無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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 先週投稿する予定でしたが遅れに遅れて申し訳ありません。
 花粉症に悩まされながら、投稿前に気に入らず書き直したら時間が掛かってしまいました…。


第03話 雄英を目指す三人

 朝日が昇るも外には人影がまだ少ない朝六時。

 夜間で冷え澄んだ空気がほんのりと陽光に当てられ温かさを含むも、やはり体温との差から吸い込めばひんやりと冷たい。

 弱り切った身体に沁みると思いながらも八木 俊典(ヤギ トシノリ)は、朝早くからゴミが溢れる沿岸部を眺める。

 瞳には汚れ切ってしまった沿岸に先に広がる海原も映るが、視線は一人の少年だけを捉えていた。

 

 緑谷 出久…。

 十日前に起きたヴィラン事件にて、友人を助けようと真っただ中に跳び出して行った少年。

 彼は今この“海浜公園(カイヒンコウエン)”にてゴミ掃除に勤しんでいる。

 元々海浜公園沿岸部の一部区域では海流の流れから漂流物が流れ着き、不法投棄も相まって地元の人間でさえ寄り付かない場所となっており、彼は身体を鍛え上げる訓練とヒーロー本来の役割である奉仕活動を兼ねて掃除を行っているのだ。

 ゴミと言ってもビニール袋やタイヤなどの持てる物から冷蔵庫や鉄骨など重く大きい物まで様々。

 たった一人で運ぶだけでも一苦労だろう。

 けれど弱音を吐く事無く、歯を食いしばり、溢れ出る汗を流しながら少しずつでも海浜公園入口へと移動させていく。

 さすがにゴミ処理場まで運ぶのは私が軽トラを運転していくことになっている。

 彼はこの後学校に行かなければならないしね。

 時間的にはまだ余裕があるも言わなければいつまでも続けそうな一生懸命な様子に微笑む。

 

「まだ行けそうかい?」

「大丈夫です。多少鍛えてましたから。さすがにオールマイト(・・・・・・)ほどではないですけど」

 

 オールマイトと呼ばれた八木は口元に人差し指を当てて注意する。

 

「こらこら、その呼び方は…」

「す、すみません!」

 

 絶大な人気と圧倒的過ぎる力を誇るナンバーワンヒーロー“オールマイト”。

 存在自体がヴィラン犯罪抑止に繋がるという規格外の存在ゆえに“平和の象徴”と謳われる。

 筋肉隆々で笑顔を絶やさないオールマイトと、時折吐血する細身で骨ばった八木 俊典は見た目も様子も大きく異なる。が、緑谷が呼ぶように八木こそがオールマイトの正体であるのは違いない。

 そもそもの姿が今のやせ細った姿(トゥルーフォーム)であり、誰もが知っている筋肉隆々の姿(マッスルフォーム)は力んで全身を強張らせて膨らませて維持しているに過ぎない。

 この事は極一部関係者以外には知られておらず、緑谷もその極一部に含まれた。

 …否、彼は極一部の中でより少ないオールマイトの“個性”を知る人である。

 

 オールマイトの個性は前代未聞な特殊なモノである。

 ある理由(・・・・)で“力を蓄積する個性”と“個性を譲渡する個性”という二つの個性が融合した“ワン・フォー・オール”。

 その特性ゆえに人から人へと聖火の如く受け継がれてきた。

 八木もまた先代継承者より受け継ぎ、平和の象徴と謳われる目覚ましい活躍を見せている。

 無論個性の力あってだが、そこに至ったのは彼の強すぎる正義感と自己犠牲の精神あってゆえの事。

 どんなヴィランにも臆せず、どんな危険にも我先にと突き進む最高のヒーローは、全盛期に比べてかなり弱体化していた。

 公にはされていないヴィランとの戦いでの大怪我で内臓の大半を摘出し、一日三時間しかヒーロー活動が出来ないうえに能力も衰えてしまったのだ。

 この事実は易々と口に出来るものではない。

 もしこれが公になってしまえばオールマイトを恐れて大人しくしていたヴィランは活発化し、そうでなくとも大小問わないヴィラン事件が発生するのは目に見えている。

 だからこそオールマイトこと八木 俊典は次代を担う後継者を探し求めていた。

 そして彼に出会った…。

 

 “個性が無い人間でも、貴方のようなヒーローに成れますか?”

 

 ヘドロ状のヴィランを追っていた際に助けた緑谷少年にそう言われた時は背を押す言葉も浮かんだが、私はその言葉をグッと呑み込んで真逆の言葉を彼に放った。

 

 なにせヒーローには危険が伴う。

 突如として猛威を振るう自然災害に予期せぬ大事故、個性を使って悪事を働くヴィラン。

 それだけとは言わないがヒーローは常にこういった危険と対峙する時が必ず来る。

 相手が凶器として“個性”を振り回す危険地帯に素手だけで挑むというのは、通常(個性持ち)のヒーローに比べて危険の格が違い過ぎる。

 “平和の象徴”と誰からも認められる自分でさえ大怪我を負い、共に平和の為に戦ったヒーローの死を目撃した事だってある。

 無責任に彼の背を押すような事が、どういう結果を招くのかは言わずもがなだろう…。

 

 だからこそ罪悪感を感じながらも彼には冷たく言ってしまった。

 “プロはいつだって命がけだよ。“個性”がなくとも成り立つとはとてもじゃないが口に出来ないね”とね…。

 一瞬、彼の表情が曇り、瞳が陰ったのが酷く心を軋ませる。

 けれどそれはほんのわずかな間だけだった。

 沈んだ雰囲気は払拭され、強い意志を持った瞳が向けられ“僕はヒーローに成ります。無個性でも貴方のように誰かを護れるヒーローに!”と宣言された時は胸が震えた。

 彼は無個性でヒーローを目指す意味を知っても尚、確固たる信念を持ってその茨の道を突き進もうとしている。

 

 あの出会いはまさに運命的なものだったのだろう。

 その直後に捕えた筈のヴィランに逃げられ、近場で少年を取り込もうと大暴れするという事件を許してしまった。

 以前の私ならばすぐさまに事件を解決出来ただろうが、大怪我を負ってからは一日三時間しかヒーロー活動が行えなくなっており、その日はすでに限界まで使い切ってしまっていた。

 駆け付けた多くのヒーローが個性の相性から見守るしかなく、苦しむ少年を眺める事しか出来ない歯痒さだけが我が身を締め付ける。

 誰もが眺める事しか出来ない中、無個性で助けられるだけの力が無かったとしても緑谷少年だけが、苦しむ少年を助けるべく事件の真っただ中に駆け出したのだ。

 相手を安心させようと、自身を奮い立たせようと笑みを浮かべながら…。

 無茶で無謀で褒められた行為ではない。

 だけど私はそんな彼が………彼こそがその場の誰よりもヒーローであったと強く感じた。

 

 トップヒーロー達は学生時代から逸話を残しており、彼らの多くが話をこう結ぶ―――“考えるより先に体が動いていた”と。

 あの時の緑谷少年もそうだったのだろう。

 だからこそ私は緑谷少年が後継者に相応しいと思ったのだ。

 

 噴き出る汗がシャツに沁み込んで中々に鍛えられた肉体が透けて見える。

 知識と自ら実践して得た経験の偏った鍛錬から斑は多いが、それでも筋肉量にスタミナは中学生の平均より高いだろう。

 だけどそれではまだまだ不完全。

 

 “ワン・フォー・オール”の力は絶大だ。

 絶大過ぎるゆえに受け継いだ人物の身体が生半可では、受け取り切れず四肢が捥げて爆散してしまう。

 今の状態ではそうなるのは確実。

 ゆえにまず鍛えなければならず、鍛錬を兼ねた海浜公園一区画のゴミ掃除(課題)を効率よく確実にクリアする私考案のトレーニングプラン“目指せ合格アメリカンドリームプラン”を用意した。

 ぶっちゃけ寝る時間さえも組み込んだ超ハードトレーニングメニューであったが、基礎として鍛えている分だけ多少の余裕が生まれる。

 これをプランの強化に使うか、それともプランにゆとりを持たすか。

 彼はどちらを選ぶか…。

 

「鍛えてはいるけど受け継ぐにはまだまだだね。けど鍛えている分は予定より余裕が出来る訳だ。時間を精一杯使って身体を作るか、その先を踏まえてもっと鍛え抜くk…」

「鍛える方向で!」

「早っ!?即決だな」

「僕は他の人より何倍も頑張らないと駄目なんですから」

 

 強い決意を持って言い切った彼に笑みが零れる。

 ヒーローを目指すならまずはプロヒーローを育成する高校に入学するのが第一。

 彼が選んだ高校は私を含めた多くのプロヒーローを輩出してきたヒーロー科最難関の国立雄英高等学校―――通称“雄英”だ。

 最難関と言うだけあって高い学力と能力を必要とするだけに彼にはかなり難しい。

 個性“ワン・フォー・オール”を引き継いだとしてもそれを使い熟せるかは彼次第だし、使いこなせるまでの訓練期間は流石に入試までの残り十か月で仕上げるのは不可能だ。

 

「この行動派オタクめ!!」

 

 HAHAHAHAと大声で笑うと同時にトゥルーフォームに変わり、激励も込めてバシンと背を軽めに叩く

 私のようなヒーローを目指し、私の出身校だから雄英しかないと面と向かって言う。

 まったくもって嬉しいじゃないか。

 

「それに約束がありますから」

 

 ニカリと笑いながら力が籠り、業務用冷蔵庫がゆっくりながらも着実に進む。

 夢に向かって突き進もうとする彼の背を心強く感じ、期待を胸に満面の笑みで見守るのであった。

 

 

 

 

 

 

 爆豪 勝己は扇動 無一が気に入らない。

 今も昔もオールマイトに憧れを抱き、将来はオールマイトも超えるヒーローになると夢見ていた少年だが、幼少期はヒーローを目指すにしては酷く荒れていた。

 幼い時分から何事も僅かな時間で苦労もなく習得し、周囲が羨望の眼差しを向け賞賛を贈るのが普通と化した中で、彼は自身を“凄い奴(特別な人間)”であると認識した。

 特に周りに比べて派手で強い個性を手に入れてからは、周囲の奴らを“凄くない奴(モブ)”と見下す傾向が顕著に表れ、非常に高い自尊心と攻撃的な性格から虐めなど問題行動も行うようになってしまった…。

 

 そんな最中に現れたのはモブだと認識していた扇動 無一であった。

 ヒーロー一族(・・)に生まれて両親はプロヒーロー。

 運動も勉強も出来、口は悪いが大人びて面倒見が良い事から周囲からの信頼を集める存在。

 俺より目立っているのは気に入らなかったが、奴がボツ個性(弱い個性)どころか個性を発現しなかった無個性であったことから格下と見下して嘲笑っていた。

 

「喧嘩ならいざ知らず苛めはいかんでしょう」

「喧嘩も駄目だよ!?」

 

 何時も見たく取り巻きと“凄くない奴”を懲らしめていたら、無一はデク(・・)を連れてやって来た。

 デク―――緑谷 出久はよく一緒に遊んでいた間柄であったが、元々何してもどん臭い上に無一同様に無個性だと判明して方は特に“凄くない奴”と認識してからはヒーローオタクからクソナード(オタク的な意味)木偶(でく)の棒と出久をかけてデクと蔑称で呼ぶようになっている。

 最近は無一とつるむようで、二人でセットのイメージが強い。

 そんな無個性二人(モブ)が前に立とうと怖くもなんともない。

 ただ腹が立った。

 

「馬鹿だなぁ。ガキは喧嘩してなんぼだろ?」

「いやいや、それは無いって!」

「漫才すんなら他所でやれや…」

 

 相手にするのも面倒であっち行けと言わんばかりに手をひらひらと振るう。

 普通のモブならそれでさっさと立ち退くが、無一もデクも苛められていた奴の前から退く事は無かった。

 それどころかニヘラと笑いながら歩み寄って来る。

 

「そう邪険にすんなよ。どうせ暇だろ?元気も有り余って暴れたりないんだろ?なら俺と喧嘩しないか」

 

 まさかのモブから誘われると思わず怪訝な顔を晒す前で、デクは心配も含めて慌てて止めに入るも無一はカラカラと笑う。

 

「この周辺で同年代限定になるけど…“大丈夫―――僕、最強だから”」

「あぁ?」

 

 ぷつんとキレた俺は幼く未熟ながらも個性を使用して見下して来た身の程知らずのモブを叩きのめそうとして、徹底的なほどまでの敗北を刻み込まれた。

 無個性の奴に完膚なきまでに負けた俺は初めて“挫折”を味わった。

 そんな俺に奴は「ヒーロー目指すもんが苛めはするもんじゃねぇよ」と簡潔ながら言い聞かせるように説教をし、悔し涙を流しながら横たわる俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「君には才能がある。俺に無い強い個性がある。何より君の負けん気とか結構気に入ってんだよ。だからさ“強くなってよ。僕に置いて行かれないくらい”―――なんてね」

 

 悔しくて仕方がなかった。

 何より見下していた奴に見下された敗北感が酷く身を焦がす。

 それからは荒い言動は変わらなかったが負けたままで終われるかと日々強さを求める結果、苛めなんかを行う時間すら勿体くなく、扇動(・・)に再戦を挑む(・・)機会が画然と増えた。

 いつまでも勝てない悔しさが心を苛むも超えるべき目標が出来た事で充実した日々は唐突に終わりを告げた。

 

 急に扇動が引っ越す事になったのだ。

 俺達はその日、一つの約束を交わした。

 ヒーローを夢見る三人が目指す先はオールマイトが通っていた“雄英”。

 ならば俺はそこで扇動に完膚なきまで勝利し、トップヒーローへの道を駆け上がる。

 

 そう扇動に宣言して数年…。

 雄英の入試まで十か月と迫った中、会おうと連絡を受けたがあのクソ忌々しいヘドロ事件で延期となり、デクは入試に向けて忙しいとの事もあって、再会の約束は雄英の入試以降となったとデクを介して聞いた。

 だが奴の口から聞きたくもあり、俺も言いたい事があったので連絡を取る事にしたのだ。

 

「……で、どうなんだ?」

『いきなり主語を飛ばされても解んねぇよ』

「察しろカス!」

『なんでキレてんの?』

 

 ベッドに寝ころびながら携帯電話を掛ける爆豪は察しの悪さに苛つくも、涼しい顔を浮かべているのが容易に想像出来て舌打ちひとつ鳴らして話を続ける。

 

「――チッ、あの時の約束忘れてねぇよな」

『無論だとも。俺も雄英を目指す』

 

 舌打ちしながら問いかけた問いの答えに笑った。

 そうでなくてはと鋭い眼光を輝かせ、酷く悪い満面の笑みを浮かべる。

 

「雄英に入ったら格の違いを教えてやらぁ!そして俺がナンバーワンヒーローになる!!」

 

 自室どころか近所にまでに響き渡る宣戦布告に、扇動はクツクツと笑い返す。

 

『お前さんのそういうところ好きだわ』

「ケッ、テメェに好かれても嬉しくねぇわ!精々踏み応えのある踏み台になれや!!」

『簡単には踏み越えさせねぇよ。頑張って超えて見な』

 

 今度こそアイツを負かして俺が格上なんだと証明してやる。

 俄然やる気に燃える爆豪であったが、あまりに騒いだために母親と口論する事になるのであった…。 

 

 

 

 

 

 

 爆豪との電話を終えた扇動 無一は高鳴る鼓動を抑えつつ、喜びから獰猛な笑みを浮かべる。

 あんな素敵な宣戦布告を受けては滾るというもの。

 電話する少し前まで扇動家所有の道場にて対人戦を行ったばかりで、疲労感もあるというのに身体を動かしたくなって仕方がないじゃないか。

 

 興奮し切った無一の周囲には十名強ほどのプロヒーローを含めた扇動家所縁の者らが疲労困憊で床に転がっていた。

 ヒーロー科最難関である雄英に挑むには無個性である我が身を鑑みれば足りなさ過ぎる。

 無論幼少期より意欲的に鍛錬を付けて貰ってスタートダッシュだけは誰よりも早かっただろうが、ヒーロー科の入試では普段使用を禁止されている個性の使用が可能となり、個性の有無の差は絶望的に大きくなるだろう。

 だからこそ無一はより鍛え、なるべく実戦に近い訓練を積んで実戦経験とさらなる技術の習得に励みたいところ。

 

 そこで身内を利用させてもらった。

 ヒーロー一家ではなくヒーロー一族である扇動家は当主である扇動 流拳の子供らを中心に派閥争いを水面下を行っている。

 当主になれば扇動家本家の資産を好きに出来る上に、今まで培っていた色々なコネを利用する事が出来る。

 その利益や名声から最も爺ちゃんに近い五人の子供達が微笑を浮かべながら騙し合い、蹴落とし合いをして虎視眈々と当主の座を狙い、分家や連なる者らは甘い汁を吸おうとそれぞれに寄り付いている。

 その子供らの中で最も次期当主と噂されていたのは実は俺の親父だったりする。

 爺ちゃんの子供達の中で末っ子であったが、歳をとってから出来た子供に酷く甘かったらしく、全盛期の頃に産まれた兄弟たちは厳しく育てられただけにそれが気に入らなかった。

 プロヒーローとしても彼らより実力が上だった事で手出しも出来ず、やるのは精々裏での陰口程度。

 ゆえになのか両親が亡くなった際には今までの腹いせとばかりに俺に当たる者も多く居た。

 特に一族の誰もがヒーローを目指す中で俺だけ無個性だってのも攻撃の材料になった。

 

 それも今は成りを潜めたが。

 敵意ある親戚中をたらい回しにあっていた俺を、事を知った爺ちゃんが引き取ってくれたのだ。

 愛情たっぷり注いでくれる爺ちゃんに俺は感謝してもし切れない恩を感じている。

 親戚たちは面白くなかっただろう。

 苛立ちや鬱憤を募らせた事だろう。

 だからここいらでそれらを使ってやろうと画策したのだ。

 

 爺ちゃんに俺が対戦者を求めていると伝えて貰ったのだ。

 これで気に入らない奴らは対戦の最中の不慮の事故込み(・・・・・・・)で本気で来てくれるだろう。

 そう思っていたら爺ちゃんが俺を次期当主に考えているなんて爆弾発言までかましてくれたもので、血気盛んな奴らが阿呆程集まって訓練には事欠かない状況に。

 有難い事ではあるけどね。

 無個性の俺に当主の座を譲っても良いと思う程に期待されているんだから。

 

 それにこんな連中に負けるようではヒーローなんて夢のまた夢だろうしな。

 

 俺は知っている。

 自分の体躯より何十倍も大きく、ビルより巨大なヴィランと戦って勝利したヒーローを。

 目にしたのは偶然だった。

 ある動画投稿サイトに目撃者の誰かが携帯か何かで撮影した画質の悪い映像。

 イズクや爆豪はオールマイトの動画に釘付けだったが、俺はそのヒーローに…いや、雄英の学生に心惹かれた。

 個性は見た者の個性を“抹消”するというもので、強い個性ではあるが決して戦闘向きな個性ではない。

 寧ろ異形型の個性持ちや巨大な相手となると正直無個性と変わらない。

 どちらかと言えば後方支援系の個性だろう。

 それなのに圧倒的体格差を鍛え上げた肉体と格闘と特殊な布を自由自在に操る技術、そして状況を把握して勝つための手段と道筋を叩き出した頭脳を持ってして勝利を収めた。

 アレを見てしまえば戦い方と己の武器をどれだけモノにするかでヒーローに成れる道があると希望を抱いてしまい、目標と定めた日からそのヒーローを追い縋って超えるしか道はない。

 

 だからこそこんな連中相手に立ち止まる訳にはいかない。

 

「無一、そろそろ飯にせんか?」

 

 意気込んでいた無一は流拳の声で我に還り、視線を向けると道場の入り口に立っておて、時刻を確認すると時計の針は十九時を指していた。

 無一同様に転がっている奴らに興味なしといった様子の流拳は、孫だけを視界に入れて優し気な笑みを浮かべて歩み寄って来る。

 確かにお腹は空いているものの、気持ちが高ぶってそれどころではない。

 不完全燃焼でなんとも収まりも悪いし…。

 

 

「ちょっと今高ぶって仕方がないんだ。そうだ爺ちゃん!今から手合わせしよう!」

「無一からの誘いか。無下には出来んな。で、何割だ?」

「七割から八割。俺をぼこぼこにする感じで」

「可愛い可愛い孫の頼みとは言え、心が痛むのぉ」

 

 本当は本気でと頼みたいが、爺ちゃんが本気出す程俺が強くない。

 まず本気で相手してくれる程度に強くならなくては。

 

 闘志を胸に宿し、扇動 無一もまたヒーローを目指して鍛錬に勤しむのであった。




 大丈夫。僕、最強だから
 強くなってよ。僕に置いて行かれないくらい
 【呪術廻戦】五条 悟より
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