人数的に言えば四対一。
されど現状プロヒーロー一人に飯田と緑谷は相手の個性により行動不能。
実質現着した轟 焦凍のみの“ヒーロー殺し”ステインと
新手の登場に加えて初手で
緑谷は助かったと安堵すると同時に自身もすぐに戦闘に加わらねばと思い、飯田は自分がアイツを倒さねばならないと焦りが表情に出ている。
二つの異なる視線を向けられる焦凍は氷結を走らせて続けて炎を放つ。
攻撃というよりは牽制しつつ仲間を救出すべく放ったものであり、離れた位置に居たプロヒーローと緑谷は下からの氷結で持ち上げられ、近くを通り抜けた炎の熱気で溶けた事で山なりの氷結を滑るように転がり降ろされて焦凍の後ろへと移動させられた。
「
「ほぅ………」
緑谷の時ほどではないがステインは感嘆の声を漏らした。
今日は喜ばしくも厄介な日だなとため息を漏らしながら、それでも未だ贋者と定めたプロヒーローと飯田を排除する事は諦めていない。
装備していた投げナイフを投擲すると同時に駆け出すステインに焦凍は怪訝な顔を浮かべ、
氷結を足より走らせると視界を遮らないように氷柱を何本か立てる。
投擲された投げナイフへの盾になると同時にその氷柱らは突っ込もうとするステインへの足止めにも有効。
事実、ステインは突っ切る事はせずに速度を緩める事へと繋がった。
「轟君、気を付けて!多分、血を摂取すると対象者の自由を奪う個性を持ってる!!」
「それで
確かに厄介な個性であるけれども近接戦闘をしてくるというのであれば、遠距離攻撃可能な事から近づけなければ良い―――などと思う事はない。
そんな容易に事が運ぶのであれば多くのプロヒーローが被害に合う事もなかっただろうし、なにより自身が条件付きとは言え
ゆえにと言うべきか、別の意味での油断があったのだ。
足止めを受けたステインに炎による火力をぶつけようとした矢先、立ちはだかっていた氷柱が
決して蒸発したという訳でも一瞬で消し飛んだという訳でもない。
―――単純に手にしていた刀で氷柱を斬ったのだ。
文字にすれば簡単であるが鉄程ではないにしても硬い氷を削るではなく、
それもステインが使っている刀は刃がガタガタで意図してか意図せずか
逆に鋸のように削り取るのには向いているが、それでもたったの一振りで削り取るのもあり得ない。
しかしながら眼前でやってのけた事からいつまでも目を逸らす事はただの現実逃避。
直ちに迎撃の為に炎を放とうとするもステインの方が
刀が頭上へと放られる。
山なりに上がった刀に自然と視線が向く隙を突いて一気に距離を詰めて来る。
視線を戻すと走りながらまたも投げナイフを投擲しており、頬を刃先が撫でて薄っすらながら血が垂れた。
確かに個性の優劣だけを見れば二つもの個性を操れる焦凍に分配が上がるだろうけど、鍛え上げられた身体能力と戦闘経験と技量の差で埋めるばかりか超えている。
氷柱の切断から刀を放って注意を別に向けさせ、隙を突いての投げナイフで血を流させた事で個性を警戒してしまう。
留めなく流れ出る情報によって処理しきれない焦凍は放つつもりだった炎を出す事も出来ず、ナイフを握り締めたステインに接近されてしまった。
炎から氷へと意識を切り替えて間近に氷結を創り出して振られたナイフを止める。
されどステインがちらりと視線を向けた方向には放物線を描いて自身に向かって振って来る刀が…。
「――ッ、テメェ!?」
それすらも視線の誘導。
ステインの目線を追って刀を見てしまったが危機感も相成って意識は先程よりも向いてしまうは当然。
戻した時にはステインの顔がそばまで迫っており、頬を流れる血を舐め取ろうと舌を伸ばしていたところであった。
だから咄嗟に
炎を一点に集中しての放出。
扇動からは
数々の経験と鍛錬により非常に高い精度の技術でエンデヴァーは行えるものの、焦凍は最近になって炎を使う決心したばかりで練度は低すぎる。
使うにしても放つのが精々。
それでも同年代やプロヒーローの一部には通用しようとも、上を目指すならばコントロール技術は必須。…と、言う事で扇動より家で指導を受けているものの、ワン・フォー・オールを受け継いだばかりの緑谷同様にまだまだ未熟。
文字通り
何をしようとしているのかは解らずとも、気配を察したステインは自身の勘に従って飛び退きつつ刀を手にする。
少々でも離れた事で焦凍の手から放たれた集中して圧縮された火炎のゼロ距離での直撃は避け、向かって来た高火力を再度跳び避けつつ刀で軌道を僅かでもずらして避けた。
しかしあまりに高火力な為に熱気によって肌がひり付くが、直撃を喰らうよりは大分マシである。
寧ろまだまだ未熟ながらもそれだけの力を秘めている事に多少喜びを抱くほど。
その放った焦凍は反動から後ろへと吹っ飛んでおり、地面を転がりながらも氷結を用いて停止させ対峙する。
「二人共…
時間にしてはほんの僅かな攻防。
それでも命の危険を何度も感じた焦凍に飯田は苛立ちながら口を挟む。
まだステインを相手にしている事から多少息を荒げながら相手を牽制しつつ、焦凍はその飯田らしくない言葉に焦凍はただただ耳を傾ける。
「俺が
ちらりと見た飯田の顔には怨嗟しか伺えなかった。
決してヒーローを目指す者の顔ではない。
その様相は雄英体育祭で緑谷に
だからこそ声を張り上げる。
自分もそうだったからこそ怒鳴りつける。
「それがインゲニウムに憧れた奴の言葉か!?辞めてほしけりゃあ立て!!
ぶつけられた言葉をかみ砕いて呑み込む。
過るはやはりヒーローとして活躍している兄の後ろ姿…。
規律を重んじて人を救い導く愛すべき偉大なヒーロー。
憧れを抱いて兄のように成りたいと、兄のようなヒーローで在りたいと想っていた。
だから傷つけられて怒らずにはいられなかった。
ヒーロー殺しからも言われた
今の俺は見せられたもんじゃあない。
炎と氷を操り戦うもステインは体一つで突破しては斬りかかる。
不利な状況の中、血液型によって
不意の一撃に焦凍の支援が合わさり状況は多少有利になったかも知れないが、実力差は未だに健在で安心出来る余裕はない。
―――本当に自分は未熟者だと思い知らされた。
解っていたつもりではあった。
ヒーローの卵たる自身は未熟であると分かっていたつもりだが、
誰かを救おうとせず、友は血を流して護り、その後ろで伏している事しか出来ない。
歯茎から血が出る程に噛み締め、先とは違う意思を瞳に宿して身体を起き上がらせる。
ダメージは入っているものの緑谷をあしらって、氷結を素早く走って避けたり、刀で切り裂いて焦凍にステインの凶刃が迫る。
無論殺すつもりはない。
贋者を消す為に行動不能にするだけの一振り。
「レシプロ……」
「…チッ、お前も時間切れか……」
「―――ッバァアアアアアアストオオオオオオォ!!!」
今ここで立たなきゃ友にも兄さんにも顔向けどころか、皆に誇れるヒーローを目指す者として二度と追い付けなくなってしまう。
意思が籠った蹴りが殺意無き凶刃を圧し折った。
折れた刃は宙を舞って地面に突き刺さり、受け流し切れなかったステインは衝撃を受けて後ろへと飛ばされる。
「……すまない二人共。迷惑をかけた」
立ち上がった飯田の瞳の違いに気付くもステインはひと目で否定する。
「感化されて取り繕うとも無駄だ。人の本質は早々変わりはしない。私欲を優先させた貴様は贋者以外の何者でも無く、
「あぁ、お前の言う通りなんだろうな。でもこれ以上彼らに血を流させる訳にはいかない。何より例えヒーローを名乗る資格がなくとも折れる訳にはいかない―――インゲニウムを
以前授業でヒーロー名を考案する際に飯田は兄がインゲニウムの名を使って欲しいと言ったのを断わった。
今の自分ではその名を継ぐに相応しい者ではないと判断したから。
しかし今はその逆。
自身の未熟さを噛み締めた今だからこそその名を継ごうと思った。
途方もない重みだ。
名乗るからには今日のような
これは自らに課す
兄のようなヒーローに成る不退転の覚悟として
「論外」
「―――そうでもないさ」
あからさまな嫌悪と怒気の混じった否定に覆いかぶさるように、温かく力強い
ふわりと空から降り立った
「私怨を抱く
「新手か……それもプロも居るな…」
降り立ったのは扇動 無一。
轟 焦凍と別れた後に脳無を
察せられる年齢から
子供でありながらもかなりの実力を有する三人に手間取っているというのに、新手が別動隊として背後を抑えているのだ。
退路の確保やこの場の離脱も視野に入れる状況下、ステインが扇動を襲わないのはその隣にエンデヴァー事務所のサイドキッカーが一人、バーニンが並び立って構えているからに他ならない。
圧倒的ではないがステインに不利な状況下で、扇動は右手で赤いメダルを弄りながら一歩前に出る。
「“若い芽を摘むんじゃない。これから始まる
注意が扇動に向いている事から緑谷達は背後から襲う事は出来た。
しかしながらステインを挟んで対面に居る扇動の視線がそれを拒んでいた。
ここに到着する前に焦凍は持って来たトランクケースよりドローンを放ったので状況は粗方理解している。
「贋者を排除する事で英雄が生まれる環境を整えるか………馬鹿馬鹿しい」
「―――ッ、貴様……!」
「英雄を求めるなら堕ちるのではなく育手になるべきだった。決意や執念は大したものだ。俺でははかり知れん程の領域なのだろう。だけどなぁ…どう繕っても――――論外だな」
嘲笑うかのように扇動は叩き返した。
ステインの個性は使い勝手が良いものでも、強個性という類のものでもない。
それでもプロにも通用するほどの個性と力を有している
核心たる執念を馬鹿にして嘲笑っては否定した男に対して殺意を向けるなという方が無理な話だ。
相手を煽る為の言動を行う時はあるが、これはそんな話では決してない。
物の見方によっては負傷している学友三人と倒れ込んでいるプロより、ステインを引き離す為に自身にヘイトを向けさせたとも見えなくもないが、今回に限ってはそのような考え方は無かった。
ただただキレていた。
友人が負傷させられた事もその一端であるも、それ以上に不遜ながらも背負うという覚悟を見せ、奮い立った飯田をたった一言で断じた事が許せなかったのだ。
「死ね……!」
「―――
ナイフを手に襲い掛かったステインに対して扇動は
すると焦凍が持って来て転がしていた扇動のトランクケースより黒主体で赤色が多い装飾が施された籠手が飛び出した。
発目に作って貰ったサポートアイテムの一つ。
名前や見た目からして“仮面ライダー
製作して貰った経緯としては装備がなければ肉体のみで戦わねばならず、ヴィランと交戦中に装備を揃えたり装着する事は至難の業となるだろう。そこで勝手に装着する装備品があったら言いな程度で頼み込んだのだ。
すると見せたノートの内容から発目はアンクに目を付けた。
最低限の推進剤と目標となるメダルを察知するセンサー類を付けた移動型の籠手。
本当なら戦闘に入る前に装備したかったのだけど、焦凍がドローンを持って行けと言ったのにトランクケースごと持って行った事でギリギリの装着と相成ってしまった訳だ。
右手で弄っていたメダルに向かって飛んで来た
驚いて見開いたステインの横腹に衝撃が走った。
扇動の両脚には鉄が所々に仕込まれ、踵にスパーが付いた“キックホッパー”と名付けたカウボーイのブーツのようなものを履いており、不意打ちを兼ねた蹴りが脇腹に直撃したのだ。
「“さぁ、お前の罪を数えろ”」
扇動はそう告げてステインに挑みかかった。
お互いに戦闘方法は個性に頼り切るよりは鍛え上げた肉体を活かした近接戦闘。
しかしながら扇動とステインでも練度が違う。
優勢なのはステインの方であるも長物である刀は飯田によって折られ、焦凍の熱波などは肌を軽くながら焼いており、緑谷の一撃は身体に響くところか頭部にも喰らわしたために脳が何度か衝撃で揺らされている。
この状況だからこそ扇動はそれなりに戦えている。
本来ならば学生ではなくプロのバーニンが戦う場面である。
だが、彼女は見守る側に徹している。
職場体験に訪れてから組んでいる為に、幾らか実力は把握してはいる。
勝てるとは思ってはいないけれども見てみたくはなった。
脳無を倒した後に合流し、送られたとか言う座標へ扇動を背に乗せて移動している中、ドローンから送られている映像に目を通した
俺はアイツに
贋者が蔓延る世界を嫌悪し、本物の英雄の為に駆除しなければならないと行動をしているヒーロー殺し“ステイン”。
ヒーローと言う職や社会を
互いに異なる信念を持つ者。
同時に同じく個性主体ではなく鍛え上げた近接戦闘をメインに戦う格上の相手。
それら両方に対して扇動は挑まなければならないと心の底から思ったのだ。
ゆえにバーニンは扇動とステインの激しい攻防戦を見守っている。
無論逃がす気も扇動をやらせるつもりもないので、いつでも割り込めるようにスタンバイはしてある。
ナイフと拳が幾度となく振るわれ、互いに互いの攻撃を避けたり流したりして防ぎ合う。
時折ヒヤッとさせる場面もあれど、驚く素振りも見せぬまま何事もなかったように攻撃を繰り返す。
決して力任せの攻撃の応酬はなくて、自ら磨いた技術同士のぶつかり合い。
高い技術のぶつかり合いに戦っている扇動やステインもだが、周囲で見守っている面々も固唾を呑んで魅入ってしまっている。
周囲の視線を集めながら戦う二人。
されどステインはまだ贋者か本物かの判断を付けておらず、本気で殺そうとはしていない。
「貴様は贋者か?本物か?」
「誰かを救うのに贋者も本物も関係ねぇだろうが!!」
「ある!贋者が蔓延る世界は粛清せねばならない!!」
「―――何故そこまで
扇動の問いに攻防の手が止まる。
問いのせいでもあるが、お互いに攻防の流れで距離を取った事もある。
なんにせよ足を止めたステインは気紛れにも眉を傾げる扇動の言葉の続きを待った。
「テメェ、本当は
「――ッ、黙れ……」
「成れない事実か現実に打ちのめされたのかは知らねぇ。だけど志して歩もうとしたんだろ」
「黙れと言っている!」
「テメェが勝手に失望しようが諦めようが知ったこっちゃあねぇ!同じようにヒーローに成りたいと焦がれた
大きく振り被った一撃は扇動から放たれた言葉によって揺らいだ。
それによって生まれた隙によって扇動は切り裂かれる事無く、右ストレートを顔面に叩き付ける事が出来た。
重い一撃がステインに直撃する。
ふらりとよろめいた様子からかなりのダメージを浴びせたのは確かだ。
しかしながら倒し切るには至らなかった。
受けた瞬間にナイフを掠めらせており、刃先の血をステインが嘗めた為に扇動はその場で膝をつく。
動けなくなった相手に止めを刺す事は容易ながら、殺すべきか生かすべきか少しばかり躊躇ってしまった。
それが勝敗を決定づけてしまった。
「やらせねぇよヒーロー殺し!」
「邪魔を……ッ」
「上に飛んだらいけねぇな―――ステイン」
見上げて告げる扇動の言うとおりだった。
右側からはレシプロバーストで飛翔しては、超加速を活かした蹴り技―――レシプロエクステンドを喰らわそうとする飯田 天哉。
左側よりワン・フォー・オール フルカウルで壁を蹴って空中に上がって殴りかかろうとする緑谷 出久。
そして自身を氷結によって高く飛びあがって、炎を放出しようとしている轟 焦凍。
ステインの瞳がそれらを捉えようとも空中では身動きが取れない。
●若い芽を摘むんじゃない。これから始まるのだよ。彼らの時代は
【ONEPIECE】シルバーズ・レイリーより
●さぁ、お前の罪を数えろ
【仮面ライダーW】左 翔太郎より