無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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 投稿が遅れに遅れて申し訳ありません。
 まさか風邪が治るとすぐに風邪をひくとは……。


第48話 辛い勝利者達

 世間は昨夜起きた保須市での事件で沸き立っていた。

 雄英高校を襲撃したのとは別個体の脳無が複数対暴れ回り、ヘリから報道していたカメラにはヴィラン連合の主犯と目される死柄木 弔と黒霧の姿が高所より様子を見下ろしていたのが映り込み、多くのヒーローを襲っていたヒーロー殺し“ステイン”が同時刻に捕縛されたなどなど話題が尽きない。

 高い戦闘能力を持つ脳無に対して保須市で活動しているプロヒーローではまったくもって歯が立たず、偶然ながら居合わせたエンデヴァーとグラントリノの活躍もあって短時間且つ最小限の被害で事件は収束する事が出来た。

 しかしながら世間を賑わしているのはヒーローの活躍よりもヴィラン側にある。

 ヒーロー育成機関の名門中の名門、雄英高校を襲撃してから半年も経たぬ間の大きな事件を起こし、時を同じくしてしてステインも事件を起こしていた事でヴィラン連合と関りがあったと考えられ、ニュースでは軒並みヴィラン連合の事ばかり語られている。

 この事件によって潜んでいたヴィラン達が影響を受けて活発化するのを感じ取り、危機感を抱いているのは極一部の者だけだろう。そして解っていても未知への危険に対処など到底出来るものではなく、今後どのような事態に陥る事になるのかは誰にも知る術はない。

 

 

 職場体験四日目。

 緑谷 出久に飯田 天哉、轟 焦凍の三名は職場体験を一時中断して保須総合病院に入院していた。

 保須市の多くで普段通りに近いの光景が広がっているものの、昨夜の事件で被害を受けた区域などでは被害状況の確認やら瓦礫の撤去や復旧作業に追われている。

 ヒーロー事務所で職場体験している学生とは言え、保須市の警察もヒーローも手一杯で猫の手も借りたい程で、扇動 無一も手伝いとして駆り出されている。

 本人達も手伝いをしたい気持ちはあれどステインとの戦闘で怪我を負っている事もあって休養を優先せざるを得ない。

 特に両肩を刺された飯田に慣れぬフルカウルでの戦闘にて腕の骨に罅が入った緑谷などは数日間は活動への復帰は難しく、残りの期間が少ない為に職場体験の復帰は絶望的となっている。

 ちなみに焦凍は掠り傷なれど検査入院するようにと担当のエンデヴァーの指示を受けるも、扇動は「身体が鈍る」と入院を拒否したそうだ。

 見舞いと話に来たグラントリノが「祖父が祖父なら孫も孫だな」とぼやきながら教えてくれた。

 ただステインによって扇動 無一の祖父である流拳が負傷したが、意地で入院を拒んだ事は一切公表されてない為になんの事だろうと首を傾げる事になった。

 

 三者三様に自身が受けた傷口を見やる。

 名誉の負傷―――というよりは今回の一件で想い知らされた自らの未熟さを戒める傷……。

 緑谷は襲われていたプロヒーロー(ネイティブ)友人(飯田)を助けるべく、個性を用いて(・・・・・・)ヴィラン(ステイン)と交戦した。

 誰かを救う為に身を賭して闘うなどある種の美談であるも、理由はどうであれ個性を用いて人を傷つける事は違反であり、それが許されるのは個性の使用を許可されたヒーロー免許保有者ぐらいなもの。

 救おうとした行為は間違ってないと思いつつも、規則(ルール)を破ってしまったのは事実。

 それにステインは緑谷にヒーロー(英雄)の断片を見出して明らかに手加減して戦い続けた。

 凝固の個性は良い個性であっても強個性では決してない。

 そして数の差もありながら殺す事を禁じ、プロの増援もあった事も含めて焦りながら戦っていたのだから、彼が本気で殺しに来ていたのなら全滅していた可能性が非常に高かったろう。

 

 浅慮に力不足を噛み締めた三名だが彼ら自身が罰せられる事は無かった。

 保須警察署所長である面構(ツラガマエ) 犬嗣(ケンジ)直々に注意され、ステインはヒーロー資格未取得の学生ではなくエンデヴァーかバーニンなどのプロヒーローが倒したと公表すると提案を受ける事になったからだ。

 ステインは骨折に火傷とかなりの重症との事でこれをヒーロー資格未取得がやったと公表すると将来も含めた問題が生じるが、エンデヴァーやバーニンがやったとなれば資格所有者であるプロヒーローがヴィランと対峙しただけとなる。

 どちらも炎系の個性で火傷の条件に合うし、すでに扇動が現場で行った軽い情報操作を含めて噂ではバーニンが倒した事になっているのでそこらへんは容易なようだ。

 確かにプロヒーローを救い、ステインを倒したという功績は無い事にされるが、メリットとデメリットを考えるとこれは大変ありがたい話である。

 加えて自分達が行い犯した違反(・・)を英断と功績による“偉大な過ち”と称され、誰にもケチを付けさせたくないと面構署長個人としては賞賛している事を言われては呑まない訳にはいかない。

 これにて三名(・・)が犯した違反は無かった事になったが、職場体験先のヒーローには責任問題として多少の罰が下る事に。

 注意と提案に訪れた面構署長と共にグラントリノや飯田の担当だったプロヒーロー“マニュアル”居り、その場で申し訳なくて飯田がマニュアルに頭を下げて謝罪すると、「人に迷惑が掛かるから二度とするなよ」との注意と軽く小突くだけで済ませてくれたが、自分達が至らぬ身である事を痛感させられた。

 グラントリノも罰を受けたが小言は口にしたがその行動をとやかくいう事は無かった。

 ゆえに自分達がまだまだ至るぬ身である事をより強く認識してしまう。

 

 特に飯田は私怨に囚われて襲われていた誰かを助けるなど頭に無かった事もあって余計に……。

 ステインに腕を刺された際に神経にダメージが及び、指の痺れなど後遺症が残るも神経移植すれば治る可能性があると伝えられた飯田は、自分が目指すヒーローに成るその日まで戒めとして残す事を決意した。

 素直に凄いなぁと感心してしまった。

 もうすでに今回の一件での反省や意図を呑み込み、ヒーローを目指して歩みだそうとしている。

 僕も踏まえて強くならなくては。

 そう思っていた矢先、ノック音が響いて扉が開いた。

 

 「見舞いに来たぞ。ほれ」

 「ありがとうむーくん」

 「……いや、お前も見舞われる側だろ」

 「入院してねぇんだから見舞う側で良いンだ」

 

 時刻は17時を回っており、本日の職場体験を終えた帰りに寄ってくれたのだろう。

 制服でもコスチュームでもなく水色のノースリーブロングパーカーに裾を織り込んだ緑色のズボン、薄い黄色の長袖Tシャツという私服姿である。

 手渡された箱を開けるとフルーツゼリーの詰め合わせであった。

 

 「お見舞いっていうとフルーツっていうイメージあるよね」

 「メロンとかな。けど腕怪我してる奴が多いのに切るのも剥くの難しいだろ。それに生ごみの処理も面倒だし」

 「扇動君らしいな。有難く頂くよ」

 「おう。それとこっちはエンデヴァーからだ――――皆で、だってさ」

 

 エンデヴァーからの品と聞いて焦凍が不快そうな表情を浮かべるも、続く“皆で”との言葉で開こうとした口を閉じてむすっとそっぽを向く。

 轟家の事を聞いている緑谷は焦凍への品なら本人が断っていただろうけど、皆でとなれば断らないだろうと扇動が入れ知恵したんだろうなと察して苦笑いを浮かべる。

 

 「扇動君はお咎めはあったのかい?」

 「あー、グラントリノから詳細は聞いてっけど、お前らよりはかなり軽いぞ。無個性ゆえに個性で人を傷つける事もねぇからな。それに救援とプロヒーローを呼んでもいたしな―――バレたら怒られそうな事はしたが」

 「何をしたの?」

 

 問いかけるも苦笑するばかりで答える気が無いのが解って誰もそれ以上聞こうとは思わなかった。

 脳無が大暴れしたせいで警官もヒーローも手一杯である事もあって火事場泥棒は数件起こっており、災害時や大きな騒動では少なからず居るだろうと警戒して巡回して見つけては逮捕して回っていたのだ。とはいえ学生が歩き回るには遅い時間で補導の対象と成り兼ねない。

 なので受け入れ先のエンデヴァーに話を通し、現場の混乱を承知している上に自身は他にも居ないかと捜索しなければならない状況下から了承された。

 後で問題にならないように逮捕するも自分の手柄ではなく、他のエンデヴァー事務所のサイドキックに報告を入れてその者が逮捕した事にはした。

 おかげで問題にはなっていない。

 そんな事情を知らない緑谷達に扇動はポケットに突っ込んでいたジュース缶を渡してくる。

 

 「なんだったか……勝者には美酒こそが相応しいが、敗者には珈琲の苦さが―――だったか?なんにせよまだ未成年だから(ワイン)の代わりにグレープジュースだがな」

 「ありがとう。ところで今のは誰の言葉?」

 「あー…誰だったか。俺も歳かな」

 「いやいや、同い年でしょ!?」

 

 ツッコミを入れながら何処か“らしくない”と感じながら、その微かな違和感は口にしたグレープジュースと一緒に流れていく。

 扇動も別の缶に口を付けながらふと思い出して焦凍に携帯を差し出す。

 なんだと画面をのぞき込むと不機嫌そうな表情が一変、吹き出しそうになって肩を大きく震わし始めた。

 何を見せたのかと首を傾げていたら画面を向けられ一枚の画像が映し出されおり、保須市にある有名ケーキ店にケーキを買い求めて多くの女性客が店内で楽しみ、入り切れない者は長蛇の列に並ぶ。

 その中に物凄く居心地悪そうに並んでいるエンデヴァーの姿が……。

 思わず除いてしまった緑谷も飯田も噴き出して笑い転げてしまう。

 どうにかして耐えた焦凍は呼吸を整え、そっぽを向きながら問いかける。

 

 「アイツは居んのか?」

 「“俺はメリケン男(オールマイト)の代わりかッ!?”ってガチギレしてたけどな」

 

 日本のナンバー2ヒーローであるフレイムヒーロー“エンデヴァー”は、保須市にはステインを捕縛しようと訪れただけで担当地域は別にある為、ステインが捕まり脳無の襲撃も収拾した今となってはここで油を売っている暇はない。

 だけど襲撃を受けた保須市民の不安や恐怖心を和らげるためにはそれなりの支え(・・)が必要。

 不愛想且つ威圧的で近寄り難くも実力確かなトップヒーローが居るというのは多少なりとも効果はある。

 本当なら市民を安堵させる為にも大人気で平和の象徴オールマイトに来てほしかったであろうが、オールマイトに成れるのが(・・・・・)一日数時間だけな為に八木も断らざるを得なかった。

 正直エンデヴァーに頼んだのだってファンサービスの類を行わず、ヴィラン退治や事件に重きを置く事から断られると思っていただけに市長は受けた事に驚いていた。

 実は見舞いの口実に残ったのは秘密であるが……。

 ※行こうとは思っても気まずさもあってまだ来れていない。

 

 「最悪でも後一日はいるらしいから」

 「そうか」

 

 短く焦凍が返事をすると沈黙が続いた。

 緑谷は燻ぶる思いを口にしようと缶を置いてしっかりと扇動を見つめた。

 

 「むーくん……僕は強く成りたい」

 「あぁ、そうだろうな」

 

 職場体験でオールマイトを鍛えたグラントリノの下にいるとは言え、すでに期間である一週間の内四日目でステイン戦で腕に罅が入っているので退院したところで日数も足りない上に本格的な指導は不可能。

 誰かを護るオールマイトのような英雄(ヒーロー)に成るのならもっと強くならなければと強く思うだけに、これまで以上に鍛えなければならない想いを込めて扇動に向ける。

 

 「だから――――イタイ!?」

 「急くな」

 

 強過ぎる(・・・)想いと共に口にしようとした緑谷に、バチンと音を立ててデコピンが額を襲う。

 いつもながらの痛みに額を押さえながら「なんで!?」と驚きながら見つめ返す。

 

 「まずは身体を休めろ。話はそれからだ。考えてはやっから」

 「―――ッ、うん!」

 「扇動、俺も!」

 「僕もお願いする!」

 「だから急くなつってんだろうが!!」

 

 緑谷に続くように口にした焦凍と飯田にも同じくデコピンを見舞う。

 「――ったく」と呆れながらも頬を緩めている様に、クスリと笑ってしまった。

 

 「体育祭前みたく短期間ではなくちゃんとしたメニューは考えておく。だからゆっくり休めろ。ただでさえ無茶しがちなんだから」

 

 そうため息交じりに言うと缶の残りを一気に飲み干して「またな」と病室を後にしていった。

 三人ともお互いに強く、目指すヒーローに成ろうと口にするのを背で聞きながら、扇動は廊下に設置された自動販売機横のごみ箱に無糖のブラックコーヒー缶を入れて行くのであった……。

 

 

 

 

 

 

 オールマイトは自身の秘密を知る数少ない人物の一人、塚内 直正(ツカウチ ナオマサ)警部は八木 俊典(オールマイト)と共に雄英高校の開発工房へと足を運んでいた。

 彼はヴィラン連合絡みの事件を担当している事もあって、本来ならば脳無が暴れ回った保須市へ向かうべきなのだが、保須市よりある物(・・・)が送られてきた事からこちらを優先したのだ。

 加えて彼の地では被害状況すら把握していない為に、事件の全貌の前に調査や復興作業の準備段階で手一杯で、ヴィラン連合に絞っての捜査を行うにも行えない状況かと言うのもあった。

 雄英高校襲撃時に確認された“脳無”が使用され、テレビ中継に指名手配しているヴィラン連合の“死柄木 弔”と“黒霧”の姿が確認された事で関与は疑う余地はない。

 犯行声明こそないものの直積的でも間接的にでも関与の証拠として十分。

 それらもあって塚内は開発工房へと向かい、来ることを聞いた八木が案内をしている。

 

 「半年も経たずにこうもやられるとは……ね」

 「面目ない。あの時に私が捕まえていれば………」

 「責めている訳ではないよ。寧ろ手掛かりのひとつでさえ我々(警察)は掴めていないのだから」

 

 お互いに肩を竦めて力不足を嘆くも、後悔と反省はほどほどに先を見据えなければ。

 目的地であった開発工房の扉を開けば幾人もの学生―――はほとんど居らず、居るのは教員のパワーローダーと発目ぐらいだ。

 放課後という時間帯から多くの学生が詰めているけど、今日ばかりは必要最低限にパワーローダーが制限をかけた為に発目以外の生徒は訪れていない。

 

 「お、来たね。目的のブツは用意出来てるよ」

 「済まない。ここで見る事は?」

 「用意しといたよ」

  

 会話を交わしながら進んだ先には、二人がここまで来た理由がそこに鎮座していた。

 扇動 無一用のコスチューム(実験機)が一つ“G3”。

 暴れ回った脳無の一体と戦闘を行った装備で損傷しているものの、軽傷(小破)で済んでいるのは性能と使用者の戦闘秘術によるものだろう。

 修復作業も行われずに切れたエネルギーを充電しただけだが、目的からすればそれだけで十分であった。

 目的のモノはG3に記録された戦闘データ。

 改修・改造を施すにも実際の戦闘データというのは欲しい所で、G3にも当然データ収集用の機器(システム)が組み込まれている。

 加えて言うのであればカメラも搭載してあるのでデータどころか映像まで記録されていた。

 

 ヴィラン連合の戦力であろう脳無の正確な情報の一端。

 担当官としては今後の対策や思案を講じる上で喉から手が出る程欲しい情報だ。

 

 「ただ……コピーを取った形跡はあったがね」

 「多分、()だろうね」

 

 パワーローダーの一言に使用者の名前を先に知らされていた塚内は肩を竦ませながらため息は吐いた。

 この反応にパワーローダーは勿論、今ここでコピーされていた事を知った八木も疑問を抱く。

 まるで抜き取った人物を知っているようではないか………と。

 

 「どうしんだい?」

 「いや、君は扇動少年の事を知っていたのかい?」

 「昔、事件で少し……ね」

 

 何処か口にし辛い空気を察してそれ以上聞く事は無かった。

 いや、ただ辛いというよりは………。

 八木はそこまでで考えるのを止めて、パワーローダーより塚内が受け取った記憶媒体を見つめる。

 あの中に脳無との戦闘データが入っているのだろう。

 

 「彼からも意見を聞きたいのだけど……」

 「さすがに戻っていないよ。病院にも行っていないようだけどね」

 「揃って(祖父・孫)病院嫌いなのだろうか」

 「何かあったのかい?」

 「報告は挙がっているけど、ちょっとあってね。それよりも私としては彼がステインに―――“英雄回帰”に染まってないかの方が心配だよ」

 

 ステインが捕まった報道は世間に大きな波紋と共感(・・)を広めていた。

 捕縛されたステインは過去にヒーローを目指してヒーローの育成機関に入学するも、自身の理想とかけ離れている現状から短い期間で中退。

 彼の行動理念である“ヒーローとは見返りを求めず、自己犠牲の果てに得る称号であるべきだ”という主張―――”英雄回帰”を街頭演説などで語るも聞くものがいないのは自身の言葉に力がないからと断念。

 自らを鍛え上げて行動に移したのだ。

 狩られたのは彼が贋者と判断したヒーローのみだけではなく相当数のヴィランもであって、ステインが現れた区域でのヴィラン犯罪数が激減するというデータが存在する。

 英雄たるものは英雄(・・)で在れといった風潮煽るのみならず、英雄を英雄として取り戻す為に我が身を棄てても事を成そうとしたステインを評価する者が一日と経たず現れたのだ。

 これからその風潮は強まると感じている。 

 それも悪い意味でだ。

 

 人と言うのは他人の全てを理解する事など不可能に近い(・・)

 深く関わるなら兎も角大抵は表面上の事柄や、自分が知り違った情報へと変換されてしまう。

 ステインの焦がれるような執念ではなく、表面的な物だけを勝手に受け取った模倣犯が必ず現れるだろう。

 警察内部ですら英雄回帰に興味を抱く者がいたぐらいだ。

 子供にとってそれはどんな影響を与えたものか分かったものではない。

 

 「それは無いです」

 

 真っ向から否定したのは発目であった。

 ばっさりと言い切られた事に自然と三人の視線が向く。

 表情からして決して冗談の類で言っている訳ではないのは解る。

 

 「どうして言い切れるんだい?」

 「本質が違いますので」

 「本質?」

 「確かにどちらも同じモノ(英雄)を見ているでしょう。けれど“意に添わないから排斥”するのと“意に添わずともそれはそれと受け入れる”。この違いは決定的なものです。それこそ天と地ほどの差があるように」

 

 はっきりとそう答えられた。

 この回答に八木も塚内も意外そうに見つめる。

 扇動を信用・信頼している者は居るだろうが、扇動を理解している者は少ないと思っている。

 なにせ自身の事を自らは話そうとしない為に理解しようにも知るのも察する他ない。

 それも限度があるだろう。

 

 特に驚いたのはパワーローダーであった。

 サポート科の生徒で発目が一番扇動と関りがある人物であるが、“人付き合い”としてではなく開発に至る互いの利害の一致によるところが大きい。

 元々然程“人”に対して興味の薄い事も驚愕させ得る一端である。

 

 「何故君はそこまで扇動少年を―――」

 「昨日電話で聞きましたので!」

 

 本人の談と即答されてガクリとコケる(・・・)

 “らしい”と言えばらしいのだけど、感心していただけにコケ具合は大きい。

 苦笑いを浮かべながら八木は立ち直して続きを問う。

 

 「扇動少年はなんと?」

 「自らの未熟さをただ恥じると………それは私も同じですが。G3はまだ実験機とは言え、まだまだ未完成なのは私の未熟ゆえ。今回のデータを元に完成を急がなくてはいけません」

 「だったら他に手を出さずに完成させなさいよ発目ェ……」

 「それはそれ。これはこれです」

 

 ニカっと笑いながら発目は開発工房の片隅へと視線を移す。

 アンク(籠手)AI(人工知能)を搭載して欲しいというリクエスト(注文)に早速手を出し、そして扇動が要望している“グリス”ではなく別のコスチューム制作に取り掛かっていたりする。

 バイクにコスチューム、サポートアイテムなどなど注文側(扇動)もだが、制作側(発目)の熱量も非常に高い。

 

 勿論それらは発目を含めたサポート科のチームが思うがままに組み立て、試行錯誤の為に実験を繰り返す為にしわ寄せが全て責任者(・・・)に回るわけで、記憶媒体を受け取った二人は別としてパワーローダーだけは胃にチクリと痛みを感じ、早めに薬を手に取るのであった………。




●…勝者には美酒こそが相応しいが、敗者には珈琲の苦さが―――

 何か作品の台詞だと思うのですが思い出せず、検索しても出てこなかった為にタイトルとキャラクター名書けず………無念。

追記
【タイタニア】アジュマーン・タイタニアより
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