人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize― 作:ブレイアッ
Vシネやらゲンムズやらでゼロワンの新しい設定というか状況が変わって来てプロット練り直したりしてました。本作もいくつか書き変え予定です。
シンフォギアを起動させるには、特定振幅の音の波形。すなわち、歌が必要不可欠である。
これは誰の歌でも構わないという訳ではなく、特定の誰かの歌声でなくてはならない。
例えば、アメノハバキリという聖遺物を用いたシンフォギアを起動させるには風鳴翼の歌でなくてはならない。さらに付け足すと、録音した音声や、翼の声を模したヒューマギアの声では起動しない。
ガングニールのシンフォギアを起動させるには天羽奏の歌声でなくては起動出来ない。そして、奏が絶唱の代償に声を失ったために、ガングニールのシンフォギアを起動させる事は出来ない。
そう考えられていた。
立花響が、ガングニールのシンフォギアを纏う、その時までは。
シンフォギアを纏い、ノイズとの戦いに身を投じてから1週間。
「はあぁ~~…………」
「響、最近元気無いけど、大丈夫?」
「んー」
立花響は、盛大なため息と共にソファに沈んでいた。
ルームメートで、幼なじみの小日向未来に気の抜けた返事をする。
響が沈んでいる原因は2つ。戦いの素人故に現場の足を引っ張りまくること。
今日は授業中に呼び出され、そのまま出撃。レイダー部隊D班との共同戦線でうっかり射線に出てフレンドリーファイアを食らいかけた。
ノイズが相手ならばマギアやレイダーよりシンフォギアの方が圧倒的に勝っている筈なのだが、最早いない方が楽なのではと思わせる足の引っ張り具合だ。
もう1つは再会した天羽奏に、初めましてと嘘をついた事。
恩人に嘘をついてしまったことが、胸にモヤモヤとなって残り続けている。
(戦うって、決めたんだけどな……)
シンフォギアを纏えるようになり、ノイズと戦う力を得た。だから、かつての奏のように、誰かを守るために戦いたい。
なのに、思いの強さと、力の強さが釣り合っていなかった。
ふと、響のライズフォンからメールの着信音が鳴った。
差出人は二課。内容は「天羽奏より」という一文と、添付ファイルが1つ。
「奏さんからの、手紙だ」
===
「ノイズの殲滅?」
装甲車に揺られながら、彩夢が口にしたのは、先ほど江井から聞かされた作戦内容だ。
「そう。現在、ノイズが同時に2ヵ所に出現。数の多い方に二課のシンフォギアが出撃して対処に当たっている。そして数の少ない方に一課のレイダー部隊が出撃。
この2ヵ所の距離は遠く、シンフォギアがノイズの殲滅してから加勢。ってのは見込めない。そういうわけで今回の任務はノイズの殲滅になる。
現在、B班とヒューマギアが民間人の避難とノイズの誘導を行っているが、B班に死傷者が出てまともに戦えるレイダーは2人しかいないらしい。
到着と同時に実装し、殲滅行動を開始する。覚悟はいいな?」
装甲車の中の空気がピリッと張り詰める。
江井の目に映る男達の表情は皆、キリリと引き締まっていた。
「彩夢、お前は今回が初めての出撃だな」
「はい」
「ゼロワンにノイズの炭素転換は効かないと聞いた。頼りにしてるぞ」
「はいッ!」
(絶対に、誰も炭の山になんかさせない。ゼロワンの力は、そのためのものだ)
「間もなく到着だ。各員、準備はいいな!」
江井の言葉に彩夢を含めた隊員5人が応える。
2度目の変身。2度目のノイズとの戦いは、もう間もなくだ。
===
目的地に到着と同時に装甲車がドリフト。車体を傾かせながら180°回転し、後部の扉が開け放たれる。
装甲車から江井や寺島を始めとしたレイダー部隊A班の隊員が飛び出し、同じく彩夢も出る。
彼らの目に飛び込んだのは、ノイズの群れを引き連れてこちらに向かって走ってくる一課の装甲車。先に民間人の避難とノイズの誘導に当たっていたレイダー部隊B班だ。
その上にはレイダーが乗っており、絶えず銃撃を放ってノイズに攻撃を浴びせている。
《レイドライザー!》
《ハード!》
《ゼロワンドライバー ver2!!》
《ジャンプ!》
江井達に続いて、彩夢もドライバーを装着。プログライズキーを起動させて承認させる。
《オーソライズ》
はるか頭上の人工衛星ゼアよりライジングホッパーのライダモデルが転送。辺りを
「総員、実装および変身ッ!」
「実装ッ!」
「了解、実装!」
「実装します!」
「実装ッ!」
「変身ッ!」
《レイドライズ!》
《インベイディングホースシュークラブ!》
《プログライズ!》
《飛び上がライズ! ライジングホッパー!》
レイドライザーより、危険を知らせるサイレンが鳴り響く。
ライダモデルを蛍光イエローの装甲と変え、ゼロワンに変身した彩夢がドライバーの┃照射形成機《ビームエクイッパー》でアタッシュカリバーを構築。
ドライバーから引き抜いたプログライズキーを装填する。
それと同時に、江井もレイドライザーからプログライズキーを引き抜き、アタッシュショットガンに装填。
《 《Progrise key confirmed. Ready to utilize.》 》
《グラスホッパー ズ アビリティ!》
《チャージライズ!》
《ホースシュークラブ ズ アビリティ!》
向かってくるB班の装甲車が彩夢達の隣を走りすぎる。
目前にあるのはノイズのみ。
その数、23体。
「作戦、開始」
《インベイディングカバンショット!》
アタッシュショットガンから放たれる赤と黒の弾丸。
強大な破壊力を秘めたそれは、ノイズの手前の地面に着弾。爆発する。
地面が抉れた事と、爆風によって宙を浮くノイズ達。
「行きますッ!」
《ブレードライズ!》
《フルチャージ!》
アタッシュカリバーを剣モードにし、駆け出す。
ノイズが位相差障壁を緩める瞬間は攻撃時以外にもある。
それは着地寸前。
位相差障壁を強めれば壁や地面をすり抜けられるノイズにとって、着地する時に位相差障壁を緩めなければ延々と地面の中を落ち続ける事になるからだ。
《ライジングカバンダイナミック!》
《インベイディングボライド!》
故に、「着地寸前」という言葉が頭に付くが、アタッシュショットガンによる一撃で浮かせたノイズには攻撃が通る。
アタッシュカリバーによる最大威力の斬撃でノイズを切り裂き、それでも倒し損ねたノイズを後方のレイダーが必殺技による赤い光線で撃ち貫き、ノイズを炭と変えていく。
それでも倒せたのは11体。レイダーよりも高い火力を持つゼロワンがいても半分に届かない。
「まだまだぁッ!」
ノイズとの戦いは、始まったばかりだ。
===
奏からの手紙。
そこに書いてあったのは、戦えなくなった奏から、うまく戦えない響に対する励ましや、今まで1人で戦ってきた翼を頼むといった事が書かれており、最後にスケッチブックの写真が貼られていた。
「本当に強いってのは
力が強いことじゃない。
心が強いってことだ。」
それは奏からの響へのメッセージ。
気付けば、身体が勝手に動いていた。
「どこ行くの響!?」
「ちょっとそこまでー!」
未来の声を背中で受け流し、部屋から飛び出した。
(奏さんに会いたい……会って、謝りたい……ッ!)
===
《インベイディングボライド!》
《インベイディングボライド!》
2本の赤い光線が1体の人型のノイズを貫き、炭素へと変える。
「はぁっ、はぁっ、どんだけ出てくるんですかコイツら」
寺島が一人ごちる。
最初に出現した23体のノイズは倒した。
今戦っているのは追加出現したノイズだ。
その数、40体。最初の2倍近い数であり、本来なら殲滅作戦からノイズの自壊までの時間を稼ぐ誘導作戦に切り変えるところなのだが、追加出現したノイズ達は、ゼロワンとレイダー部隊を囲むように陣取っているせいで退路を断たれ、離脱することが出来ないでいた。
さらに最悪な事に、ノイズの攻撃で装甲車も破壊されている。AIによる自動運転だったため、運転手がいなかった事が不幸中の幸いか。
《フルチャージ!》
《インベイディングカバンバスター!》
江井の放った一撃が、空中のノイズを撃ち抜き、炭素へと変える。
「ごちゃごちゃ言っても変わらねぇ。とにかくノイズ1体に2人以上で当たる。何とかして突破口を作るぞ!」
「了解です、よッ!」
《インベイディングボライド!》
寺島がノイズの足場を崩して僅かに落下させる。浮いている時間は5秒にも満たないが、その時間があれば
《ライジングインパクト!》
ゼロワンが攻撃出来る。
高速移動からの水平蹴りでノイズを真っ二つに蹴り裂き、炭素へと変える。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……まだ、まだぁっ!」
ゼロワンは、肩で息をしながらも次のノイズへと標的を定める。
(いくらゼロワンといえども彩夢はまだ16歳。そろそろ体力の限界か。いや、それを言うなら俺達もか。
シンフォギア、アメノハバキリがこちらに向かっている。到着までに、どれだけ持ちこたえられるか……)
ドリル状に変形した鳥型ノイズの突撃を間一髪で避ける江井。
隊長であるために、士気を下げないよう平静でいるように見せかけてはいるが、内心ではかなり焦っていたせいか、取り落としたアタッシュショットガンをノイズに破壊されてしまった。
「おかーさーん、どこー!」
銃声鳴り止まぬ戦場に、幼い子供の声。
どこかに隠れていたのか、逃げ遅れた少女が、戦場に迷い込んだ。
===
「奏さんッ!」
二課にある奏の自室。そこの扉を開けるや否や、響は奏の名を呼んだ。
定期検診でもした後なのか、オレンジ色の患者衣のような服を着た奏が突然やって来た響に目を丸くする。
「あ、あのっ、奏さんに、謝らなくちゃ、いけないことが……」
走ってきたせいで息が荒く、途切れ途切れに声を出す。
そんな響に、奏は車椅子で響の隣に来ると少し落ち着けと言わんばかりに、その背中を優しくさすり始めた。
「ぁ、ありがとうございます……すぅー、はぁー」
深呼吸を1つして、落ち着きを取り戻した響は、屈んで車椅子の奏と目線を合わせる。
「あの、奏さんに謝らなくちゃいけないことがあって……本当は、あの日がはじめましてじゃないんです」
知ってる。と、奏は頷く。
「本当は、ずっとずっとありがとうって言いたくて、なのに、再会した奏さんは……その……もしかして、私を守るために、こんな風になったのかなって、私のせいで、なんて思っちゃって……」
だんだん尻すぼみになっていく声。視線も、下を向いていく。
そんな響の額に奏渾身のデコピンが炸裂した。
「あたッ!?」
弾かれるように顔を上げる響の頭を掴み、自身の胸に押し付ける。
暖かく、柔らかな胸からは、鼓動が聞こえてきた。
響の頭を離すと、車椅子のポケットからスケッチブックとペンを取り出し、ペンを走らせる。
「あたしは生きてる。
あたしのケガを気にする
必要なんかない。」
スケッチブックのページを捲り、さらにペンを走らせる。
「あんたを助けたことを
後梅カイなんてしてない。」
「生きるのを諦めないで
いてくれて
ありがとう。」
「奏さん……ッ」
「助けられて良かった。」
奏は太陽のように笑い、つられて響も涙を浮かべながら笑みを浮かべた。
すぅっと、胸のモヤモヤが晴れていく気がした。
===
間に合え、間に合え、間に合えッ!
迷い込んだ幼い少女に向かって、ゼロワンは駆ける。
迷い込んだ幼い少女は、一斉にノイズの標的となった。
ノイズとの連戦。必殺技を乱発しすぎたせいか、手足が鉛に変わったかのように重い。
手足を動かす感覚と、実際に動いている手足がズレているように感じる。
ライジングホッパーのスペックなら、100メートルを4.1秒で走れる筈なのに、そのスペックを全く生かしきれていないような感覚さえあった。
ノイズが少女に触れるより速く、少女の元に駆けつけなければ。
ノイズに触れても大丈夫な自分が、彼女の盾にならなくては。
脳裏に、ちょうど目の前の少女と同じくらいの背丈の子供だったであろう炭の山がフラッシュバックする。
少女が、ゼロワンに助けを求めて手を伸ばす。
誰かが助けを求めていて、助けられるだけの力があるのなら、誰かの笑顔を守れるのなら、全力でそれを
それが彩夢のルール。
ゼロワンは、そのための力。
「絶対に助けるッ!」
少女に応えるように、ゼロワンも手を伸ばす。
伸ばした手と手が触れる寸前。
「ぁ──」
少女の手は、ボロリと、崩れさった。
あと一歩、足りなかった。
あと一歩、間に合わなかった。
上空から槍のように落ちてきたノイズに身体を貫かれ、少女の身体は炭と変わり、崩れていく。
涙が、黒い炭に変わって風に吹かれ、ゼロワンの複眼に当たった。
「あぁぁああああァアアッッ!!」
彩夢の慟哭。
助けられなくて、ゴメン。
涙流さぬ仮面の代わりに、