無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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 何とか今週中に投稿出来た…。
 早く花粉症収まってくれないかなぁ。

 小説情報を見て調整評価が赤色になっていたので驚きました。
 評価して下さった皆さま、ありがとうございます。


第06話 合否と平和の象徴

 オールマイトこと八木 俊典は手土産の和菓子を持ち、扇動家の本家へと訪れていた。

 扇動家とは色々と付き合いがある。

 …否、あった(・・・)というべきだろうか。

 

 ワンフォーオール先代継承者で師となる志村 菜奈と出会い、後継者として人々の拠り所(頼れる柱)なれるように志し、雄英高校在籍中にグラントリノに鍛えられていた。

 個性を継承してアメリカに渡る前、自らの実力を試すべく武闘派で名高いヒーローの道場の門を叩いた。

 そのヒーローこそ扇動家当主である扇動 流拳。

 軽い気持ちという訳ではなかったが、結果は酷い事に惨敗…。

 しかもその後に渡米する理由を答えたが最後、渡る日までの間グラントリノに並ぶような厳し過ぎる鍛錬を強いられた。

 理由を理解した善意だと言うのは解っていたのだが正直きつ過ぎた…。

 加えてグラントリノも途中参加してさらに厳しくなり、門に近づくだけで足がガクガクと震える。

 アメリカに渡ってさらなる研鑽を詰み、帰国した私は“平和の象徴”として活躍しつつ、あるヴィラン(・・・・・・)との戦いに身を投じて行った。

 そんな折に扇動 流拳を通じて繋がりを得た流拳の息子夫妻が協力するようになる。

 彼らはトップとまではいかずともヒーローとしてかなりの実力を持つ者で、信用できる人材であると判断したがゆえに色々と頼ってしまった。

 それがいけなかったのだろう。

 彼らはあるヴィラン(・・・・・・)によって殺害されてしまったのだ…。

 どんなに悔やんでも悔やみきれない。

 扇動家の本家には葬儀の時以来となる。

 あの時の思い出と言えば人が亡くなったにしては悲しんでいる親族が少なかったという事と、涙一つ流さず悲しみに暮れていた少年だろう。

 

 本日自分の浅慮で亡くしてしまい、訪れ難かった扇動家本家に訪れたのは流拳により連絡を受けたからだ。

 彼は幼かった孫である扇動 無一には事故としか伝えておらず、ヒーローを目指すのであれば知らなければならない。

 そう考えて話すべき人物であろう私に連絡をくれたのだ。

 亡くなった二人の位牌が並べられた仏壇に線香を立て、手を合わせて冥福を祈る。 

 そして私の後ろには流拳と無一の二人が座って待っていた。

 振り返っていざ話をしようとすると言葉に詰まる。

 話し辛い内容な上に葬儀以来の再会となる扇動少年の第一声も相まって空気が重く感じる。

 

 六年ほど前に葬儀の時に顔を合わせた程度なのだが、扇動少年は私の事をしっかりと覚えていた。

 理由は「葬儀の際に悲しんで下さっていた数少ない方ですから」と純粋な感謝の念を抱いた笑みを向けて来たのだ。

 にこやかな笑みに対して言葉に含まれる闇が深すぎる…。

 重い空気に臆してしまい口が更に堅くなるも、ずっとだんまりを決め込む訳にはいかず、意を決して話し始める。

 最初は私の正体から話さなければならない。

 私が実はオールマイトで、本当の姿が今の姿なのだと説明するも、緑谷少年と違ってまったく驚きもしない。

 だからと言ってそのまま呑み込む訳でもなく、ただただ話を聞きながら考え込んで話の内容を消化しているようだ。

 そして本題である彼の両親の死の真相と私との関係性を語る。

 当時を思い返しているであろう流拳は自然と握り締める拳の力が強まっている。

 対して反応を見せずに無言で話を聞き終えた扇動少年は、少し悩む様な仕草を見せてから口を開いた。

 

 「そうですか」

 

 ただそれだけだった。

 怒りも悲しみも感じられない程、淡々と一言だけ発して納得したようだった。

 責められる事を覚悟し、それを受け入れるつもりだったゆえに予想外である。

 

 「責めないのかい?私が君の両親を巻き込んだばっかりに――」

 「責めませんよ。貴方が殺したまたは殺されるように仕組んだというなら別ですが、責めるべきはそのヴィランでしょう。それに貴方を責めるという事は父と母の行動を、意思を否定することに他ならない」

 

 強い瞳を持って言い返された。

 どうやら彼にとって私は無粋な事をしてしまったようだ。

 扇動少年は続いて「出来ればそのヴィランの名前が知りたいですね」と言ったが、私は決して名前を口にする事はしなかった。

 

 …いや、口に出来なかったが正しい。

 先ほどの強い意志を感じさせる瞳が一瞬で陰り、瞳の色が酷く濁って映ったのだ。

 覗き込む黒い瞳孔は闇夜より深く暗く、負の感情が渦巻いているのが感じ取れる。

 中学生というか人がしていい目ではない。

 ゾッとして背筋が凍り付く感覚に身体が震える。

 絶対に名前を教えてはいけない。

 もしも名を知ったのならば彼は復讐に走るのが想像に容易い。

 

 名前を教えなかった私に扇動少年は「ですよね」と微笑み、瞳は元に戻っていて安堵する。

 だからこそ胸に刺さった罪悪感という棘は残り続ける。

 許されようとは思わない。

 これは私が抱え続ける罰なのだから。

 それを察してか無一は乾いた笑みを浮かべる。

 

 「貴方ってどれだけ助けて来たかを誇るより、助けれなかった人を抱き続けて自分を責め続けるタイプですよね」

 

 少しアレンジになりますが…と呟いてコホンと咳ばらいを入れる。

 

 「貴方は十分に苦しんだ。もう前を向いてほしい―――ボクが許します。だからいい加減前向いて生きて下さい」

 

 真っ直ぐな瞳を向けられ、優しく掛けられた言葉が心に染み入る。

 心の棘が若干和らぎ、彼の一言で救われたような感覚に陥る。

 さらに「その方が父も母も喜びますから」と言われれば返す言葉もない。

 

 「本当に君、中学生かい?」

 「中学生ですよ。肉体年齢は」

 「肉体年齢は?」

 

 言葉に疑問が残るも深く追求する事もない。

 何かしらの冗談かなにかだろう。

 クスリと笑いながらふと話題を変える。

 

 「そう言えば扇動少年も雄英だったね」

 「えぇ、ヒーロー目指してますんで」

 「ならお互い四月から頑張ろう」

 「頑張ろうって受かっていればの話ですけど」

 「合格通知届いてないのかい?」

 「――え?」

 「ん?………あ!」

 

 今日一番の失言にしまったと口を塞ぐも、飛び出してしまった言葉は戻りはしない。

 頭を抱えて俯くオールマイトに、呆れた視線二つが突き刺さるのであった。

 

 

 

 

 

 

 オールマイトが来訪してしばらく経つ。

 不意にも合否を知ってしまった以上は、無駄な時間を過ごすより先の為に行動を取る。

 本家から通うのは少し遠く、鍛錬などの時間を移動時間で削られたくなかったので、これを機に一人暮らしを決める。

 両親が亡くなったばかりの頃は小学生中盤の年代で一人暮らしは難しいと周りに判断されたが、あれから約六年近くが経過した今でなら一応ながら許可が下りた。

 …一応というのが爺ちゃんがあまり賛成してくれなかったからだ。

 

 年齢以外にも性格や家事などの生活における能力的にも問題ないと判断されたが、俺が離れて暮らす事が嫌だったのだろう。

 けど理由から理解して泣く泣く頷いてくれたのだ。

 

 『わぁ~たぁ~しぃ~がッ!投影された!!』

 

 雄英からの合否通知は書面でなく、録画した映像を立体的に表示して音声にて告げる機器によるもの。

 紙に比べて確実に値段が跳ね上がる通知に、金の無駄遣いだろうと呆れ果てる。

 通知はオールマイトが言っていたように合格。

 どうもあの実技試験は仮想敵を倒すだけでなく、通知しなかった(・・・・・)審査制の救助活動P(レスキューポイント)も含めて合否を決めていたらしい。

 応急手当に避難誘導など行っていたのは無駄ではなかった。

 敵P(ヴィランポイント)49と救助活動P73で、筆記試験の点数も含めてヒーロー科の入試一位で取った。

 すでに結果は知っていたし、詳細も一度聞いたので解かり切っている。

 なので今はBGM代わりにリピート再生しているだけ。

 

 新任教師として着任するオールマイトの何度目か分からない合否説明を聞き流しながら、ガムテープで閉じられたダンボールを開いては荷物を床の上に広げていく。

 一人暮らしをする以上、マンションの一室を借りようと思っていたのだが、お祖父ちゃんの厚意により一軒家が用意された。

 よくもまぁ、学生や新社会人が新たな生活環境に対して家探しを行うこの時期に良い条件の家を見つけたものだ。

 しかも雄英に近いとなれば本当に有難い。

 けど一人で暮らすには大き過ぎる物件だとも思うだけどね…。

 

 荷解きを済ませてダンボールに詰まっていた荷物を、位置を決めながら置いていく。

 決めると言っても一人分の最低限の食器類に調理器具、持って来た写真を並べるだけでそう時間は掛からない。

 先に業者によって冷蔵庫や洗濯機などの重量のある家電製品に鍛錬用の器具は運ばれているし、一部仕事道具(・・・・)は置くべき部屋の防音処置が済んでから。

 

 扇動 無一は結構な額を中学生の身でありながら稼いでいる。

 フリーランスの原型師に作詞及び作曲家、それと“HUC(フック)”のバイトの三種類。

 HUC(フック)というのはHELP(ヘルプ)US(アス)CAMPANY(カンパニー)の略で、本格的な救助訓練などで要救助者を演じる人達を派遣する会社である。

 酷く詳細な知識を求められる職業だ。

 要救助者を演じる以上その訓練ごとに発生する怪我に症状ばかりか、ヒーロー免系の試験では採点をも担当する事があるので対処法までも熟知しなければならない。

 ヒーローを目指すのであれば人命救助に関する知識は必須。

 金を稼げるうえに応急手当てに救助作業を効率よく経験として得るには丁度良い。

 膨大な知識と認知度の低い職業ゆえに引っ張りダコで、厳しい試験を突破したとはいえバイトの身でがっつり働かされたものだ。

 ま、仕事があるよと連絡を受けて引き受けたのは自分自身だけどな。

 これに関しての荷物というのは“HUC(フック)”が提供している資料集だけで、先の防音が必要な仕事道具ではない。

 

 防音が必要なのは作詞・作曲のお仕事だ。

 元々は前世で好きだったアニメや特撮でのオープニング曲やエンディング曲をこちらでも楽しもうと、歌詞と曲を思い出して音源に移しただけだったのだけど、爺ちゃんがパーティなどで知り合った人物に教えてしまったのがきっかけで仕事として音楽に関わる事に…。

 個人的に楽しむだけだったのにどうしてこうなったか。

 安く借りれるスタジオでなくプロの演奏が付いて、ちゃんとしたレコーディングスタジオが借りれて再現できるので俺的には質が向上して嬉しいが、人の創作物を自分のモノのように扱われるというのは妙な気分だ。

 すでに数本再現して発売され、たまに街中でライダー系のOPが流れているとついつい反応してしまう。

 ただ昭和系は歌詞に名前が含まれていたりするので、一般に出回っているのは平成以降のものとなり、昭和系は個人的に楽しむようになっている。

 兎も角、このお仕事により一度楽譜に起こす為に演奏する必要があり、それが近所迷惑になってしまうので防音設備が必要なのだ。

 ちなみに楽器の扱いは上手い訳でも下手過ぎる訳でもなく、個人的に楽しむ程度って感じである。

 

 空箱になったダンボールを畳んで片付けていると携帯電話が鳴り響く。

 誰からだろうと何気なく手に取り、通話ボタンを押す。

 

 『う゛がっだよ゛おおおおおおおおおおお!!』

 「…うるせぇ」

 

 スピーカーボタンを押した訳でもないのに、響き渡るイズクの声で耳鳴りがする。

 『ごめんよ』と謝りながら泣き続けるイズクに苦笑する。

 幼い頃から憧れていたヒーローへのスタートラインに立てた喜びが、ひしひしと伝わって来てこちらまで泣きそうになるじゃないか。

 …最初の耳鳴りさえなければ…。

 

 「合格おめでとう。これで一緒に通えるな」

 『うん!うん!!』

 「ってかお前は俺が受かったかどうか聞かないんだな?」

 『え、あ!ごめん…落ちると思ってなくて…』

 「絶対的な信用、ありがとさん」

 

 鼻水も垂れていたのか啜る音がスピーカーから聞こえ、泣き過ぎだろうと笑ってしまう。

 それと少し遠いが電話の向こうで他にも泣いている声が聞こえる。

 多分だがイズクのお母さんが泣いているんだろうな。

 母子揃って涙脆かったからなぁ。

 正直あの人間の水分量を超えた水量に涙腺から水道の蛇口のように放出される涙を始めて目撃した時は、それがあの母子の個性かと疑ってしまったほど異常だった…。

 ぐずりながらこれから頑張ろうねなど言ってくるイズクに相槌を打ち、一通り話し終えると電話を切る。

 

 まさかと思いメールを開いてみると未読の着信が何件か溜まっていた。

 そりゃあ俺の所に届いたんだから、他の面々にも通知が来ていておかしくない。

 ケーキ屋でメールアドレスを伝えていたので芦戸、蛙吹、瀬呂、鉄哲からも合格した報告と合否を問うメールが届いていて、鉄哲を除く面々とは同じクラスらしい。

 他にも飯田の“拝啓”から始まる真面目で長ったらしい長文メールに、《落ちたらぶっ殺す。受かってたらぶっ飛ばす》という爆豪の脅迫文のようなメールまで…。

 

 彼ら・彼女らが合格したことに頬を緩ませながら返事を返し、途中で中断したダンボールの片づけを続ける。

 畳んだダンボールを紐で結んで纏め、とりあえずは端に置いておこう。

 

 片付けもひと段落したところで、ため息一つ漏らす。

 業者に運んでもらった大荷物は別に、俺が並べた荷物は少ないものだ。

 にも関わらず思った以上に時間をかけてしまった。

 日課である鍛錬の予定は大いに狂ったし、片付けで妙に疲れたので飯を作るのも億劫だ。

 コンビニで弁当を買うかと思い立ったその時、通知と一緒に送られてきた書類系が目に止まり、面倒な書面があった事を思い出して軽く頭を抱える。

 

 入学前に役所に提出している“個性届”と“身体情報”の書類を提出すると、学校専属のサポート会社より専用のコスチュームが用意してくれる“被服控除”というシステムがある。

 一緒に“要望書”を添付する事でさらに自分が意図する物が用意されるのだが、身体能力頼みの無個性である俺は何処まで書いていいのやら。

 

 普通は個性を生かす形で描くも、その個性が無いのなら己の肉体かサポートアイテムに頼り切るしかない。

 ないのだがそのサポートアイテムは何処まで注文していいものなのか。

 出来ればパワードスーツが欲しいがそれは高望みだろうし、合格したばかりで実績のない学生にそれほどの物を用意される事はあり得ない。

 警棒やスタンガンは有りか?ガスガンやペイント弾は?

 考えだしたらキリがない。

 無難そうなのと無理そうなのを一応全部書いてやろうか。

 

 面倒だなと呟きながら一応要望欄を埋めていく。

 後々サポート課に協力して貰って、アイテムの追加やコスチュームの変更を視野に入れておこう。

 

 「あー…雄英に頭がぶっ飛んでそうなサポート科の生徒とかいねぇかなぁ…」

 

 理想としては基本に忠実な人ではなく、ネジが外れた純粋なマッドエンジニア。

 それも今後の付き合いを考えるなら同年代、または年齢の近い先輩辺りが望ましい。

 出来過ぎた希望だと自分の想いに乾いた笑みを浮かべるも、そう遠くない内に出会うとは思いもしなかっただろう…。




 お前は十分に苦しんだ。もう前を向いてほしい…だって―――もういい、ボクが許す。だからいい加減前向いて生きろよ
 【エンマ EMMA】ナユタより


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