赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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第六話

コンコン

「あらあら、お客さんですわ。は~い、少々お待ちください。」

ドアの向こうから姫島の声が聞こえる。ビンゴだな。グレモリーの拠点はここで間違いないようだ。

ガチャリ

ドアが開いて姫島が顔を覗かせる。

「あなたは・・・」

俺の顔を見ると同時に目を丸める。

「夜遅くにすまない。グレモリー先輩はいるか?」

「ええ、少々お待ちくださいな。」

そう言って一旦俺を残して部屋に戻る。

「旧校舎?これが?」

あたりを見回すと、外観からは想像もつかないほど豪奢な造りになっている。

置いてある家具や花瓶も一目で芸術品と分かるほどの贅沢っぷりだ。どこの一流ホテルだよ、学校の予算だったら訴えるぞ。

廊下でこのクオリティーだ、室内はどうなってんだ?黄金の茶室ならぬ黄金の部室ってか?

なんかむかむかしてきた。この花瓶、叩き割ってやろうかな・・・

「なんですって!?」

グレモリーの叫び声がする。

「すんません、冗談です!!・・・・あり?」

なんだよ、中で叫んだだけかよ。びっくりさせやがって、ほんとに割るぞ?

花瓶を手に取る。

「お待たせしました。どうぞおはい・・・り・・・。何をなさっているんでしょうか?」

姫島が部屋から出てくる。

「いや、いい花瓶だなとおもってな。」

「気に入ってもらえて光栄ですわ。その花瓶、私の見立てですの」

「この色気のある曲線が何ともいえないな。」

「百円均一も馬鹿にできませんわね。」

・・・・・・・。

「・・・・・・中、入ってもいいか?」

「はい、どうぞお入り下さいな」

「おじゃまします」

入室する。室内は目も眩むような黄金・・・という訳で無く、なんというか意外と普通の談話室だった。

「そこにおかけ下さい。お茶をお持ちいたしますわ。」

「悪いな」

「いえいえ」

ソファーに腰掛ける。うわ、すっげーフカフカだ。俺の布団よりずっと寝心地が良さそう。

「いらっしゃい。まさかそちらから来てくれるとは思わなかったわ。」

声に振り返ると、グレモリーが隣のスペースから出てきたところだった。初めて近くで見たが凄い美貌だ。

しかし何より目を引くのはその圧倒的なプロポーション。なんだありゃ、メロンでも詰め込んでんのか?

「単刀直入にきくわ。あなた何者?」

正面に腰掛けたグレモリーが威圧感と共に質問してくる。

「何者って・・・、ここの生徒だよ。」

「ふざけないで。あなたのことは学園長から聞いているわ。自分の親友の孫で、眷属におすすめだと。私もいつか勧誘しようと気には掛けていた・・・。でも昨日のはそんなレベルの話じゃない。イッセーの話だと貴方、あのはぐれエクソシストと互角だったそうね?ただの学生がそんな戦闘力を持っているのは異常だわ。」

勧誘って俺も悪魔にするつもりだったのか?あんの糞じじい、最初っからそのつもりだったな?

「異常って、失礼な奴だな。俺んちは代々武術家の家系なんだよ。小さい頃からの訓練の賜物だ。」

実際、フリードとの戦闘に特別な力は使っていない。あんま人間なめんなよ?

「・・・あのシスターとはどんな関係?」

「隣町で会ったんだよ。デートの帰りにな。」

嘘は言ってない。

「へえ?」

グレモリーがにやりと笑う。

「人間のデートは、お腹に穴をあけて川に飛び込むのが一般的なの?」

アアアァァァシアァーー!!口軽すぎんだろ!なんか事情あるのかとか考えなかったの!?

「あ、ああ。意外といいもんだぜ?恋人同士腹を割ってお互いの理解を深めるんだ。ジャパニーズ・ハラキリの伝統はちゃんと受け継がれてんだよ。」

グレモリーが可哀想なものを見るような目で俺を見つめてくる。やめろ、そんな目で俺をみるんじゃねえ!!

お茶を持ってきた姫島までもが慈愛の瞳になっている。

「はあ、・・・・・最後の質問よ。なんであなたイッセーが悪魔だって知ってるの?」

もうだめだ、あのシスターにも、神にも見捨てられた。えり・えり・れま・さばくたに。

がっくりと膝をついていると

「どうぞ、お茶です。」

姫島が湯呑を手渡してくる。

ずずっ

うまい。

「うまいな。玉露か?」

「ええ、お客様にお出しするお茶ですもの。」

「お茶菓子とかないか?」

「ええっと・・・ああ!」

ぽんっと手を合わせる姫島。

「たしか戸棚におせんべいが・・・」

「いい加減にしなさい!!ふざけてても時間の無駄よ!往生際の悪い。それと朱乃、おせんべいは昨日小猫が食べちゃったわ!!」

ぶちきれて机を殴るグレモリー。紅髪がぶわっと逆立つ。ジブリだジブリ!!

「えーそーですよ。俺は普通じゃないですよ。神器持ちですもん。それがなにか?」

もうどうにでもなれだ。

「開き直ったわね・・・って神器!?」

グレモリーが目を剥く。

「なるほどね、そういうことなのね」

口元に手を当ててぶつぶつ呟く。

こんなどうでもいい仕草でも絵になる。美人はお得だ。

「あなたのお腹、穴をあけたのは堕天使ね?」

いきなり核心をついてくる。頭の回転早いな。

 

カチコチと時計の音が響く。

「この部屋にはあんたら二人しかいないのか?兵藤はどうした。」

「はあ、・・・祐斗、小猫。出てきて頂戴。」

「はい」

「・・・・」

木場と無口ロリっ娘(たしか塔城・・・だったか?学園の食いしん坊マスコットだ。可愛かったので元浜に聞いていた)が物陰から出てくる。全然わからんかった。

グレモリーに殺気を向けていたら今頃俺は挽肉だろう。

「悪いわね、素性も分からない者をそのまま招き入れるほど悪魔の世界は平和じゃないの」

全然申し訳なく思ってないよね?

「まさかこの二人も悪魔なのか?」

「ええそうよ。彼らは私の下僕。ナイトとルークよ。」

ルークってチェスのか?

俺が不思議そうな顔をしていると

「ああ、悪魔への転生にはこの悪魔の駒が用いられるわ。そして駒ごとに特性、相性がある。騎士はスピードの強化って具合にね。」

「・・・・・・・・・・・・・」

じっと四人を眺める。

 

リアス・グレモリー。紅色の髪、透き通るような白磁の肌、青い瞳。モデル顔負けのワガママボディ。

 

姫島朱乃。艶のある黒髪、大和撫子を体現したかのような雰囲気をまとう美女。

 

木場祐斗。男すらドキッとする甘いマスクに色気のある涙ぼくろ、絵本から出てきたような完璧王子様。

 

塔城子猫。小学生かと思うほどのロリボディにあどけない童顔、学園のマスコット的存在。

 

「学園の綺麗どころばっかじゃないか。グレモリー先輩の趣味か?」

夜な夜なこの面子でただれた宴を?やばい、ドキドキしてきた。

「なんだか邪念を感じます。この人も変態さんですか?」

塔城がジト目でこちらを見つめる。

ぐふっ、なかなか効いたぜ。毒舌無表情無口ロリ美少女だったか・・・・・アリだ、全然アリだ。

「そんなわけないでしょう。」

じゃあ、

「じゃあなにか!?悪魔になると美男美女になるってのか!?」

ちょっと心がゆらいじまうじゃねえか。

「・・・・・イッセーに会ったでしょう?」

あっ(察し)

「ユメもキボ―もないぜ。」

 

 

 

バン!!

「部長!!アーシアが、アーシアが!!」

兵藤が息を切らして部屋に飛び込んでくる。

「・・・またあのシスターと会ったのね。」

「アーシアが、女の堕天使にさらわれました。助けようとしたけど、俺じゃだめだった!逆に庇われて・・・。くそっ!お願いします部長、アーシアを助けてください!俺はどうなってもいいですからッ!!」

女の堕天使・・・。

パン!

部屋に乾いた音が響く。音の発生源は兵藤の頬、グレモリーがしばいたのだ。

彼女の顔は厳しい。

「何度言ったらわかるの?駄目なものは駄目よ。あのシスターの救出は認められないわ。」

呆けていた兵藤の顔が引き締まる。そして静かな、しかし決意のこもった声で

「なら、俺一人でも行きます。あいつ、儀式って言ってた。堕天使の儀式でアーシアに危害が及ばない保証なんてどこにもない!!」

アーシアを使った儀式なんざ、神器関連に決まってる。やばいモンを復活させんのか、神器そのものを奪うのか、大体そんなとこだろう。

「あなたは本当に馬鹿なの?行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることはできないのよ?それがわかっているの?」

そう兵藤に問いかけるグレモリーの拳は固く握りしめられ震えている。

「兵藤、お前本当に分かってんのか?悪魔が神の使徒を助けるために、堕天使に喧嘩を売る。これがどんな意味を持つかわからんわけじゃないだろう?最悪お前が原因で戦争が起こるぞ?」

問いかける。兵藤はこちらを向いて目を剥いた。

「青江!?なんでお前がこんな所に!?・・・・わかってるさ、だから――」

再びグレモリーの方を向いた兵藤は

「俺を眷属から外してください。教会には俺一人で行きます。」

そう言った。

 

 

「そんなことできるはずないじゃない!」

ついにグレモリーは激昂する。無理もない、兵藤は今行けば確実に死ぬ。アーシアも助けられない。

「青江だってそうだろ!?アーシアに助けられて、彼女がいい子だって知ってる!」

「ああ」

「俺は・・・俺はアーシアの友達になったんだ!俺は友達を見捨てるなんて、絶対に嫌だ!」

そうか・・・やはり兵藤がアーシアにとっての・・・・

「いいだろう。」

「「「「「えっ!?」」」」」

「兵藤、俺も教会につれてけ。」

「あなたまでっっ!!」

グレモリーは歯ぎしりをする。

その時、姫島がそそくさとグレモリーに近づき、耳打ちする。

姫島の表情も険しい。報告を耳にしたグレモリーの顔もさらに険しくなる。

グレモリーは兵藤を一瞥し、室内の全員を見渡すように言った。

「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね。」

「ぶっ部長!まだ話は終わって―――」

愕然と訴える兵藤の口をグレモリーが人差し指でふさぐ。

「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ―――」

彼女は兵藤に二つの助言をした。

 

ひとつは兵藤の悪魔の駒、ポーンの特性について。主の許可があればポーンは昇格し、ほかの駒の特性を使うことができる。

 

もう一つは神器と所持者の精神の関係。神器の性能は使い手の精神に左右されること。

 

「最後にイッセー、『兵士』でも『王』をとれるわ。大丈夫、あなたは強くなれる。」

伝え終わった彼女は姫島と共に魔方陣を使って消えてしまった。

「ごめんなさい、部長。」

消えた方向に頭を下げている兵藤。

「うし、さっさといくぜ。おら兵藤、これがあの教会の見取り図だ。」

野宿しながら頑張った成果だ、しっかり活用しないと。まあこの図は図書館にあったんだがな。

「なんでこんなもん持ってんだよ。まさかお前、もとから・・・」

「俺はあの子に命救われてんだぜ?」

あの子はもう少しで過去を乗り越えられる。

アフターケアもきっちりしないとな。

「青江・・・・、なんか良い子過ぎて気持ち悪ぶべらっ!」

失礼なことを言おうとしたした兵藤の頭に回し蹴りを叩きこむ。

自分でもガラじゃないのは分かってる。基本外道なこの俺が最近はなんか客観的に見るとすげぇいい奴っぽい。

恩義を感じている部分もあるが、どうも彼女を放っておけない。

まあ、目的の半分はアーシアをさらった張本人であろう夕麻なわけだが。

はあ。

「兵藤君、青江君。」

木場が俺達を呼び止める。

「どうしても行くのかい?」

「俺は行かなくちゃならない。アーシアは友達だからな。俺が助けるんだ。」

しっかりと木場の目を見据えて答える兵藤。

「殺されるよ?エクソシストの集団と堕天使に新米悪魔と人間だけで挑むなんて、正気の沙汰じゃない」

「それでも行く。たとえ死んでもアーシアだけは逃がす。そうだろ?青江」

「えっ?俺も死んじゃうの?」

「俺だけ死なすつもりだったの!?」

「ぷっ、・・・・・ふふふふ。面白いなぁ、君たちは」

くすくすと笑いだす木場。そして

「僕も行く」

「なっ」

「僕はアーシアさんをよく知らないけど、君は僕の仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕は君の意見を尊重したいとも思う部分もある。それに部長も暗に行くことを許可してたんだよ?」

なんてやつだ、いうセリフまでイケメン過ぎる。そんな程度の理由で死地におもむくとは。

「えっ!?え??部長が認めてたって、え?」

やっぱ気付いてなかったのか・・・。まあ兵藤だしな。

「グレモリー先輩が言ってたろ、『私が敵の陣地と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れた時、王以外の駒に変ずることができる』ってな。お前ら悪魔、ひいてはリアス・グレモリーの敵である神の陣地、その拠点たる教会には彼女の眷属を傷つけた『敵』がいる。プロモーションとやらの条件はそろったろ?」

「あっ」

やっと気付いたか馬鹿め。

「もし部長が本当に行くことを認めてなかったら、君を閉じ込めてでも止めると思うよ」

木場は苦笑する。

「・・・・・私も行きます」

小柄な少女がこちらに一歩踏み出す。

「なっ、小猫ちゃん?」

なんかその呼び方おかしくね?なんだよ小猫ちゃんって。

頭の悪いジゴロみたいじゃねえか。

親なのか知らないが名前つけたヤツネーミングセンス無さすぎだろ。

「・・・いいのか?」

「・・・・三人だけでは不安です。」

「成功の暁には自作スイーツを献上しよう」

「ぜひ」

がっしと握手を交わす俺たち。彼女が食いしん坊なのはリサーチ済みだ。

しっかしちっちゃい手だな~。ぷにぷにしてる。

「感動した!俺は猛烈に感動しているよ、小猫ちゃん!」

感動した様子で小躍りする兵藤。

 

小猫ちゃぁぁぁぁぁん!無表情で何考えてるかわからないけど、その内に秘められたやさしさに触れられた気がしたよ!

 

とか思ってそうだな。

「あ、あれ?ぼ、僕も一緒に行くんだけど・・・・?」

完全に取り残された木場が捨てられた子犬のような顔をしている。

キュン

あれ?

きゅきゅん

お、おかしい。今木場に猛烈に萌えている自分がいる。

俺はやばい奴だったのか?

木場をじっと見つめる。こいつ華奢だし、顔立ちも中性的で線も細い。

ひげも全然生えてないし、色白で見るからにすべすべの肌だ。

兵藤もさすがにこいつはハーレムに入れないだろうし、俺が・・・・

「???どうしたんだい、青江君」

はっ!俺は何を・・・

「いっいや何でもない。協力してくれてありがとうな、木場」

あぶなかった。禁断の扉の鎖が緩んでいたようだ。

「うん、どういたしまして」

ぱぁっと顔を輝かせてはにかむ木場祐斗。

ガチャン!!

 

 

 

 

どこかで扉の開く音がした・・・・・。

 

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