根津校長の個性“ハイスペック”と文才が欲しい…。
あの二日でもう一話書きたいなぁ…。
ヒーローという
ヴィランとの戦いや災害救助でヒーローをサポートするアイテムを制作・販売する者らや会社・業者。
育成する為にヒーロー科という新たな学問と経験豊富な現役・退役を含んだヒーローの教師。
そんな中に“
“HELP・US・COMPANY”―――通称“HUC”。
災害救助
救助の際の手順から多種多様な怪我の内容に応じた手当や処置など幅広い知識を求められる職業で認知度は非常に低い。
ゆえに…と言えば良いのか訓練での依頼が殺到するも圧倒的に人が足りず、技能報酬込みで求人広告などに記載されている給料はかなり高額だが応募する者は中々にいない。
専門知識に加えて個人で怪我や状況に合わせた特殊メイク技術に試験官としての能力も求められる。
知名度に加えての難易度に人手不足になるのも当然の事で、反比例してヒーローになりたがる人が増えれば訓練や試験などが増えていく…。
週末の休日に雄英高校ヒーロー科一年A組の大半の生徒は、私服で市民会館への一室に集まっていた。
最初こそ祖父のコネで技術と知識を確かなものとして得るべく、HUCでバイトを始めた扇動 無一は必要な能力を治めると同時に高い信頼を勝ち取って、雄英高校に入学するまではバイトを頼まれる程になっていた。
今回はその伝手より試験や訓練など仕事が重なり、人手不足である事から駄目元で応援要請をされたのだ。
高校生活での学びや個人的な仕事もあって断ろうと思うも、同じヒーローを目指す者にとって救助される側を経験するのも為になるとバイトの話をクラスメイトに振ってみると後学・興味本位・割りの良いバイト代などなどの理由で多くが参加する事に。
…ただ救助される際に
勿論これは雄英高校とは関係ない扇動を仲介したバイト。
参加は個人の自由であるというのに、参加者は爆豪と轟を除く19名となっている。
ちなみに爆豪は休日に面倒と言い、轟は母親の見舞いに行くとの事。
今回のバイト内容は
現在受付が開始した時刻で試験自体はまだ始まらないが、HUCのバイトとして来た面々は自分が担当する役柄を把握する必要があるので、バイトとしての仕事が始まっているのだ。
模試とは言え試験内容が僅かでも漏れる可能性を無くすべく、HUCからの要望で当日まで内容は関わっている扇動しか知らされてはいない。
知らされていないと言えば、集合場所に到着するまでA組の面々はヒーロー科一年B組も幾人か参加する事を知らずにいた。
入学して間もなく繋がりを持っていた取蔭や柳、鉄哲を通して参加者を募ったらしい。
多くが体育祭の騎馬戦時に多少話した程度の接点なれど、さすがヒーローを目指すだけあって全員参加となったのは人手不足だったHUCにしてみれば嬉しい誤算であったろう。
「バイト代も良いし、昼からショッピングしようと思っててさ」
「あー!それ良いね」
「なら皆で行こうよ」
「うちも行って良いかな?」
「もちろん」
A組もB組も関係なく女子達がバイト後のショッピングに行く話で盛り上がっている最中、男子生徒は別の話題で盛り上がっていた。
話題はそれぞれであるが一番メインとなっているのはバイトに対するものとB組もA組に習って行った放課後の特訓に扇動が混じっていた話であろうか。
「見せてあげるよ。A組よりB組の方が演技においても上手いという所を!」
「一々張り合うなよ…」
「もしかして
「いえ、扇動氏に頼まれたからですぞ」
「体育祭以降仲良いんだよなぁ」
意外な組み合わせ―――でもないかと話を聞いたA組の全員が即座に納得してしまった。
性格は大きく異なるが何処となく似ているのを何となく感じており、B組においてはそれを
…B組で行われた放課後の特訓にて、終了間際に二人組を組んでのバトルロアイアル形式の模擬戦を行ったところ、扇動は物間とペアを組んで全員と戦った訳ではないが終了時間まで生き残ったのだ。
話題に上がっていた扇動は見知らぬ男性と13号先生と共にようやく姿を現した。
男性の方は模試の関係者だと思われるも、雄英高校の行事ではないこの場に何故13号先生が来ているのかが解らなかった。
「遅ぇぞ扇動」
「すまない、少し打ち合わせをしてて遅れた」
「どうして13号先生も居るん?」
「もしかしてバイトですか?」
「いえ、以前より今日の
「休日だから良いって言ったんだけどなぁ」
「
「心強いではありませんか。実際に災害救助で活躍しているプロヒーローのお力添えなんて」
「そりゃあそうだけど―――っと、こちらはヒーロー公安委員会の
「どうも目良です。扇動君とは以前より知り合いでしてね。今日は試験官ではなく見学として参りました」
「暇があるなら寝てろ
「…君に言われたくないですね」
知られていない個人的な仕事を除いたとしても放課後の訓練で指導したり、家や通学時などトレーニングなどに励んでいる事を知っている面々としては目良の返しに納得しそうになるもぼさぼさの髪に着崩れたスーツ姿、だらんと怠そうな目付きと雰囲気を発している目良に比べたら健康そうに見える分だけマシに映る。
そんな視線を受ける扇動は一呼吸おいて雰囲気を真面目なモノへと切り替え、それを察して皆も気持ちを切り替えていく。
「さて、説明を行うけど本来HUC職員は負傷者を演じるばかりでなく試験官として採点も行うのだけど、モニター室から俺やHUCから派遣された試験官などのスタッフが採点するので、皆は担当する役を演じる事を第一にしてくれ。
これからそれぞれが担当する負傷内容を資料として配布するが、もし自分が担当する以外の資料が欲しい時は申し出てくれ。
説明が始まった事で自分がしっかりと出来るだろうかという不安や緊張、焦りに襲われるものがちらほらと出て来る。
特に緑谷の緊張は激しく、掌に人という文字を書き続けるも呑み込む動作をする事を忘れる程に緊張しまくっていた…。
幾人かいると思っていた扇動は、やはりかと少し頬を緩める。
「安心しろ。全員には小型のイヤホンとマイクを付けて貰い、こちらで指示やアドバイスを出すから心配すんな。最悪役を忘れてもフォローしてやっから。13号先生、試験前に皆に一言宜しいか?」
「そうですね、少しお小言を一つ…二つ…三つ…」
(((
覚えのある台詞にヴィラン連合に襲撃されて中止した授業の出出しを思い出す。
咄嗟に周囲を見渡して黒い靄が無いかと探ってしまうもそんな靄は無く、体験していないB組はどうしたんだと首を傾げる。
襲撃時に被害を受けた13号も、同様の想いを抱くも話を続ける。
「災害救助で必要なのは迅速さと咄嗟の判断能力です。早く動けばそれだけ多くの人が救え、冷静さを失ったり判断を間違えれば逆に多くの人命を失う事になります。今回の皆さんは救助する側ではなく救助される側。救助側としてどのように見えるか?どのような想いを抱くか?そういった点を踏まえた上で体験する事で君達の良い学びとなるでしょう。とは言えこれは授業ではなく休日のバイト。僕からの話はここまでとして、皆さん慣れないバイトを頑張って下さい。ご清聴ありがとうございました」
話が終わると自然に拍手が起こり、扇動は一人一人に資料を手渡していく。
配られた資料は二種類。
一つは怪我の症状と対する対応に、13号が実際に目にした事例も加えられた下手な参考書より詳しい専門書のような物。
八百万や飯田のような後学目的に加えて頭の良い面子は兎も角として、大半の面々は字面を目にした瞬間敬遠してしまう為に、もう一方の演ずる怪我の名称と症状の演じ方などが解かり易く簡略的に書かれた指示書に自然と目を向ける。
覚えようとする一方で扇動や13号に詳しい話を聞いて理解してと忙しいが、加えて扇動はHUC本職なら個人でリアリティを出す為に特殊メイクをするが、そんな技能を取得している者はいない為に担当している。
一人一人メイクが施されると会場にてスタンバイに入る。
会場には本物の瓦礫を模した小道具で災害現場が再現されていて、中には瓦礫が足に降って来て動けない者や埋もれた者、逃げ遅れて負傷した者などなど役に合った状態で受験者が救助に来るまでを待つことに。
全員の準備が終わって受験者への説明が行われ、模試の開始が宣言されると試験会場は一気に騒がしくなる。
バイト側は負傷者をしっかりと演じ、受験者側は実力をしっかりと把握する為に救助活動を行う。
「誰か!誰か助けて下さい!友人が埋まっているんです!!」」
そんな中で一際目立つ助けを求める声が響き渡る。
負傷者側である飯田であった。
声を耳にした受験者が駆け寄ると飯田は必死に近くで瓦礫に埋まっている八百万を助けてくれるように頼み込んでいる。
さすが真面目な飯田というべきか迫真の演技でリアリティが半端ではない。
救助側は普通に会話が出来て、しっかりとした足取りと意志のある飯田より埋まっている八百万に意識を向けて、集まった受験者は救助しようと意見を交わし合う。
その時点で減点されたとも知らずに。
普通に歩いて助けを呼んでいる飯田。
一見ではなんともないように見えるも、その背中には血のりがべったりと付着しており、出血量から命に関わる状態である。
怪我や事故などで鎮静作用のあるアドレナリンを分泌して、怪我に対しての痛みを緩和する事がある。
受験者は
他にも掠り傷程度であるが痛みから泣き喚いている幼子役の峰田や、負傷して症状や助けを求めるも英語でしか話さないようにと指示された日系アメリカ人の角取 ポニーなど、受験者側は困りながらも試行錯誤に困難を突破しようと頭を回す。
模試内容に四苦八苦しながらも救助対象者が全員救出されるとアナウンスが流れ、講評に休憩時間を挟んで次の模試が行われる流れであるが、負傷者側は次の
この模試中の扇動は採点にフォローから講評、役への質問を受け付けながら特殊メイクを行って、スタンバイの手伝いから監修を行う為に休憩は一切存在しないのであった…。
一回目を終えて二回目に移った模試を試験会場に設置されたカメラを通して眺め、受験者の採点から負傷者役の指示やフォローを行うモニタールームにて、13号は扇動の補佐も兼ねてインカムで雄英高校生徒達のフォローに回っていた。
隣では複数のモニターを眺めながら受験者の採点を行いながら講評を書き込み、口はアドバイスを飛ばしたりと扇動が忙しなく働いている。
試験官として張り切っているという気張る様子はなく、ただただそういう性分ゆえに自然体で熟している。
何度かヒーロー基礎学や救助訓練などで見る機会があり、戦闘や救助などで優れた知識や技術を有している事は知っているも、ベテラン顔負けの仕事を行う様にちょっとばかし心配を浮かべてしまう。
彼の持論である無個性ゆえに努力せねばヒーローに成れないというのは、一般的に無個性ではヒーローに成れない事から理解は出来るが、それにしても無理をし過ぎである事は明白。
しかしながら簡単に無理をし過ぎと注意する事も躊躇われる。
強力な個性を持っていてもヒーローに成れない者も居る中で、十分能力があるから良いじゃないかと気休めに夢に向かう足を止めさせるのは無責任というものだ。
「絡め手が足りないような…もう少し、いや…どう思います13号先生?」
「それよりもっと現実味を出した方が良いと僕は思いますよ」
「症状を複雑化させてもヒーローじゃなくて医者の領分になるからレパートリーを増やすか?」
「怪我への知識もですが次は救出作業の方を重要視してみましょう」
「あー、ならパターンBにHを混ぜた構図にするか…」
「Dの方が良いと思いますよ」
「なら合わせるのは―――」
こちらの心配を他所に手を動かしながらもすでに頭の中では三回目の模試の変更を考え始めている。
ふと、扇動を見ていて彼はヒーローでなくても良いのではと考えが過った。
これは単純に無個性だから難しいとかいう話ではなく、彼には教員の方が向いているのではないかと思ったからである。
口は悪かろうと面倒見は良いのは知っているし、仕事はきっちり行う上に周りや人をしっかりと観ていたり、先の講評でも問題点を指摘するだけではなくて褒めるべきところはちゃんと褒めていた。
捻くれた試験問題も込みで何処か
実戦経験を積んだヒーローというのは経験と知識の塊だ。
そんな彼らが後進育成に力を入れたならば、よりよいヒーローの卵が育つ土壌が出来上がるであろうが、ヒーローというのは我が強かったり、一癖も二癖もある者が多い。
平和や人々を護りたい。
ヴィランをぶっ飛ばす。
活躍して目立ちたい。
賞賛を浴びたいなどの理由から成った者も多く、後進育成に関心を持つヒーローというのは非常に少ないのだ。
だが彼ならばと思わずにはいられず、仕事中にも関わらずつい言葉として出してしまった…。
「扇動君…教員に興味はないですか?」
つい漏らしてしまった言葉に眉をピクリと動かして、扇動はため息交じりに苦笑する。
それは呆れや馬鹿にしたというよりは言われて困っているようであった。
「勘弁して下さい。親御さんから
「僕は向いていると思いますけどね」
「褒めたところで
会話を混じりつつも手は止めず、途中指示を飛ばしたりで会話は中断された。
別にそこで断ち切ってくれても良かったのだけど、扇動は仕事を優先するもぶち切って終わりにしようとは思わなかったらしい。
「そもそも務まりませんよ」
「先輩――相澤先生も似たような事を言っていたそうですよ」
「それは初耳。後で詳しく聞かせて欲しいですね」
「なら先輩を教員に
「ミッドナイト先生か。今度飲みにでも誘って聞いてみるか」
「…未成年の飲酒駄目ですよ」
「誰も飲むとは言ってねぇ。なんなら監視で一緒に来ます?奢りますよ」
「そう言う訳にはいきませんよ」
「なら割り勘という事で。良い居酒屋知ってますよ」
「…楽しみにしてますよ」
まったくと今度は13号が苦笑いを浮かべ、無線機を通して生徒のフォローへ戻った。
僕―――目良 善見が扇動 無一と出会ったのはヒーロー仮免許試験会場であった。
前々よりも扇動 流拳の孫がコネでHUCのバイトをしているという噂は耳にしており、それが自分が試験官として担当している場に来たのかと言った感想を抱いた。
流拳がどのような人物
しかし蓋を開けてみればビックリ。
中学生にしてプロ顔負けの知識を持って見事に演じ切ったのだから大したものだ。
興味本位で話しかければ当初こそ礼儀正しい大人びた少年であったが、僕が睡魔に襲われつつも気になって仕事を優先して酷使し過ぎていた事にキレて、流拳を仲介して労基を盾に上司に休みを取らせろと掛け合った事から今の砕けた感じで接せられるようになった。
何というか年齢的には歳の離れた兄弟か若めの父親ぐらいの差があるのだけど、これではどっちが上なのか分かったものではないですね。
小さい頃には大人びた子供や聡い子と言われようとも、成長して大人になれば周りと変わりない普通へとなる筈だ。
けれども彼はただ成長するだけでは飽き足らず、祖父のコネを使ってプロヒーローとの繋がりを蜘蛛の巣のように広めながら太くし、積極的に話を聞いたり鍛錬に付き合って貰ったりで知識も技術も経験も高めている。
ヒーローに成りたいからと夢を語るのは出来る。
されど幼い頃からヒーローに
正直それを理解した時は彼の事を“異端”と僕は称した。
同時に彼を酷く欲しいと思えた。
なにせコネを使ったとは言えプロヒーローとの深く広い関りに個人の能力、そして貪欲な知識と技術の収集癖。
ヒーロー免許の試験もそうだが試験内容というのは過去にあった災害や事件のデータを
贅沢を言えばヒーロー全員からありとあらゆる事態や出来事を収集して、それを活かすデータバンクを用意出来たら一番良いのだろうけど、それを行うには時間も労力も資金も莫大と言わずとも消費は少なくない…。
だからある程度で満足する他ないが、彼は個人的に最新のものにアップデートし、知識は増え続けている。
実際に災害救助で活躍したプロヒーローで雄英高校の教師という13号で関りを持ち、試験に協力して貰ったという事も大きいのだろうけど、今回の模試内容にも試験官を幾つも務めた自分でさえ目を見張るものは多くあった。
彼がヒーローに成りたがっているのは何度も勧誘した際に、同じ数だけ返された事から知っている。
教員になったとすれば
解っていながらも13号が誘った事を耳にして、話が区切られた辺りで釘を刺してしまった。
「彼を勧誘するのは辞めて貰えませんか?
「いえいえ、扇動君は教員の方が合ってます」
「勝手に話進めんな。俺はヒーロー志望つっただろうが!」
「やっぱりうちで働きませんか?」
「却下。
「君に向いている職業だと思いますけどねぇ…」
「―――本音は?」
「そうですねぇ…僕の仕事が減って快眠出来ればという事で」
「働き過ぎなんだよ。少しは身体を労われ」
「…なるべく気を付けるようにしますよ」
毎度ながら否定されるというやり取りを行った目良は乾いた笑みを浮かべる。
会う度に繰り返されるやり取りを熟すも、顔色は以前より悪いのは見て分かっていた扇動は心の底から長く深いため息を吐き出した。
「今度、爺ちゃんのコネ使ってでも心身ともにリフレッシュできる予定組んでやっから連休をメールしてくれ」
「激務続きでして休んでいる暇ないですよ」
「また労基違反を問うぞ。忙しいのは解ってるがそれで倒れられたら困る。何だったら爺ちゃんに頼んで掛け合って貰うけど?」
「分かりました。ちゃんと有休申請しますから」
労わってくれているのは分かるのだけど、
モニタールームで二方向から勧誘されるなど試験会場込みで多少のアクシデントはあったが、問題になる事もなく模試は無事に終了。
後日通帳に割りの良いバイト代が振り込まれ、加えて後学目的で参加した面々は扇動が制作して配った資料全種を受け取るなど、金銭的にも知識的にも経験的にも得るものを得るのであった。
―――追記。
A組B組の生徒は模試終了後に解散となったが、試験官役であった扇動は報告など後にも仕事が続き、自主的に13号と目良が手伝ってくれた事もあって、夕飯と打ち上げを兼ねて一緒に食事をする事に。
急ではあったが相澤云々で話に上がったミッドナイトに13号が誘いをかけると、丁度予定が空いていた事で参加。
記念にと酔って机に突っ伏す目良に13号と