無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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 先週は投稿出来ず申し訳ありません。
 夏バテだと思うのですがダウンしてしまって…。
 
 今週は何とか投稿しようと思っていたのですが、次の話が今週中に書けるか怪しかったので、ダウンする前に書いて没にしたものを少し手直ししてとりあえず投稿致します。
 一応ぎりぎりまでは次話を投稿するつもりではあります。


第12話 ドーナツ屋にて

 俺―――扇動 無一は戦闘訓練にて轟 焦凍を誘った通りにドーナツ屋に訪れていた。

 雄英高校に近いけれども大通りや駅前から離れている為、学校帰りの時間帯でもこぢんまりとした店内に客は少ない。

 来る前に高校出る前に調べた時は情報が少なくてどうかなと思っていたけど、店長には悪いが客は少なく静かで、商品のラインナップも充実している様子に当たりかなと、ドーナツを乗せたトレイを手に席へ戻る。

 視線の先には数分前まで客は少なく静かな店内は、今ではほぼ満員となって騒がしくなっていた…。

 

 本来なら誘った轟と訪れる筈だったのだが、訓練終了後に興味本位で奇襲をしなければどうする気だったのかという問いに、轟は実演(・・)で答えてビル一棟を氷漬けにしたのだ。

 正直訓練終了後で今日は使う予定は無かった事からオールマイトからのお咎めは無し。

 …ただモニタールームに居たクラスメイトがその冷気に当てられる事になってしまう。

 大変だったのが蛙の個性を持つ蛙吹で、あまりの寒さにその場で冬眠しようとするので大慌てで外へと運んで八百万が創造したストーブで温める事に。

 一連の流れを見ていたクラスメイトからしたら実行した轟もだが、要らん事言った俺に非がある事は明らか。

 ブーイングの嵐を受けていた最中、戦闘訓練の反省会も兼ねて「皆で何処か寄らね?」的な話が上がり、誘われた轟が先約があるとドーナツの件を口にすると、だったら皆で行こうという話になったのだ。

 ただ爆豪だけは真っ先に帰ったので、爆豪を除くヒーロー科一年A組の面々でだが。

 

 あー、ちなみにだが冬眠しかけた蛙吹を運ぼうとした際、下心を微塵も隠す事無く運び役を買って出た峰田 実(ミネタ ミノル)は女性陣の冷やかな視線に晒され、俺が確保テープで縛って連行しといた。

 

 とりあえずお詫びとして飲み物とドーナツを一つ奢って、自身は少し離れたテーブルに腰かける。

 騒がしく情報交換や交流を深めるのも良いが、今日はクラスメイトの個性などの情報収集に努めたので思考が疲弊しており、わいわいと賑やかに食べるよりは静かに糖分補給を済ませたい。

 

 「…見た目以上に食べるんだな」

 

 テーブルを挟んだ向かいに轟がおり、他のクラスメイトは近づこうとはしない。

 出会って二日で碌に誰とも接しようとせず、戦闘訓練後は誰も近づくなオーラ出していただけに様子見している者が多い。

 静かに食いたい身としては彼が悪魔の石像(ガーゴイル)代わりになってくれるのは有難い。

 

 「良いじゃないか。どれだけ頼んだって。好きなんだからドーナツ。それにお嬢よりは慎ましいつもりだ」

 「お嬢ってのは八百万の事か?あれは個性の性質上仕方ない事だろ」

 「それにしてもあの量は凄いだろうに」

 

 八百万の個性は自身の脂質を消費する為に、どうしても貯えて置く必要がある。

 しかしながらヒーローを務める以上、動けなくては話しにならないので、太り過ぎずも瘦せ過ぎないように体形を管理している。

 ゆえに使えば使うだけその脂質を食事などで補充しなければならないのだ。

 皿に山盛りになっているドーナツタワーに比べて皿に八つに、十個は入るお持ち帰り用の箱をぶら下げている俺なんかは可愛いもんだろ。

 

 「出来れば箱ではなく紙袋が良かったんだがな」

 「食べ物を紙袋にって衛生面的に不味くないか?」

 「不味いんだけど気分は乗る」

 「そういうものか?」

 「俺は…だと思うがな」

 

 お持ち帰り用の箱をテーブルの端に寄せて、皿に乗る何種類かのドーナツの中からまずは目的だったドーナツを手に取る。

 揚げ菓子であるドーナツにしては柔らかく、白い生地に粉砂糖が振り掛けてある。

 一口含むと真っ先に粉砂糖がふわっと溶けて上品な甘味が広がり、噛み締めればふわっとパンのような柔らかさと弾力が伝わる。

 柔らかいだけではなく表面の粉砂糖が幾らか溶けて固まっているために、所々で溜まった甘味がパリッとした食感と共に押し寄せる。

 油で揚げているも然程脂濃さは無く食べ易い。

 問題があるとすれば振り掛けられた粉砂糖が食べる度に唇に付着することぐらいだろうか。

 口許と指先が油と糖分でべた付くも気にせず満喫する。

 

 「あ~…甘さが染みるなぁ」

 「美味しそうに食べるな」

 「実際美味いよ。油っこさも少ないから食べ易いし」

 

 一つ食べきると指先はナプキンで、口周りはペロリと舌先で舐め取り、後味の残る口内は牛乳でスッキリさせながら喉を潤す。

 やっぱり粉砂糖が掛かったドーナツには牛乳でしょう。

 相性もあるがやっぱりイメージに引き摺られている(ガメラVSギロン)のは否めないが…。

 

 懐かしい記憶に笑みを零し、他のドーナツにも手を伸ばす。

 油でしっかり揚げている為、外はザクザクと香ばしく、中は浸み込んでしっとりとしているオールドファッション。

 多少油分がしつこい感じもするがこれはこれで癖になる。

 

 対照的に揚げたとは思えないほど柔らかく、スポンジケーキのようなふんわりとした食感のチョコレートドーナツ。

 甘過ぎずしっかりとチョコレートの風味。

 これは牛乳よりかは珈琲が欲しくなるなぁ…。

 

 捻じれた生地が特徴的なクルーラー。

 表面で固まった砂糖類のパリッとした食感に、捻じった事で得た硬さが心地よい。

 だけどここの生地は単なるクルーラーではなく、シュークリーム生地を用いたフレンチクルーラーでふわっとした軽さも存在する。

 

 数珠のように球体上のドーナツが連なるポンデリングは、ドーナツとしては珍しいもちもちとした弾力のある食感を楽しめる。

 

 疲弊した脳にエネルギーが行き渡るのを感じながら各種類を食べきって一息つく扇動を眺めていた轟は、口を付けていたドーナツを皿に置いてぽつりと言葉を漏らす。

 

 「個性を使わないのは……やっぱり不味いか?」

 

 皿に残っている三つのシュガードーナツを口にしようとしていた扇動はぴたりと動きを止めた。

 単なる質問や軽い会話であれば食べながらとでも思うが、声の感じと後ろめたさのある瞳からそれは良くないと理解したからだ。

 

 「詳細を聞かせてくれるか?」

 「あぁ…」

 

 ドーナツを置いて聞き始めた扇動は轟の説明に、表情は変えずに内心驚いていた。

 轟の個性は“氷結”―――だけではなく(・・・・・・)右には氷結を、左で炎を出せる“半冷半燃”。

 個性を二つ持っているなど聞いたことがなかった。

 とんでもねぇなと思いながら、やはり無い身としては羨ましくもある。

 個性の説明を受けたところで口を開く。

 

 「使わない理由は…訓練後の話同様か」

 

 鍛錬という虐待を幼い頃より受け、大好きな母親に暴力を振るって精神的にも追い詰めた父親の個性を使いたくない。

 理解も納得もする。

 だからといって使わないというのは単純に勿体なくも感じる。

 同時に使わない事で助けられた命を助けれなかった場合、彼は酷く酷く想い悩むことになる。

 己を束縛するした上に重い十字架を背負う可能性があるのであれば、それを解き放つ方が良いに決まっている。

 

 だけどそれは同時に轟の心に負担を掛けるという事。

 現状父親を心底恨んでいる轟が力を行使したとしても本来の力を発揮するとは思えない。

 さらに下手をすれば精神の乱れから個性の暴走や、使い続ける事で心に傷を蓄積して崩壊させ兼ねない。

 

 使うべきではあるが使わせるべきではない…。

 それが扇動が出した結論…。

 

 「まったくままならんな…」

 

 自身が人の心さえ救う事の出来る人間であればどれだけ良かったかと悔やむも、言い聞かせているように無い物強請りしてもしょうがない。

 

 「俺は使った方が良いと思うが、無理に使うぐらいなら使わなくても良いと思っている」

 「そうか…」

 「ただし、使わないのであれば努力はすべきだ」

 「努力?」

 

 戦闘訓練中と後を含んだ轟の個性は大雑把なように感じた。

 日常的にあの個性を使用するのは難しいので、慣れていないというのも勿論あるだろう。

 だからこそ色々と応用が利かせれる。

 というかすでに幾らかの使い方は脳内に浮かんであるのだ。

 

 「左は使わなくても良い。だけどその代わり左を使わなくても良いぐらいに右を鍛えろ。わざわざ私情で個性を押さえて人助けをするんだ。後々後悔しないようにな」

 「………分かった。そうしよう」

 「ならば良しだ。ほら、お前もこれ食え。美味いぞ」

 

 頷いて了承した轟の重っ苦しい表情に向けて、まだ口を付けていないドーナツを突き出す。

 きょとんとしながら齧り付き、口周りを白く染めた様子に扇動はクツクツと笑い、自身の状態が解ってない轟は小首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 日も傾いて夕焼け頃。

 多くの家で晩御飯の支度に取り掛かり、調理場ではせっせと調理を行う。

 以前はお手伝いさんを雇っていた轟家だが、腰を痛めて引退してからは長女の轟 冬美(トドロキ フユミ)が調理を担当している。

 慣れた手つきで調理する彼女であるも、その顔は嬉しそうもありながらも不安さを同居させた何とも形容し難い表情を晒していた。

 

 今日、学校から帰ってきた焦凍から相談を受けたのだ。

 昔からお父さんの方針で焦凍とは距離を置かされた為に、仲良く遊んだり想像するような姉弟らしいことをした記憶はない。それどころか今でも会話は最低限だったりする。

 これは不仲という訳ではなく接する機会を奪われた為に、それが普通と認識されてしまっている…。

 なのに今日の焦凍はいつになく良く喋った。

 勿論人が変わったかのように怒涛のように喋ったのではなく、ぽつりぽつりと言葉を漏らすようにだ。

 それでもそう言った事を話してくれた事に喜び、何より頼って(相談)くれた事は嬉しかった。

 幼い頃からお父さんからヒーローにすべく、英才教育という虐待を受けていた焦凍に何もしてあげれず、その時の後悔と負い目を感じて教職を目指していた身としては本当に嬉しかったのだ。

 

 …まぁ、いきなり「友達(・・)の家で暫く世話になろうと思っているんだけど」と、説明を省いた一言には困惑したけど…。

 

 質問を混ぜた会話を数度繰り返して理解したのだけど、どうも出会って二日だというのに焦凍の事を心配して提案してくれたお友達が居るらしい。

 泊まるように勧めてくれた理由や経緯、自分がそれに対してどう思っているかを聞いた。

 

 お父さんとの関係を考えると無理に向き合わせる事なんて出来ないし、なら距離を置いた方が良いのは賛成だ。

 

 …ただ「なら良いよ」と簡単に返事する訳にはいかない。

 焦凍を想っての事らしいけど、たった二日で会話も碌にしていない相手を家に泊めるなど控えめに言っても怪しいし、向こうもお泊りするとなると気を使うし、下手すればお父さんが関わる事態が発生して、相手に被害が及ぶ可能性がある。

 地位も権力も力もあり、自分勝手…特に焦凍の事になると目の色を変えるお父さんが気に入らぬと判断したらどうなる事か…。

 絶対に荒れる。

 それも精神的にではなく物理的に…。

 

 相手―――扇動 無一という少年はそれらを先に予期していたらしく、焦凍に携帯の電話番号を教えて準備を整えていた。

 彼の祖父は現役ヒーローの番付であるヒーロービルボードチャートJPにて、老齢ながらも五十位前後を維持している実力派のプロヒーローで、かつ会社経営をしていて、お父さんでも容易に手が出せる相手ではない。

 ネットで調べてみると会社の公式ページに孫自慢の記事が挙がっており、掲載された写真(雄英高校前で撮った奴)を焦凍に確認して貰って本人と確認も取れた。

 そして電話での受け答えはしっかりしたもので、まるで年上と話し(・・・・・)ているような(・・・・・・)対応と話し方に好感が持てた。

 これなら大丈夫かなと思いつつも、“他所様の家で宿泊すると言う許可をお父さんから取る”と言う一番の問題が残っている…。

 

 今日の授業(戦闘訓練)で負けた相手って言うのは絶対に言ったら駄目だし、プロヒーローのお孫さんってのは…違うヒーローに鍛え上げられると思ったら断固拒否するから黙っておこう。

 学校から三十分の距離(※自転車で徒歩ではない)言っていたから(※徒歩とは言ってない)こっちより近いし、鍛錬用の器具は揃っているから毎日鍛錬に励めるとかで言えばいけるかな?

 焦凍の頼みという事で調理を熟しながら、必死に説得出来るように思考を働かす。

 

 悶々と悩みながら考え、焦凍がお土産にと貰った粉砂糖が塗されたドーナツを一つ摘まむ。

 友達が出来た事もさることながら、初めて誰かと帰りに買い食いしたという事が薄っすらとながら嬉しそう話してくれたっけ。

 嬉しそうに微笑みながら口に広がる甘味に頬を緩ませる。

 

 「何かいいことあったのか?」

 「お、お父さん!?」

 

 いつの間に帰って来ていたのかいつもの仏頂面で台所を除く轟 炎司(トドロキ エンジ)に驚き、まだどういおうかを決めかねていただけに焦りも生じる。

 その炎司は冬美ではなくテーブルの上に置かれたドーナツの箱に視線を向けていた。

 

 「どうしたこれは?」

 「えっと、焦凍が持って帰ってくれたの。糖分を摂取するにはドーナツが良いんだって。ほら、疲れた時には甘いもの欲しいじゃない?」

 「ふぅむ…そうか」

 

 焦凍が友達と買い食いをして時にお土産に貰った―――とは言える筈も無く、言葉を濁しながら電話でドーナツの礼を言った時に、扇動君より聞いた話を織り込んで話す。

 気になっただけなのか生返事だけ返して、一つを手に取る。

 

 「冬美、口周りを確認した方が良いぞ」

 「………え!?」

 

 手にしたドーナツを咥えながら去って行く炎司とは別に、冬美は口元を手でなぞって粉砂糖が付着している事に気付き、恥ずかしく頬を若干染めるのであった…。

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