人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize―   作:ブレイアッ

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※注意※
今回の話には一部グロテスクな表現があります。
表現はボカしてありますが苦手な方はご注意下さい。
今回の話より必須タグに『残酷な描写』を追加します。


12話『向き合うカクゴ』

「サヨ、ちょっと付き合ってほしいところがあるんだけど」

 

 土曜日の朝。

 バイトも学校も無いにも関わらず、珍しく早起きした彩夢は、開口一番にそう言った。

 

 

 

 

 

 都内にある、とある墓地。

 「飛電家之墓」と彫られた墓石の前に、飛電彩夢とサヨはいた。

 

「花ってここでいいの?」

 

「はい。そこに生けてください」

 

 定期的に墓参りに来ているサヨに教わりながら、慣れない手つきで花を供える。

 

「どうだ、父さん。綺麗な花だろ? オレの初めてのバイト代で買ったんだ」

 

 サヨがショルダーバッグから取り出した線香とライターを受け取り、火を付けて線香立てに立てる。

 それから、サヨと並んで手を合わせた。

 

 4月も終わりを告げ、もうじき5月に入ろうという日の朝の陽気はとても暖かく、静かだ。

 若葉萌える木々を、風が撫でる。

 

「……あの事件から3年かぁ……」

 

「彩夢様……」

 

「大丈夫。心配しないで、サヨ。うん、大丈夫……」

 

 ふと、墓誌に目をやる。

 そこには、飛電或人の名が刻まれていた。

 

 

===

 

 

 3年前、2040年。

 この日、ニューデイブレイクタウン完成記念式典が()り行われていた。

 ニューデイブレイクタウン記念館を背景に、屋外広場に作られた会場には政府の関係者や、開発に携わった企業の社長など、多くの人々やヒューマギアが集まっていた。

 そして飛電彩夢もまた、この場にいた。関係者席ではなく、会場の一番後ろにある一般席だ。

 中学校の制服である学ランに身を包み、パイプ椅子の上に座っている。

 

「それでは最後に、株式会社飛電インテリジェンス代表取締役社長。飛電或人様より、挨拶をいただきます」

 

 式典の司会進行を務めるのはイズだ。

 スーツを着こなした或人がゆったりとした、しかし力強い足取りで壇上に上がり、講演台の前に立つ。

 

「ただいまご紹介にあずかりました。株式会社飛電インテリジェンス代表取締役社長。飛電或人です」

 

 22歳の若さで社長になり、数々の困難や挫折を経て、今年で42歳になる飛電或人の挨拶のスピーチは貫禄を感じさせる堂々としたものであり、皆一心に聞き入っている。

 

 彩夢には話の内容は少し難しく、何を言っているのか理解が追い付いていないところはあったが、大勢の前で話す或人の、父親の姿は憧れで、自慢の父親だった。

 

 

 

 

 

 そして、事件は前触れもなく起きた。

 

 

 

 

 ダァンッ!

 

 

 

 

 銃声。

 

 或人の胸から血飛沫が舞い、講演台の陰に倒れる。

 

「……ぇ」

 

 音の発生源は一般席、彩夢の目の前。

 パイプ椅子から立ち上がり、銃を構えた男がいた。

 

「或人社長!」

 

 司会席からイズが駆け寄る。

 

「てめぇッ!」

 

 一般席の外側から見ていた不破が、鬼気迫る表情で男の元へと駆ける。

 それとほぼ同時に警備員ヒューマギア達も駆け出した。

 

 しかし、不破にも、警備員ヒューマギアに捕まるよりも早く、男は叫ぶ。

 

「アークの意思のままにッ!」

 

 そして銃口を咥え、引き金を引く。

 くぐもった銃声と共に、男はその場に崩れ落ちた。

 

 真後ろにいた彩夢の顔に、べちゃっと、生温かいものが当たった。

 

 

 

 

 

 それからの記憶は、どうにも現実味が無かった。

 感情が追い付かず、泣くことも、怒ることも出来ず、呆然と、ただ呆然と、その光景を眺めていた。

 

 

 式典自体はすぐに中止になることは無かった。

 普通、人は心臓を撃たれても即死には至らない。倒れた或人が、式典を最後までやるようにとイズに伝えたらしい。

 式典自体が終わりに差し掛かっていたこともあり、救急車が到着するまでの数分で落ち着かない空気のまま、イズが閉会宣言まで持ち込んだ。

 

 その後、駆けつけた救急ヒューマギアによって同伴として付き添うイズと共に、或人は救急車で搬送された。

 

 救急ヒューマギアによれば、銃弾は心臓を逸れていたらしく、助かる見込みは十分にあるとのことで、その知らせを聞くや張り詰めていた会場の空気は一気にほどけた。

 

 良かった、と皆が安堵した瞬間。

 救急車が去っていった方角から、爆発音と共に黒い煙が立ち上った。

 

 しばらくして、或人を搬送していた救急車が爆発したという知らせが入った。

 

 爆発現場にあったのは、壊れた救急車と、ヒューマギアの破片だけだったという。

 

 後日、現場から発見された運転と応急処置に当たっていた救急ヒューマギアのセントラルメモリーを解析し、事件の一部始終が判明した。

 

 救急車の運転をしていた救急ヒューマギアの記録映像によると、病院へと向かう救急車の前、道路の真ん中に1体のノイズが出現したのだ。

 そのノイズは、向かってくる救急車に気が付くや、その体を紐状に変化させ、そのまま救急車を貫いた。

 運転席ごと貫かれ、ヒューマギアの記録はそこで途切れた。

 

 救急車に乗っていた人間はただ1人。或人が、ノイズの狙いだった。

 

 或人の手当てをしていた救急ヒューマギアの記録映像によると、運転席を貫いたノイズがそのまま壁を突き破り、ストレッチャーに横たわる或人の身体を炭素へと変えていく姿が記録されていた。

 そのすぐ後、爆発が起こり、映像は途切れた。

 

 

 

 

 

 この事件には、後日談がある。

 

「追い詰めたぞ、アーク! いや、ギル・ヘルバート!」

 

「もう逃がさねぇ。ここでテメェをブッ潰すッ!」

 

《ブレイクホーン!》

 

《ランペイジバレット!》

 

「「変身ッ!」」

 

 或人の殺害を(こころ)み、自害した男が言っていたアーク。

 刃唯阿らによる決死の調査により、その正体がアメリカのとある研究所にいた科学者、ギル・ヘルバートという男だと判明した。

 ギルを追ってアメリカに渡った仮面ライダーバルカン/不破諌と、仮面ライダーサウザー/天津垓の2人は、ギルの送り込んでくる刺客を次々と倒し、彼の拠点を次々と潰し、約3ヶ月をかけて追い詰め、そして。

 

「貴様をこの手で倒すッ! それがアークを生み出した私の、1000%の贖罪(しょくざい)だッ!」

 

《サウザンド ディストラクション!》

 

「アークをブッ潰すッ! 彩夢やサヨの未来に、アーク(テメェ)はいらねぇッ!」

 

《ランペイジオール ブラスト フィーバー!》

 

 2人の仮面ライダーの活躍により、アークは倒された。

 2043年現在において、記録に残される最後のアークである。

 

 

 

 そしてもう1つ。

 救急車の爆発現場には、救急ヒューマギアの破片以外に、イズのものと見られるヒューマギアの破片が見つからなかったのである。

 

「ウィアを介してアクセスを試みましたが、失敗しました。おそらく、飛電の通信衛星のどれとも接続されていないかと。この事から導き出される結論は──」

 

「ありがとうシェスタ。その先は言わなくていい」

 

「かしこまりました。刃様」

 

(状況からして、イズの生存も絶望的だ。しかし……)

 

 飛電或人の遺品であり、飛電インテリジェンスの所有物であるゼロワンドライバーとゼロツードライバー、そしてプログライズキーを初めとするゼロワン関連の武器、アイテムが見付かっていない。

 加えて、イズの残骸と見られる物が無いという現状。

 そこから考えられるのは──

 

「生きているのか、イズ……」

 

 事件以来、イズの姿を見た者は、いない。

 

 

===

 

 

「では桶と柄杓を返してきますので、彩夢様はここでお待ちください」

 

「うん」

 

 墓参りを終え、彩夢は1人墓地の入り口に佇む。

 この墓に来たのは、今日が初めてだった。

 

 ずっと、或人がまだ死んでいないような気がしていたのだ。

 「ドッキリでしたー!」なんて笑いながら元気な姿で現れて、「アルトじゃ~、ナイト~!」とギャグを飛ばしてくるような、そんな気がしていた。

 けれど、墓を前にすれば、それがただの妄想だと否定されるのだと分かっていたのだ。

 現実を突き付けられるのが恐かったのだ。

 

 しかし、ゼロワンを受け継いで、初めて或人の死に向き合う勇気ができた。

 助けられなかった少女が、彩夢に「死」と向き合う覚悟をくれたのだ。

 

「てめーがゼロワンか」

 

 不意に、後ろから声をかけられた。

 

「君は……?」

 

 振り向くと、そこには鈍い銀色の鎧に身を包んだ少女がいた。

 バイザーに隠れてその顔はよく分からない。

 

「悪いが、舞台から蹴落とさせてもらうぜッ!」

 

 肩から伸びる宝石のような鞭が、彩夢めがけて振るわれた。

 




不破さんと天津垓がしょうもないことで軽くケンカして、通信で唯阿さんがツッコミしたり呆れたりする珍道中編があったかもしれない。
ちなみに彼らが解決したのでたぶん今後出てこないんですが、今回出てきたギル・ヘルバートが変身するアークの名は「アークギル」と言います。(仮面ライダーでは無いです)
元ネタはまんま「漫画版キカイダー」のギル・ヘルバート。(特撮版だと名前が違う)
漫画版ではロボット工学の権威で、特撮版では宇宙の権威で、小説版では人工知能開発に携わっている悪の親玉です。ゼロワンとの親和性しかない男。
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