赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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停止結界のヴァンパイア
第三十話


「コンドームを買おうと思うんだが、何かおすすめは無いか?」

「は?」

 

授業参観の朝、ホームルームまでの時間を潰すため読書をしていた俺にかけられたのはそんな言葉だった。

質問したのはいたって真面目な表情のゼノヴィアだ。まぁ、こいつは普段からこんな顔だけど

 

ゼノヴィアはなんとグレモリーの眷属になった。

イリナに連れられて一度は教会に帰ったらしいのだが、教会は神の不在を知ってしまった彼女の受け入れを拒否。

更にはイリナに打ち明けようとしたことで異端認定を受け追放されてしまった。

物心ついた頃から教会に所属していた彼女には教会関係者を除いてしまえば頼れる人間が誰もいなかった。

 

「あっ、ゼノヴィアさんっ。おはようございますっ」

「アーシアッ!!待っていたぞ!!」

 

先程までの不愛想な表情は何処へやら。

アーシアと兵藤が教室に入ってきた途端、顔を上気させて興奮した様子で彼女に駆け寄りペタペタと体をまさぐる。

 

「元気だったか?どこか体に不調は?朝ごはんはちゃんと食べたか?」

「ひゃんっ…もうっ、ゼノヴィアさんくすぐったいです。それに昨日会ったばっかりじゃないですかぁ」

 

そう言いながらもアーシアは満更でもなさそうだ。

きゃいきゃい言いながら二人でじゃれ合う。眼福ではあるのだが…

 

「依存…だよなぁ」

 

ゼノヴィアが行き場を失ったと聞いたアーシアはグレモリーに彼女の保護を頼み込んだ。

かつての自身の境遇と似た点も多かったのだろう。

そうして連れられてきたゼノヴィアはなんていうか…ヤバかった。

 

顔はやつれて眼の周りは隈がくっきりだったし、髪もボサボサ。

体を小さく丸め、虚ろに開かれた眼は何かにおびえたように周囲をせわしなく観察していた。

正直若干引くほどに彼女の精神状態はボロボロだった。

泣いて抱きしめるアーシアを不思議そうに見上げていたのを覚えている。

 

「むふー、ほご…ふー」

「あの、ちょっと…ゼノヴィアさん?」

 

アーシアの胸に顔をうずめて恍惚としている彼女は明らかに変態だが、あの時よりはましだと言える…筈だ。

数日間アーシアと共に、抱きしめられて眠ったというが…なんというか、信仰じみたほどアーシアに依存しているな。

 

「朝っぱらから盛ってんじゃねぇよ、阿呆」

 

ゴスッ

 

「ふごっ…どういうつもりだ?青江秀介。私の至高の瞬間を妨げるとは…」

 

おかしいな、軽く失神する位には力を込めたはずなんだが。

ってか怖い怖い。目からハイライト消えてんじゃねーか。

 

「お前にとっては至高かもしれないがな…アーシアを見ろ。困ってんじゃねぇか」

「なっ……本当か!?ど、どうなんだ?アーシア!?」

 

この世の終わりといったようね様子でうろたえる。

すがるような目でアーシアを見上げるが

 

「その、ちょっと…教室では恥ずかしいというか…その」

「……(ぱくぱくぱく)」

 

恥ずかしそうに俯くアーシアを見て愕然とする。

 

「ああ、アーシアに嫌われた嫌われたキラワレタ…」

「はー…アーシア、別にゼノヴィアが嫌いなわけじゃないんだろ?」

「???はい。ゼノヴィアさんの事は大好きですよ?」

「!?っ…アーシアが私の事を好きってすき…ああ…」

 

体を仰け反らせてビクビクさせている。

ダメだこいつ、早くなんとかしないと。

 

 

 

 

 

「んで?なんでいきなりコンドームなんか?」

 

気を取り直してさっきの話に話題を戻す。

アーシアはクラスの他の連中にあいさつしに行った。

 

「ああ、先日兵藤一誠に性的交渉を持ちかけたんだが…」

「待て」

 

あまりの展開に頭がついていかない。

どうしてそうなった?

 

「悔しい事にアーシアは兵藤一誠に好意を抱いている。互いの絆は出会ったばかりの私では到底届かないだろう」

「…そんで?」

「同じ悪魔になった。だが、私はアーシアとの繋がりがもっと欲しい」

 

ああ、なるほど。

 

「そう、例えば同じ男に愛してもらい共にその子を孕む…とかいったな。ああ、私の子とアーシアの子が兄弟となるのだ…想像するだけで私は…私はああああぁぁぁんん///」

 

こいつぁもう、だめかもしらんね。

 

「なになにぃ?誰が誰に愛してもらうってぇ?」

 

エロ眼鏡の桐生がニヤつきながら俺の机にやって来た。

後ろには少し顔を赤くしたアーシアと兵藤がいた。

 

「うむ、『私が』『兵藤一誠に』愛してもらうのだ」

「ええっ!?」

「ぶごっふ!?」

 

アーシアが驚愕の面持ちで口元に手を当てる。

兵藤も慌てて口を挟もうとするが、その声帯が音を発する前にクラスの男子たちから飛び膝蹴りを受けて視界から消え去った。

 

「でも、いいのかなー?ゼノヴィアっちが抱かれちゃったらアーシアはどうするのよ?」

「問題ない。その時はアーシアも一緒だ」

「それって…3P?」

「ふむ、一般的にはそう呼ばれているのだな」

 

ゴスっガスッベキッメショッ

 

遠くの方で男子勢が集まって何やらエキサイティングしているが、俺には何が起こっているのか想像もつかないな。

…ちょっと食らってろ。昨日俺に『モテたい、モテない』って言ってたやつはどこのどいつだっての。

 

 

 

 

 

 

「やあ、秀介君」

「んあ?…祐斗か」

 

昼休み、いつも通り塔城に弁当を渡した俺は(随分と受け取る事を躊躇われてしまったが)食堂脇の自販機で牛乳を買っていた。

後ろからの声に振り向けばイケメン。

そう、ついに…ついに俺達は名前で呼び合う仲となったのだ!!

 

「どうしたんだ?今日は部室で食うって言ってたろ?」

「うん。昼食は部室で済ませてきたよ。そうだ、秀介君も行かないかい?」

「行く」

 

祐斗はにこりと爽やかな笑顔で誘ってくれる。

俺はどんなところでもついていくつもりだぞ。

 

「あはは、まだどこに行くかも言ってないよ…なんかね、魔女っ子が撮影会をやってるって聞いてね、見に行こうかと」

「魔女っ子?」

 

 

 

カシャカシャカシャ

 

カメラのフラッシュがたかれているのは廊下の一角、何やら結構な人だかりができている。

 

「あれか…」

「みたいだね」

 

…あのカメコ達はどこからカメラを持って来たんだ?ここ学校だぞ?

ウチの学校の写真部の連中もチラホラいるが…

 

「息子たちを撮るよりゃ有意義な使い方って事かね?」

「うーん、確かに父兄の人たちが多いみたいだね」

 

言い方を変えればそこまでするほどにイイ魔女っ娘という事だろう。

うーむ、何とかして近づけないモノか…

 

「おお、秀介か。お前も来てたんだな。手伝ってくれよ」

 

人ごみが切れる瞬間を見計らっていると、匙が近づいてきた。

 

「匙…止めるのか?」

「当り前だ。ここは学校だぞ?それにここはもうすぐサーゼクス様を会長が案内するんだよ」

「なるほど」

 

よしよし、人ごみを掻き分ける口実が出来た。

 

「オラオラ、天下の往来で撮影会たーいいご身分だぜ!!」

 

匙はそう叫びつつ、乱暴に人ごみを掻き分けてゆく。

俺はその後ろについていくだけで良かった。

 

「ほらほら、解散解散!こんなところで人ごみを作るな!!」

 

流石に父兄は学校で問題を起こすのは避けたかったのだろう。

渋々ではあったが、迅速に蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

ありゃ、こうなるんだったら見てるだけで良かったな。

 

「アンタもアンタだ。授業参観に来たんだろうけど、来るならそれ相応のふさわしい格好で来てくれ」

 

ようやく見えてきたな…お、兵藤達もいる。

 

「ぶー、これが私の正装なんだもん」

 

そう言って頬を膨らませるのは件のスゲー美少女魔女っ娘…って

 

「レヴィアたんじゃん」

「あっ、シューくん!!やっほー!!」

 

不満そうな表情から一転、花が咲いたように笑顔になった彼女は衣装のフリルをヒラヒラさせながら駆け寄って来た。

 

「どうしたんだよ、こんなとこで」

「ふふーん♪今日の私はお姉ちゃんとして、妹の様子を見に来たんだよ☆」

「ほう?」

 

妹…ねぇ?

 

「それよりそれよりっ」

「あん?」

 

レヴィアたんは一歩俺から離れるとその場でくるりと回って見せた。

お、パンツ見えた。

 

「どう?どうどうどう?」

 

コスプレの感想を言えということか…

 

「ふむ…」

 

頭のてっぺんからつま先までじっくりと、舐めまわす様に見つめる。

遠慮?向こうから見てくれと言っているのだ。

大丈夫。問題ない。

 

衣装はなかなかに際どいものだ

上はもともと丈が短い服だが、意外に大きい胸に押し上げられて可愛らしいへそが見えている。

下のスカートに至っては短いなんてレベルではない。

普通にしていてもチラチラと白い布が見え隠れしてる。

そして白く華奢な足を包むのはニーハイソックス。絶対領域も完璧。

 

「パーフェクトだ」

「やたー☆」

 

嬉しそうにぴょんぴょか跳ねる。

 

「秀介、知り合いか?」

「ああ、ネット上で知り合った友達だ。こないだオフ会もやった」

 

焼き鳥との試合前にやっていたメールの相手も彼女だ。

 

「オフ会って…」

「兵藤も知ってると思うぞ?面子は俺にレヴィアたんにミルたん。後はリルたんとモモたん…だったか」

「そうそう!みんなでカラオケとかボーリングしたんだよねー☆」

 

ありゃすごかったなー。

俺以外全員がノーバウンドでピンを薙ぎ倒してストライクとってたかんな。

 

「ミルたん?え、それってあの…」

「そのミルたんだ。コスプレ衣装の相談とか製作でよく連絡とってんだよ」

 

松田と元浜も勿体ない。

あいつらは逃げちまったが、ミルたんを筆頭とする『魔法少女戦隊マジカル☆ファイブ』にはレヴィアたんが加入したぞ。

まぁ、ほかのメンツはミルたんとどっこいだが。

ちなみに俺は衣装制作担当だ。

 

 

 

 

 

「なにごとですか、匙。いつまで時間をかけているのです。物事は迅速にかつ適…かく…二」

 

匙が言っていた通り、会長が魔王を案内してここまで来たらしい。

後ろにはグレモリーによく似た紅髪を持つ二人の男性がきょろきょろと周りを見て回りながらついてきている。

しかし、会長はレヴィアたんの姿を認めた途端、ビシリと固まった。

 

「ソーナちゃん!みぃつけた☆」

「おや?セラフォルー、君も来ていたのか」

 

会長に追いついた紅髪のイケメンが声を上げた。

こいつがサーゼクス・ルシファーか。

 

「イッセー、彼女が現魔王セラフォルー・レヴィアタン様よ。…セラフォルー様、お久しぶりです」

「えええええええええええええええええっ!?」

 

兵藤が驚愕の声を上げる。

匙も固まってしまって声が出ない様だ。

 

「リアスちゃん、お久しぶり!!そして、改めて名乗ります☆セラフォルー・レヴィアタン。今現在魔王やってまーす☆気軽に『レヴィアたん』って呼んでね!!」

「…青江君は聞いていたの?彼女が魔王様だって」

 

俺が大して驚いていないことが気になったのだろう。

グレモリーが尋ねてきた。

 

「いんや?さっき初めて聞いたよ」

「ソーナちゃん、どうしたの?ほらほら、お姉ちゃんだよ?感動的な姉妹の再開だよ!!へいへいかもんかもん☆抱きしめて!!情熱的にッ、大胆にッ、激しくッそして百合百合しく!!!ほーるどみーたい(Hold Me Tight)☆」

 

ああ、会長が困っている。

羞恥で赤くなった耳、引き結ばれた口元、ハの字になった眉―――素晴らしい。

 

「お姉さま、お姉さまは魔王なのです。もう少し威厳というものを持っていただかないと」

「『お姉さま』なんて固っ苦しいのはダメダメ。今日は魔王様としてじゃなくておねーちゃんとして来てるんだから☆昔みたいに『おねーたん』でもいいのよ!?私も『ソーたん』って呼ぶから!!」

「~~ッ」

 

会長は縮こまりながらも周囲を気にする。

カメコは散ったが、今度は野次馬が湧いてきている。

 

『うわ、魔女っ娘じゃん…って肌白!?足細!?』

『バカな…二次元と三次元を繋ぐゲートが確立されたとでもいうのか!?』

『てか、あのコ会長に似てない?…妹?』

 

「お、お姉さまが来て下さったことは嬉しく思います。…ですが、その恰好だけは何とか…してください…どうか…何卒…」

 

あ、会長が折れた。

 

「えー、かわいいのにー」

「そもそもどこから入手したんですか、そんなモノ!?魔界にはありませんよね!?」

「えへへー、作ってもらったの☆オーダーメイド、私のためだけの衣装だよっ!!」

「誰にですか!?まさか魔界の仕立て屋に注文したなんてことは…ああ、そうなればシトリー家は笑いものに…」

「おともだちだよ☆」

 

あ…やべ。

 

「…お姉さまに友人?」

「うん、ほらっそこにいるシューくんだよ☆」

 

ギギギ、といった音が聞こえてきそうなほどにゆっくりと振り返った会長と目が合う。

目を見開いて、ついでに瞳孔まで開いた会長が口を開く。

あかん、このままでは死んでしまう。

なにか、ここで気の利いた一言で――――切り抜ける!!!

 

「……サイズさえ教えてくれればお揃いを作るぞ?ソーたん」

 

 

 

 

 




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