人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize―   作:ブレイアッ

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しばらくシリアス続いたので今回は日常回、という名の説明回です。


11話『彩夢とサヨ』

 彩夢が一課でのアルバイトを始めてからもうじき1ヶ月が経とうとしていたある日。

 

「お、彩夢くんお疲れー」

 

「お疲れ様です。榊さん」

 

 時刻は22時。労働基準法で定められている学生のアルバイトが働いてはいけない時間だ。

 この時間帯は更衣室が一課にいる学生バイト組で賑わう時間帯だ。とはいっても、一課にいる学生バイトは彩夢と、この(サカキ)正人(マサト)の2人だけだが。

 

「今日も現場整理だったんですか?」

 

「そ。ノイズの残骸を片付けたり、現場の記録とかね。あ、聞いてよ。最近は二課の秘密兵器とやらのおかげで建物の被害がヤバくてさ」

 

「あ、見たことあります。あの剣が降ってくるやつ」

 

「そーそー、アスファルトが穴ボコだらけになるやつ。穴の数とか被害とか調べて報告するの、結構大変なんだよなー。もう少し道路に優しくしてくれっての」

 

「あはは……」

 

(ノイズと戦う時に地面を意図的に爆破させることもあるって話、黙っとこうかな……)

 

 榊正人。大学2年の19歳。

 彩夢にとって貴重なバイト仲間だ。

 主な仕事はレイダー部隊やシンフォギアが戦った後の建物や道路の損壊状況などを調査し、記録。そして後片付けをすること。

 彩夢がバイトを始めたばかりの頃にやったノイズの残骸処理などは主に彼のいる部署の仕事だ。

 ちなみに、彼の父親の名は榊遊人。過去に結婚詐欺事件の被告人にさせられた事があり、飛電或人や不破諌、弁護士ヒューマギアのビンゴの活躍で無罪になったという経緯がある人物だ。

 

「あ、そういや今日バイト代入る日だった。彩夢くんはどんぐらい貰ったの?」

 

「えーっと、ちょっと待ってくださいね」

 

 ライズフォンを操作し、自分の口座の残高を確認する。彩夢は基本的に電子マネーを使用するため、それに合わせてバイト代は口座振り込み。さらに給与明細はメールで来るようになっている。

 

「……ん? んん? んんんっ!?」

 

「お、どうした?」

 

「に、にじゅうはちまんはっせんごひゃくえん……」

 

「さっすがレイダー部隊。『レイダー実装資格』持ってなくてもバイト代たっけーのな」

 

「こんなに貰っていいんでしょうか……」

 

「いいんじゃね? レイダー部隊だし」

 

 レイダー部隊。レイダーとして人々をノイズから守る者で構成された部隊。

 レイダーに実装するにはレイドライザーの危険性から100人が受けて10人が合格出来るかどうかの『レイダー実装資格』が必要であり、これを取得してレイダーになれたとしても、その業務内容から死亡率は日本一。

 故にレイダーに実装できる人間は貴重であり、レイダー部隊に所属する者の給料が安いはずが無い。

 『レイダー実装資格』を持っていなくても、ゼロワンとして最前線で戦う彩夢のバイト代も当然高くなる。

 

「どうしよう……」

 

「せっかくだし世話になってる人にプレゼント買うとかどうよ。俺も初任給で親へのプレゼント買ったし」

 

「あ、良いですね。明日バイト休みだし、学校帰りに刃先生に不破おじさんに、サヨにも何か買おっかな」

 

「サヨって、もしかして歓迎会にいたあのヒューマギアか? 見たこと無い型だったなぁ」

 

「あー。たしか、成長型ヒューマギアのプロトタイプって父さんが言ってました」

 

「お、聞いたことの無いなそれ。どんなヒューマギアなんだ?」

 

 ヒューマギアオタクな気がある正人か興味津々に訊く。

 

「えーっと、『人と共に成長するヒューマギア』ってコンセプトで作られたヒューマギアです。飛電メタルってのを応用して人と同じスピードでボディを成長させることを可能としたとか。あ、ご飯食べたりも出来るんですよ。メインは電力ですけど」

 

「スゲーなそれ、ほとんど人間じゃん。でもなんでニュースとかにならなかったんだろ」

 

「あー、色々問題があって発表には至らなかったらしいです。成長型ヒューマギア1体作る手間とコストがあれば通常のヒューマギアが5体作れるとか、消費電力がすごくて維持コストが高いとか……」

 

「コスパ最悪だったのか……」

 

「他にもその場に適応したボディに成長するのを待つより普通にその場に適したヒューマギア派遣した方が安上がりで時間もかからないとか……。

 そんな感じで色々理由はあるらしいんですけど、結局はプロトタイプを1体作ってお蔵入りになったらしいです」

 

「世知辛ぇ……。ん? その場に適応したボディってことは、利用者の……彩夢の好みが反映されるとかあんのか?」

 

「? どうしてです?」

 

「だってほら、胸デカいじゃん。あのサヨってヒューマギア」

 

「んへぁっ!?」

 

 

 

===

 

 

 

 サヨの1日は早い。

 毎朝5時半には活動開始して、彩夢の弁当を作らなければならない。

 彩夢は元々かなり食べる方だったのだが、中学3年になってちょっと遅れてやって来た成長期に入ってからは食べる量が増し、最近になってレイダー部隊でのバイトが始まってからはさらに増えた。

 そんな食べ盛り育ち盛りの彩夢のため、今日も五合炊きの炊飯器で米を炊き、弁当に詰めるおかずを作っていく。

 2合分のご飯が入る弁当箱はかなり大きい。それでも足りないと言うので早弁用のおにぎりも用意する。

 

 7時になる前には寝ている彩夢を起こしに行く。

 散らかった部屋に入ってまずは一声。

 

「彩夢様、朝ですよ」

 

「ん~……」

 

 血は繋がってなくても、目覚まし6個かけても中々起きないこの目覚めの悪さは父親似だ。この程度では起きない。

 

「彩夢様、起きてくださーい!」

 

 布団をひっぺがして、体を揺する。

 

「ん~。おはよー」

 

「はい、おはようございます。もうすぐ朝ごはんが出来ますので、早く支度して来てくださいね」

 

「ん……」

 

「二度寝しない!」

 

 

 

 

 

 朝食をおかわりして2合分の米を平らげた彩夢が学校に行っている間に、洗い物や洗濯、家の掃除などを済ませる。

 

「どうすればこんなに散らかるのでしょう……」

 

 散らかりに散らかった彩夢の私室を前に、サヨはため息をつく。

 「彩夢に生活力というものは存在しない」と、サヨは考えている。それほどまでに彩夢は家事が苦手なのだ。特に部屋の片付け。

 ため息をつきながらも手際よく片付けを開始する。部屋のどこに何があるのかは彩夢よりサヨの方が把握していたりする。なお、ベッドの下は除く。

 

「えーっと、ベッドの下には男のロマンとか、そういうのがあるから、勝手に漁ったりするのはよした方がいいんじゃないかな~?

 そう! ベッドの()だけに、よ()()方がいい! はいッ! アルトじゃ~、ナイトぉ~ッ!」

 

 と、過去に或人に言われてからはベッドの下は彩夢の管轄。最終防衛ラインなため、そこだけは手出しできないのだ。

 決して、どこかで拾ってきたであろうサヨ似の巨乳モデルが表紙のスケベ本らしきものがチラリとベッドの下から見えていても、気にしない。気にしないのだ。

 

 

 

 

 

 彩夢の私室の片付けと掃除を済ませると、やるべき家事が無くなり、手持ち無沙汰になる。

 

「今日は帰りが遅くなると言ってましたし、どうしましょう……」

 

 飛電家のすぐ裏には飛電インテリジェンスのニューデイブレイクタウン支所がある。人が足りないなどの理由でヘルプを求められれば駆けつけるのだが、今日はその気配も無い。

 

 飛電家の家政婦サヨ。子持ちの専業主婦みたいな悩みに直面するのであった。

 

 

===

 

 

 放課後。彩夢はとある百貨店に来ていた。

 目的は勿論、初のバイト代で買う贈り物選びだ。

 

「不破おじさんのネクタイ良し。刃先生のチョコ良しっと」

 

 先日、ネクタイを焦がしたという不破の為にネクタイを購入し、食べることが趣味な唯阿の為にお高めのチョコレート菓子を購入。

 残るはサヨなのだが……。

 

「サヨって、何貰ったら喜ぶんだろう……」

 

 と、壁にぶち当たっていた。

 とりあえず百貨店の中をブラブラ歩きながら悩んでいると、見知った人物と遭遇した。

 

「あれ、彩夢くん?」

 

「おっ。立花か」

 

 それは、リディアンの制服に身を包んだ立花響であった。

 

「ひっさしぶりー! 元気そうで良かった!」

 

「それはこっちのセリフだ。立花も元気そうで……お前、膝ケガしてんじゃねーか!」

 

「あっははー、ちょっと転んで擦りむいちゃった!」

 

 膝のあたりに大きな絆創膏を見つけ、心配する彩夢に、シンフォギア装者としてノイズと戦っているとは言えるわけが無いので笑って誤魔化す響。

 

「そういえば、こんなところで何してたの?」

 

 変に追及されても困るので、若干無理矢理ながらも話題を変える。

 

「ん? あぁ……そうだな。せっかくだし、立花にも手伝ってもらうか」

 

「?」 

 

 

 

 

 

 日も暮れ始めた頃。

 目的の物を買い終えた彩夢は、響を百貨店の近くの駅まで送っていた。

 

「今日はありがとうな。色々助かった」

 

「こちらこそ。うまく行くと良いね!」

 

「おいちょっと待て、何か勘違いしてないか?」

 

「じゃあ未来が待ってるから! またねー!」

 

「あっ、おい! 行っちまった……」

 

 

===

 

 

 ニューデイブレイクタウン。

 彩夢の家。

 

 夕食も食べ終え、洗い物も済ませ、リビングにて彩夢とサヨの2人、ゆっくりとした時間が流れていた。

 

 ソファに座り、サヨは本を読みながらコーヒーカップに口を付ける。

 ちなみにこのコーヒーカップは、湯気とコーヒーの香りが出るコーヒーカップ型のヒューマギア用非接触型モバイルバッテリーだ。人と同じようにお茶を出来るようにと10年前に発売されたものである。充電量は微々たるものだが、雰囲気が出るとのことでそれなりに人気な品だ。

 

 一方の彩夢はというと、ライズフォンを弄っているようで少し落ち着かない様子だ。

 軽く深呼吸をし、体の影に隠していたものを持ってサヨのそばへ歩く。

 

「あの、さ。サヨ」

 

「どうしました?」

 

「これ。バイト代も出たし、いつもお世話になってるお礼」

 

 そう言ってサヨに渡したのは薄い黄色の包装紙に包まれた細長い小さな箱だ。

 

「開けても良いですか?」

 

「うん」

 

 包装紙を剥がし、中から出てきた白い箱を開けると、そこにあったのは、透き通った薄桃色の八枚花弁の花をあしらったヘアゴムだ。

 

「家事とかする時に髪を纏められるようにって選んだんだけど……」

 

「ありがとうございます。とっても、嬉しいです」

 

 ヘアゴムを口に咥え、肩まである髪を後ろに一纏めにしてヘアゴムで留める。

 ロングボブからポニーテールへ。明るめの髪色の薄桃色の花がよく()える。

 

「どうですか?」

 

 ふわりと、サヨが花がほころぶような笑みを浮かべる。

 

「うん、いいと思うよ。あっ、そうだ! 学校で課題が出てるんだった! ちょっと片付けてくる!」

 

 時刻は21時をとうに過ぎている。彩夢は少し慌てて自室に向かい、バタンッ! と勢いよく扉を閉めた。

 

「はあぁぁぁぁ……」

 

 大きなため息を1つ吐きながら、ドアに預けた背をずるずると滑らせ、床に座り込む。

 

「ヒトとヒューマギアの間に恋愛関係は成立しない。ヒトとヒューマギアの間に恋愛関係は成立しない。あぁぁぁ……」

 

 人工知能には心があり、人を愛することが出来る。それは、友愛であり、親愛であり。しかし決して恋愛ではない。

 恋愛とは、生物の生殖本能が由来となるものであり、生殖機能を持たないヒューマギアとの間に本当の恋愛関係は成立しない。というのが一般論で、それが普通だ。

 

「……似合ってたなぁ……喜んでくれてたなぁ……はあぁぁぁぁ……」

 

 それでも、普通じゃないヒトはいつの時代にも存在する。

 

 

 飛電彩夢、16歳。絶賛サヨに片想い中。

 




人工知能との恋愛関係は成立するのか。この話の為に色んな論文読み漁ったんですけど、ところどころゼロワンでやった話と被ってて楽しかったです。
(遅れた理由)
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