人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize― 作:ブレイアッ
と言うわけでお待たせしました13話です。
「悪いが、舞台から蹴落とさせてもらうぜッ!」
墓参りを終えた彩夢の前に突如として現れた、鈍い銀色の鎧を身に纏った少女。
問答無用で放たれた宝石のような鞭の一撃が、彩夢めがけて振るわれる。
「うわっ、と!?」
咄嗟に横に転がって回避し、すぐさまゼロワンドライバーを腰に装着する。
《ジャンプ!》
この1ヶ月で身体に染み込んだ動作でライジングホッパーのプログライズキーを起動させ──
「…………っ」
ドライバーにかざす手を寸でのところで止めた。
それが、鎧の少女の琴線に触れる。
「テメェ、どういうつもりだ。なんで変身しない!」
吠える鎧の少女。
そんな彼女に、彩夢はプログライズキーを握りしめ、言い放った。
「ゼロワンは、誰かを守るための力だ。女の子を相手に使うような力じゃない!」
脳裏に浮かんだのは、助けられなかった少女の顔。そして助けられた少年の笑顔。
生きたいと願って手に入れた力だからこそ、誰かを傷付けるようなことには使いたくなかった。
「チッ! ふざけやがってッ!」
そんな彩夢にイラついた様子を隠そうともせず舌打ちし、どこからともなく紫の宝石が付いた銀色の杖を取り出す。
「だったらコイツでどうだッ!」
杖から緑の光が放たれ、そこから
人型のものが5体、ナメクジ型が6体。計11体のノイズが彩夢を囲う。
「な……ノイズを呼び出したッ!?」
ノイズが相手となれば迷っている余裕は無い。変身しなければ、ノイズに触れただけで炭素と化して死んでしまう。
すぐさまキーをドライバーにかざして承認、展開してドライバーに装填する。
「変身ッ!」
《プログライズ! ライジングホッパー!》
《アタッシュカリバー!》
ゼロワンへ変身し、アタッシュカリバーを構える彩夢を見て鎧の少女はほくそ笑み、杖を掲げてノイズに号令をかける。
「行けッ!」
ノイズが一斉に紐状に変形し、囲む円を狭めるように一直線に襲いかかる。
逃げ場は上空のみ。
「ッ!」
ライジングホッパーの跳躍力でもって真上へと跳躍し、ノイズをかわす。
続いて、上空のゼロワンめがけてノイズが追撃する。
「誘われた!? ッ、このッ!」
《ブレードライズ! フルチャージ!》
「せあッ!」
《カバンストラッシュ!》
空中で振り抜いたアタッシュカリバーが弧を描き、黄色い斬擊となって飛び、迫り来るノイズを両断する。
逃げ場の無い上空に誘導し、そこに追撃する。
それぞれが本能のままに動くこれまでのノイズとは明らかに違う、統率のとれた動きだ。
(このままここにいるのはヤバイッ!)
身動きの取れない空中では、さらなる追撃には対応出来ない。
そう判断したゼロワンは、すぐさまアタッシュカリバーをカバンモードに変形。足下に放り投げるやドライバーのキーを押し込む。
以前にも使った。アタッシュカリバーを蹴って得られる作用と反作用を利用した空中高速機動。
進む先は鎧の少女。その手にあるノイズを呼び出す時に使っていた杖を奪うべく、全力でアタッシュカリバーを蹴った。
《ライジングインパクト!》
黄色いサイバー線を宙に描き、迫り来るゼロワンを──。
「ちょっせえ!」
宝石状の鞭を、まっすぐ棒のように固定した
「ぐッ!?」
ゼロワンドライバーに杖が突き刺さり、体がくの字に折れる。
あまりの勢いと衝撃に鎧の少女は耐えきれず、後方へと吹っ飛ばされた。
「チッ、壊したと思ったんだがな」
鎧の少女は傷1つ無いゼロワンドライバーを見やり、悪態をつく。
(必殺技を移動に利用する技は初めて見せたはず。なのに、それを分かってたようなカウンター!
まさか……!)
ノイズを召喚し、操る力。ゼロワンの行動パターンを理解した動き。
そこから導き出される答えは──。
「まさか、記念館のノイズ襲撃事件……お前が犯人かッ!?」
ゼロワンの問いに、鎧の少女は口元に挑発的な笑みを浮かべ、言う。
「だったら、どうするよ? 仮面のヒーローッ!」
その瞬間。心の中で、何かが切れた。
目の前の少女が、ノイズを操り、大勢の人やヒューマギアを傷付けた。あの少年の命を奪いかけた。
そう思うと、
《アタッシュカリバー!》
ブレードモードのアタッシュカリバーを生成し、ドライバーから引き抜いたキーを怒りに任せて叩き付けるように装填する。
《Progrise key confirmed. Ready to utilize.》
アタッシュカリバーからのアナウンス音声が鳴り終わるより早くアタッシュカリバーを畳み、カバンモードへと変形させ──
ガキンッ!
──ることは出来なかった。
カバンモードへ変形途中のアタッシュカリバーに、鎧の少女が伸ばした宝石状の鞭が挟まり、変形を妨害したのだ。
「本当に、面白いようにこっちの思い通りに動いてくれるなァッ!」
「しま──ッ!」
鞭のトゲが伸び、アタッシュカリバーを絡め取る。
そして、鎧の少女の手へと収まった。
《チャージライズ!》
「ゼロワンは誰かを守るための力? 女の子に使うような力じゃない?
だったら今のテメェは何なんだよッ! 怒りに任せてこんなモンをブッぱなそうとしたテメェはよォッ!」
少女の言葉が、彩夢の心を殴りつける。
命も心も持たないノイズを屠る刃を、命も心も持つ女の子に向けようとした事実を、目の前の少女を
《ブレードライズ! フルチャージ!》
「テメェみたいに強い力を持つやつがいるからッ! この世界から、争いは消えないんだッ!」
《ライジングカバンダイナミック!》
横凪ぎに振るわれた刃から放たれる黄色い斬撃。
必殺の威力を誇るそれは、まさしく己が少女に向けようとしたもの。
「ぐああぁぁッ!」
防御すらせず、直撃する。
爆発が起き、ゼロワンは吹き飛ばされた。
地を転がり、土が黄色い装甲を汚す。
カシャン、と腰のホルダーからラッシングチーターのキーが落ちて、転がる。
「ぐっ、うぅぅ……ッ」
当たりどころが良かったのか、変身解除には至らなかったものの、ゼロワンは地に伏せたまま起き上がれない。起き上がろうとしない。
「オレ、は……ッ!」
理不尽な話だ。
勝手に誰かを危険に晒し、勝手に襲ってきた。
悪いのは相手だ。鎧の少女だ。
だからといって、ゼロワンが鎧の少女に
誰かを守ると言って、生きたいと願って手に入れた力で、誰かを傷付けようとした自分に
《チャージライズ!》
カバンモードのアタッシュカリバーから流れる待機音が、己の死を予告しているように聞こえた。
──『彩夢、お前に夢はあるか?』
ふと、
幼い頃、噴水公園で肩車をしてもらった時の記憶だ。
──『うーん、わかんない!』
──『そっか、分かんないか』
──『ねぇ、おとうさんのゆめってなに?』
──『父さんの夢か? そうだな……今の夢は──』
《ブレードライズ! フルチャージ!》
アタッシュカリバーの音声が、意識を現実に引き戻す。
「『彩夢が色んな夢を見れる未来を創る』……そうだったよな、父さん」
顔を上げる。
まだ、自分は自分の夢を見れていない。
今ここで死んだら、
視線の先に、ラッシングチーターのプログライズキーがあった。
託された夢がある。託された力がある。
そうだ、ゼロワン。こんなところで立ち止まってはいけない。
だって、託された夢は、未来。そして、託された
《ダッシュ!》
──未来へと走り出す力なのだから。
「消えちまえよ、ヒーローもどき」
高く掲げられた必殺の刃が振り下ろされるよりも速く。
「断るッ!」
《オーソライズッ!》
天からオレンジ色のチーターのライダモデルが降り落ち、アタッシュカリバーの刃を噛み付いた。
「このッ、放しやがれッ!」
鎧の少女はアタッシュカリバーからライダモデルを振り払わんとを滅茶苦茶に振り回す。
チャージされたエネルギーが真下の地面に放たれ、巻き起こった爆風でライダモデルは吹き飛ばさるも、くるりと宙で回転して着地。
立ち上がり、キーを展開するゼロワンを背に、ガオゥッと、鎧の少女へ吼えた。
「チェンジ、ゼロワンッ!」
《プログライズッ!》
キーを装填。ドライバーが開くと同時に、ライジングホッパーのアーマーが移動する。
ラッシングチーターのライダモデルが空中で分解され、二重螺旋を描くエネルギーとなってゼロワンに照射。チーターの力を持ったオレンジのアーマーへと再構成される。
《スピーディーナンダー! ラッシングチーター!》
《Try to outrun this demon to get left in the dust.》
夢に向かって飛ぶ力と、未来に向かって走る力を
「オレはここに、父さんと、このゼロワンに誓うッ!
もう二度と、刃に悪意を込めないとッ!」
──『そいつをお前に託す。どう使うかは、お前次第だ』
ラッシングチーターを託された時の、刃唯阿の言葉が脳裏に走る。
「ここでオレが倒れたら、キミはきっと、沢山の誰かを傷付けるだろう。だから、オレは、この力でッ、オマエを止めるッ!」
息を吸い、目の前の少女に指先を突きつけ、言い放つ。
「オマエを止められるのはただ1人。オレだッ!」
「ハッ! やってみな、ヒーローもどきッ!」
フライングファルコンが仲間を見るような目でライジングホッパーを見ているぞ!
次回
なんかゼロワンを嫌ってる鎧の少女VS闇落ち適正の高い主人公。
来週には投稿したい!