無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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第29話 騎馬戦 後編

 客席にクソ親父―――エンデヴァーの姿があった…。

 苛立ちと戦闘においては絶対に()は使わないと言う意思を強く抱き、轟 焦凍は緑谷 出久を騎手とした騎馬と対峙する。

 爆豪が一位に固執しているように轟も優勝を目指す。

 それはヒーローを目指してなどと語れるものではなく、母親より受け継いだ氷の個性で優勝を飾って親父()を完全否定するといったもの。

 障害物競走では緑谷と扇動に後れを取ったが、騎馬戦ではそうはさせない。

 絶対的な一位を勝ち取る。

 

 「終盤で相対すると思っていたが少々早かったな。随分と買われたものだな緑谷」

 「時間はもう半分!何としても守り抜くよ(・・・・・)!!」

 

 終了時間までポイントを死守すれば緑谷達は一位通過間違いなし。

 逆にここで奪われたら取り返すのは難しいだろう。

 対峙した緑谷からも強い意思を向けられるが、そういった視線は正面からだけではなかった。

 なにせ一千万という規格外に続いて三位の高ポイントが集まっている。

 勝利を掴もうと言う騎馬が群がって来るのは道理だ。 

 

 「扇動!お先に!!」

 「私達が一千万を貰うよ!」

 「飯田前進!八百万はガート(・・・)伝導(・・)を、上鳴は―――」

 「言わなくても解ってんよ!」

 「―――ッ、轟から離れろテメェら!!」

 

 絶好の機会と言わんばかりに拳藤や取蔭を含んだ周辺の騎馬が雪崩れ込むも冷静に指示を出し、八百万が創造した絶縁シートで上鳴から自身と八百万と飯田を隠すように被る。

 気付いた扇動が叫ぶが遅い。

 上鳴の放電(無差別放電130万ボルト)によって周囲に集まっていた騎馬は痺れ、足を止めた所に伝導として想像して貰った鉄棒を地面に擦らせ、伝って(・・・)氷結で周りの足を凍らせる事に成功。

 これで多くの騎馬を行動不能にする事が出来た。

 …ただ緑谷と扇動の騎馬は距離が範囲外だった為に難を逃れている。

 

 「無差別放電に寄る広範囲攻撃。しかもダメージを受けてない様子から絶縁シートか。抜かりねぇな…残存騎馬は?」

 「近辺では三騎だけです」

 「――チッ、想定より早く減らされたな(・・・・・・)。念のため周囲の回収を頼む」

 

 扇動は決して怠っていた(・・・・・)訳ではない。

 戦闘訓練の様子と上鳴との日常会話にて個性“帯電”の情報収集はしていた。

 だが、その放電の範囲と威力を目にする事は無かったのである。

 

 ―――原作ではヴィラン連合襲撃時にお披露目する筈だったのだが、扇動が居た事(・・・)によってその機会が無くなった事が一番の要因であった…。

 

 特に警戒していた扇動達が仕掛けるどころか氷結で動けなくなった騎馬へと向かっていく。

 

 「進路変更だ!先に扇動を片付ける(・・・・)!!」

 「――ッ、解った!」

 「ちょ!?緑谷が先じゃなくて良かったのかよ?」

 「扇動さんを放置しておくのは危険(・・)なんですの!」

 「そう言う事だ」

 

 解り切っている。

 扇動がこの種目では能力を発揮できない事を。

 だからこそ奴は積極的に仕掛けようとせず、B組の生徒とも組んで協力体制を築いて自身が襲われ難い状況(・・・・・・・)を意図させずに作り上げた。

 かといって優勝を目指していないなんて事はあり得ない(・・・・・)

 狙うなら俺達と緑谷、または爆豪とやり合っている最中、時間終了間際にどさくさに紛れて強襲してくるに決まっている。

 

 無個性だからと言って侮るつもりは俺にも八百万にも飯田にもない。

 …逆だ。

 無個性ゆえに思いも寄らぬ手段を用いてでも勝ちを獲り(・・)に来る。

 

 放電によって残存しているチームは緑谷・爆豪・轟・心操・物間・尾白・小大の七チーム。

 説明では次の種目へ進めるのは四チーム。

 展開次第では最悪ここで痺れた面子のポイントを拾われれば自分達が最下位に成りえる可能性が存在する。

 その芽を摘む意味も込めて行動不能になった連中から扇動はポイントを回収して行るのだろう。

 今の状態では自分達が上がれる可能性が非常に低い事を知っていて、同じクラスメイトである鉄哲や塩崎に託すようにポイントを繋ぐ(・・)者もいて抵抗を受ける事もなく回収を進める。

 

 轟は近づきながら拳藤の鉢巻きを一応盗って行き、ポイント回収を終えた扇動達と対峙した。

 

 「お前を残していたら後々何されるか解かったもんじゃない。ここで潰させて貰う!」

 「不味ッ、近づき過ぎた!」

 

 声色は焦っているようだが瞳はこちらの動きを見極めようとこちらを捉えている。

 長期戦となれば反撃される可能性に緑谷を逃してしまう。

 一気に蹴りを付けてここを離れる。

 鉄棒の先をまた地面に擦って氷結を伝わらせて凍り付かせようとする。

 

 「氷結が来る!きつく結べ(・・)塩崎!!」

 「痛みを伴いますよ」

 「多少刺さっても(・・・・・)気にするな!――ヤレ!」

 

 塩崎はツルを左右に伸ばして、片方は扇動に巻き付けた上で鉄哲へと伸ばす。

 鉄哲は身体を鉄と化すために問題ないが、茨のツルは体操着越しとは言え扇動の身体に棘が食い込む。

 上から見るとツルが三角形で三者を結び、心操は足を鉄哲の手からツルへと乗せる。

 

 「一心不乱に砕け鉄哲!!」

 「おっしゃあ!任せろ!!」

 

 心操を支えなくて良くなった鉄哲の手は自由になり、氷結によって迫って来る氷の波をひたすらに殴り続けて粉砕する。

 氷結の個性によって発生した氷群は、先頭を潰された事でそれ以上の進行出来ずに食い止められる。

 

 「氷結を食い止められた!?」

 「――チッ、上鳴放電を!!」

 「お、おう!」

 「正面を覆え塩崎!」

 

 轟としても考えなかった訳ではなかった。

 訓練を見て貰う事で個性の扱い方に技術などを教われたが、それはまた扇動にとっては俺の能力を見られているという事。

 戦闘訓練時でもあれだけこちらを読んで行動したのだ。

 より精密な情報を元に氷結の対策を施してやがった。

 となれば先に驚いていた様子の放電を喰らわせようと指示するも、塩崎のツルが壁のように立ちはだかって防ぎきりやがった。

 

 「正面のツルを切り離せ!離脱する!!」

 「逃がすか!!」

 「良いのか?遠退いてるぞ一位(・・)

 

 言われてちらりと視線を向けると緑谷は俺と扇動がやり合っている隙に距離を取っていた。

 氷結対策(鉄哲)ツルによる防御能力(塩崎)個性不明の騎手(心操)…。

 それに加えて扇動の状況分析と指揮能力。

 短時間で動きを封じて一位の鉢巻きを奪取するのは不可能…。

 先のツルに寄る壁でさえ、放電を防ぐと同時に切り離した事で行く手を遮る障害物と化している。

 

 「残り一分…皆、俺はこの後使い物にならなくなる(・・・・・・・・・・)だろう」

 「…飯田?」

 「しっかり掴まっていろ」

 

 どうすべきか悩む轟に重く告げて来た飯田。

 声色とその雰囲気からナニカを仕出かすというのは察せれる。

 飯田はぐるりと騎馬を緑谷に向けて、扇動に背を晒すように動いた。

 

 「奪れよ轟君!トルクオーバー―――…」

 

 これは危険極まりない。

 扇動は騎馬を組んで咄嗟に動けないとしてもこれでは攻撃も防衛もし辛い。

 けれど轟は飯田を信じ、背後より迫る扇動達を無視してしっかりと掴む。

 

 「―――レシプロバァアアアスト!!」

 

 急加速に伴って負荷がかかり、景色が恐ろしい程早く動く。

 遠ざかっていた距離があっと言う間に縮まり、あまりの急接近に対処出来なかった緑谷から通り過ぎる瞬間に鉢巻きを掴み奪った。

 遅れて緑谷の呆けた声が漏れる。

 呆けそうなのは轟も見ていた誰もが一緒だった。

 

 『な、何が起きたんだ今!?早っ!飯田、そんな超加速があるなら予選で見せろよー!!』 

 「今のなんだ飯田?」

 「トルクと回転数を無理やり上げて爆発力を生む。ただし、反動で暫くするとエンストしてしまうがな。クラスメイト…扇動君も知らない裏技さ」

 

 飯田は緑谷からの誘いを断った。

 良い友人関係を築いているからこそか、入試から緑谷の活躍を目の当たりにしている分、未熟と称する自分と比較して今回は敵―――ヒーローを目指すライバルとしての見ている。

 ゆえに虎の子である裏技を披露してくれたのだろう。

 雄英体育祭では年ごとに競技が変わるが、一対一のトーナメント戦だけは恒例となっている。

 すでに扇動の中では裏技への対策を巡らせている事だろう。

 自身が不利になるのも解り切った上で披露し、奪取できた鉢巻きは絶対に死守する。

 

 奪われた事で焦りながら突っ込んで来る緑谷に、轟は自身の想いと飯田の覚悟をもってして応戦する。

 

 

 

 

 

 

 轟に緑谷、扇動とは離れた一角にて四位の高ポイントの争奪戦が行われていた。

 四位から鉢巻きを奪った物間の騎馬に小大と尾白が襲い掛かるが逆に一本ずつ鉢巻きを奪われてしまう。

 奪還も含んで奪い合いをしている少し離れた位置で爆豪達の騎馬は居た。

 

 「落ち着け爆豪!冷静になんねぇと取り返せねぇぞ!!」

 

 心操の洗脳の個性を初見で喰らってしまった爆豪は無抵抗のままB組の物間にポイントを奪われてしまった。

 絶対的な勝利者を目指している爆豪としてはポイントを奪われただけでも苛立っているのに、物間は“ヘドロ事件”を掘り返しつつ煽りに煽って腸が煮えくり返りそうな状態である。

 爆豪と騎馬を組んだ面々は諦めておらず、勝つために爆豪に冷静になるようにと代表して切島が促すも、爆破によって生じた音によって掻き消される。

 

 「―――進め切島ァ……俺はすこぶる冷静だ!

 「んとに頼むぞマジで」

 

 怒りで身体をわなわなと震わしながら闘志…いや、殺意(・・)にも似た怒気を露わに爆豪は物間だけを定めた。

 不安は残るものの奪われたポイントを取り返そうと物間の騎馬へと突き進む。

 他に二組の騎馬が物間に襲い掛かっているが邪魔だと言わんばかりに強引に割り込む。

 

 「待ちやがれテメェ―――ッ!?」

 「ハハッ、良い“個性”だね」

 

 手を伸ばして爆破を喰らわせてやろうとした爆豪は逆に“爆破”を浴びせられてしまう。

 同一の個性…。

 威力は低かったがそれでも顔当たりに爆風も込みで喰らって左右に顔を振るう。

 “爆破”の個性を使用した物間は爆破を放った手を引っ込める際に軽く切島の頭を叩く。

 

 「爆豪!オメェ()個性ダダ被りか!?」

 「うるせぇ!クソがッ!!」

 

 切島は障害物競走にて轟が凍らせた0Pヴィランの下敷きになり、その際に一緒に下敷きにされた鉄哲の事を言っているのだろう。

 “硬化”の個性を持つ切島に身体を鉄にする“スティール”の個性を持つ鉄哲。

 どちらも身体を強固な防御力を持つ個性。

 だが、物間に対しては違和感が残る。

 今まで爆破を使っている話は無かったし、使っておいて“良い個性だね”と言うのは不自然だ。

 思考は冷静に、感情は怒りで沸騰しそうな爆豪は今度こそ爆破を喰らわす。

 しかし爆発から姿を現した物間は腕を“硬化(・・)”して防いでいた。

 

 「―――まぁ、僕の方が良いけどね」

 「コイツ…コピーしやがった…」

 「へぇ、意外に頭周るんだ。ま、馬鹿でも解るだろうけど…ねぇ?」

 

 爆破に次いで硬化の個性を使用しやがった。

 かなり低いが轟のように個性二つ持ちの可能性もあるにはあるが、こうも被る(・・)となるとそれは別の個性と思った方が現実的だ。

 爆豪の指摘通り物間の個性は“コピー”で、触れた相手の個性を五分間は使用可能というもの。

 

 「うおっ、固まった!動けねぇ!!」

 「ちょい待ち!私の“酸”で溶かすから」

 「急がねぇと俺ら0Pだぞ!」

 

 物間と爆豪がやり合っているのを周囲の騎馬も黙っているつもりはない。

 凡戸の個性“セメダイン”が撒かれて運悪く切島の足が固められる。

 下で慌てる三人の声を耳にしながら、鬼の形相である爆豪は襲われながらも余裕を持って逃げ切ろうとする物間を捉えて離さなかった。

 

 「これで良し!」

 「取り返すぞ爆豪!」

 「―――ぇが一位になる…

 「なんだって?」

 「一位だ…ただの一位じゃあねぇ…俺が獲るのは完膚なきまでの一位だ!!」

 「―――ッ、待てって!」

 「しつこいなぁ…。あまりに粘着質過ぎるのはヒーロー云々よりも人としてどうなん―――ッ!?」

 「勝手すんな爆豪!!」

 

 敵味方どちらも度肝抜かれた事だろう。

 なにせ爆豪(騎手)が爆破で飛んで、騎馬から離れて物間に襲い掛かったのだから。

 

 「円場、防壁!!」

 

 騎馬正面を務める円場 硬成は“空気凝固”という空気を固め、壁や足場にも出来る個性を持っている。

 慌てながらも指示を飛ばす物間に従って爆豪の前に空気の壁を作る。

 勢いを付けていただけにぶつかった爆豪は痛がるも、そんな程度で立ち止まるような軟な男ではない。

 力尽くで空気の壁を破壊して物間が首に巻いている鉢巻きを数本奪い去る。

 

 「三本(・・)盗られた!?」

 「戻れ爆豪!」

 

 空気の壁を破壊して鉢巻きを取った爆豪は態勢を崩すも、瀬呂によるテープで巻きとられて騎馬へと戻される。

 まさか三本も奪われるとは思わなかった物間は焦るも、爆豪から奪った645Pの鉢巻きは残っていた。

 奪われたのは物間達の285Pに物間達が奪っていた小大(140P)尾白(350P)の鉢巻き。

 合計すると爆豪は775Pを手に入れて現在三位に浮上。

 逆に物間は四位でギリギリで通過という危うい立場に。

 爆豪から取り返そうとも思うが小大が葉隠から奪った370Pを保持している筈だ。

 どちらからでも一本奪うだけで四位通過は確実となるが奪おうとすれば奪われる可能性も高くなる。

 通過を確実なものにするか今のポイントを死守するべく逃げ回るか選択を迫られる物間だったが、そんな時間を待つ爆豪(・・)ではない。

 

 「俺単騎じゃあ踏ん張りが利かねぇ………あの野郎から俺らのPを取り返して一千万に行くぞ!!

 

 口は悪くあえて(・・・)口に出してないが、あの爆豪(・・・・)が自分だけでは駄目だと理解して頼っている。

 内容は力を貸せ!って感じではあるが…。

 騎馬である切島、芦戸、瀬呂は仕方ねぇと思いつつ、爆豪の雰囲気に良い意味で(・・・・・)呑まれた。

 

 「醤油顔!テープ!!」

 「瀬呂な!!」

 「黒目!進行方向に弱い溶解液!!」

 「芦戸 三奈だって!!」

 

 瀬呂のテープが物間の騎馬を追い抜いて地面に張り付き、芦戸の弱酸性の溶解液が撒かれて、硬化で踏ん張りを利かせれるように切島がした事で、爆豪は芦戸と瀬呂の顔に当たらぬように後方へ爆破を放つ。

 爆破によって生じた加速によって溶解液にて滑らかになった地面を滑るように進み、瀬呂のテープが進行方向への誘導と巻き取る事で加速の補助を務める。

 

 これは個性や実力の違いというのもあるのだろうが、物間達と爆豪の際たる違いは彼が抱く執念…。

 その違い事が物間の敗因である。

 反撃しようとも対処が遅れ、通り様に奪った爆豪に掠りもしなかった。

 

 「良し!これで通過確実だ!!」

 「まだだ!!次、デク(一千万P)のとこだ!!」

 

 完全なる勝利を目指す爆豪に従って緑谷と轟が交戦している場に向かう。

 

 

 

 

 緑谷達は焦っていた。

 終了間際に0Pで通過可能な四位外にまで落ちてしまった。

 このままでは敗退は確実…。

 

 「轟君に突っ込んで!!」

 「上鳴が居る以上は不利(・・)だ!他のPを狙った方が――」

 「駄目だ!Pの散り方を把握できていない上に時間がない!!」

 

 常闇の“ダークシャドウ”は影から成る個性で、暗闇を力に変える反面光には弱いのだ。

 その点を考慮すると上鳴の帯電との相性は最悪だ。

 だけど口にした通り時間がなく、どのチームが合計ポイント所持しているかは大型モニターで表示されていても、誰がどのチームの鉢巻きを所持しているかは解らない。

 最悪奪ったとしても小大の370Pより下であれば通過出来ない。

 

 「よっしゃ!取り返そうデク君!!」

 

 焦る緑谷に個性の相性ゆえに戸惑う常闇。

 その二人の背を押すように麗日が前進しようと押す。

 振り返った緑谷は強い想いと諦めていない麗日に奮い立つ。

 彼女がヒーローを目指す意思を知っている。

 同様に常闇には常闇の、発目には発目の想いがあってチームを組んだ。

 自分がオールマイトに期待され、自ら夢であるヒーローを目指すように彼らの想いそのものを背負っているんだ。

 

 「あああああああああああああ!!」

 

 三人の想いを強く感じた緑谷は奪い返そうと鬼気迫る表情で、大声を発しながら必死に手を伸ばす。

 逃げ切れば一位確実の轟は逃げずに受けて立つ。

 放つ電気の容量が限界点を超えると思考能力が著しく低下すると言う上鳴の自己申告に、飯田が裏技を使用した事でいつエンストが起こるか解らないという事もあったが、逃げると言う選択肢が存在しなかったのだ。

 緑谷に宣戦布告した事にエンデヴァーへの否定も含んだ意地。

 

 だけどその意地が霧散する。

 三人の想いを背負った緑谷から発せられる思わぬ気迫に圧されたのだ。

 その瞬間、無意識ながらに()を纏った。

 絶対に戦闘では使わないとあの日以来決めていた炎を…。

 

 ワン・フォー・オールを人に使えるようになった緑谷だが、拳を振るう事は悪質な騎馬崩しというルール違反に当て嵌まって退場させられる可能性がある。

 ゆえに僅かに腕に纏わせてタイミングを合わせて横に振るう。

 巻き起こる風圧の流れによって轟がガードしようとして伸ばした腕を払い除ける。

 風圧が轟の炎に当てられほんのりと熱を持って通り過ぎる。

 そしてすかさず鉢巻きを奪取した。

 

 「()った!」

 

 終了時間まで僅か十七秒という時間で鉢巻きを奪い取る事には成功した。

 しかしそれすなわち騎馬戦通過とはならなかった…。

 

 「待ってください!その鉢巻き違いませんか!?」

 「――ッ、やられた!!」

 

 手にしていたのは轟は念のために拳藤から取った135Pの鉢巻き。

 轟は緑谷から鉢巻きを奪って巻く際に位置を入れ替えたのだ。

 してやられたと焦りながら再び轟達へと向かう。

 が、気迫にやられた事と十秒を切った事で形振り構わず防御に徹するべく、絶縁シートを被って上鳴が容量を超えてでも放電を行う。

 容易に近づけない上に騎馬から離れた爆豪に、扇動達を除いた(・・・)生き残っている(行動可能な)騎馬が迫って来る。

 

 「バインド(・・・・)を!」

 

 上鳴が放電したのを一度見てから再び放つのを待っていた緑谷は、打破すべくもう一つの左腕のサポートアイテムを使用する。

 嵌めている小手(ガントレット)は腕を護る為ではなく、ガントレットより伸びている鍵状の射出機より捕縛用の鎖付きの手錠を放つ。

 

 「なにっ!?―――ッ!!」

 「なんだこりゃあ!!」

 

 狙って射出された手錠はそれぞれの目標に向かって飛んで行く。

 一つは飯田の足を施錠(・・)して伸びた鎖を伝って放電に寄る電撃が轟達を襲い、飛び掛って来た爆豪を牽制して驚いて体勢を崩す事に成功。

 絶縁シートで完全に防ぐつもりでいた為にこの痺れは想定外。

 動きが鈍った轟達に緑谷達は諦めず手を伸ばす。

 

 『ここでタイプアップ!騎馬戦終了のお知らせだぁああ!!』

 

 無情にも告げられた終了の一言に降りた緑谷は打ちひしがれる。

 オールマイトの期待に応えれなかった…。

 むーくんに特訓を付けて貰ったのに活かせなかった…。

 なにより自身を信じて託してくれた三人の想いに応える事が出来なかった…。

 

 『一位、轟チーム!二位は僅差で心操チーム!三位は爆豪チーム!………』

 

 膝をついてその場で悔しさを噛み締め、読み上げられる上位のチーム名とそれに対してのそれぞれの反応を耳にする。

 もう後悔でいっぱいいっぱいで、よろりと立ち上がった緑谷は三人に頭を下げる。

 

 「皆……その、ごめん…本当に…」

 「デク君、デク君!」

 

 何処か浮いた様子の麗日の呼びかけに顔を上げると麗日と発目が常闇を指で指し示す。

 示された常闇は閉じていた目を開き、背後にいるダークシャドウを示した。

 

 「緑谷…お前の一撃は明らかに轟を動揺させた。奪われたポイントを取り返すのが本意だっただろうが、そう上手くはいかないものだな―――だが、警戒が薄まったもう一本の方を頂いて置いた。これはお前が追い込み生み出した結果だ」

 

 ダークシャドウが加えているのは轟達の持ち点だった595P。

 合わせて730P…いや、合わせずともそのポイントだけでも四位だった(・・・)小大達の370Pを超えている。

 

 『四位、緑谷チーム!!以上四組が最終種目進出だぁああああ!!』

 

 目の前の事実に頭が追い付かずにいた緑谷に告げるように、プレゼントマイクに四位で読み上げられた事で、一瞬で興奮と歓喜で心中が満たされると溢れ出るように目から涙が放水(・・)されるのであった。

 




●各チームと順位表
〇一位:轟チーム(10,000,305P)  
・轟 焦凍  
・飯田 天哉  
・八百万 百 
・上鳴 電気  

〇二位:心操チーム(1475P)
・心操人使
・扇動無一 
・鉄哲徹鐵  
・塩崎 茨  

〇三位:爆豪チーム(1420P)
・爆豪 勝己  
・切島 鋭児郎
・瀬呂 範太  
・芦戸 三奈  

〇四位:緑谷チーム(730P)
・緑谷 出久  
・常闇 踏陰  
・麗日 お茶子 
・発目 明  

〇五位:小大チーム(370P)
・小大 唯  
・凡戸 固次郎 

〇以下同順

〇取蔭チーム
・取蔭 切奈  
・角取 ポニー 
・柳 レイ子  
・小森 希乃子 

〇葉隠チーム
・葉隠 透  
・耳郎 響香  
・砂藤 力道  
・口田 甲司  

〇峰田チーム
・峰田 実  
・蛙吹 梅雨  
・障子 目蔵  

〇物間チーム
・物間 寧人  
・回原 旋  
・円場 硬成  
・黒色 支配  

〇拳藤チーム
・拳藤 一佳  
・宍田 獣郎太 

〇尾白チーム
・尾白 猿夫  
・泡瀬 洋雪  
・庄田 二連撃 

〇鱗チーム    
・鱗 飛竜  
・骨抜 柔造  
・吹出 漫我  
・鎌切 尖  
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