人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize― 作:ブレイアッ
正直かなり苦し紛れに出したので、たぶんこれからちょこちょこ修正やら追記が入るかもしれないです。
「ここにいたのか」
「──刃先生……」
彩夢が振り向くと、そこには刃唯阿が佇んでいた。
「どうしてここが」
唯阿はトントン、と自身の右こめかみを指先で叩きながら答える。
「一課で支給されているZAIAスペックは使用者のバイタルや現在地を常に本部に送信するようになっているからな。勤務時間外に動いているのがあればすぐに分かる」
一課の通信を傍受しようとした結果、自身の居場所を知らせていたらしい。
唯阿が近くの自販機で買ってきたであろうカフェオレを彩夢に投げ渡し、ニューデイブレイクタウンの湖を背に、柵にもたれかかり、ブラックの缶コーヒーを開けて口を付ける。
彩夢もカフェオレの缶を開け、口を付けた。
「不破が心配してたぞ」
「……すみません」
「連絡くらいしたらどうだ」
「……すみません」
「はぁ。……謝ってばかりじゃ、先に進めないぞ」
「……すみません」
どうしたものかと、ため息をつく。
数分、2人の間に沈黙が訪れる。
「…………初めて」
「ん?」
彩夢の、小さな声。
「初めてゼロワンに変身した時、オレ、生きたいって思ったんです」
「……」
「あの子もきっと同じだったんです。あの子の目が、生きたいって叫んでた。
なのに、あと一歩、間に合わなくて……ッ」
「……」
彩夢の震える声は、ひどく悲しく聞こえた。
「だから、オレがやらなくちゃいけないんです。生きたいと願って、生き延びたオレが。生きたいと願う誰かを助けるべきなんですッ!」
「1人でか」
「はい」
「……少し、話をしようか」
今の彩夢は、少女を助けられなかった責任を背負い込み、重みで倒れそうになっているのを、自分を責めることで何とか立っているように感じた。
だから、彼の父の話をしようと思った。
「飛電或人……お前の父親も、救いたいと思った存在を助けられなかったことがある」
「え……」
今から24年前の2019年。滅亡迅雷.netがヒューマギアをハッキングし、マギアを生み出しては暴れさせるという事件が頻発していた。当時はマギア化させられたヒューマギアを元に戻す手段は無く、破壊するしかなかった。
或人にとってヒューマギアは大事な社員であり、家族。しかしマギア化させられたヒューマギアを放置していれば沢山の人々が犠牲になるため、放っておく事は出来なかった。
何度も暴れるマギアに掴みかかり、身を挺して止めようとしては弾き飛ばされた。
結果として、人々に危害を加える前にマギアを破壊するしかなく、守りたい存在を守れず、救いたいと思っても救う手段が無く、自らの手で破壊していたのだ。
唯阿が初めて或人の前で変身した時、ハッキングされてマギア化した一貫ニギローを何とかして止めようともがいていたのを思い出す。
「『オマエを止められるのはただ1人、オレだ』と、あいつはよく言っていた。守れなかった責任を、救えなかった事実を、全部1人で背負おうとしていたんだろうな」
あるいは、重荷を誰かに背負わせたくなかったのか。
「背負う……」
「今の技術力ではノイズからの被害を0にするのは不可能だ。だから助けられなかった命を背負って、その倍の命を救う。それが一課の仕事だ」
ぐいっとコーヒーを飲み干し、唯阿は続ける。
「かと言って、1人で背負うのに命は重すぎる。変に背負い込んで、1人で何とかしようとするな。1人で生きていけるほど、この世界は甘くない。だから、私達を頼れ」
彩夢はゼロワンに変身出来ると言ってもまだ子供で、唯阿達は大人だ。
子供が大人に頼るのは当然の事だと、唯阿は言う。
飲み干したコーヒーの缶を、2メートルほど離れた地面に放り投げる。
「その場から動かずに、そこの缶を拾えるか?」
「え?」
言われるままに手を伸ばしてみるが、当然ながら届かない。
「無理です」
「そうだ。1人で手を伸ばした程度じゃ、届く範囲なんて高が知れている」
たが。と続けて、唯阿が伸ばした彩夢の手を繋ぎ、片方の手を伸ばして缶を拾い上げる。
「誰かの手を借りれば、手は届く。
頼るというのは、そういうことだ」
「あ……」
「私達は1人で戦っているんじゃない。チームで、お互いを頼りながら戦っているんだ。
お前の手が届かないのなら、誰かの手を貸してもらえ。誰かの手が届かないのなら、お前の手を貸してやれ」
「……はいッ!」
その時、彩夢のZAIAスペックに緊急通信が入った。
ノイズの出現を知らせるものだ。
「ここは……ッ!」
すぐさま唯阿がライズフォンに地図を投影し、彩夢も横から覗きこむ。
「ニューデイブレイクタウン記念館ッ!?」
ノイズが出現した地点は街の中心地近くにある『ニューデイブレイクタウン記念館』。
ヒューマギア実験都市計画からデイブレイクの爆発事件、ニューデイブレイクタウンが出来るまでの歴史を伝える資料や、水中から引き上げられた衛星アーク等が展示されている街の名物である。
そしてここは実用化前の新型ヒューマギア試験運用区域でもあり、様々な種類の新型ヒューマギアがいる。
しかし、ノイズが出現した現状において、これが大きな問題となる。ここにいるヒューマギアはすべて、実用化前であるが故にマギア化の機能が備わっていないのだ。
ノイズの脅威から真っ先に人々を守るマギアがいなくては、対処する術は無い。
レイダーが到着する前にノイズによる虐殺が行われるのは間違ないだろう。
「オレ、行きますッ! 変身ッ!」
《ジャンプ! オーソライズ!》
《プログライズ! ライジングホッパー!》
即座にゼロワンに変身。
「待てッ!」
駆け出そうとしたゼロワンを、唯阿の鋭い声が制止した。
「こいつを持っていけ」
唯阿がスーツの内ポケットからオレンジ色のプログライズキーを取り出し、ゼロワンに投げ渡した。
「これは……」
「そいつをお前に託す。どう使うかは、お前次第だ」
「……ッ、ありがとうございますッ!」
プログライズキーを右腰のホルダーに付け、ライジングホッパーの驚異的な跳躍力でその場を跳び立った。
「仮面ライダーバルキリーの魂、確かに託したぞ。彩夢」
共闘してても頑なに「オマエを止められるのはただ1人、オレだ!」って言い続けた或人社長。バックアップがあるとはいえ破壊=殺すって事なので「その罪は全部オレが背負う」って覚悟のセリフなんだろうなっていう考察。
次回、新フォーム登場!