赤龍帝と青いヤツ   作:ニッカリ

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まだ一つだけだけど、感想ってうれしいもんですね。
お気に入りもたくさんしてくれていて、モチベーション上がってます。


第八話

「ふははははは。・・・・・貴様、思い上がるのもいい加減にしろよ?」

 

哄笑したかと思うと直ぐに笑みを消し、隠し切れない怒りをぶつけてくる。

そりゃそうだ。堕天使に人間が単身立ち向かおうというのだ。

第三者からすれば笑い話だが、当事者はコケにされたという思いが強いだろう。

 

「今宵の俺は一味ちがうぜ?・・・じゃじゃーん!!さっき鹵獲した剣と銃~~~」

 

そう言って懐から取り出したのはご存知我が愛銃デザート・イーグル。

そして柄だけの剣。

 

「ふふん、これで俺もジェダイの騎士だぜ!!」

 

スイッチ・オン!!

ブオンという音と共に柄から光の剣が出てくる。

ヴォン、ヴォン、ヴォヴォヴォン

光の剣を振り回す。脳裏には夢にまで見たオビ〇ンの姿が・・・

 

「でも俺、ビームサーベルよりゃ重斬刀なんだよなあ。」

 

ブオン

音を立てて堕天使の手にも光の槍が出現する。

槍からはタービンが高速回転する際のものに似た音が鳴り響いている。

 

「我ら堕天使に光の力で向かってくるか」

「効くだろ?じゃねえと堕天使と天使、同じ光使い同士戦争にならん」

「ふん!」

 

ドーナシークが槍を投擲する。

槍は山なりの軌道を描いたりすることもなく真っ直ぐに俺に向かってくる。

 

「らあっ!!」

 

右手に持った光剣を槍に叩きつける。

二つの光がぶつかり合い、バチバチと火花を散らす。

俺はそのまま槍を弾---けない!?

俺の剣は槍に押し負け、槍は俺の二の腕を半分抉り去る。

内側から肉を焼かれるような激痛が走る。

 

「くっ」

「残念だったな」

 

イカン、右腕が使えなくなった。剣と銃どっちを捨てるか・・・

あたりを見回す。いくつか塔城が引っこ抜いているが長椅子はまだ残っている。遮蔽物として使えるだろう。

ここは室内、奴も翼で飛び回る事はしない。

となると・・・。

 

「すまんな、相棒。今日の出番はここまでだ」

 

俺は剣を選んだ。

 

 

 

 

 

バキッ、メシィ!!

光の槍が長椅子を破壊してゆく。

あれからしばらく椅子の陰に隠れてヤツの攻撃を凌いでいる。

簡単に貫通されてしまっているが目的は盾でなく目くらましだ。

 

「俺といい塔城といい、今日一番のリーサル・ウェポンはこいつだな」

 

隠れながら長椅子の角を叩く。

 

「どうした?隠れてばかりでは俺には勝てんぞ?」

「俺の役目は時間稼ぎだって」

 

どこぞの弓兵の様にはいかんのだよ。

 

「なるほど、だが本当に隠れているだけで生き残れると?」

 

んなわきゃない。もうすぐ長椅子も尽きるし、あいつらが地下で死ぬ確率も存在するのだ。

こいつを殺さない限り俺が生き残る道は無い。

 

常に現実的に最悪の状況を想定せよ、されどロマンは忘れるなってな。

 

椅子の裏から飛び出る。

ドーナシークがすぐさま反応し、右手の槍を投げてくる。

そう、やつは 投擲 してくるのだ。

ギリギリまで引き付けてから右手側に跳ぶ。

 

「小賢しい!!」

 

人型である以上、体の外側に投擲することはできない。

槍は俺を掠めただけに終わった。

 

「接近戦だ」

「人間風情が、思い上がるな!!」

 

光剣で切りかかる。

ドーナシークも槍を一本構え応戦してくる。

剣と槍がぶつかる度にバチバチという音が鳴る。

 

ヴォンヴォン、バチィッ、ヴォヴォン、ジジジ、ヴォン

 

・・・・音だけ聞くとまんまあの映画だな。

槍の最大の特徴はやはりそのリーチだ。

突きが印象的だが、本当に厄介なのは実はリーチを生かした薙ぎ払いである。

こいつら堕天使の槍は刃の面積が大きく、薙ぎ払いで両断することだって可能だろう。

対処法としては超接近戦。相手に攻撃の隙を与えないことだ。

しかし俺の光剣はこいつの槍とまともに打ち合えばすぐに駄目になるだろう。

武器を庇いながらの戦闘になる。

更に俺の力ではヤツのガードを崩せない。

よって必然的に受け流すしかないのだ。

正直ジリ貧である。

 

「・・・・・・・・・くだらん」

「あ?」

「やはり貴様ら人間と我々堕天使は根本的に次元が違うのだ・・・・・ふん!!」

 

ぼそりとつぶやくと奴は一際力を込めて槍を振りぬく。

早えぇっ!

とっさに光剣を槍と体の間に割り込ませる。

パキィィィィンンン

ガラスが砕ける様な音を立てて光剣が砕け散った。

 

「っ!!」

 

俺は五メートルほど吹き飛ばされて地面を転がる。

刃を失った柄はすぐ傍に転がった。

 

「膂力、スタミナ、動体視力、肉体の強靭さ、無論光の力も全てにわたって貴様は私に劣っている」

 

ゆっくりとこちらに絶望を与えようとするかの様に歩いてくる。

やっぱ桁違いだな。堕天使の基礎能力は全て人間を超えている。

戦闘能力とかそういうことじゃない。単純に『強い』のだ。

 

「ただの人間にしては驚異的。だが、それだけだ」

 

目の前に立つドーナシーク。

俺はふらつきながら立ち上がり対峙する。

絶体絶命だ。

攻撃を防ぐ手段は無く、右腕はお釈迦。

今から隠れようとしてもあの槍に串刺しにされるのがオチだ。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・はあ。ここまでか・・・」

 

「ほう?あきらめたのか?」

 

ドーナシークは小馬鹿にしたようにせせら笑う。

 

「いや、夕麻までは残しとくつもりだったんだけどな」

「夕麻?なんのことだ。貴様の女か?」

「ああ、ついこないだデートしたんだ。喧嘩別れしちまってな。ここにいると思って来たんだが」

「何を言って・・・っ!!!!まて、貴様っ!!」

 

 

 

 

目を瞑り、思い浮かべる。

ふくれっ面をする彼女。

イルカショーに夢中になる彼女。

夕焼けの中、艶やかな笑みを浮かべる彼女。

そして腹部に感じた痛み。

 

「神器――――――――――」

 

全てが蘇る。

腹に異物の侵入する感覚。

肉を焼かれる痛み。

完全に再現される。

腹から青い刺青のような紋様が広がる。

蟲の様に体表を這い回る。そして収束。

収束した青は無事な左手に集う。

左手からはタービンが高速回転する際のソレに似た音が響き出す。

 

 

リバース・エッジ(蒼の刻印)

 

ブオンという音と共に俺の左手に光の槍が出現する。

 

「バカな・・・その光は紛れもなくレイナーレ様のもの・・・・・」

 

 

 

 

 

リバース・エッジ(蒼の刻印)

 

俺が生来宿していた神器。

これは自身にある一定の傷を負わせた攻撃を一度だけ再現する。

しかし、さっき右腕を潰した攻撃は無理だ。

あれでもまだ一定の傷にカウントしてくれないのだ。

加えて、再現した能力は二度と使えない。

再装填するにはもう一度受ける必要がある。

即死すれば勿論意味は無いし、ものすごく使いづらい。

実は禁手化もしているのだが、そちらはもっとめんどくさい。

 

この槍はアーシアに救われた日に夕麻から受けたもの。

あの時の傷はカウントされていたため、今まで温存していたのだ。

 

「貴様はレイナーレ様が殺した筈では!?」

「たまたま美少女に拾われてな。そうか、夕麻の本名はレイナーレってのか」

 

偽名だとは思ってたが、こりゃまた全然違う名前だな。

 

「第二ラウンド開始だ。いい勝負になるんじゃないか?この槍、お前のよりすげえんだろ?」

「いくら得物が強くなろうと、扱う者の差が歴然だ!!!」

「技量では勝ってるつもりだぜ?」

 

実際こいつの技量は大したことない。

完全にスペックに頼り切っている。

 

大振りで振り下ろしてくる槍を穂先で受け流す。

受け流され、前のめりになった奴の顔を石突で強打する。

左手のみなので決め手にはならない。

だが、相手はよろめいたので腹にやくざキックをお見舞いした。

ドーナシークは尻餅をついて槍を手放す。

 

「くっ」

「おらおらおら」

 

俺の突きを躱すため床を転げまわるドーナシーク。

突きを繰り返して追いかける俺。

 

「この俺が人間ごときに地を這わされるだと!?認めん、認めんぞ!!!」

 

持ち前の身体能力で飛びずさり、そのまま教会の外へ飛び出す。

そして黒い翼を広げて飛び上がった。

内部にいては奴が見えないので、俺も外へ飛び出す。

 

「もういい。教会ごと吹き飛ばしてくれる!!」

 

そう言って奴は元気玉を作るかのように手を掲げ、見上げながら集中する。

 

キィィィィィィィィィィィィィン

 

もはや飛行機のエンジン音の様な音を立てて特大の槍が生成されてゆく。

どうやら本当に逆上してこのあたり一帯に攻撃するつもりのようだ。

意外と沸点が低い奴だったな。

 

「ははははははははは、これが堕天使のち――――」

 

ドスッ

 

「か・・・ら?」

 

俺の投げた槍がドーナシークの胸に突き刺さる。

バカなのか?こいつ。

自分だって投げてたのに、同じものを待ってる敵を前にしてそんな隙だらけの攻撃するなんて。

 

ィィィィィン・・・・・・・・

 

行き場を失った槍が消滅する。

ドーナシーク自身は空中から落下した。

落下しながら徐々に体が崩れ始める。

そして地面に激突する前に、奴の体は光の粒子になって消えてしまった。

 

「あの槍すげえ致死性あったんだな」

 

散々手こずった割にはあっさり消えた。

まあ、戦いなんてそんなもんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

「まずいな・・・・」

足元がふらつく。

右腕からの出血が止まらない。

隠れたりしている間に傷口をしばってはいたが傷が傷だ。

徐々に流れた血により貧血になっている。

放っておけば間違いなく失血死するな。

あいつらがアーシアを助け出せていればなんとかなるかもしれない。

 

がしゃあああん!!

 

「っ!!」

 

教会の裏手からガラスの砕ける音がする。

裏手に回ってみるとそこには―――

 

「なんで、なんでなの!?私は至高の癒しの力を手に入れた!至高の堕天使になったのよ!!どうしてあんなクズ悪魔に!!」

 

顔を大きく腫らせた夕麻、もといレイナーレが倒れていた。

かなりのダメージを受けたようで何度も起き上がろうとして失敗している。

 

「おい」

「え?・・・・・・・あ、あなたは・・」

 

俺だと分かると呆然とした顔で見上げてくる。

 

「あの傷で生きていたの?」

「そうなるな」

「・・・そうよ!!青江君、助けて!私殺されそうなの!ねえ、助けてよ!!私貴方のこと大好きよ。愛してる!!だからおねがい」

 

そう言って夕麻の演技を始める。

俺の足に縋り付いて助けてくれと懇願する。

・・・今その設定は無茶がありすぎるだろ。

 

「!?青江君、怪我してるじゃない。私が治してあげる!!」

「なに?」

 

そう言って俺の手を掴むと淡い緑の光で癒してゆく。

これはアーシアのものと同じ・・・・いや、アーシアのものだ。

となると儀式の目的はやはり神器を奪うことだったのか。

俺も神器持ちだから分かる。こいつらは俺たちの魂と密接に繋がっている。

というより構成している一部と言ってもいいかもしれない。

そんなものを引っぺがしたんだ。恐らくアーシアはもう・・・

 

「アーシアはどうなった」

「え・・・なんで、そんな事、聞くの?」

「あの傷を治したのはアーシアだったんだよ」

「!!・・・・そう、そういうこと。じゃああなた全部知ってるんだ。あ、あは、あははははははははっ、なによ、なによ、みんなしてっ!!!アーシア、アーシア、アーシアアーシアアーシア!!!

そんなにあの小娘がいいの!?なんであいつは何にも手を汚さないで愛されてるのよ!!」

 

そう叫んで俺のことを突き飛ばす。

 

「あなたも私のこと殺すつもりなんでしょ?あの小娘を助けに来たんでしょ!?残念だったわねぇ、あの子は死んだわよ?あのクズ悪魔の腕の中で、その名前を呼びながらねぇ。残念でした、あなたの名前じゃなくってね!!」

 

やはり死んだか・・・残念だ。

だが死んでしまったものはしょうがない。

俺は彼女の死をどうすれば無駄にせずに済むのか・・・・

 

「あのお二方は輝いていた。でも彼らは雲の上の存在、私では届かない。それでも振り向いて欲しかった。・・・そのためには何だってしたわ!!上を欺き、そしてあの子を殺した。なのに私は全て失って死んでしまう。あの子は綺麗なまま、愛されて死んでいった。なんで?何が違うのよ!?」

 

そう叫ぶ彼女は泣いていた。

話の内容からしてもはや俺に向かって言っているのではない。

ただ、叫ばずにはいられないのだ。

 

「・・・・どこに飛んでったんでしょうか?」

「「っ!?」」

 

この声は塔城か。

大方飛んでったこいつを探しに来たんだろう。

腕は・・・・完治しているな。さすが。

レイナーレを担ぐ。

 

「え?ちょ――」

「黙ってろ。見つかれば殺されるぞ」

「・・・・・・」

 

 

 

「ここまで来ればいいだろ」

 

かなり離れた林の中でレイナーレを降ろす

 

「どうして助けたの?まさか憐れんでるつも『気に入った』・・・へ?」

「おまえの命はこれから俺のモンだ。助けたんだからな。散々虐めてやる」

「何を言って・・・」

「デートの時言ったろ?デートも楽しくてルックスも好みだって」

「ふざけないで。あんなの演技よ」

「知ってたさ。知った上で楽しめたんだ。俺にとってはそれだけが事実だ」

「・・・・・・・」

「それとな。お前とアーシアはそんなに違わんぞ?」

「え?」

「お前は堕天使の中で上司を裏切って、アーシアを殺した。それは確かに手を汚す行為だ。だがな、アーシアも悪魔を癒すという大罪を犯してんだぜ?自分の所属していたコミュニティーで。あの子は一度全て失ってんだ。そのあとにああして愛してくれる奴ができた。つまりだ。お前も全て失った。じゃあこれからって事よ」

「そんなことが許されるの?」

 

信じられないといった表情で俺に尋ねてくる。

 

「じゃあ許さんって言ったら死ぬのかよ」

「ううん。嫌だ。死にたくない。死にたくないよぉ」

 

ぐずるレイナーレ。

だがしばらくすると泣き止んで、赤く腫らした目を向けてくる。

 

「私は死にたくない。死ねって言われたらいくらでも足掻いてやる」

「それでいい」

 

彼女の体から淡い緑の光があふれてくる。

それはだんだんと空に昇ってゆき・・・・・教会の方へ飛んでいった。

レイナーレと並んでそれをじっと眺める。

 

「いいのか?とんでったぞ?」

「そこは聞かないとこでしょ?」

 

そう言って彼女は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「ああ、それともう一つ」

「ん?」

 

「お前のは愛じゃない。アイドルの追っかけとそう変わらん」

 

光は徐々に高度を下げ、教会の中に入っていった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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