急ぎはしたのですが間に合いませんでした…。
出来れば今週中、または来週には一話投稿出来れば…と思っております。
ヴィラン連合の襲撃に伴って雄英高校は今後の方針や対策などを行うべく臨時休校を余儀なくされ、扇動は県内最多店舗数を誇る
さすがと言うべきか衣類に食品、異形型の個性向けの商品などなど豊富に品揃えて充実している。
フードコートの一角で扇動は八百万と耳郎と共に軽い食事を楽しむ。
…まぁ、約一名だけ
「…食べ過ぎじゃない?」
「個性で消費した分を補わなければならないので」
耳郎が食べているのはハンバーガーにポテト、ジュースの基本的なセットを一つだけど、八百万はその二倍から三倍をぺろりと平らげたのだ。
確かに多いように見えるがこれは個性の性質上仕方ない事。
体内の脂質を消費して創造する為に、昨日の襲撃事件で消費しただけ回復する必要があり、常日頃からいつでも使えるように貯め込んでおく必要性すらある。
だから基本八百万の食事は量が多い。
パーティなどで話や食事の様子から知っていた扇動は、初見で驚いている耳郎とパクパクと食べる八百万を眺めながら一人シュガードーナツを頬張る。
「ところで本当に良かったの?」
「――良い。寧ろ貴重な休日を私用で奪っちまってんだ。申し訳なく思うよ」
「そんな事ないですわ!」
「ウチらの方が…」
「なら相子だ。気負う事も謝辞を述べる事もいらん」
口元に付いた粉砂糖を指で拭う。
木椰区ショッピングモールに訪れた理由は買い物だけではない。
襲撃事件はヒーロー科一年A組の面々に様々なモノを与えた。
ある者にはヴィランの恐ろしさ。
ある者にはプロとの圧倒的な壁。
またある者には実戦という学校では得られ難き経験などなど…。
その中で八百万と耳郎は強い後悔の念を抱いていた。
山岳ゾーンでの上鳴がヴィランに人質にされた際、俺は“大の虫を生かす為には小の虫を殺す”様に
あの時に二人は俺に
それは正しい。
――否、俺としては嬉しく思う。
なにせ彼女達はあって数日という短い期間でしか知らぬ身である人物を、自身が危機に晒されていたというのに切り捨てるなど良しとせず、助けようと必死に思案して見捨てまいと彼を案じていた事への表れなのだから。
…ま、今のままでは想うだけで力不足(夢想家)だが、それは今後の授業と経験で補えるだろう。
俺は
なんにしても俺は彼女達を責める気も怒る気も無く、同時に謝罪を受け取る事も無い。
頬を叩くほどの怒りや責めは彼女達の現れであり、そういう風に演技して騙したのは俺であるからして非があるのなら人質を取ったヴィランか騙した俺か…だ。
だから襲撃事件後に謝罪に来たが、俺は考えを口にして受け取れないし受け取らなかった。
その自責の念が棘として心に深く突き刺さったままとなった。
正直彼女らの心情を想えば受け取るのが正しいのだろうが、それでは俺の道理に合わん。
なので謝罪は受けずに代わりに頼み事をすることにした。
元々轟が家に来ることで一人暮らしを想定していたので食器類が足りない上に数着衣類も欲しかった。
ファッションセンスがあると自ら豪語するほどの自信は無いので、多角的な視線を交えて取り繕って貰いたい―――と頼んだのだ。
こちらとしては大助かりだし、向こうにしてみれば負い目から二つ返事で引き受けてくれた。
「買いたいもんも色々あるし、こうして集まったのに買うもん買って帰るってのも味気ない。少しばかり遊んで行こうと思うけど予定空いてるか?」
「問題ないですわ」
「ウチも大丈夫だけど買い物の方は良いの?」
「それは後でも良いさ。とりあえずゲーセンでも寄るか。こんだけデカけりゃあんだろ」
案内図を眺めて目的のゲームセンターを見つけ、自動ドアを潜って足を踏み入れれば多種多様な音が混ざり合う雑多過ぎる騒音に呑み込まれる。
あちこちと行きかう人の活気と熱気。
場所ごとに並び立つ機器の数々。
初めて訪れたゲームセンターという異質な空間に興味からきょろきょろと辺りを見渡し、八百万は戸惑いを隠しきれずに立ち尽くしていた。
「どうしたお嬢?」
「いえ、初めてだったもので少しばかり驚いてしまって」
「あー、それ解かる。最初は誰だってびっくりするよね」
「予想はしてたがお嬢は初か」
「えぇ、あまりこういった場には来たことが無く…」
「マジ?」
「カジノなら行った事ありそうだけどな。ちっとばかり軽めから行くか」
誘われるがままに八百万は初めてプレイするゲームに戸惑いながら、ホンに楽し気にプレイする様は観ていて微笑ましく俺や耳郎をほっこりさせる。
二人して後ろから様子を眺めては邪魔にならない程度にアドバイスしたり、協力するシューティングゲームでは基本援護に回るなどして大いに楽しんだ。
…ただそれは八百万との事であって、耳郎となると大きく異なった。
格闘ゲームで対戦して勝ってからどうも火がついたようで、リズムに合わせて流れてくるノーツにカーソルを合わせる音楽ゲームやレーシングゲームなどで対戦を挑まれて
前世は今生のようにヒーローに成る為に時間を削るなんて事はなかったのでゲーセンとかは良く通っていたし、音楽ゲームは今生でもたまに反射神経テストと称してやってたしな。
「お上手なんですね」
「上手というより扇動強過ぎ!」
「
「爆豪や緑谷と幼馴染なんだって?じゃあ二人と通ってたんだ」
「一人でだが?」
「扇動ってさ…ぼっち?」
「バッサリと突くなお前…。友達なら居たさ。ただその誰とも来てないだけだ」
妙に視線が痛い気がするが無視してクレーンゲームにて、取り易い位置にあったデフォルメされた“ミルコ”と“リューキュウ”ぬいぐるみを取って渡す。
どちらもプロヒーローと知名度が高いだけにこういった商品は多い。
他にオールマイトやエンデヴァー、“ベストジーニアス”などのも見受けられる。
受け取った二人だったが、俺が何も手にしてない事に気付いた。
「扇動さんは宜しいので?」
「…いや、知り合いばっかで家に置き辛い」
「お爺さんがヒーローって聞いたけどその関係?」
「まぁな」
さすがにエンデヴァーは知り合いではないが、轟から話を聞いて取る気にはなれなかったがそこは口にしないでおく。
ゲームセンターでそこそこ遊んだ俺らは買い物しようと店を巡る。
食料品を扱う店では八百万お勧めの茶葉を買ったり、食器売り場ではコレが良いアレが良いと意見を聞きながら選び、耳郎が寄りたいというので音楽ショップにも立ち寄った。
「耳郎ってギターとか似合いそうだな」
「得意だよギター。親がミュージシャンで小さい時からやってるんだ。扇動や“
「上手くはないけど一通りは」
「私はピアノを」
音楽関係ばかりは苦手だ。
前世では聴くかカラオケで歌うかの二択。
だが今生で前世の音楽を楽しもうと思ったら、音や歌詞は覚えていたからいいものの楽譜だけはどうにもならず、鍛錬の合間合間に覚えるしかなく最低限弾ける程度にはなれたが人に聞かせれるものではない。
それより耳郎の“ヤオモモ”呼びを聞いて早く浸透すると良いなと心底思う。
何故ならA組内にて俺の“お嬢”呼びが浸透し始めており、八百万に「扇動さんのせいですからね!」と叱られてしまったのだ。それに関して本当に悪いと思っている。
しかも半ば俺に対して諦め交じりだった為に俺が呼ぶ分は反応を示さなかった事から、芦戸が「そういう関係なの!?」と嬉しそうに喰いついてくるし…。
葉隠とかが新しく“ヤオモモ”というあだ名をつけてくれて助かったよ。
楽器を眺めていた耳郎が他のコーナーへと向かうと、俺と八百万はただただ後ろを付いて行った。
するとCDコーナーへと差し掛かり、僅かながら顔を顰めてしまう
「ウチ買いたいCDあったんだよね」
「CD…か」
「あった!この“
「……おぅ」
「何方ですの?」
「え、二人共知らないの!?結構有名なんだけどなぁ」
新曲コーナーから一枚のCDを手に取った耳郎は興奮気味に語って来た。
“一海”というのは“
発表の速度も有名な一つなのだけど、他にもペンネームだけで顔出しする事もなく性別すら不明だったり、発表する曲風がそれぞれ異なっていて単独ではなくペンネームはグループの総称なのではと噂が立ったりしているらしい。
俺らの反応から知らないものなのだろうと語ってくれたのだが、“猿渡 一海”なら良く知っている。
なにせ俺が使っているペンネームなのだから…。
爺ちゃんが音楽関係者に話した事がきっかけで今や趣味兼仕事になっているが、面倒な関わり合いは避けたかったので顔出しや取材NGで、俺の正体を知っているのは爺ちゃんが話した音楽関係者と俺の担当者を含めた極一部の者だけ。
好きな特撮ヒーローから多種に渡るアニメ楽曲を持ち込んだために独自の曲風なんてある訳がない。
勢い任せにひと月に十曲出したのは担当に怒られたっけ。
寡黙で仕事人間みたいな人だったから怒鳴る事はなかったが、視線で訴えて来るのは精神に来るよアレは…。
ちなみに“猿渡 一海”と言うのは仮面ライダービルドに登場するキャラクターのもので、ペンネームをどうしようかと悩んだ末に誕生日が同じだったのを思い出して選んだのだ。
彼(猿渡 一海)が変身する“仮面ライダーグリス”が好きだったのもあるが。
なんて思っている間も八百万は興味津々と言った様子で耳郎の話を聞いていた。
「“ヤオモモ”も聞いてみない?」
「えぇ、勿論。ですがどの曲がお勧めですの?」
「お勧めはたくさんあるんだけど、中には特典や数量限定とかあって全部は置いてないんだよね」
「…家に全部あるけど?」
「あるの!?」
完成品を担当が送って来るので全部置いてある。
それどころか楽譜やデモテープもあるが、そんな詳細に言う必要はないだろう。
口にした言葉に対して勢いよく反応し、興奮気味な耳郎の喰いつきには扇動も若干驚いていた。
「良かったら行っても良い?」
「別に構わんが…」
「耳郎さん。その前に」
今すぐ行こうとも言い兼ねない様子に、八百万が買い物の目的を諭すと我に返って「ごめん」と謝られた。
家に来たいと言う事と耳郎が目的のCDを買えた事もあって、音楽ショップを後にして俺の目的となっていた服屋へと向かう。
無論俺の服だけでなく彼女らも欲しい衣類もあるだろうから見て回るのを待って、俺の服を見繕って貰ったのだが…。
「おお!やっぱり似合うね!」
「次はこれなんかどうかな?」
「この歳で着せ替え人形にされるとは思わんかったな…」
「元が良いんだから仕方ないじゃん」
「そう言われると悪い気はしねぇな」
クスリと笑みを浮かべながら、渡された何十着目かも忘れた衣類を受け取る。
扇動としてはより多角的に服と自身の良し悪しを見極めてくれるので有難いが、まさか試着だけで一時間近く拘束されるとは思いもしなかった。
黒いシャツに黒と灰色が自然と合わさるズボン、薄い茶色い上着を羽織る。
襟元がもふもふの冬用らしきコートも渡されたのだけど、これは季節的に今は着なくて良いよなと首を捻る。
「やっぱり似合いますね!」
「次はこれ着てみてよ」
「私はこちらの方が似合うのではないかと」
「…お前ら狙ってないよな?」
「なんの話?」
「いや、何でもない」
耳郎はストライプのシャツに黒のベスト、ソフト帽のセットとか
八百万は
狙ってはいない筈なのだが、こうも重なるとどうしても疑ってしまう。
なんやかんや試着を繰り返し、扇動はパンパンに膨らんだ紙袋四つを手にする事に…。
そしてテンションに呑まれて興奮気味だった八百万と耳郎もようやく落ち着きを見せる。
「その…ごめん扇動」
「つい楽しくて…」
「別に良いよ。おかげで色々と買えたわけだしな」
衣類だけの話ではない。
食器類や紅茶と言った予定になかったものも様々な意見や勧めを受けて買う事が出来た。
そちらはさすがに持ち運びは難しかったので、宅配サービスのカウンターですでに家の方に送っておいた。
買うべきものは買ったし、荷物も人数も多い事からタクシーを呼んで帰路へとつく。
家に付くとお金を払ってから荷物を降ろし、扉の鍵穴に鍵を差し込む。
後ろでは豪邸に住んでいる八百万は兎も角、一人暮らしと教えていただけに大きな家に耳郎は驚いているようだ。
「ここが扇動の家かぁ。結構大きいね」
「本当にお邪魔しても構いませんでしたの?」
「構わん構わん。どうせ俺一人…いや、今日から同居人が居るんだった」
ガチャリと鍵を開けて扉を開けると「ただいま」と呟いて二人をを迎え入れる。
「お邪魔しまーす」と口にして入ろうとした足は、廊下の先から顔を覗かした人物を見て止まった。
「おかえり。届いた荷物は台所辺りに置いといたぞ」
「あぁ、助かる。それとただいま」
「え、轟さん!?」
「ここって扇動の家だよね?」
「今日から扇動と一緒に住むんだ」
「一緒に住むってどうかしたの!?」
「?………そのままの意味だが?」
「そうだけど!そうなんだけどさ!」
「落ち着け。理由が抜けてんぞ」
二人には掻い摘んで説明する。
特に家庭内事情など話す訳にはいかないので、雄英高校との距離が近くて通学に便利であるという事と、家にトレーニング器具が揃っているので鍛錬がし易いとだけ伝えて置いた。
予定では土日にでも荷物を持ち込む予定だったが、臨時休校と言う事で予定を前倒しにしたのだ。
話をしながらすでにそわそわしている様子から耳郎を先に音楽部屋に案内する。
中にはギターやドラムなどの楽器類に、楽譜や歌詞を書く為のデスクと音楽の関係資料があって、壁際の棚にはCDが大量に収まっている。
CDを聞くプレイヤーは音質で選んだのだけど、楽器は良し悪しが解らないので担当伝手に見繕って貰ったからよく知らないのだが、楽器を見て興奮する耳郎の様に良いモノなのだなと理解した。
「凄ッ!?」
「色々揃っていますのね」
「まぁ…一応。とりあえず壊さなければ好き勝手してくれて構わないから」
「うん、ありがと!」
「茶菓子でも用意するか。轟も荷解き終わったのならいるだろ?」
「あぁ、頼む」
キッチンに向かった俺は珈琲を淹れ、茶菓子にシュークリームを用意する。
モールで買った紅茶を淹れた方が良かったかも知れないが、*1特命係の警部さんの淹れ方を見た事あるぐらいで、実際に淹れた事がある訳ではないので今日は珈琲を淹れる。
珈琲なら
シュークリームは店で買ったものでなく出る前に作っておいたものだ。
焼いたシュークリーム生地にホイップクリームとカスタードクリーム、粉砂糖を全部別々にダイニングのテーブルに並べていく。別々に用意して“お手詰め最中”のように食べる前にクリームを入れるので、生地が湿気る事無くサクサクと香ばしい食感を楽しめる。
好きな量で手詰めして齧り付けばサクリとした食感の後に、ふわっと軽やかで甘さ控えめホイップクリームの濃厚な味わいにとろ~りとしたカスタードクリームの滑らかさ、生地に振り掛けた粉砂糖の上品な甘さが一つ一つ伝わって最後には合わさって舌を喜ばす。
これと淹れ立てのブラックコーヒーとの相性が良いのだ。
「本当に美味しいですわ!」
「…美味い」
轟は無表情に近かったが美味しそうに食べる二人の様子に頬が緩む。
俺も味わうかと手を伸ばした矢先、廊下の先よりドタバタと走って来る音が聞こえた。
音の方向から音楽部屋の方のようだがなんかあったのかな?
「扇動!アンタって“猿渡 一海”だったりする!?」
来るなりそう興奮気味に言って来た耳郎に「何故?」と戸惑いつつ視線を向けると、手に持っているのは今度担当に送ろうと思って机に出しっぱなしにしてしまっていた“仮面ライダーウィザード”のオープニングの楽譜だった。
そう言えば仮面ライダー
すでに出した曲を知っていたからと言って、それだけで同じ人物の作詞・作曲と理解したのか。
面倒事を考えると否定すべきかも知れないがわざわざ否定するのもどうかなと思い、肯定してから口止めを頼み込むのだった。
恐るべしミュージシャンの血筋…などと内心驚くが、それ以上に轟に自室にと貸し出した一室が洋風からほぼ和室にリフォームされていた事には心底驚いた…。
まぁ、リフォームされた事に関しては本人が過ごし易いならと良いのだが、「頑張った」としか返されないがどうやって一人で半日ちょっとリフォーム出来たかをいつかは知りたいものだ。
ティーポットを高らかに掲げて、高低差を活かしてティーカップに注ぎ込む淹れ方が独特。
大自然広がる密林内に自らのティーセットを持ち込み飲むほどに紅茶を好む。
同じ淹れ方をした場合、飛び散った飛沫で火傷をする可能性があるので要注意!