのは七年前か。見た目もだいぶ変わったしな」

「七年前…すまないね。私の記憶にはない。私の脳は些末なことは記録しないようにできていてね。覚えていないというならそういう事なのだろう」

 

言うねぇ。

母さんたちを殺したのは些細なことってか?

 

「ねぇ、おじさん。やっぱりあの聖剣僕にくれない?」

「ふむ。E3、君ならば聖剣なしでもあのくらいのスピードは出せると思うのだがね?」

「お、おれ。あのちっちゃい子、欲しい。かわいい」

「君、そう言って何人の女の子を壊してきたかちゃんと記憶してる?E1。僕もう後片付けやだよ?」

 

生意気そうな餓鬼は艶のある黒髪にゴーグルをのっけている。

服はパンク風で、小馬鹿にしたような視線をこちらに向けている。

 

「人間のこ、もろい。でも、あくまなら、だいじょうぶ」

 

そう言いながら塔城に粘着質な視線を舐めるように向けるのは筋肉達磨。

見た目通りに脳みそが足りないようだ。

スポポ〇ッチみたいな見た目しやがって、俺の癒しをそんな目で視姦するとは―――万死に値する。

 

「バァァァルパァァァァッ!!!」

 

しまった!!

二人組に気を取られて木場の事を忘れていた。

なりふり構わず一直線にバルパーに突っ込んでいく。

 

「待て、木場!!」

「あああああああああああッ!!!」

 

慌てて全速力で追いかける。

あの二人組が只者なわけないだろうに―――ッ

 

「なにこいつ?」

 

小さい方、E3と呼ばれた方が木場を上回る速度で肉薄し、顔に蹴りを叩きこんだ。

 

「くっ」

 

それでもまだ進もうとする木場だが、こちらからなら見える。

 

後ろで腕を振りかぶっているデカブツが。

速い方が足止めしてデカい方が叩き込む。

単純だが強力なコンビネーションだ。

 

「あー、クソッ」

 

木場とデカブツの間に自分の体をねじ込む。

この場で一番の戦力は木場だ。今倒れられたら俺たちは全滅だ。

デカイのの拳が脇腹に直撃する。

何の抵抗もなく、一瞬であばらが砕かれた。

何つ~パワーだよ。

 

「青江!!」

「先輩!!」

 

川で行う水切りの石が如く飛ばされた俺は、塔城と兵藤の傍まで十メートル以上吹き飛ばされた。

慌てて二人が駆け寄ってくる。

木場も青ざめた顔で同じようにこちらに向かって来た。

 

「問題ない…プッ」

 

腹からこみ上げてきた血反吐を吐き出して立ち上がる。

内臓もいくつか傷ついているな。

木場の方は先ほどの蹴りで脳を揺さぶられたのかふらついている。

 

「つまらんな。今回の『魔剣創造』の使い手ははずれか…E2、もういい。全員始末しろ。ああ、そこの赤龍帝は残しておけよ」

「…」

 

こくりと頷いたのは先ほどまで戦っていた金髪の聖剣使い。

こいつはE2か…シリアルナンバーみたいだな。

 

「そのE2とやらがもっている…聖剣、はフリードが持っていたと思ったんだが…」

「む?ああ、彼とも知己なのか。残念ながら彼は死んだよ」

「死んだ?」

「そうそう。ぜんっぜんいう事聞かないしさ。やっぱり駄目だね、キチ〇イは。僕達三人で殺しちゃった」

「フリード君にももう少し利用価値があったんだが…彼らが先走ってしまってね」

 

後ろにかばった塔城たちに敵からは見えないよう気を付けながら手で逃げろと指図する。

 

きゅっ

 

小猫ちゃんは優しく手を握ってくれました…ってちがう!!なんでその発想に行き着くんだ!!

 

「その三人は本名なのか?」

「…時間稼ぎは無駄だと思うが?」

 

ちっ、ばれてるよな。やっぱり。

目の前のE2が剣を振りかぶった。

 

「いろいろと因縁があったようだが…ここまでだ」

 

その聖剣が容赦なく俺に向かって振り下ろされ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいえ。彼らにはお仕置きを受けてもらわなければなりません」

「私の可愛い眷属に手を出したこと、後悔させてあげるわ」

 

大質量の水と赤い魔力弾がバルパーとE2に殺到した。

 

「ッ!?」

 

初めて大きな動揺を見せたE2がバルパーを抱えて回避する。

攻撃の発生源を見れば、そこには勿論我らが主様達。

 

「やっべ~~」

「部長!!」

「ひィィィィィ!?かかかか会長!?」

 

ここまで両極端なリアクションになるとは…主を間違えたかな?

だが、その安心感は半端ない。

 

「小猫と祐斗が遅いからと探ってみれば…随分と楽しそうなことになっているようね?」

「青江、匙。これはいったいどういう事です?」

 

こちらを叱責するも敵への警戒は解かない。

 

「…あの男がバルパー・ガリレイだ」

「っ!?…そう。貴方が…私の眷属が随分と世話になったようね?」

「その紅髪…なるほど。リアス・グレモリーか」

 

奴は軽く周りを見回して戦況を眺める。

木場は既に復活して殺気を放っているし、兵藤の倍加は完了。

塔城と匙は無傷。そして上級悪魔が二人。

 

「悪魔の姫君が二人か…流石にこの人数では分が悪い。ここは引かせてもらう」

 

ふっと体から力を抜いた奴はそのまま背を向けた。

 

「待ちなさい!!逃がすと思っているの!?」

「いいのかね?そこの下級悪魔たちはともかく、このような場所で君たちが全力を出すなど」

 

近くには民家も多くはないが存在している。

大規模な魔力は使えないだろうし、相手は最悪の手段として人質というカードをとれる。

 

「くっ……」

「いくぞ、お前たち」

「ちぇー」

「…」

「ま、まって。お、おいてかないで」

 

会長たちは見送るしかない。

悠々と遠ざかってゆく四人はすぐに夜の闇に消えていく。

しかしそれでは納得しない奴がいた。

 

「逃がすものかっ!!」

「祐斗!!」

 

主の言葉を無視してそのまま追いかけようと駆け出す木場。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシンッ

 

「いい加減にしてください!!」

 

最初は誰の声か分からなかった。

駆け出した木場をビンタで止めたのは…塔城だった。

 

「小猫ちゃん…」

「先輩は分かっているんですか!?みんな先輩のためにこうやって毎日毎日頑張っていたんですよ!?青江先輩だって木場先輩を庇ってこんなにボロボロになったのに…。今行けば死んでしまいます!!私も、先輩がいなくなるのが嫌だからこうやってお手伝いしました!!」

 

ここまで感情的になる彼女は見たことが無い。

 

「みんなの思いを無駄に…しないでください」

 

それきり彼女は俯いてしまった。

 

「祐斗」

「……すみませんでした」

「後で詳しく話してもらうわ」

「はい」

 

木場も流石に堪えたのかうなだれて剣を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エクスカリバーの破壊って貴方たちね」

 

グレモリーが激しい頭痛に襲われたかのように額を抑える。

 

「すみません、部長」

「ごめんなさい」

 

兵藤と塔城は正座して謝っていた。

木場も正座してはいるが

 

「……」

 

心ここにあらずといった様子。時折俺と目が合っては気まずそうに眼を逸らしていた。

 

「青江、匙」

「はいっ」

「…」

 

こっちはこっちでお説教だ。

どうなるんだろう?最悪追放だろうか?

いや、死刑?

だが、会長は本当にそうなったらどう逃げるべきかと思案している俺を裏切った。

 

「貴方たちが無事で本当に良かった」

 

その顔がどれほど心配してくれていたかを物語っていて

 

「済まなかった」

 

俺は素直に謝罪の言葉を口にした。

いつ以来だろうか?

自分が間違った事をしたなんて毛ほども思っていないが、彼女を心配させたことについては謝っておきたかった。

 

「かいちょ~~~」

 

感動して男泣きする匙。

 

「青江の治療、貴方の眷属にお任せしても?」

「ええ。大丈夫よ」

 

またアーシアの世話になんのか…常連だな。

 

「では匙、お尻をこちらへ」

「へ?」

「尻叩き」

 

右手に魔力を込めて準備体操を始める会長。

 

「行きますよ、匙。青江は…そこまでボロボロでは仕方がありませんね」

「え、ちょ、あれ?い、いやあああああああああああ!!」

 

ズルズルと引きずられてゆく匙元士郎。

俺は彼に心の中で最敬礼を―――

 

「青江も、怪我の治療が終わり次第生徒会室へ来なさい」

「え?」

「お仕置きです」

 

ぶんっぶんっと何かを振る仕草をする我が主。

匙は尻叩きらしいけど、俺に対するジェスチャーおかしくない?

なんか完全に鞭打ちみたいなんだけど。

 

「ではリアス。私はこれで」

「え、ええ…ほどほどにね?」

 

グレモリーも若干引いている。

 

「~~~♪」

 

皆の困惑の視線に気付かぬまま、会長は鼻歌を歌いつつ去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アーシアに治療してもらったのだが。

俺の怪我が割とシャレにならないレベルのもので、全員から『もっと痛そうにしろ!!』と怒られてしまった。

 

 

解せぬ

 

 

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