単純に間に合わず、遅れて一話単体で投稿するより二話連続で投稿しようと思い、今日までかかってしまいました。
もう一話は少々手直し後に投稿しようと思っておりますので。
私、オールマイトこと八木 俊典は保健室に急ぎ向かっていた。
緑谷少年を含めた何人かに扇動少年が鍛錬を付けていた事は相澤君より聞いており、
少なからず
扇動少年が怪我をした…。
それも緑谷少年が不慣れな個性のコントロールを出来るようにと組んだ模擬戦にて、躱し切れずに風圧を受けて飛ばされたとの事だ。
これは私の落ち度だ…。
緑谷少年を“ワンフォーオール”の継承者と定め、受け止めれる器として最低限鍛えはしたが、個性のコントロールに関しては私は何もしてやれていない。
今後の授業や経験の中で培い鍛えて行こうと無意識に先送りにしてしまっていたのかも知れない。
それを扇動少年は自らを危険に晒してまで何とかしようとして怪我を負った…。
自分の不甲斐なさと申し訳なさを胸中に抱き、ガラリと保健室の扉を開けると“リカバリーガール”と目が合った。
“リカバリーガール”―――珍しい治癒系の個性を持ち、長年に渡って雄英高校を支え続けた
視線が合うと心底面倒臭そうにため息をつかれた。
「今度はアンタかい。やれやれ
「扇動少年は大丈夫なのですか?他の生徒達は…」
「大丈夫さね。掠り傷程度だよ。見舞い(付き添い)に何人かついていたけどあの子がさっさと帰らしたよ」
何処となく不機嫌そうなリカバリーガールに疑問を抱きつつ、示された先に向かうと何事も無かったように鞄を手に帰ろうとしている扇動少年の姿が…。
確かに怪我をしたらしく手の甲に
「オーr…八木先生まで見舞いに来てくれたんですか?いや、申し訳ない」
「怪我をしたって聞いたんだけど大丈夫そうで良かったよ」
「えぇ、ちゃんと受け身取りましたし、
「……吹っ飛んだ!?」
「アイツの戦闘技術はまだまだ未熟だ。躱す流すなら
「だからわざと受けたと…」
理屈は理解出来る。
今は個性を扱えない事への危険性から無意識にセーブが掛かっている。
しかしながら放課後の特訓で扇動少年に個性を振るおうとも大丈夫と安心感を覚えてしまえば、万が一にも人に振るった際にあの扱い切れない威力が出た場合は大怪我を負わせる事になるだろう。
個性のコントロールからも離れてしまう。
その生まれ始めているであろう
理解は出来るがそれを素直に褒める事は出来る筈がない。
「無茶をし過ぎだ扇動少年。君は爆豪少年とは違った意味で緑谷少年に執着し過ぎている。どうしてそこまで…」
「どうしてって…俺個人の理由もあっけどそれ以上に
「―――ッ!?」
注意をする気だったのが一瞬で言葉に詰まった。
何かの冗談で片付けるにしては扇動少年の瞳はこちらの瞳を通して内側を覗き込むように見つめてきている。
誤魔化し切れる雰囲気ではない。
「場所変えよっか?」
言葉すら出ずに悩んでいると先に言い出され、頷いて保健室から退室する。
話の内容的に聞かれると不味いので目指す先は自ずと決まる。
「仮眠室?」
「ここは訪れる人も少なく、防音が施されていてね」
「密談するには最適という訳ですか」
「まぁ、そう言う事だね」
仮眠室と言ってもベッドが置いてあるだけという訳ではなく、ゆったりと出来るようにテーブルを挟んでソファが置かれ、給湯器もあるのでお茶とお茶菓子なども随時完備されている。
自分を落ち着かせるのもあってお茶を淹れに向かい、扇動少年には席に座るように促す。
言われるがまま腰かけて手持ち無沙汰なのもあってこちらを見て来るのは良いが、なんだか観察されているようで容赦のない視線が背中に突き刺さる。
居心地の悪さを感じつつお茶を淹れ、お茶菓子と一緒におぼんに乗せて向かいのソファに腰かける。
「甘いものは好きかい?置いてある饅頭を選んだんだけど…」
「―――緑谷から聞きましたよ」
「……そうか。そうだよね…うん…」
徐々に徐々に話を振ろうと思っていたが、どうやら変化球はお好みではなかったらしい。
前置きなど構わずにどストレートに豪速球投げ返されてしまった…。
けれどその答え自体は予測していただけに、やっぱりかと頭を抱えてしまった。
以前直接ではないが爆豪少年に示唆するような発言をしてしまった緑谷少年。
信頼も信用もしている扇動少年に打ち明けてもおかしくは無い。
「あんまり怒らんでやってくれます。個性を強化する手前知らないと不味かったので」
思っていた事がそのまま態度と表情に出ていたのだろう。
扇動少年の言葉に小さくため息を吐いて、真正面からしっかりと見据える。
「緑谷少年は君の事を信頼して話したのだろうけど……解っていると思うけど内容が内容だけに口外はしないで欲しい」
「別に広めようとは思ってませんので。それよりちゃんと面倒見てやんないと。一から百までとは言わんが、さすがにやるだけやって放置ってのは無責任でしょ」
「それは…その…仰る通りで…」
「で、これからどうすんの?俺が鍛えても良いの?」
言葉と視線が問いかけて来る。
教員として一人の生徒に掛かりっきりというのは不味い。
このまま扇動に任せると言うのも一つの手でがある。
しかし先代がしてくれたようにワンフォーオールを受け継いだ自身が彼を育てるのが道理。
すでにバレてしまっているのならここで隠しても意味は無い。
そう
「扇動少年に頼り切りという訳にはいかないさ。彼に
覚悟を言葉にして告げている最中、扇動の表情に疑問を覚えて途中で止めてしまった。
なにせ彼は驚いた様子を見せ、数度頷いて何かを納得したようだったのだ。
どうしたのだと見ていると小さく呟いた。
「あー、
「…………え?」
意味が理解出来なかった。
様々な感情が顔に出ては消えていく。
理解出来ない様子に扇動はクスリと微笑んだ。
「なんて顔してんだか」
「いや、だって緑谷少年から聞いたって!」
「嘘に決まってんだろ」
開いた口が塞がらない。
なんと扇動少年は個性把握テストで緑谷少年が個性を得ていた事を知り、個性を例外的に発現させたとしても
調べた矢先に見つけたのは私の目撃情報。
近場であろうが遠かろうが事件が起きれば駆け付けていた為に目撃情報は日本各地に及んでいたが、調べていた期間は“市営多古場海浜公園”周辺での情報が著しく増えた。
さらに言えば目撃された時間というのが平日は早朝ばかりで祭日を含んだ休日ばかり。
早朝以外に平日で目撃された時期もあったのだが、カレンダーに当てはめたら夏休みや冬休みと言った学校のスケジュールと一致。
ついでに言えば“市営多古場海浜公園”にてファンと一緒に写真を撮ったものがネットに上げられており、そこには小さくも汗水垂らして必死に鍛えている緑谷少年の姿が…。
「それで私と緑谷少年の関係を疑ったという訳か」
「いや、疑ったのは雄英内でイズクを見る目が違ったからだが?そもそも隠す気あったの?あれで?」
信じられないと言わんばかりの感情の籠った瞳が精神にダメージを負わす。
一応隠していたつもりだったんだが…。
そう口にすると「あのオールマイトの図体で隠れ切れる訳ねぇでしょうが」と呆れられた。
「貴方とイズクの関係性は察したが、どうして個性を得たのかはついぞ解らんかった。可能性としては突然発現したのが高いのだろう。けど梅雨ちゃんも示唆したようにイズクの個性はオールマイトに似ている」
「まったく…そんな曖昧な予想で私を鎌に掛けたのか…」
「こちとらイズクを鍛えんのに個性の詳細知らなくちゃならなかったんでな。遠回りで問いかけても濁しやがるし、だったら可能性でも引っ掛けるしかなかったんだ」
そういえば話の中で確信を突く様な詳しい情報は口にしておらず、曖昧な言い回しだったのを今更ながら気付いてしまった。
二重の意味でこれは私の落ち度だ。
がっくりと肩を落としてお茶を啜る。
「ま、予想は暴投も良いとこだったがな。轟で俺は個性の複数持ちの可能性を知って、襲撃事件で貴方は個性を振るっていたがゆえに、“個性を分け与えれる”個性
そう口にして同じくお茶を啜る。
「再確認なのだがこの事は――」
「口外しねぇよ。こんな社会情勢引っ掻き回すような危なっかしいの。それよりも詳しく聞かせて貰えます?情報次第ではイズクの特訓で改良すべき点もあるかも知れないし」
本当に扇動少年は緑谷少年に固執し過ぎではないだろうか?
若干危ういなと感じながら教員として公に
後日、緑谷は「鍛錬の事もあって扇動少年にも伝えたから…」と
雄英体育祭で注目を浴びているのはヒーロー科だ。
未来のヒーローの卵であるのと同時に、今年はオールマイトが教員として教えていたり、ヴィラン連合の襲撃事件で騒がれただけに、例年以上に注目を浴びる事だろう。
しかし雄英体育祭はなにもヒーロー科だけのものではない。
サポート科もまた企業に作品見せる良い機会である。
ゆえに二年生に三年生は自身が使うサポートアイテム作成に勤しみ、熱意ある者は開発工房に籠る事になる。
一年生の大半は授業で習い始めたばかりなので、この入学早々にある体育祭で披露できるほどの作品を作るには至ってはいない。
例外を除いて…。
ある意味有名となった問題児―――発目 明。
入学して早々に様々なサポートアイテムを作り始め、その多くはお粗末な欠陥を孕んでおり、すでに何度も爆発させると言った騒動を毎日のように起こしている。
正直迷惑であるも同時に彼女を羨み、高く評価する者が多く居るのも事実。
サポート科に入るにあたって多くの生徒が工作に自信があっただろう。
だけど彼女のように問題を抱えながらも実が伴う作品を入学早々に生み出せたかと言えば否と答えよう。
すでに形作るだけの技術を持ち、高過ぎる制作意欲の塊。
失敗はするもののめげる事の無い精神力と努力は評価に値する。
そもそも彼女が失敗を起こす一番の要因は、思った事を想いのまま詰め込むところにある。
これが作りたいと思えば熱意のままに形作る為に、必要な補助的なものが置き去りになってしまっているのだ。
それさえ補う事が出来れば彼女は一層伸びるだろうとパワーローダー先生も期待している程に…。
「ふむ…どうしましょう?」
今日は珍しく発目が手を動かす事無く、作品の前で首を傾げている。
考えるよりも手を動かすような彼女が首を捻るなど天変地異の前触れかと同じく開発工房に入り浸っていた生徒は不穏を感じ取っていた。
かくゆう自分もそうであり、出来れば関り会いたくないし、下手に近づいて爆発などに巻き込まれたくもない。
こちらの方がどうしたものかと悩む始末。
ちらりと視線を向ければまたパワードスーツらしきものを制作しているようだった。
パワーローダー先生曰く、
すでにパワードスーツは三着在って、その一着は何処に置こうか悩んだ末に一時的に開発工房前に置かれたのだが、本人が忘れてしまったのか今や開発工房の目印として認識されてしまっている。
シャープな造形にメカチックな見た目、バッタを連想させる面立ちが
なんでも依頼したヒーロー科の生徒の身体に合わせて作っただけの雛型らしい。
今作っているのは同じようでただの甲冑とは違って色々と電気部品が組み込まれ、メカチックというよりはメカそのもの。
多少興味を持って覗いてしまっただけに、間違っていないのだがもっと効率が良い配線に気付いてしまい、何気なしに口から漏れ出してしまっていた。
言葉を聞いた発目は設計図の配線図をざっと目を通し、目を見開いて振り返って来た。
「―――それです!!」
あまりの勢いに戸惑い引いてしまった。
どうも予定していたより稼働時間が短くて悩んでいたらしい。
そして口を挟んでしまったがゆえに発目は語り始めた。
新しく設計し直して組んだは良いものの、思っていたより結果は芳しくなかったらしい。
そう言って設計図を見せてきたが、
どう見積もっても操縦者への負荷が半端ない。
これ動かせんのと疑問を口にするとその生徒の身体能力のデータを渡され、本人が負荷を掛けても良いから見合った性能を持たせろと言っていた事を聞く。
言う方も言う方だが、聞く方もどうかしている。
でもサポート科の生徒として…いや、作り手として
なにせ操縦者の身体能力が高く、多少無茶が利く上に本人がそう望んでいるのだ。
これを
発目の声が大きかったのと知らず知らずに面白そうというのが表情に出て居たのが、周囲に居たサポート科の生徒に伝わってしまったようだ。
なんだなんだと興味を持った連中が集まり、設計図とデータに話を聞いて心惹かれたようだ。
次々にアドバイスを口にして、発目は良い意見は素直に受け入れ、気になる意見は深く掘り下げて互いの意見をぶつけ合う。
気が付けば開発工房に居たサポート科の半分以上が関わっている。
自身もその一人なのだが自分の作品を忘れる勢いで語り合い、とても充実した一時を過ごしたのであった。
遠巻きに眺めていたパワーローダーはほっこりと微笑んでいた。
発目は確かに優れているが所詮は原石。
それが授業を経て経験や他分野の専門も含んだ二年三年の上級生と関わる事でより高い技術を得る事になるだろう。
これこそ良い経験というものだ。
なにより生徒達が一つの事に対して意見を言い合うだけでも良い刺激になる。
温かな目で見守っていたパワーローダーであるが、彼は知らなかったのだ。
この集まりがきっかけで
しかもそれが経営科の生徒も巻き込むなどとは露とも知らず…。
ウィングヒーロー“ホークス”と言えば有名なトップヒーローの一人である。
最年少でヒーロービルドチャートトップ10入りを果たし、実力に個性である“剛翼”による速度を活かして即座に事件を解決する“速すぎる男”。
そんな彼は拠点である福岡から飛び出し、雄英高校近辺に出没していた。
突如として九州方面で活躍するトップヒーローが現れた事で通行人は驚き、興奮気味に握手やサインを強請ったり声援を送ったりと一種の
しかしそんな状況にも慣れっこなホークスは愛想笑いを浮かべ、目にも止まらぬ速さでサインを済ませ、手を振って応えたりファンサービスを怠らなかった。
応えて貰ったファンは興奮状態には変わりないが多少余裕と落ち着きを取り戻し、手慣れた対応と速さによって数分後には混乱は解消される。
小さく一息ついたホークスは携帯に表示される地図情報を頼りに一軒の洋食店に入る。
静かな店内でもやはりホークスの登場に騒めくも、さすがに店内でバタバタと騒ぐ者は少ない。
予約を入れていた知り合いの名を口にして、店員に奥の個室へと案内される。
そこでは洋食屋で
「おー、“
真っ先に声を掛けてきた扇動に“ココ”と愛称で呼ばれたホークスは、店員が退室した事を確認して席に着き呆れた表情を向ける。
「捻くれ過ぎでしょ。わざわざ洋食店でサバ味噌食べるって」
「この店は隠し味の味噌が絶妙でな。頼んで作って貰った」
「わざわざ頼むか普通」
「
「相変わらずよく解んないね君は」
「あぁ、ここのチキンソテーは中々だぞ。そろそろ来ると思って注文しといたんだけど」
「それは楽しみだ」
変わらない様子に苦笑を禁じ得ない。
無一と出会ったのはいつだったか。
確か大先輩である流拳に頼まれたのがきっかけだったのは覚えている。
“孫が会いたがってるから来てくれないか?”なんて以前の大先輩を知っている身としては、随分と丸くなったものだなと内心戸惑ってしまったっけ。
元々ヒーロー仲間から“
出会ってすぐの第一印象は“気持ちの悪い餓鬼”。
礼儀は心得ているし落ち着きもあって接しやすいが、何処か“気持ちが悪い”んだ。
なんていうか
さらには出会って挨拶を交わした辺りで「何処かで会った事ない?」なんて、ナンパのような台詞を口をしてくる始末。
大先輩の前もあって態度や表情は崩さず、出来るだけ柔和な対応でさっさと済ませて帰ろうと思ったよ。
呼び出された用件は二つ。
ヒーローとしての心構えや経験、考えを教えてほしいというのと、“最速”のヒーローとして少し手合わせを願いたいとの事だった。
手合わせつっても本格的な奴じゃなくて先に相手に一撃でも
結果は瞬で俺の勝ち。
ただ諦めが悪いのかそこから数十戦相手を頼まれ、飽き飽きしながらも付き合ってやった。
当然ながら多少鍛えているぐらい子供に本気を出す程ではない。
回数は三十を超えた事と相手が他愛ない子供という事で飽き飽きとして、流れ作業のように相手をしてやっているという驕り。
その油断がいけなかった。
否、そのように
…当てられた。
攻撃と呼ぶには軽過ぎてダメージにもなりゃしない。
三十もの模擬戦を情報収集と捨て石に使ってようやく触れた程度…。
けどルール上で俺は負けた。
こちらの心境や手を抜いている事。
動きを
「あー、思い出した。“ココ”に似てんだ―――“何を思っているかが解り辛い。笑みで隠しているのかい?”」
頬を人差し指で突いて唇を歪ませて笑みを作りながら、無一は悪戯っぽく微笑んだ。
化かされた事への驚きと一矢報いてきた若者の輝きに柄に無く喜んでいる中、核心を突いてきた一言もあって印象が“面白い
あれから何度か会い、いつの間にか奇妙な関係を気付いてしまう事になるなんてな。
それと何故か“ココ”と呼ばれるようになり、最初こそ「ココって誰?」てな感じで聞いても武器商人なんて
ちなみにだがそれ以降は一勝すら許していない。
「…ッフフ」
「どした?急に笑い出して」
「いんや、本当に変わらないなと思ってさ」
思い出し笑いを零したホークスは無一お勧めの“チキンソテー”を口にして舌鼓を打つ。
お勧めするだけあって美味い。
皮はパリッと香ばしく、噛めば鶏の旨味と程よい塩気、そして鶏の味わいを活かすように主張し過ぎないソースが絶妙なバランスを生み出している。
「確かに美味しいなコレ」
「お眼鏡に適ったようで何より――っと、聞いて無かったけど今日なんで来たんだ?」
「急に辛辣だねぇ。用事がないと会いに来ないみたいじゃん」
「来ないじゃなくて来れないだろ。
雄英高校などヒーロー科を有する学校では現役ヒーローが教員を務め、“ウワバミ”というヒーローは企業の広告塔としてテレビCMなどに出演したりしている。
だけど俺の場合はそれらと
秘密裏に
別に無一には教えたつもりはなかったのだけど、ぼかしていたが大先輩との会話を聞かれたのは不味かったなぁ…。
「そうだねぇ…最近は突然の
「迷惑千万って言うけどまさにそれだな。というかその団体客の相手させられた俺に一言は?」
「
「
「そりゃあいい経験になったんじゃないの?」
「俺はな。けど
「あぁ、それは俺も想うよ」
腹立たしい事である。
ヒーローは暇しているぐらいが平和で丁度良いのだ。
なのに新たな悪意が形を成して世に放たれた。
無一のコスチュームには復習やデータ収集目的でカメラが搭載されており、襲撃事件でも映像データとして録画されていた。その映像を
ヴィランとして雛鳥であれだけの事を仕出かすなど末恐ろし過ぎる…。
へらへらと笑みを貼り付けていたが、スッと真顔に戻って頭を下げる。
「すまない。先に連絡貰ってたのに対応出来ず…」
以前電話にて連絡を入れられた。
雄英高校の門を意図も簡単に崩壊させた
犯人らしき人物や崩壊させられたという情報を知らせ、
結果としてこちらは話は
「俺も危機感を抱いて置きながら何も出来なかった。責める立場にねぇよ」
今日会いに来たのは心配や話を聞きたいというのもあったが、その一件もあって一度会わないとと思っていたのだ。
対して無一はふてたようで後悔しているような表情でそっぽを向く。
あまり見ない反応に自然と笑みが浮かぶ。
「上じゃなくて“兎”に話だけしてみたら良かったかな?多分悪い奴は蹴っ飛ばすとか言って速攻で来てくれたかもよ?」
「勘弁してくれ。あの“兎”に俺は嫌われてんだから」
まんま“兎”と称したのは“ラビットヒーロー”ミルコの事だ。
無一は大先輩のコネで様々なヒーローとの模擬戦を行い、関りと技術の向上に努めていた。
大概のヒーローはその姿勢に苦笑いを浮かべつつも好評や好感を抱く者が多いのだが、逆に無一に対して強烈な程の嫌悪を示した唯一の相手がミルコであった。
―――“臆病者”または“小心者”。
彼女は模擬戦で無一をボコボコにした後、そう罵って帰って行ったそうだ。
これは大先輩からの又聞きなので実際に何があったのかは分からないし、別段問い質してまで聞こうとは思わない。
時たま揶揄う話題として口にするぐらいだ。
「しっかしえらく嫌われたもんだ。セクハラでもした?」
「心当たりねぇよ」
「あのコスチュームだからねぇ。ジロジロ見ちゃったとか」
「んな事すっかよ。ただ尋常ならざる威力を発揮する足の筋肉量には着目したが」
「それはそれでどうよ。若いのにちょっと枯れ過ぎじゃない」
「言い方よ。熱心と言ってくれ」
「まぁ、何でもいいや。そうそう進路とか決まった」
「あぁ?また
「そっちだけじゃないよ」
「あの
「無理でしょ。だって君ほどの好物件中々ないよ」
「物件言うなし」
公安でも警察でも欲しがるさ。
数多くのヒーローと繋がりに扇動家次期当主となれば政治や企業へのパイプやコネを有し、無個性という戦闘能力的には期待出来なくも
上としても現場指揮官としてもヒーロー側の
「俺としては一緒に働きたいけどね」
「それは俺に頑張らせて楽させろって?」
「ヒーローが暇を持て余す社会ってのが俺の目指す先でね」
本来ならこんな子供に話す内容ではないけど、彼は
期待するなという方が難しい。
「大いに同意はするよ。期待されているって事も。だけど―――」
「おっと答えは聞かないよ。今日はそういうつもりじゃないんだから」
「いっつも答えようとするとはぐらかす。へらへらと仮面貼り付けて喰えない人だ」
「
「タヌキ?」
きょとんとする無一に苦笑を零し、談笑を交えながら料理を口にして会話に華を咲かせるのであった。
お嬢は何を思っているかが解り辛い。笑みで隠しているのかい?そんな必要ない
【ヨルムンガンド】アールより