人機重唱シンフォギア―Sinfonia×Rize―   作:ブレイアッ

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 映画が良すぎて妄想がファイヤーしました。
 割とノリと勢いの見切り発車、もしくは瞬瞬必生。そんな感じ。


第1章『Who are you』
0話『仮面ライダーのいない世界』


 一番古い記憶は、赤と黒。

 

 赤く燃え盛る建物の中。さっきまで聞こえていたはずの悲鳴すら聞こえなくなった中で、自分の血で赤く濡れた手足が黒く炭化して崩れ落ちていくのを見ながら、「痛い」と、「死にたくない」と、泣き叫んでいた記憶がある。

 赤い翼に抱かれて、黒い空を飛んだ記憶が焼き付いている。

 

 

 

===

 

 

 2020年。

 人類の悪意が生み出した『アーク』と、人工知能搭載人型ロボ『ヒューマギア』を巡る戦いは仮面ライダーゼロワン/飛電或人を初めとする仮面ライダー達の活躍によって終結した。

 

 人間とヒューマギアが共に歩き出した新たな未来は、決して平坦な歩きやすい道ではなく、凸凹だらけで前も見にくくて実に歩きにくい。

 それでも人間とヒューマギアは手を取り合い、歩みを止めなかった。

 

 

 いつしか、この世界から仮面ライダーはいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 それから時は経ち、2040年。

 

 都内にある遊園地、クスクスドリームランド。普段は人々の笑い声があちこちから聞こえる筈のそこに、人々の笑い声は無かった。

 あるのは悲鳴、そして炭素と化して崩れ落ちる人間。

 

 認定特異災害。

 

 人類の天敵。

 

 

 

 『ノイズ』

 

 

 

 そう呼称される存在が現れたのだ。

 

 

 『ノイズ』は空間からにじみ出るように出現し、それに予兆も前触れもない。

 ただ突如として現れ、人間のみを襲撃。捕食すらせず、触れた人間を自身もろとも炭素と化し、人間を殺せなかったら自己崩壊して消える、人間を殺す事にのみ特化した化物。

 

 

 

「た、助けてくれぇ!」

 

 アイロンのような手をした人形のノイズ、ヒューマノイドノイズが逃げ遅れた男性客に迫る。

 後ろはイベントステージ、その壁際に追い込まれ、逃げ場は無い。後はノイズが踏み出せば男性に触れ、炭素と化して死んでしまうだろう。

 ノイズがその形状を変化させ、投げ槍のように男性に向かって飛ぶ。

 

「やぁぁぁぁっ!!」

 

 しかし、ステージから飛び出した何者かが男性を抱えて横に飛び、寸前で助け出した。

 

「大丈夫ですか?」

 

 上半身裸に蝶ネクタイ。盛り上がった筋肉にサスペンダー。そして耳にはヒューマギアであることを証明するモジュールが付いている。

 

「ふ、腹筋崩壊太郎!」

 

 この日のステージイベントのために来ていたお笑い芸人型ヒューマギア、『腹筋崩壊太郎』である。

 

「逃げてください。あちらの西入園ゲートの方角にノイズはいません」

 

「わ、分かった! ありがとう! 腹筋崩壊太郎ッ!」

 

 駆け出す男性客。

 それを追おうとするノイズの前に腹筋崩壊太郎が立ちはだかる。

 

「腹筋崩壊太郎から衛星ゼアへ、マギア化の許可を」

 

『警告。一度マギア化すると元には戻れません。それでもマギア化しますか?』

 

「はい。私の仕事は人間を笑わせること。ノイズによって人間が笑えなくなるのは……耐えられませんッ!」

 

『承知しました。腹筋崩壊太郎のマギア化を許可します』

 

「うおおおおおおおッ!」

 

 ノイズに向かって駆け出す。

 発熱し、トレードマークの蝶ネクタイとサスペンダーが燃え、人工皮膚が溶け落ちる。

 

《ベローサマギア!》

 

 昆虫の絶滅種、『クジベローサ・テルユキイ』のデータイメージを装甲として纏った『ゼアマギア・ベローサタイプ』。

 かつて人類の敵として現れた存在、『マギア』。

 しかし、そのヒューマギアモジュールが赤ではなく青に発光しているのが、彼が人類の味方たる証拠だ。

 

 

 「ノイズに対抗するには人間では無く、ヒューマギアが有効」

 

 

 人類の天敵たるノイズに対する戦略として、ヒューマギアを生み出した『飛電インテリジェンス』代表取締役社長、飛電或人が出した結論である。

 

 対ノイズ用にマギア化を正式な機能として取り入れた第三世代ヒューマギアが、ヒューマギアを管理する衛星ゼアに『マギア化申請』をし、ゼアが約2万にも及ぶマギア化条件をクリアしたと判断してようやくゼアマギアへの不可逆の転身(・・・・・・)が可能となる。

 そして、マギアの悪用や暴走を防ぐため、周辺のノイズの反応が消失するか停止信号を受けたマギアはすべての活動を停止し、物言わぬ死体(スクラップ)となるのだ。

 

「やぁぁあっ!」

 

 ベローサマギアが両腕の鎌、トガマーダーを振るい、ノイズに斬りかかる。

 その斬撃は小型のカエル型ノイズ、クロールノイズを斬り裂こうとして、すり抜ける。

 

 

 『位相差障壁』

 

 

 人間の炭素分解と並ぶ、ノイズをノイズたらしめる特性。

 ノイズ自身の存在を異なる世界にまたがらせることで、 通常物理法則にあるエネルギーを減衰、または無力化させる能力である。

 

 バスすら容易く両断するトガマーダーの一撃を無力化したのはこれによるものである。

 

 無敵の盾のように思われるが、これにはいくつか欠点がある。

 1つは攻撃の際にはこちら側への存在比率を上げなくては攻撃が当たらないため、存在比率が増す攻撃の瞬間に攻撃することで撃破できる。

 2つは強すぎる攻撃は無力化出来ないこと。効率を考えずに間断無く銃弾を放つような飽和攻撃で撃破が可能だ。

 3つは減衰する以上のエネルギーによる攻撃。山の地形を変えるような爆撃は防げない。

 1つ目は下手をすれば倒しきれずに死亡する確率の方が高く、2つ目はいくらか現実的だが、予算など後の事を考えると割に合わない。3つ目は論外だ。過去に山の地形を変えた結果、土砂崩れによる被害でノイズ以上の被害が出た事例がある。

 

 位相差障壁があるのになぜヒューマギアが対ノイズに有効とされるのか、その理由は大きく2つある。

 ヒューマギアは人間でないが故に炭素分解というノイズの必殺を無効化できること。もう1つは、

 

《ゼツメツノヴァ!》

 

 通常なら論外である位相差障壁が減衰する以上のエネルギーによる攻撃が出来るからである。

 

 緑に発光し、空中に幾条もの幾何学的な光の線が走るトガマーダーを振り抜き、巨大な光の刃として放つ。

 その斬撃を受けたノイズは、炭素と化して崩れ落ちた。

 

 ゼアマギアが持つ高エネルギー攻撃、ゼツメツノヴァ。必殺技とも言えるこれを使用してようやく一体倒せるというのだからノイズの位相差障壁は反則級だ。

 

 位相差障壁を超えて攻撃出来る存在を認識してもなお、ノイズの目標は人類である。

 ベローサマギアには目もくれず、人のいる方へと走る。

 その進行を断つように目の前に立ちはだかってはゼツメツノヴァを使用してノイズを撃破していくベローサマギア。

 

「これ……以上は……ッ!」

 

 しかし、必殺技の乱用でエネルギーはガリガリと削られて行き、エネルギー切れで行動不能になるまで3分持つかどうかにまで追いやられる。

 

 残るノイズは3体。

 ヒューマノイドノイズが2体、クロールノイズが1体。

 そしてベローサマギアに残された必殺技を放てるだけのエネルギーは1回分のみ。

 最終手段の自爆も、1体を道連れに出来るかどうか。

 どれだけ上手く行ったとしても、後1体倒せるだけの力が残されていない。

 自己崩壊を狙って時間稼ぎをしようにも動きの素早いクロールノイズを足止めするにはベローサマギア自身のスピードでは遅く、かつ時間制限のある状態でいつ起こるとも分からないノイズの自己崩壊を狙うのは非現実的だ。

 

 さらにタイミングの悪いことに、空から新たなノイズが現れる。

 鳥形のノイズ、フライトノイズである。

 手が足りない時に、手の届かない場所に現れたノイズ。出現したてで自己崩壊も望めない考えうる限り最悪のノイズだ。

 

「このままでは、避難所にノイズが行ってしまう!」

 

 どうあがいても絶望。その時だ。

 

 

 

「Croitzal ronzell Gungnir zizzl」

 

 

 

 戦場(いくさば)に、歌が聴こえた。

 

 

 

 軽やかにベローサマギアの前に降り立ったのは、巨大な槍を肩に担いだ赤い髪の少女と、剣を携えた青い髪の少女。

 

「大丈夫かい、ヒューマギアのお兄さん」

 

 赤い髪の少女が風に靡く後ろ髪を押さえながら声をかけた。

 ベローサマギアが返事をするより早く、フライトノイズが二人の少女を獲物と定め、ヒュウッと奇妙な鳴き声を上げながらドリル状に変形して突撃する。

 

「危ないッ!」

 

 しかし、赤い髪の少女はニヤリと笑い、槍の穂先を天に向ける。

 

≫《LAST∞METEOR》≪

 

 穂先が回転し、巻き起こった竜巻がノイズを飲み込み、炭素分解させた。

 

「心配してくれてありがとな、でもここからはアタシ達の番だ」

 

「貴方が命をかけて戦ってくれたおかげで、被害は最小限のものとなりました。感謝を」

 

 物陰から新たにノイズが現れる。ベローサマギアの索敵範囲外にいたのか、別世界への存在比率が大きすぎて察知出来なかったのか、何にせよ近くに現れた人間を殺すためにノイズが集まってきた。

 

「さーて、行くぞ翼」

 

「無茶はしないでよね、奏」

 

 

《 《 君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ 》 》

 

 

 戦場に歌が響く。

 

 力強く歌いながら、奏と呼ばれた赤髪の少女が槍を振るい、ノイズを斬り裂いてゆく。

 翼と呼ばれた青髪の少女が剣を振り抜くと蒼い光の刃が飛翔し、空から狙っていたフライトノイズ複数体を纏めて両断する。

 

「データベースに、該当無し……あれは一体……」

 

 

 ベローサマギアが知らないのも無理はない。彼女達が身に纏うそれは国家機密。衛星ゼアのデータベースにも記録されていないのだから。

 

 

 『シンフォギア』

 

 

 超古代の文明が遺した聖遺物の欠片から作られた『FG式回天特機装束』。シンフォギア・システム。

 インパクトの瞬間に異なる世界にまたがるノイズの存在を「調律」し、無理矢理こちら側の世界に引きずり出すことでノイズの盾である位相差障壁を無効化、 さらにシンフォギアから奏でられる音楽によって纏う『バリアコーティング』はノイズの炭素転換を無効化させる音楽のバリアを持つ、対ノイズ最終兵器。人類の希望。

 歌い戦う少女が身に纏っているのは、そういうものである。

 

 歌い、切り裂き、歌い、貫く。

 ノイズの天敵たるシンフォギアによって、あっという間に辺りのノイズは倒された。

 

「と、とと……。ふぅ。やったな、翼」

 

 ジェットコースターのレールの上から飛び降りた奏。着地時に少しバランスを崩したもの怪我1つ無い。

 周辺にノイズがいないのを確認してからシンフォギアを解除する。

 

「もう、気を抜かないの」

 

 大胆不敵とも、無警戒とも言える奏をたしなめるようにため息を吐く翼。

 しかし彼女もノイズはいないと判断したのか、その表情は穏やかだ。

 

 

 そんな彼女達を狙う輩が1つ。

 瓦礫に押し潰され、しかしそれをすり抜けて現れたノイズ。最後の1体。

 彼女達の死角から現れたそれは、無防備な奏に向かって己をドリル状に変形させて突撃する。

 

「危ないッ!」

 

 そのノイズに気付けたのは、奏と翼よりはるかに優れた知覚能力を持っていたから。

 そのノイズに向かって走れる力が残っていたのは奏と翼がノイズを殲滅してくれたから。

 

 

 ガギャンッ!

 

 

 金属が抉れる音が鳴った。

 

 一拍遅れて、奏はベローサマギアの腹にノイズが突き刺さっているのに気付く。

 

「オ怪我は……アリませんカ……?」

 

「お前、あたしを庇って……ッ!」

 

 腹に突き刺さったノイズは今だ健在。抜け出して再び奏を襲わんともがいている。

 そうはさせまいとベローサマギアはノイズを両手で押さえ込む。

 

『自爆機能を起動しました。危険です。離れてください』

 

 無機質なアナウンス。

 攻撃の直後で位相差障壁を緩めているノイズなら、自爆で道連れに出来る。

 

 奏が「やめろ」と、「死ぬな」と喚き、翼がそんな彼女の手を引いているのが見えた。

 

 あぁ、願わくば、最後(機能停止)の瞬間は、人間の笑顔を見たかったな──。

 

 ノイズから手を離し、両手を頭の横に当て。

 

「腹筋……パワー……ッ!」

 

 

 爆発。

 

 

 奏が伸ばした手は届かない。

 炎の中、炭素となったノイズが崩れていく。

 

「ッ! ちく、しょう……ッ!」

 

「…………己の死と引き換えに、奏を守った。あのマギアは、立派な防人よ」

 

 

 

 人工知能搭載人形ロボ『ヒューマギア』、人々とヒューマギアが手を取り合い笑い合えるようになった新未来。

 人間とヒューマギアは、ノイズという敵と戦っていた。

 そこに、仮面ライダーはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()(ひと)の言葉を借りよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──「時代が望む時、仮面ライダーは必ず蘇る。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『衛星ゼアからの命令を受信。構築を開始します』

 

 




主人公は腹筋崩壊太郎!
……ではなく、主人公の本格登場は次回からです。
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