人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize― 作:ブレイアッ
という訳でお待たせしました10話です。
全編ほとんど戦闘シーン!最高にアタッシュカリバーの扱いが悪いぞッ!
ライジングホッパーの脚力をフルに発揮し、ニューデイブレイクタウンの中を跳躍を繰り返して急ぐ。
「見えた……ッ!」
上空30メートルからを落下しながら、目的地であるニューデイブレイクタウン記念館を捕捉。優れた視覚装置であるホッパーアイの機能を使い、視界を拡大。
記念館の正面玄関前、開けた噴水広場に逃げ遅れたであろう白髪の男性が1人と、2体の人型ノイズがいた。
噴水の一部やオブジェが壊れたりしてはいるが、幸いにも炭の山は見当たらない。
すぐ近くにシェルターがあったはずだ。皆そこに避難したのだろう。
白髪の男性が、脚を捻って倒れた。すぐ近くに2体の人型ノイズが迫る。
「マズイ!」
ゼロワンは今落下中で動けない。着地してからでは間に合わない距離だ。
《アタッシュカリバー!》
身体を丸めて足先でそれを手放し、ドライバーのキーを押し込む。
《ライジングインパクト!》
「ふッ!」
アタッシュカリバーを両足で蹴り、作用・反作用を利用して落下のベクトルを変え、加えて落下速度を加速する。
黄色いサイバー線を宙に描き、己をミサイルと化す。
背後で蹴飛ばされたアタッシュカリバーが爆発するが些細な問題だ。
「はあぁぁぁぁッ!」
空中で体勢を立て直し、男性の前、迫るノイズを水平蹴りで蹴り裂く。
続けて着地。地面を抉りながらスライドし、5メートル程進んで止まる。
「しゃ、社長!?」
背後、白髪の男性が驚愕の声を上げる。
「え、浦添おじさん!?」
「いや福添だよ! って、その声……まさか、彩夢くんか?」
ゼロワンが助けた白髪の男性は、元・飛電インテリジェンス副社長の福添准だった。
定年退職して以来会っていなかったが、昔、彩夢が飛電インテリジェンス本社に行った時に、シェスタや当時専務だった山下三蔵と一緒によく構ってくれた人だ。
「どうして君がゼロワンに」
「それは後で説明するから、今は逃げて!」
《アタッシュカリバー!》
ノイズはまだ残っている。
再びアタッシュカリバーを形成し、ドライバーから引き抜いたキーを装填する。
《Progrise key confirmed. Ready to utilize.》
《グラスホッパー ズ アビリティ!》
地面に対してほぼ垂直に跳躍。カバンモードのアタッシュカリバーを振りかぶり、残りの1体へ振り下ろす。
「らぁッ!」
《ライジングアタッシュ!》
ノイズの位相差障壁によってすり抜けるが、衝撃で地面を大きく凹ませ、ノイズを浮かせる。
落下中のノイズは位相差障壁を緩める。
一課でのアルバイトで教わった事だ。
《ブレードライズ!》
振り下ろした体勢のままアタッシュカリバーを展開し、ブレードモードへ。
《ライジングカバンストラッシュ!》
ノイズの真下から真上へ斬り上げ、ノイズを両断。炭と崩れたノイズを確認し、ふぅと息を吐く。
「彩夢くん!」
「どうしてまだ逃げて」
ゼロワンの声を遮り、福添が焦りを隠さず続ける。
「記念館の中に子供が! 男の子が取り残されている! ノイズもまだ中にいる!」
「えっ!?」
「デカいタコみたいなノイズだ! どうしてゼロワンに変身してるか、気になる事はあるけどそんなのは後回しだ!
彩夢くん、あの子を助けてくれ! 頼む!」
福添が、彩夢に頼っている。
ふと、さっきの唯阿とのやり取りが脳裏に蘇った。
──1人で手を伸ばした程度じゃ、届く範囲なんて高が知れている。
──誰かの手を借りれば、手は届く。
福添の手を握る。
「分かった。絶対にその子を助ける。オレが、おじさんの手の延長になるッ!」
手を離し、福添に背を向ける。そして、ニューデイブレイクタウン記念館の入り口に向かって駆け出した。
ニューデイブレイクタウン記念館は地上4階建てだ。水上という立地の都合上、地下は存在しない。
エントランスホールに入って真っ先に目に入るのは衛星アークだ。記念館は4階まで一部が吹き抜けになっており、どの階からでも見ることが出来るようになっている。
ニューデイブレイクタウン建設時に水中から引き上げられ、土地の歴史を伝える貴重な資料として、ここに展示されている。
ざっと見回した限りでは福添の言っていたノイズの姿は無かった。
時間経過による自己崩壊という可能性もあるが、自己崩壊までの時間はノイズの大きさに比例するため「デカい」と呼ばれたノイズでは考えにくい。
「おーい! 誰かいないかー!?」
異様に静かな記念館にゼロワンの声がこだまする。
次に聞こえたのは、何かが落ちてくる音。
咄嗟に頭上を見上げると、何か大きなものがゼロワンを押し潰さんと迫っていた。
「ッ!」
咄嗟に転がって回避。
手放したアタッシュカリバーがそれに押し潰され、爆ぜる。
「デカいタコみたいなノイズ……コイツか!」
それは彩夢がこれまでに相対したノイズの中でも特別大きかった。
タコの頭から胴体に当たる部位だけで2メートルはあろうかという巨体。頭部の下から生える触手がゆらりと鎌首をもたげるように立ち上がる。
その数、13本。
「って、イカより多いじゃねえか!」
思わず口から出た突っ込みが火蓋を切る。
叩き付けるように振り下ろされた触手を跳躍でかわす。
「なんて威力だ……ッ!」
回避した先、吹き抜けの天井すれすれまで跳躍したゼロワンは、下を見て驚愕する。
ノイズの触手はゼロワンのいた地点の床を砕き、50センチほどの窪みを作り、衝撃で砕けた床は砂煙と瓦礫と変わり、飛び散っていた。
まともに受けていたら大ダメージは逃れられないだろう。
「いッ!?」
驚いたのもつかの間。
ゼロワンの足にノイズの触手が巻き付く。
ノイズのいる1階からゼロワンのいる天井付近までの距離はおよそ16メートル。目測で見た触手の長さよりも長い距離で、攻撃は届かないと確信しての行動だった。
しかし、ノイズは
しかも、それに気付けたのは巻き付かれてから。つまり、触手の伸縮速度は、ゼロワンの移動速度よりも早い。
掴んだゼロワンの足を引き寄せ、勢いよく壁に叩き付ける。
「が……ッ!」
壁の展示ディスプレイを割り、倒れたゼロワンにガラスの破片が落ちてくる。
窪んだ壁に背を預け、ふらりと立ち上がる。
「ッ! マズイッ!」
13本すべての触手を振り上げるノイズを見て、咄嗟にアタッシュカリバーを形成。カバンモードのそれを前に突き出し、盾とする。
続いて襲いかかってくる、衝撃の連続。
コンクリートを容易く砕き、時には戦車をも破壊する触手による打撃だ。
そんな打撃を放てる触手が13本。それを続けざまに放つことで、ノイズは大砲にサブマシンガンの連射性を与えたような攻撃を可能とした。
「ぐッ、あァ……ッ!」
その結果、ゼロワンが取れる選択はアタッシュカリバーで防御し続けるというたった1つに絞られてしまい、その場から動けなくなる。
攻撃に転じようにも、防御を緩めれば全身を滅多打ちにされ、変身解除からの死は免れられないからだ。
かと言ってこのままこの場に留まり続けてもいずれゼロワンに限界が来る。
現に、防御の要となっているアタッシュカリバーにはヒビが入り始め、ミシミシと悲鳴を上げている。
「こうなったら、イチか、バチかだァッ!」
ドドドドドドドッ! と、絶え間無い打撃の嵐。
その中で、ゼロワンは新たにアタッシュカリバーを空中に形成する。
しかし両手が塞がっているため、キャッチされること無く落ちる。
カシャン、と床に落ちてバウンドしたそれを、
「らァッ!」
思いっきり蹴った。
続けて両手に持っているアタッシュカリバーを押し出すように前に投げる。
苦し紛れに投げ放たれた2個のアタッシュカリバーは、羽虫を払うかのように2本の触手に左右に打ち払われ、しかしそのあまりの威力にひしゃげて壊れる。
しかし、それこそが狙い。
「この瞬間ッ!」
投げられたアタッシュカリバーを払った僅かな瞬間。この時だけ、連撃を浴びせる触手が13本から11本になる。
そこに生まれる僅かな隙。1秒にも満たないその隙を突く。
《ライジングインパクト!》
ドライバーのキーを押し叩き、エネルギーを脚部に収束。そして一気に解き放ち、前へ跳ぶ。
「だあぁァッ!」
跳躍と同時に放つ空中水平蹴りで、迫り来るノイズの触手を蹴り裂き、本体とすれ違う。
「ぶッ!」
現状打破のみに重きを置いた、着地を一切考えない跳躍だったため、向かい側の壁に顔面から突っ込んだ。壁に穴を開け、床を転がる。
しかし、触手連打の嵐からは抜け出せた。
体勢を立て直し、穴をくぐり抜け、ノイズと向き直る。
「──えっ……?」
その時、ゼロワンの視界の端にちらりと何かが見えた。
「……ッ!」
それは、展示されている衛星アークに隠れ、不安げにこちらを覗いている小学校低学年くらいの少年の姿。
さらにその上。衛星アークに絡み付き、少年の真上を陣取るノイズ。
2体目の、タコ型ノイズだ。
「マズイッ!」
ノイズは既に少年に狙いを定め、触手を伸ばす体勢に入っているが、少年はこちらに集中しているのかそれに気付いていない。
このままでは、少年がノイズに炭素と崩されてしまうだろう。
少年を狙うノイズの邪魔はさせないとばかりに、ノイズがゼロワンの前に立ちはだかる。触手を振り下ろす。
目にも止まらぬ早さであるはずのそれが、やけに遅く見えた。
(この、感覚は……)
初めて変身した日にもあった、時間がゆっくりと流れる感覚。
ゆっくりと動く世界の中、ゼロワンは思考を巡らせる。
タコ型ノイズの攻撃は早く、重く、そして手数が多いため、防御に徹するとその場から動けなくなる。
だから目の前に迫るこの攻撃は避ける。横では無く後ろに避ければ距離も取れて次の攻撃への対応がしやすくなる。
しかし、それをすれば少年を助けるのに間に合わなくなる。
さっきの必殺技のエネルギーを移動に使う方法なら間に合うが、方向転換もブレーキもままならないそれでは少年を潰しかねない。
今のゼロワンでは、助けられない。
ゼロワンの脳裏に、ノイズに殺された少女の姿がフラッシュバックする。
(助けるんだ、今度こそ……ッ!)
唯阿から渡されたキーを握ったその時、時の流れが戻った。
《ダッシュ!》
ゼロワンと少年がいた場所を、ノイズの触手が打ち抜き、爆発が飲み込んだ。
蛍光灯の明かりではなく、太陽の光に目が眩む。
いつの間にか、少年は記念館の外にいた。
入り口から出たところで誰かに抱えられているのだと、遅れて気付く。
「良かった、間に合った……」
少年を抱えていたのは、チーターを模したオレンジの仮面の異形。
それはライジングホッパーとは異なる、新たなゼロワンの姿。その名も、
《スピーディーナンダー! ラッシングチーター!》
《Try to outrun this demon to get left in the dust.》
『ラッシングチーター』
地上最速の動物であるチーターの特性を得た、ゼロワンの新たな姿。スピード特化の高速戦闘形態だ。
「彩夢くん!」
駆け寄ってきた福添に、少年を預ける。
「おじさん、この子を安全な所まで。
……頼みます」
「ああ、任せろ!」
「オレは、中のノイズを倒してくる」
「分かった。気を付けて」
「うん」
「おにーちゃん!」
2人に背を向けて走り出そうとしたゼロワンを、少年の声が引き止める。
「たすけてくれて、ありがとう!」
「……うん。助けられて、良かった」
高速で駆け、記念館の中へと走るゼロワンの背を見送り、福添は少年を抱き抱えてその場を後にする。
(いつの間にか、大きくなったんだな。彩夢くん)
===
再び記念館の中へと戻ったゼロワンを、2体のタコ型ノイズが出迎える。
歓迎と言わんばかりに跳び上がり、ゼロワンの上を取るや13本の触手を一斉に伸ばしてくる。それが2体分、つまり26本。
「──ッ!」
ラッシングチーターのオレンジの装甲はチーターの能力を体現しており、装着者である彩夢の走力と反応速度を大幅に引き上げる。
故に、今のゼロワンはノイズの触手よりも早く動ける。
その証拠に、ノイズの攻撃を掻い潜り、少年を助けて記念館の外まで出るといった芸当を見せた。
つまり、ラッシングチーターの力なら、26の触手による嵐のような攻撃をすべて
「ハァッ!」
触手を避け、オレンジのサイバー線を宙に描きながら壁を駆け上がり、ノイズの上へ躍り出るやアタッシュカリバーを形成。ライジングホッパーのキーを装填する。
「でぇぇやァッ!」
《ライジングアタッシュ!》
渾身の力でカバンモードのアタッシュカリバーを振り抜き、ノイズをぶん殴る。
殴られたノイズはもう1体を巻き込み、床へと叩き落とされる。
「これで決めるッ!」
《ラッシングインパクト!》
ドライバーのキーを押し叩き、壁を走ってノイズの落下より速く地上へ。
そして円を描くように走り出した。
ゼロワンの残像と、オレンジのサイバー線で構成された壁の中へと叩き付けられたノイズが、触手を壁に伸ばすとその触手は弾かれる。
壁の中からゼロワンが弾丸のように飛び出し、跳び蹴り。ノイズの触手を蹴り抜き、千切り飛ばすや再び壁の中へと戻る。
これはマズイとノイズが迎撃をしようと飛び出したゼロワンに触手を振るうが、蹴りに押し負け触手を蹴り飛ばされ、同時に反対方向から飛び出したゼロワンに胴体を貫かれる。
ゼロワンが増えたのでは無い。速すぎて増えたように感じるだけだ。
2方向同時攻撃、4方向同時攻撃、8方向同時攻撃、32方向同時攻撃。
ゼロワンの生み出した檻に閉じ込められたノイズは、加速し続け、増え続けるゼロワンの攻撃に成す術なく触手を蹴り千切られ、胴体に穴を開けられていく。
「ダアァァァァァァァァァッ!!!」
ラ
ッ
シ
ン
グ
イ
ン
パ
ク
ト
ラ
ッ
シ
ン
グ イ ン パ ク ト
128方向同時攻撃。
全身を余すことなく蹴り抜かれた2体のタコ型ノイズは、炭となり爆発するように散り去るのだった。
===
仮面ライダーバルキリー。
その名の由来となった北欧神話の戦乙女バルキリーは、戦士を導く存在だ。
バルキリーに導かれた戦士は、来るべき戦いに備えて己を鍛え上げ、そして戦いに赴くと言われている。
例え意図したものではないとしても、
彩夢にとっての本当の戦いは、これから始まろうとしていた。
彩夢のゼロワンの新フォーム、ラッシングチーター!
仮面ライダーバルキリー、刃唯阿から貰ったラッシングチーターのプログライズキーで変身する超高速戦闘形態だ!
単純な走力だけならシャイニングアサルトより速いぞッ!
ちなみに、必殺技カットインが明朝体なのは彩夢が公的な機関である一課所属だからです。