人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize― 作:ブレイアッ
特殊タグ頑張った分文字数が少なくなりました。
一課支部、事務室にて。
「だから反対だったんだ。彩夢が戦うのは」
刃唯阿は江井から上がってきた報告書に目を通し、一人
金曜日の市街地に出現したノイズの殲滅作戦から3日が過ぎた。
今回のノイズによって出た死者は一課職員、民間人を合わせて18人。ノイズ出現地点周辺にいた民間人が300人近かった状況からすると破格の少なさだ。
ここまで被害を抑えられたのはレイダー部隊A班の練度の高さと、ゼロワンの戦闘力によるものが大きい。
特に、ゼロワンはレイダー部隊の協力があったとはいえ、ノイズを20体以上倒している。これはレイダーを始めとするシンフォギアを纏わない人間のノイズ討伐数の記録を大きく上回る数だ。
報告書を見れば、誰もが今回の作戦のMVPはゼロワンだと讃えるだろう。
しかし、当人である飛電彩夢には、そんな称賛の言葉など聞こえやしなかった。
幼い少女を助けられなかった。
目の前で炭と散った。
その事実は、彩夢に重くのしかかったのだろう。
サヨから聞くところによると、土日の休みの間はずっと部屋から出なかったらしい。
ヴヴー、とデスクの端に置いていた唯阿のライズフォンがバイブレーションで着信を告げる。振動の回数からしてメッセージアプリのものだ。
待機画面には「不破」の文字があった。すぐにメッセージアプリを起動させる。
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文章の様子からしていつも通りに家を出たのだろう。そして学校に行っていない。
これまで皆勤賞を取り続けてきた彩夢が無断欠席した。というのはにわかに信じられなかったが現にこうして連絡が来ている。
「あのバカ。何をやってるんだ」
唯阿はライズフォンをスーツの内ポケットにしまい、席を立った。
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ニューデイブレイクタウン。
2007年に起こった爆発事故の影響で地盤沈下が起こり、地下水脈が損傷。漏れ出た地下水と雨水によって出来た湖の上にある水上都市だ。
その外周の1区画にあるダム。その上に、1人の少年がいた。
右耳にZAIAスペックを付け、デニムのズボンにオレンジのパーカーを身に纏い、腰にはゼロワンドライバーという出で立ちの彩夢だ。
リュックに私服を突っ込んで家を出て、人目の無いところで制服と着替えたため、一目で学生と分からないようにしている。
「平和だな」
湖面の上の街には色々な人やヒューマギアが行き交っていた。
ヴーッ、ヴーッ、とポケットのライズフォンが振動する。
不破からの電話であるそれを無視する。出れば力強くで連れ戻されること確定だからだ。
「もしも今、ノイズが現れて、オレはあの人達を守れるのか……?」
3日前の出来事が脳裏に甦る。
伸ばした手。
届かない手。
崩れた手。
鮮明に焼き付いたあの光景が、何度も何度も甦り、彩夢の胸に刃を突き立てたような痛みが走る。
あの日に、江井達に無理を言って現場の後処理まで残って、少女だった炭の山を掃除機で吸った記憶が、彩夢の心を傷付ける。
「オレは……誰も守れない……誰も助けられなかった……」
そんな事は無い。彩夢がノイズを倒したことで、間接的に助けられた人は大勢いる。
しかし、初めて変身した時は周りに人はいなかった。2回目に変身した時は、助けを求める少女を、助けられなかった。
これまで2回の変身で、彩夢視点では誰も助けられていないのだ。
誰かが助けを求めていて、自分に助けられるだけの力があるのなら、誰かの笑顔を守れるのなら、全力でそれを揮う。
それが彩夢のルール。ゼロワンはそのための力。そう言ってきたのに、実際は誰も助けられなかった。
この事実が、彩夢を追い詰める。
学校に行く間があったら、寝る間があったら、ノイズと戦うべきだ。
そうでもしないと、あの少女の時のように誰も助けられない。
業務中でしか付けることを許されていない、バイトで支給されたZAIAスペックで一課の通信を傍受し、ノイズの出現を待つ。
「ここにいたのか」
彩夢の負の思考に風穴を開けるように、凛とした力強い声が後ろから聞こえた。
「──刃先生……」
振り向けば、刃唯阿がそこにいた。
次回、お説教。