無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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ちょっとした一幕:夜食

 夕食もお風呂も済まし、働いた疲れから睡魔に誘われて眠りに落ちる…筈だったのだが、バーニンは閉じていた瞼を開けて時計を見やる。

 時刻は日付が変わる0時(24時)

 明日とてヒーロー活動を行うので疲労を癒やす事も兼ねて寝なければならないのは理解している。

 だけどどうも小腹が空いて寝辛い。

 意識を背けて布団に包まるも腹が囀る。

 寝なきゃいけないという焦りと苛立ちからため息を吐き出し、ムクリとベッドから起き上がる。

 時間が時間なだけにあまり良くはないのだが、少しばかり腹に何かを納める事にしよう。

 コンビニに行って買うのも面倒だ。

 冷蔵庫に何かあっただろうかと部屋を出る。

 

 エンデヴァー事務所には宿泊施設が完備されており、一応ながらキッチンも設けられているも、料理をする者が居るならば別だが大概は給湯室と何ら変わりない。

 使用したとしても冷蔵庫に買ったものを入れるぐらいか。

 

 ぐぐぐっと背を伸ばしながら欠伸一つを嚙み砕き、廊下を歩いていると先の方で灯りが零れていた。

 位置からしてキッチン辺りだろう。

 自分以外にも小腹を空かした者が居たんだなと覗き込む。

 すると予想に反した人物と目が合った。

 

 「良い子は寝る時間だぞ」

 「そっくりそのまま返すよ」

 

 呆れたように促す扇動にハッと鼻で嗤いながら返してやる。

 そう言えば扇動が来てからはキッチンはこいつ専用のようになっちまったんだよな。

 

 大抵のヒーローは昼食を簡単な物で済ませる。

 理由は単純にいつ呼び出しが掛かったり、事件が起こるか分かり得ないからである。

 たまにはとラーメン屋に入った矢先にヴィラン事件で駆り出されたときなんか眼も当てられない…。

 なのでナンバー2ヒーローであるエンデヴァーと言えども効率優先で菓子パンに缶コーヒーで済ませている。

 そういう事情で誰もがパンやコンビニのおにぎりなどで済ます為にキッチンを使う事が無いのだ。

 

 けど扇動は諸々の事情で焦凍を預かっている身らしく、昼食の弁当を作るために使っているのだ。

 摘まみ易いようにおにぎりメインの弁当で、初日の昼食時にはエンデヴァーと共に行動を共にしていたサイドキックがその話題で盛り上がったらしい。

 そこから話が広まって何故か扇動がサイドキックの何割(・・)かの同様の弁当を作る事に。

 大概が一つでは足りないから菓子パンorおにぎりを二つと飲み物一本を買っていたら三百円前後。

 扇動のおにぎり弁当はおにぎりと唐揚げ二つずつに卵焼き三切れ、ミニトマトと斜め切りの胡瓜が少々にお茶の入った水筒含めて200円を切る。

 量が多い上に値段が安い事に惹かれた一部が頼み込み、一人作んのも数名作るのも変わらねぇと請け負った結果だ。

 何より自分が作る手間がいらないってのが大きかったらしい。

 でその本人曰く、ここには知らないヒーローも多いから顔を売るには良いだろと苦笑いを浮かべていた。

 

 明日の弁当の内容を決めていたらしい。

 一日ずつしっかりとメニューを被らないように気を付けているらしい。

 夜中キッチンに来た事から察して口を開いた。

 

 「夜中に食うと腹に付くぞ」

 「良いんだよ。その分、動くっから」

 「道理ちゃあ道理か」

 「で、なんかある?」

 「確か、卵と…昨日の米とかはあったかな」

 「んー、コンビニ行くか」

 「適当で良いんだったら作るけど?」

 「マジで?」

 「焼き飯で良いか?具材ほぼ無しの」

 「本当にまんま“焼き飯”じゃん」

 

 何処か面倒臭そうに昨日の余りの米をレンジに突っ込み、卵一つとごま油を用意する。

 ケタケタと笑うと何かに気付いたようで、あっと小さく声を漏らす。

 

 「聞くの忘れてたけど昨日の米でも良いか?」

 「別に良いけど、なんでだ?」

 「人によっては気にすんだろ。俺としては炊き立てより数日放置した米の方が焼き飯はパラリと仕上がんだよな」

 

 保冷は出来ても乾燥はすっからなぁ…と呟きながら熱々に温めた米に卵を掛けてかき混ぜる。

 同時進行でコンロにフライパンを置いて火にかけ、目分量で多めのごま油を注ぐ。

 どう見ても焼き飯というよりは卵かけご飯を作っているようにしか見えない。

 ただ待っているのも暇なので椅子に腰かけて様子を見ていると、ぱちぱちと油が跳ね踊っては周囲にごま油の香ばしい香りを撒き散らす。

 

 「期待はすんな。手抜きなんだから」

 「急にハードル下げたな!作ってやるって言っといて自信ねぇの?」

 「目標や評価なら兎も角、期待なんてもんはハードルを下げとくにこした事はねぇからな」

 「なら期待してる」

 「言うと思ったよ」

 

 ニカリと笑みを浮かべると苦笑しながら温まったごま油に卵かけご飯を投入した。

 じゅわっと音を立てるとすぐにかき混ぜる。

 それもフライパンを振るって宙を回し、フライパンを通した熱で焼くというよりコンロの火で炙っているように。

 へぇ、と感心して声を漏らすもこちらの事など気にしていないようで、塩・胡椒を軽く振るって調理を続ける。

 最初は卵かけご飯だったのに傍から見てもぱらりと仕上がり、そこへ数滴垂らしてふわっと醤油の香りが漂った。

 

 「ほら出来たぞ」

 「早っ!!」

 「夜食に時間も手間もかけられっか」

 「すでに手間かかってんぞ」

 「…食わんのなら俺の昼飯にするぞ」

 

 大雑把に皿に盛りつけられ、レンゲと共に差し出された焼き飯を受け取る。

 湯気に混じってごま油と薄っすらと醤油の香りが鼻孔を擽る。

 有言実行したように卵意外は肉や野菜など具材が入っていない焼き飯だが、匂いだけでも美味そうだ。

 

 「それじゃあまぁ、頂きます」

 「召し上がれ」

 

 レンゲですくうと早速パクリと頬張る。

 本当に思っていた以上に美味かった。

 パラリとしてあるのに多めのごま油でしっとりした食感。

 程よい塩気と卵の味わい、それにここでもごま油が仕事をしており、仕上がりとしては中華風の味わいが強い。

 焼き飯というよりはチャーハンだ。

 

 「うめぇなこのチャーハン!」

 「焼き飯つったけど実際黄金チャーハンだからな。よくレシピとか見んだろ?」

 「料理番組とかたまにしか見ねぇな」

 「要は卵かけご飯で焼き飯作るんだよ。卵は火を通すとすぐ固まんだろ?米に絡ましとけば炊き立てでもそれなりにぱらりと仕上がるからな」

 

 へぇ、と生返事を返すと扇動は背を向けてフライパンなどの洗い物を済ませ始める。

 良く解からないが手軽で美味いのだけは解かった。

 それと解ってはいたが扇動が口は悪いが面倒見が良いのもだ。

 

 「お前、卒業したらエンデヴァーの事務所に来ないか?」

 「却下」

 「即答だな」

 

 カカカッと朗らかに笑いパクリと頬張る。

 確証があった訳ではなく何となくの勘だが断られるような気はしてた。

 だから断られても別に問う事もせずにチャーハンを口にする。

 せっかくの出来立てなのだから冷めたら勿体ない。

 掻き込むように食い切ると気になっていた小腹は成りを潜めていた。

 

 「あー、ご馳走さん」

 「お粗末様」

 

 ぶっきらぼうにそう返した扇動は一杯のお茶を差し出した。

 手に取ると熱いのではなく温か。

 ゴクリと飲むとじんわりと身体を温める。

 腹も満たされ身体がほんのりと温められた事で逆に眠気が沸き起こって来た。

 

 「生意気だな。早く寝ろってか」

 「言ったろ。良い子は寝る時間だってな」 

 「おかわりはねぇのか?」

 「さっきの焼き飯は油少しばかり多めだし、味付けだってシンプルだ。二杯目以降はすぐに飽きが来るんだよ。ビールと一緒でいっぱい目が美味ぇんだからよ」

 「ビール飲んだ事あんのかよ未成年」

 「………秘密だ」

 「飲んだ奴の反応じゃねぇか!」

 

 頬を掻きながら悩んだものの、答えが出ずに適当に流そうとした事に心底笑ってしまった。

 面白れぇ奴だこいつは。

 腹抱えて笑っているとクソ面倒臭えと言った面で、廊下の方を見つめ出したので釣られて振り返ると見知った二人の姿が。

 

 「そんなに邪険そうにしないで欲しいな」

 「というかそっちが悪い。部屋まで美味しそうな匂い漂わせやがって」

 

 顔を包帯を巻いて隠している“キドウ”と二本角付きの額当てをしている“オニマー”。

 どちらもエンデヴァーのサイドキック(炎のサイドキッカーズ)の中でも別格の腕利き 

 そんな二人は同じく席に着いて扇動へと視線を向ける。

 言葉にせずとも言わんとしている事を察して扇動は深いため息をついた。

 

 「出来ればあと少し早く来てほしかったな。洗い物が二度手間になった」

 「あと少し遅くは正解だろ。手間が省けたろ」

 「明日色々言われて結局手間が増えそう」

 「そりゃあそうか」

 

 最悪話を聞いた奴が明日の深夜に夜食を頼むかも知れない。

 “口止め料”と考えれば安いもんだと悪態をつきながら扇動はさっさと焼き飯を作り始め、満足したバーニンは「じゃあ良い子は寝るよ」と軽口を叩いて戻っていった。

 今日は良く眠れそうだ…。

 ニンマリと笑いながら自室のベッドに寝っ転がるのであった。

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