はっはっは、こんなおもろいキャラ殺すわけないじゃないか。
「フリード・セルゼン…」
「そんな!?死んだはずじゃあ!?」
「やーっぱ生きてたか…」
「おおおおお、シューちゃんは分かってたん!?」
他の全員が唖然としている中、俺だけがあきれた声を出した。
「あんな奴らが殺れるんなら苦労せんわ」
「んんんん~、俺っち感激…って邪魔邪魔」
フリードは目の前に倒れ伏すE2を足で蹴り飛ばして道を作り、スキップでこちらに向かって来た。
そして―――
バタンッ
俺の目の前で顔面から倒れ込んだ。
近くに来て分かったが、奴の白い神父服はどす黒く血に染まっている。
「何やってんのお前…」
「死んだふりしてからずっとこの校舎でスタンバってました」
顔を上げず、地に伏したまま答えた。
「ずっとって…」
兵藤が何とも言えない顔でつぶやく。
「よく見つからんかったな」
「旦那が体育館吹っ飛ばしたときはレバーがチルドされました」
「あ、そう」
「フリードッ!!き、きさ、きさま自分が一体何を…何故!?」
バルパーが金切り声をあげて駆け寄る。
あまりにも感情が昂ぶっている為、発する言葉も支離滅裂。
「使い捨て感バリバリポジだったし~、エクスカリバーもパワーアップするってゆ~じゃん?場所もここって知ってたし…これはもう漁夫の利するしかないっしょ」
もぞもぞと動いてエクスカリバーを抱き枕の様に抱きしめて頬擦りする。
うわ、足まで絡めてら
「その、薄汚い手で、私のエクスカリバーに触れるな!!狂人めが!!」
眼を血走らせ、口の端に泡を吹かせながら絶叫する。
あ、唾が靴に掛かった。
めしょっ
顔面に足の裏を叩きこんで黙らせる。
ジジイのヒスほどキモイ物もそうはない。
バルパーは蹴られた勢いのまま仰向けにひっくり返った。
「へぶっ」
背中を強かに打ったのだろう。咳き込んで苦しそうに悶えている。
自身は受け身を取れないほどインドアなんだな。
「さて…」
少し離れた位置で倒れているE2に歩み寄る。
胸を突かれたせいで肺をやられたのか、呼吸するたびにヒュー、ヒュー、とヤバげな音が聞こえる。
「ふむ…」
首根っこを掴んで猫の様に持ち上げる。
顔色は青く、このまま放っておけば確実にあの世行き。
「やっぱ似てんなー」
顔は西洋人形の様に整っているが、それでも姫島を連想させるには十分なほど似ている。薄く、虚ろに開かれた瞳も、彼女と同じく真紅。
「…よし」
一旦降ろして背中に手を回し、膝裏を抱える。所謂お姫様抱っこ。
「どうするつもり?」
「アーシア、こいつ助けてくんない?」
「えっ?」
グレモリーの目が釣り上がり、姫島からは殺気があふれ出た。
「どういうつもりだよ、青江!!」
「あなた、E1とE3は容赦なく殺したわよね?どういう風の吹き回し?」
「美少女だから」
「「「「「…………」」」」」
「まさか、それだけじゃないわよね?」
「それだけ」
「「「「「…」」」」」
グレモリーは腕を組み、瞑目して口元を引き攣らせる。
額には青筋が浮いている。
他の連中も同じ様な顔をしている―――と
バシィッ
俺のすぐ横の地面が雷撃によって弾けた。
「青江君、お巫山戯はそこまでにしましょう?」
「…姫島先輩」
彼女は再び雷撃を手に宿しつつ微笑む。
しかし、薄く開かれた瞳には有無を言わさぬ殺意がありありと見えた。
俺は敢えて彼女を無視してグレモリーに語り掛ける。
「殺すには惜しいと思わんか?ここまでの剣の技量、聖剣への適性。バルパーの話から察するに善悪の判別も付いていない」
「何が言いたいの?」
「いや?確かどっかの魔王の妹は『騎士』の駒が余ってたなー、と。ちゃんと教えれば常識は身に付くかもしれん。そのくらいのリスクには見合う人材だなーと」
グレモリーの眉がピクリと動く。
フフフ、揺れてる揺れてる。
「僕も賛成です」
ここで思わぬ助けが来た。木場だ。
「彼女の剣はとても純粋でした。もう一度、手合せしたいと思える。今度は一対一で勝ちたいとも。それに…」
木場は最後の言葉は濁らせて俺を見た。
そうか、木場には話したから気付いてるのか。
こいつが俺の『妹』だという事に。
「…アーシアはどうなの?」
「わ、わたしですか?」
「私たちがどう話しあったとしても、最終的には貴方の手にゆだねられるわ」
アーシアはこうしている間にも刻一刻と顔から血の気の引いてゆくE2を見た。
そして――
「わ、わたしはっ…わたしは助けたいです!!たとえその人がどんな立場であっても、わたしの力で助けられるのならっ!!」
きゅっと胸の前で拳を作って、相手の目を見て伝えた。
「そう…決まりね」
「リアスッ!!!」
それまでは肩を震わせるだけだった姫島が、我慢の限界だと言わんばかりに叫んだ。
「朱乃、貴方の気持ちも分からなくはないわ」
「ならっ」
「でもね、これは私の眷属としての総意。そして『王』である私の決定よ」
「兵藤君は!?」
「うぇ!?」
事態についていけず、目を白黒させていた兵藤が姫島に詰め寄られてたじろぐ。
「貴方も賛成なの!?アレを助ける事に!!」
「お、俺は…」
若干気圧されつつ、仰け反りながらも兵藤は
「俺も賛成…です。やっぱり、目の前で人が死ぬのを見過ごすのは…」
「…アーシア、頼む」
「はい…」
俺がゆっくりとE2を横たえると、横目で姫島を気にしつつアーシアが治療を開始した。
「…わかりました」
「朱乃…」
「ですが、更生の余地がないのなら…」
「当然よ」
「おのれ、おのれ、おのれえええええ!!」
ようやく息が整ったバルパーが立ち上がろうと四つん這いになっていた。
俺は奴の元に歩み寄り、頭を掴んでもう一度叩き伏せた。
「木場…どうする?お前がやるか?」
「いや…僕に復讐はもう要らないよ」
「そうか…では、俺がもらおう」
「なんだ、わたしを殺すか!?」
「お前にはいくつか聞きたいことがある」
顔面を掴まれたままにもかかわらず、射殺さんばかりの勢いで睨んでくる。
「Eシリーズはもういないのか?」
「…」
ごしゃ
地面に顔を叩きつける。
「もう一度聞く、Eシリーズはもういないな?」
「あ、あの三人で全てだ…他は処分した」
「バラキエルの遺伝子はどこから?」
「…」
震える指で上空のコカビエルを指差した。
奴は戦いが起こっていないことが不満なのだろう、懐中時計を眺めながらこちらには目もくれない。
「ペンドラゴンの方は?」
「『禍の団』というテロリスト集団だ」
「グレモリー先輩、知ってるか?」
「いいえ。でも、お兄様ならあるいは…」
騎士王の遺伝子を提供できるテロリストなんてヤバそうなのがノーマーク?
「詳細は?」
「し、知らん。あ奴らは同じ組織名を名乗りながら細分化しすぎている。取引した私でさえ全容は掴んでおらん!!」
「そうか」
それは、かなり厄介だな。
「他に質問のあるやつは?」
「現存する聖剣計画関連の実験施設は?」
「…」
ガツン
「フ、フランスとイタリア、に一つずつ。イギリスには教会直属のものがいくつかあるはずだ!!」
「信憑性は?」
「どうやって証明しろというのだ!!少なくとも私が教会にいた時にはあった!!」
「部長…」
「ええ、探りを入れてみるわ」
「この件に関しては私も協力しよう」
ゼノヴィアも聖剣計画については納得がいっていないのだろう。
「他には?」
「「「「「…」」」」」
「ないか…では俺から個人的なものを一つ」
「な、なんだ?」
「本来のE2と言っていたが、ナンバリングはどうやって付けているんだ?」
一見してどうでも良さそうな質問。
こちら側の連中も不思議そうに顔を見合わせている。
「いいから答えろ」
「ナンバリングに大した意味などない!!ただの管理番号、欠番は埋める。それだけだ!…こんなことを聞いて何になる!?」
今回の質問ばかりは本当に意図が分からないと困惑を見せる。
「俺を思い出さんか?」
「し、知らん、貴様など―――」
「俺の家はな…そこそこ名の知れた武術家の家系だったんだ」
「それが―――まさか」
やっと気が付いたか…クククク。
驚愕に見開かれていた奴の目が細められ――――顔が笑みを形作る。
「は…ははははは、ひーっははははははは!!貴様、貴様がッ!!お前が私を終わらせるか!?母を殺され取り乱した貴様が!!祖父の首の前で呆然としていた貴様が!!あの無力な、出来損ないが!?」
今度の哄笑は木場の時の様な狂気ではない。
本当に可笑しいから笑っている。
「クククク、ハハハハハ…。そうだ。俺だ、俺がお前を殺す…譲ってもらったからな」
「E1とE3を殺ったのも貴様だったな!!どうだ!?兄弟を殺した感想は!?」
「え…」
「ちょっと、それは一体―――」
「嘘…嘘よ」
外野がざわめき立っているが今は気にならない。
ああ、やはり俺は心の中でこいつに執着していた。
「別に、どうとも。見ず知らずの血縁なんぞよりも、俺はこの町を選ぶ」
「そうか…ははははは」
「クックック」
復讐が出来るからうれしい訳では無い。
だが、笑える。
「つくづくこの地には因縁があった!!聖剣計画、バラキエルの娘―――だが、これは、これは笑うしかない!!」
笑う、笑う、笑う。
二人で顔を突き合わせて笑う。
嬉しい訳でも、愉しい訳でもない。
ただ可笑しいから笑う。
「ハーハーッ、ハ―――!!」
「ははははははははは―――!!」
運命と言うしかないようなこの陳腐な因縁を―――
「ふう…笑った笑った。ああ、俺は別にアンタのしたこと自体はどうとも思ってない。木場の件も、『木場』だったからだ。他だったらどうだったかな」
「それは許容していたと?」
「いんや。そうさな…どうでもいい、だ」
自分の知らないところで悲劇が起こる。
そんなの日常茶飯事だ。
「それに、そこまで純粋に聖剣を求めた渇望は嫌いじゃない」
「分かったような口を聞きおって」
「ま、手を出したのが俺のお気に入り…母、祖父、木場、そして姫島だった。運が悪かったな」
「ふん…恨むぞ、出来損ない」
「存分に」
首筋に剣をあてがう。
俺を恨め、俺を憎め、お前の夢は俺が潰す。
その憎悪も無念も、一身に受け奪い尽くそう。
俺は―――強欲なんだ。
「悪い、時間を取った。ただでさえ押してるってのに」
「あなた…」
「話は後だ。来るぞ、本命が」
全員が俺に言いたい事があるだろう。だが、時間がない。
上空を見上げる。
「茶番は終わったか?」
「おう、またせたな」
「では―――始めよう!!戦いを!!これが、開戦の狼煙となる!!まずは誰だ!?グレモリーか!?バラキエルの娘?赤龍帝?無論、全員でも構わんぞ!!」
十枚の翼を広げて朗々と謳う。
放出する闘気は最早重圧となり俺たちにのしかかる。
「イッセー、朱乃、祐斗、小猫!!出し惜しみは無しよ!!迷いも捨てて、どんな手を使っても勝つのよ!!青江君も、その傷が治り次第参加して!!」
また回復か…締まらんなー。
少年誌の主人公はどうやってあんなに連戦しているんだろう?
「E2はどうだ?」
「はい!!今はもう安定しています」
「そっか…ありがとう」
「いえ!シュースケさんのおかげで見えましたから。私のやりたいこと!!」
―――たとえその人がどんな立場であっても、わたしの力で助けられるのならっ!!
ドォォォォォン!!
「ふははははははっ、流石は赤龍帝。譲渡すればリアス・グレモリーの力もここまで上がるか!!」
上空では激しい戦闘が行われている。
さっきのは譲渡を受けたグレモリーか…。
ダメージは通っているようだが、ドーピング込みであの程度じゃあ…。
「「はああああっ」」
剣士二人も善戦してるが、相手の剣技も凄まじい。
伊達に歳くってないってか。
「やべぇな…」
「やべぇねぇ」
未だにうつ伏せのままフリードも呟く。
「見えんのか?」
「いや、吾輩の命が」
「ああ」
そういやこいつも重症だったな。
「…アーシア、回復ってまだいける?」
「はい…でも、もうあと一人が限界です…」
汗だくのまま彼女は気丈に答える。
本当は既に限界を超えているのだろう。それでも―――
「…フリードさん、ですか?」
「ああ、今は猫の手でも借りたい。使えるんだろ?エクスカリバー」
「えー、きょーとー?そんなんガラじゃないってかキャラじゃないってかー。シューちゃんとは殺し合いたいんだしー」
「あいつ、強いぞ?」
ピタリ、とグニャグニャしていた動きが止まる。
「…」
「聖書にのってるらしいから?自分の力に自信もあるみたいだなー。自分が死ぬわけないって顔だ」
ピクピク
「わんもあぷりーず?」
あと一押し。
「見てみたいと思わない?あいつの屈辱の顔、命乞い」
「いよーっし!!アーシアたん、かもんかもーん!!ヒーリングプリーズ!!」
狂人復活。
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