無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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第14話 二人の会合と苦労する者…

 “失敗は成功のもと”。

 これはかの有名なエジソンの「失敗ではなく上手くいかない方法を見つけただけ」という言葉が語源と言われることわざ。

 多くの科学者もそういった方法を見つけ歩み続けた結果、世で言う“成功”を生み出して来たのだ。

 だから私が失敗するのもまた成功へ至る為には、致し方ない事なのです。

 “失敗は成功の母”。

 数多の失敗を仕出かそうとも、それらを糧にして私はただひたすらに進むのです。

 

 サポート科一年の発目 明(ハツメ メイ)は大きなゴーグルで目を保護し、自身の脳裏に浮かんだアイデアを形にしようと厚手の皮手袋を装着して作業に勤しむ。

 ヒーロー科が未来のヒーローを育成する学科であるように、サポート科は基礎を始めとしてサポートアイテムを開発・整備などを教え込まれる学科。

 彼女もまたそんなサポート科の一人であり、工作熱心な生徒で趣味人(・・・)…。

 頭に浮かんだアイデアを検証する間もなく思ったがままに組み立てる為に、入学三日目にしてサポート科を担当する先生方には問題児としての認識が広まり始めている。

 今日も今日とて開発工房にて可愛いベイビー(自分の作品)を生み出すべく、放課後になると開発工房で下校時間ギリギリまで工作を行う予定だ。

 頬を垂れる汗を革手で拭って代わりに油汚れが彩る。

 けれどそんな事(油化粧)など気にも止めずに、目に新しいベイビーから離れる事は無い。

 

 「失礼しますっと…ん?」

 

 数度のノック音の後に一人の生徒が入ってきた。

 一瞬パワーローダー先生かと思い振り返るも今日はマスコミが敷地内に侵入してきた事で、職員会議が長引く事から早々戻って来る事は無い。

 制服を見てサポート科ではない事を理解すると同時に、その生徒がヒーロー科であると解り興味惹かれた。

 

 「すまんがパワーローダー先生は?」

 「職員会議です」

 「そうか。サポートアイテムの事で話があったんだが…」

 

 先ほどまでは“ヒーロー科の生徒”が訪れたというちょっとした興味だったが、それが“サポートアイテム”で訪れたと知って、興味が段違いに沸き立つ。

 

 「サポートアイテム!――――私、興味があります!!!」

 

 興味のままに喰いついた発目は会議と答えて、ベイビーに視線を戻し掛けてグルンと振り向き、一気に距離を詰めてキラキラと輝く視線を向ける。

 ヒーロー科の生徒は突然の事に目を見張る。

 そして少しばかり値踏みするような視線を送り少し考え込む。

 

 「そいつはお前さんが?」

 「はい!私の可愛いベイビーです!!」

 「バックパック?飛行…いや、ジャンプ(・・・・)する為のもんか」

 「解りますか!これはとあるヒーローのバックパックを参考に独自解釈を加えて作ってみたんですよ」

 「再現アイテムか。そりゃあ気が合いそうだ(・・・・・・・)

 「どうです?試してみます?」

 

 返事を聞く事なくせっせと背負わせてスイッチを渡す。

 戸惑う様子を見せなかった彼はされるがままに装備し、なんら疑念を抱くどころかノリノリで試す素振りを見せ、バックパックより伸びているスイッチを押した。

 ここで発目は自身のミスに気が付いた。

 バックパックから噴出される推進力が予想以上に高過ぎた(・・・)のだ。

 

 あっと言う間に天井に近づいて激突する間際に、無理やり身体を捻って向きを変えて天井から壁に向かい、またも方向転換して壁沿いをスイッチを緩めながら速度を落として着地する事に成功。

 ぶつからず怪我もなく無事だった事は安堵すると同時に、自身の過ちを素直に謝ろうと近づく。

 しかしながら脳裏には方向転換する為のサブスラスターの無いバックパックで、無理やりと言えども負荷を物ともせずに変えた彼の身体能力にも興味を抱き始めていた。

 

 「出力設定をミスったようです!ごめんなさい!」

 

 謝ってはいるものの表情はニカリと笑ったままで、人によっては苛立ちや怒りを募らせる場合があるが、彼はまじまじと発目と降ろしたバックパックを見て嬉しそうに笑った。

 

 「原石だが個性有りきのサポートアイテムを技術だけでここまでやるか…これを見てくれるか?」

 

 咎める事もなく渡されたノートに目を通してみると中々に面白い内容であった。

 何十ページに渡り描かれているのは異なるパワードスーツらしき絵(ライダースーツ)にそのサポートアイテム類。

 詳細ではなく要望が書き綴られ、それらの大半が身体への負荷を無視したような代物。

 これらを要望通りにするには技術的解決法が求められる。

 

 「かなり身体に負担を強いりますよ?」

 「負担に対して性能が得られるんなら問題ねぇよ」

 

 先ほどの方向転換から身体能力の高さも伺えた事からさらに面白そうと興味が惹かれる。

 高い技術力が求められ、ある程度の無茶が許される。

 中にはバックパックの技術を持ち入れるものもあった。

 目を通していると「約束をすっぽかすタイプか?」とか「気分で仕事をするタイプか?」と聞かれ、否定すると満足そうに頷いて微笑まれた。

 

 「Dr.マイヤミ*1でもロイド伯爵*2でもなく、接した感じから束*3でもなさそうだ。どちらかと言えばエル君*4に似ているか。ぶっ飛んでいて且つ接しやすいとか最高だな」

 「どなたです?」

 「こっちの話だ。ところで頼みがあるんだがこれらの制作やってみる気はあるか?」

 「面白そうなのでやってみたいですね!」

 「即答か。ただこちらから頼み事だけってのは気が退ける。さっきのバックパックみたいに何かしら作った際は呼んでくれ。喜んでモルモット(実験体)になろう」

 「それは良いですね!良い意見が聞けそうです!」

 

 お互いに利のある関係ににこやかに笑い、発目は求められるまま握手に答えた。

 革手をしたままで、はっきり見える油汚れを気にすることなく握り返させる。

 

 「俺はヒーロー科一年A組扇動 無一だ」

 「サポート科の発目 明です!」

 「あぁ、これから(・・・・)宜しく。ところでさっきのバックパックで少し話があるんだが…」

 

 初会合を果たした発目と扇動。

 不安もあるコンビの結成が吉と出るか凶と出るか…。

 望んでいたイカレタ科学者に出会って興奮する扇動に、扇動の提案に面白そうと喰い気味に跳びついた発目では、そこまで考えが行くことはなかったのである…。

 

 

 

 

 

 

 夕焼けも徐々に沈みかけ始め、暗みが増す廊下を一人の教員が歩いていた。

 いや、本人は(・・・)歩いていない。

 大型の異形の個性持ちでも余裕を持って通れるように設計された廊下を、搭乗部もろ出しのパワードスーツが進んでいる。

 搭乗しているのはヒーロー科とサポート科の二つの教員を兼任している掘削ヒーロー“パワーローダー”こと埋島 干狩(まいじま ひがり)で、彼は疲労感から大きなため息を零す。

 雄英高校は行事などを含めて年がら年中何かしら起こり得る学校である。

 毎年大なり小なりの問題は起きると理解している。

 新学期が始まってまだ三日であるも、すでにサポート科のある生徒に悩まされているのもその一つだ。

 

 発目 明という新入生。

 サポートアイテムを作る事に関しては熱心で技術面的にも優秀な生徒。

 彼女は入学前から独学で習っていた節があり、同学年のサポート科の生徒と比べて基礎が出来上がっていた。

 しかしまだ幼く若い原石である彼女は危うい。

 アイデアのままに勢い任せで組み立てるので初日にして組み立てたアイテムが暴走後に、小さな爆発を起こして壊してしまったのだ…。

 熱心過ぎるのも問題なのだ。

 最初は怪我などの危険性も考慮して開発工房の出入りを禁じるかとも思ったが、一度の失敗でそれは過度な罰かと考え直し、昨日は自分が注意出来るように見ている時ならと許可したら、下校時間ぎりぎりまで入り浸りやがって。

 これから三年間接するのかと思うと頭が痛くなりそうな問題であるが、今はそれが他愛ない些事に思えてならない。

 

 強固なセキュリティシステムを組んである雄英高校であるが、そのシステムを突破して侵入者を許してしまう。

 前代未聞な事件に世間もマスコミも騒ぎ始めている。

 職員会議ではその件で話し合い、情報の共有が図られた。

 そしてパワーローダーは長く続いた会議が終われば、何者かに壊された校門のセキュリティシステムである壁の応急処置に向かった。

 完全に修復するには時間も掛かる上に、材料が足りないので発注しなければならない。

 なので今日は本当に応急処置で、明日になったらもう少し形になるように手を加えなければならず、予定も含めて精神的にも疲れが押し寄せている。

 

 再び大きなため息を吐き出し、乗り込んでいるパワードスーツを慣れた手つきで動かし開発工房に向かう。

 前代未聞の事件が起きたからと言って、あの問題児が開発工房に来ていないとは思えない。

 どうせいるだろうなと当たりを付け来てみればやはり電気が灯されていた。

 下校時間ぎりぎりだってのにと文句を呟き勢いよく扉を開いて文句を言おうとして、中の様子を目にしたパワーローダーは口を閉ざした。

 

 開発工房内では一人の男子生徒が飛んでいた。

 まだ仮組らしきバックパックを背負い、飛行実験するには低い室内を縦横無尽に舞う。

 ベースはバスターヒーロー“エアジェット”のバックパックで、斜め上に飛び出したスラスターポットと底に推進部を取り付けたレッグアーマー。

 拙く仮の為にまだまだ不安定。

 それをバックパックより伸びた急ごしらえの操縦桿を駆使して飛び回って着地を決めた。

 着地した生徒は不満を隠す事無く口にする。

 

 「感度が良過ぎる!これじゃあ頭を焼き兼ねないぞ!!」

 「ふむふむ、なるほど……このぐらいですかね?もう一回飛んでもらえます?」

 

 言われた所を修正すると再び飛ぶも、今度は硬すぎて上手く機能し切れていない。

 だけどその危なっかしい光景は彼女にとって望ましいものだとパワーローダーは思う。

 彼女は注意しても基本的自分本位で人の話を聞かない。

 否、聞いても別の解釈で押し進む節がある。 

 熟練者ならまだしも原石たる発目がそれでは駄目だ。

 しかしああやって無茶な実験に付き合って真正面から意見を言ってくれる誰かと協力し、トライ&エラーを繰り返すのであれば原石は研磨され、いつかは研ぎ澄まされた輝きを纏うだろう。

 

 採掘重機を思わせる見た目のヘルメットから覗く瞳は、そんな未来を抱かせる光景を映しつつ、同時に彼に現実を叩き付ける。

 

 飛び回る度に辺りに舞う書類に工具。

 軽く接触したであろう壁や天井の傷に、スラスターが当たった焦げ跡。

 時計が完全下校時刻であろう時刻を指し示そうとする事実。

 

 「あ、パワーローダー先生!見て下さいよこれを!」

 

 興奮気味に駆け寄ってアイテムの説明をしようとする発目。

 対してパワーローダーはわなわなと肩を震わし、察しや扇動は目を逸らした。

 

 「今何時だと思っている!とっとと帰れ!!出禁にするぞ!!!」

 「出禁は困ります!ではまた明日!」

 「失礼します」

 

 怒鳴り声をあげて問題児二人(・・)を開発工房より追い出す。

 廊下を走って行くのを見送ったパワーローダーは、本日一番大きいため息を漏らすとチクリとお腹辺りに痛みを感じた。

 

 後日、パワーローダーの所持品に胃薬が追加されるのであった…。

*1
Dr.マイヤミ 本名:天田南 登場作品:ヨルムンガンド

玩具メーカーに勤めるも作るものは必ず軍事転用されるロボット工学のスペシャリスト。

超がつくほどの超マニア。蝶の為なら一年前から楽しみにしていた約束ですらすっぽかす。

*2
ロイド・アスプルンド 登場作品:コードギアス

貴族であり大国でトップレベルの研究者。

自身の気分や興味の有無で研究を行い、時には黙って資金を使って上に請求書だけ送り、他の部隊から建前と屁理屈を用いて軍用機を自分の物にしたりする。

*3
篠ノ之 束 登場作品:インフィニット・ストラトス

世界各国の軍事基地にハッキングしたり、複製不可能なマルチフォーム・スーツを開発した頭脳及び身体能力オーバースペックの天才もとい天災。

身内以外には冷徹無慈悲な程無関心で話しかけられたりするとあからさまに拒絶する。

*4
エルネスティ・エチェバルリア 登場作品:ナイツ&マジック

自分専用のロボットを制作する為ならどんな苦労も厭わない大のロボット好きの設計者兼プログラマー兼パイロット。

頼まれてもだが頼まれずとも何かしらを設計・開発している。

実験で自身は気絶、現行機を一機大破させたことがある…。

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