人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize―   作:ブレイアッ

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滑り込みセーフ!
色々あって今回は短いです。


7話『特異災害対策機動部一課アルバイト(後編)』

 2043年、現在。

 豊かな自然と最先端の科学技術が調和する水上都市。『ニューデイブレイクタウン』。

 

 かつて、負の遺産とまで呼ばれた『デイブレイクタウン』。

 これを政府と飛電インテリジェンス、ZAIAエンタープライズジャパンの共同で再開発された街である。

 名付けたのは飛電或人。街の新たな名前を決める会議で、彼はこう言ったらしい。

 

 

「デイブレイクには夜明けって意味がある。これに新しい(ニュー)を付けて、新たな夜明けの街って意味でニューデイブレイクタウンってのはどうでしょう!

 そう! 過去の事は忘れず、それでも新たな未来に向かって歩き出そうでい! 無礼(くぉう)でなっ! はい! アルトじゃ~~~あッ、ナイトォッ!」

 

「今のは、『デイブレイク』と、『でい、無礼(くぉう)』の、発音をかけたギャグでして、普通なら『ぜ』で止めるところをあえて『でい』に変えることで──」

 

「あああああっ! お願いだからギャグの説明をしないでええええっ!」

 

 

 勿論、会議の場の空気は凍ったらしい。或人が連れていたSPの堅物そうな男性は怒りで肩を震わせていたと会議の記録に残っている。

 

 こうして負の遺産であった『日が壊れた街(デイブレイクタウン)』は『新たな夜明けの街(ニューデイブレイクタウン)』として生まれ変わったのだった。

 

 

 

 そんなニューデイブレイクタウンに、飛電彩夢の住む家はある。

 街の中心部に近い場所に立つ一軒家。そこで彩夢とサヨの2人で暮らしている。

 

 22時半を過ぎた夜。

 バイトから帰るや、電気も付けずに、彩夢は自室のベッドにうつ伏せに倒れる。

 

「彩夢様、せめて学校の制服は脱いでください」

 

「んー……」

 

 サヨの言葉に生返事で返す。

 この返事は聞いてないなと、サヨはふぅとため息をついた。

 

 

 

 レイダー部隊でのアルバイトを始めて4日が経とうとしていた。

 昼間は学校があるため、放課後の17時から労働基準法で定められている未成年が働けるギリギリの22時までが勤務時間。

 今のところ勤務時間中に出撃がかかった事は無く、しかしこれ幸いとばかりに待機時間を新人教育に当てられ、一課支部にて江井を初めとしたレイダー部隊の面々から仕事を教わる日々だ。

 

 出撃が無いにも関わらず彩夢が疲れている理由。それは今日の仕事内容にあった。

 

 

 いつものように、一課支部に行った彩夢に渡されたのは、防塵マスクとゴーグル。

 江井の話によると、昼間にノイズが数体出現。レイダー部隊C班とE班が出撃し、数が少なかったことも幸いしこれを殲滅。

 A班には殲滅後の現場の片付けが任されたのだ。

 

 支給された一課の制服に着替え、車に揺られること数十分。

 

 着いた先は、住宅地ど真ん中。

 ノイズとの戦闘によるものだろう半壊した建物に、散乱する瓦礫。

 何よりも目を引いたのは、炭だ。

 道路や塀は黒く汚れ、、窓から覗く建物内の壁や床に黒く人の形によく似た炭の山があり、何よりも空気が煤けていた。

 

「これは……」

 

「炭の山だ。これを掃除機で吸って片付けるのが、今日の仕事だ」

 

 江井と炭の山を交互に見、そして信じられないと江井の方を見た。

 

「掃除機で吸うって、物じゃないんですよ!? これは、ノイズにやられて死んだ人だ!」

 

 ノイズは人に触れるともろともに炭化する。残った炭素の山は、人とノイズだったものが混じりあって、どこが人だったのかすら分からなくなるのだ。

 遺体のつもりで回収した炭は、その人を殺したノイズだった、という話も少なくない。

 

 ノイズや、ノイズに襲われた人だった炭素の山は、細かい炭素の粒子でもある。

 風で飛ばされ、目に入れば最悪失明。吸い込めば呼吸器官を傷付けられ、肺などに異常をきたす可能性がある。

 故にノイズの残骸も、人の遺体も関係無く炭素の山として処理する。

 それが一番合理的で、一番平等なのだ。

 

「納得はしなくて良い。でも、理解はしろ。これが、助けられなかった結果だと」

 

「……ッ!」 

 

「これは炭の山だと思えば楽になる。これは助けられなかった人だと思えば苦しくなる。お前の好きに思え。

 さぁ、作業に入るぞ」

 

 

 炭の山だと思えば楽になる。助けられなかった人だと思えば苦しくなる。

 彩夢は、後者を選んだ。

 

 助けられなくてごめんなさい、と心の中で呟きながら、掃除機で炭の山を吸い取る。

 小さな炭の山のすぐ近くで、女の子用の赤い小さな靴を見た。

 その靴を拾い上げ、中から炭がこぼれ落ちた。

 その瞬間、小さな炭の山が、転んだ子供だと。この靴の持ち主だと伝えてきて、転んだ小さな女の子がこけて、ノイズに殺された情景が目に浮かんだ。

 

「う……っ」

 

 心臓がキュウと痛み、目眩がする。

 

 

 ノイズが現れたのは昼過ぎ、その時間、オレは何をしていた?

 

 そうだ、学校で授業を受けていた。

 

 ゼロワンに変身出来るオレがこの場にいれば、助けられたんじゃないか?

 

 オレがやるべき事は──

 

 

 

「彩夢様ッ!」

 

「んあっ!?」

 

 サヨの声で、彩夢は目を覚ました。

 どうやら寝てしまっていたらしい。

 

「シワになるので制服は脱いでください。さもなくば脱がします」

 

 ほら、ばんざーいと子供相手にするようなジェスチャーをするサヨ。

 見た目二十歳(はたち)前後のサヨにそんな事をされると、思春期真っ盛りの彩夢には恥ずかしいものがある。

 

「分かった。分かったからちょっとあっち行ってて」

 

 サヨが飛電家にやって来てから6年。すっかり彩夢の姉のように接するようになった彼女に、何をラーニングしたらこうなるんだと思いながらも部屋から追い出し、制服を脱いでハンガーにかける。

 

「ホットアップルジュース、ご用意してますので」

 

「ん、ありがとう」

 

 昔から悪い夢を見て目覚めた夜は、決まってサヨがホットアップルジュースを作ってくれた。

 サヨの優しさに、彩夢はドア越しに感謝の言葉をかける。

 

 それでも、今日のバイトの出来事は、夢に出そうだ。

 

 




今回で伏線張り期間終了。次回から話が動きます。
その前に特別編挟みますが。
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