無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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 新年早々、投稿遅れをしてしまったぁ…。


第60話 授業参観後編

 スナイプとしては当然の選択であった。

 ヴィラン役だからと言って本物のように好き勝手して言い訳は無く、ヒーローとしても教員としても守らなければならない一線は順守しなければならない。

 例えば軽い怪我程度ならまだしも急所や大怪我を負わすような部位への攻撃など。

 限られた手段の中で相手の武器破壊は有効な手段であっただろう。

 遠距離系の個性を持つ青山の直線的で真っ直ぐな為に恐れるに足りず、威力不足ながらも正確な射撃だけでなく動きを予想して撃って来る扇動の方が厄介。

 だから扇動の銃(ウィザードガン)を破壊した。

 

 間違っていない。

 ……間違ってはいない筈なのに嫌な予感がするのは何故だ。

 

 壊れた銃を投げ捨てた扇動は青山に何かを告げて盾を渡す。

 無個性である事から遠距離可能な個性は無く、射撃武器はサポートアイテムに頼りっきり。

 何をする気だと注視していると扇動は徐に走り出した。

 

「破れかぶれか?それとも何かしらあるのか…」

 

 扇動の評価は良くも悪くも高い。

 自身が出来る事を把握して、その範疇で最善を尽くそうとする。

 若人は我武者羅に頑張り過ぎる者が多いというのに、よく自分を把握して使いこなそうとしている所は評価すると同時に、達観し過ぎていると言えよう。

 その辺りを相澤は気に掛けているようだ。

 13号もセメントスもミッドナイトもオールマイトとパワーローダーも高評価を下す一方で、“何を仕出かすか解らないから怖い”と口々にしていた。

 

 なんにせよ相手の土俵である近接戦闘に持ち込まれないように銃口を向けようとした矢先、扇動はジグザクと左右に動いて命中率を下げようとしている。

 それだけならまだ良いのだが、周りの評価を鑑みるに個性を把握されている可能性すらある。 

 個性“ホーミング”は600メートル内であれば投げた物でも命中させるというもの。

 ただしメリットばかりではなく、デメリットとして部位はランダムである上に威力は下がる。

 以前にインタビューを受けたりして答えていたから知られていても不思議ではないがまめ【勤勉】なことだ。

 

 実弾では当てる訳にもホーミングで撃つ訳にもいかず、弾をゴム弾に変えて銃口を向け直す。

 ゴム弾でならかなり痛くとも死ぬことはない。

 目に直撃した場合は失明の危険性はなくもないが、扇動は仮面で顔を覆っているのでその心配もいらない。

 個性を使うまでもなく技術で動く扇動に合わせて銃口より放たれたゴム弾は、脇腹に直撃する直前に扇動が右腕で払い除けた(・・・・・)

 

 スナイプは目と耳を疑った。

 実弾ではなくゴム弾だからとそう易々払えるようなもので決してない。

 ただ可能だった理由として注目するのは払った時の音だ。

 腕に当たったというよりは何か硬い物にぶつかった様な音と痛みの割に反応の薄い様子から確実に何か仕込んでいたのは確かであろう。

 

「防弾か!?」

 

 確かに防弾であるがこの場においては誤解が発生している。

 火災や炎系の個性を考えてコートなど耐熱仕様であったのに加えて、飛び道具を考慮して扇動は追加でコートを防弾も組み込みはしたのだが、防弾コートでは貫通は防げても衝撃はそのまま伝わって来る。

 今しがた払えたのは授業中でもデータが欲しいと発目にゼロワンモデルの計測用のコスチュームの着用を頼まれたのもあって、ウィザードモデルのコスチュームであるロングコート下には計測用のプロテクターなどを装備していて、腕には黒い籠手をしていたからに過ぎない。

 

 弾いた所で扇動は左手でヴィラン襲撃時に上鳴を撃った演技を行った際に使用したコルト・パイソン型のサポートアイテムをホルスターから抜くも、情報として知っていて警戒していたスナイプにより即座に銃を撃たれて弾かれる。

 しかし扇動は銃を抜くだけでなく利き手である右手で手榴弾を放って来た。

 様々なサポートアイテムを所持している事も情報として知っているし、授業や襲撃事件で消費した分をサポート会社から補充した事も聞いている。

 投げられた手榴弾を警戒するも飛距離的に自分まで届くものではない。

 囮と判断して即座に扇動に視線を戻すと本命らしき手榴弾を握っていた。

 投げてきたところを撃ち返すと構えたところで、先に投げていた手榴弾のスモークグレネードが扇動を隠すように煙幕を撒き散らし、白っぽい煙を伝達する様に眩い光と高音が周囲に響き渡る。

 

「クッ、スタングレネード!しかし奴は何を……そこか!」 

 

 目を潰す程ではなかったが煙を伝っての広範囲の眩い光に僅かに眩む。

 その煙幕の中より跳び出す影を視界に収めたスナイプは銃口を合わせてトリガーを引いた。

 跳び出したソレは直撃した部位を大きく揺らし、ふわりと(・・・・)地面に落ちて行く。

 ソレが扇動本人ではなくコスチュームのロングコートであると解かると、自然と煙幕を挟んだ反対側へと銃口を向けようとする。

 コートを囮として使ったという事は視野の死角からの攻撃が予想され、実際に扇動は銃口を向けようとしていた方向の煙幕から飛び出していた。

 結構距離を詰められたがまだ近接戦闘に持ち込むには遠い。

 銃口を扇動に合わせようとしていたところで扇動が叫んだ。

 

「今だ青山!!」

「そう言う事か!!」

 

 予想外な行動と動きに翻弄されて青山への警戒が薄れてしまっていた。

 コートどころか扇動自身が囮役だったのだ。

 振り返れば青山がネビルレーザーを放とうとしているが、扇動をそのまま放置する訳にもいかない。

 籠手で防ぐだろうと想定しつつ数発だけ放ちながら、横に飛び退いて青山の射線から飛び退く。

 ネビルレーザーの発射口は複数あり、銃のように銃身がある訳でもない為に射線を読みにくいが、まだまだ未熟な為に視線と身体の向きを追えばだいたいは解かるものだ。

 

 そもそも急遽放ったためかネビルレーザーは元々狙いが外れていた。

 土壇場でのミス。

 一発本番で決めれる方が難しいのだ。

 落ち込む事はないがしっかりと学んで活かせれば良いのだから。

 直撃しない事を確認して煙幕より跳び出して来た扇動に銃口を合わせようとする。

 

「奇襲なら声を出さずに行うべきだ」

 

 確かにそのまま撃つ訳にはいかないが、これが何を意味するか扇動は理解出来るだろう。

 焦り呆ける青山。

 目を見張る扇動。

 二人はまだ距離もある事もあって勝ったと確信したスナイプにたった一言だけ呟いた。

 

「――勝った(・・・)

「なに?―――ガハッ!?」

 

 突然外れていた筈のネビルレーザーが途中で逸れて、飛び退いたスナイプの横っ腹に直撃を果たしたのだ。

 資料によればネビルレーザーは直線にしか行えない筈。

 なのに何故途中で曲がったというのか?

 横合いからの衝撃に体勢を崩したスナイプは痛みと驚愕に呑まれつつ、困惑の原因を探ろうと視線を向ければ見えるか見えないかの薄っすらながら一人の少女がそこに居た。

 

 まさか…と答えを口にするより早く、扇動が距離を詰めて来ていた。

 中々に小癪な手を打って来るなと褒めてやりたい所であれど、だからと言って負けてやる理由にはならない。

 体勢を立て直そうとするもハンデの重りが邪魔をして動きが悪い。

 少々強引だが狙いを仮面に向けて撃つも銃口を向けられた段階で理解した扇動は、撃った瞬間を狙って首を傾けてゴム弾を回避。

 続いて仮面越しに伝わる殺気(・・)のような怒気を向けて来る扇動は、感情を乗せた勢いのついた本気の回し蹴りが顎辺りを狙って迫って来る。

 あ、これは終わった……。

 

 視界に映る世界がスローモーションのようにゆっくりと流れ、迫る蹴りは顔に触れるか触れないかのギリギリで止まった。

 

「ふぅ、勝ちで良いですよね?」

「……あぁ、お前達の勝ちだ」

「やったね扇動君!!」

「見てくれたかい?僕の輝きを☆」

 

 喜んでいる青山と葉隠(・・)の二人に笑みを浮かべながら扇動は、一応ヴィラン役であるスナイプの手を縛って捕縛を完了させる。

  

 多分であるがこれは当初より考えられた作戦だったのだろうとスナイプは推測する。

 ネビルレーザーを撃たせる事で青山の存在を印象付け、不利だから撃てないというのもあって温存させ、扇動が注意に注意を惹き付けたことろで、外した様な演出を加えたネビルレーザーを葉隠に反射させる事で不意打ちを成功させる。

 壊れて放り投げた銃(ウィザードガン)の辺りに葉隠が待機して、そこ辺りに青山がネビルレーザーを撃ったのが良い証拠だろう。

 

「してやられたよ扇動」

「いえ、俺は策を練っただけで青山と葉隠の動きがあってこその勝利です」

「謙虚なんだが分からんな。それにしてもどうやって葉隠はネビルレーザーを反らせたんだ?サポートアイテムの類か?」

「普通に葉隠の個性ですが?」

「……ん?確か葉隠の個性は透明化ではなかったか?」

「葉隠の個性が透明化な訳ないでしょう」

 

 即座の否定に困惑してしまうスナイプは葉隠を見るも、彼女は彼女で苦笑いを浮かべていた。

 なんでも扇動曰く葉隠の個性は光の屈折で、身体に当たった光を屈折させる事で透明なのだという。

 何故知っているかというと大食堂で食事をしていた際に、口に含んだ料理が即座に見えなくなった事で気付いたのだとか。

 

「身体が透明になってるなら口に含んだところで料理は見える。それもキャ●パーに登場した幽霊の如くに」

「なるほど。だからレーザー()を反らせた訳か」

 

 納得して一息ついたスナイプは、青山と葉隠を連れて戻って行く扇動を見送りながら確信に近い疑念を抱く。

 

 アイツ、歯止めが利かなかったら本気で蹴るつもりだったろうに。

 縛られながらスナイプは先の一撃を思い返しながら、転がっている壊れたサポートアイテムを眺める。

 何で怒ったのかは知らないが、次があるのであれば気を付けるとしよう。

 出来れば無いに越した事はないが……。

 

 ため息を吐き出しながらスナイプは若干ではあるが、パワーローダーの気持ちを解かった気がしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 爆豪 勝己に轟 焦凍、緑谷 出久の三人はA組内どころか雄英高校ヒーロー科一年内でトップクラスの実力を誇っている。

 粗削りでまだまだ甘いところはあれど、そこいらのヒーローと為を張れるだけの実力もある。

 このまま順調に育てば次代を担うトップヒーローと成れる事だろう。

 

「確かに個々は強くても連携がなってないですね」

「ンなもん必要ねぇ!!」

 

 爆破の個性は単純な攻撃から爆豪の並々ならぬ身体能力から高機動能力を発揮している。

 空中戦が行える上に戦闘能力と機動力から突破力は凄まじい。

 現に分身体であるエクトプラズムが複数で襲い掛かろうとも、咄嗟に判断して撃破しつつ包囲を突破している。

 

 驚異的な程の突破力だが単騎特攻ならやり様はある。

 進路を塞ぐようにコンクリートの壁が生えると選択肢は二択。

 爆破で砕いて直進か避けて進路を変えるか。

 咄嗟に方向転換しつつ回り込もうと動いた先にはすでに塞ぐようにコンクリートの壁が用意され、認識した際に発生する選択を余儀なくされる僅かな隙を狙うように、壁に隠れていた分身体が襲い掛かる。

 迎撃しつつ不利と瞬時に理解した爆豪は迎撃しつつ、追加で生えてきた壁より離れる。

 

「時間を稼ぐぐらいしか出来ねぇのかオイ?」

「ハッハッハッ、挑発には乗らないよ。どうやら君は持久力に不安(・・・・・・)があるようだからね」

「――チッ、クソが…」

 

 挑発をされるも馬鹿正直に乗る事はないとセメントスはニッコリと笑みを浮かべる。

 確かに強力な個性であるがデメリットがない訳ではない。

 爆破を行う度に汗腺を通ってニトロのような汗が分泌されるために、極度に使用し過ぎると痛めてしまう。

 この事は雄英体育祭の決勝戦で扇動と戦ったのを観戦していた分析能力のある一部のヒーローや教員も勘付いており、セメントスは一年の舞台の補強・修繕や副審を担当していただけに観客席より間近で観ていた。

 あえて突き付けるように弱点を突いてくる嫌らしさに悪態をつく。

 個々で強力であろうとも互いを互いが補って緻密な連携を取り、プロとしての経験が豊富なセメントスとエクトプラズムを崩すのは難しい。

 

 いや、三人がちゃんとした連携を取れているならまだしも稚拙だった連携も時間が経つにつれて崩れ始めたのだ。

 中々押し切れない実情に焦れ始めた爆豪と轟。

 カバーに入ろうとも爆豪に手を貸した際は気に入らないと感情を全面に出され、下手に轟の方に跳び込めば広範囲攻撃の餌食か妨害になってしまう。

 

 「―――ッ、そこだ!!」

 

 緑谷 出久は入試試験の時に比べて個性の扱いが上手くなった。

 あの時は一撃放つたびに腕を骨折するなど扱い切れてなかったが、個性のコントロールから応用とゼロからだったのもあり、急激な成長を遂げている。

 セメントスが爆豪に注意を割いていた隙をついて轟が氷結を伸ばし、その対応に個性を使用していた所を緑谷が仕掛けたのだ。

 爆豪から轟と注意が完全に向いている今こそが好機とフルカウル状態で突っ込む。

 

「ソノ選択ハアル意味正シイ―――ガ、君ハ逸リ過ギル(・・・・・)

「しまっ!?」

 

 緑谷は良くも悪くもヒーローなのだ。

 自己犠牲を厭わず誰かを助けようとする。

 それが本人にとっては当たり前でそうすべき当然の行為。

 だからか責任感が高過ぎる。

 

 ここで自分がと自ら重荷を背負ってしまう。

 僅かとは言え状況打破が可能な好機を逃したくない。

 注意が逸れている自分が成すしかないと思ったのだろう。

 しかしながら連携し合っている(・・・・・・・・)だけにもう一方が見逃す訳もない。

 

 分身体が減らされている一方で増やしていたエクトプラズムだったが、セメントスが爆豪と轟に注意を向けた事で緑谷を警戒し、動きを読んですべての分身を解除した。

 そうした事で30以上の分身を生み出すのではなく一つの分身に全てを込めれる。

 

 強制収容―――ジャイアントバイツ。

 十メートルはあるだろう巨大なエクトプラズムの分身体が飛び込んだ緑谷の眼前に現れ、咄嗟に後ろに飛び退くも大きく口を開いた分身体がそのまま食らいつくように突っ込み、衝撃で待った煙が晴れると緑谷は巨大な分身体に埋まっている状態となっていた。

 顔や手は出ているものの関節が取り込まれて固定され、さすがの超パワーも身体を動かせなければ振るう事は出来ない。

 

「待ってろ緑谷!」

 

 即座に動き出した轟と爆豪であるが互いに目的は異なる。

 轟は捕まった緑谷を救助する為に動き、その動きを察した爆豪は任せて元凶を倒しに向かう。

 

 巨大化させた分身体はその巨体さゆえに動きが緩慢で、速度と小回りの利く爆豪を早々に捕える事は出来ない。

 当然セメントスの妨害がある事は視野に入れても突破は不可能ではない。

 なにせ緑谷を捕縛するのであれば分身体を消せずに新たに作り出す事は不可能。

 突っ込む振りをしつつ抜けて個性を自由に使えないエクトプラズムをまずは狙う。

 多少なりとも格闘術を扱えるかも知れないが、個性が使えないなら一対一でも勝機はある……。

 

「……トデモ思ッテイルノカ?」

「まだまだ甘いですね」

 

 緑谷を捉えていた巨大な分身体が解除されて掻き消えると周囲に三十を超す分身体が現れ、三人を纏めて捕えるようにコンクリートの壁が作り出される。

 急に拘束が解かれて宙に浮いている緑谷は兎も角、突然の事で対処が遅れた爆豪と轟。

 

「爆豪!俺を上に飛ばせ!!」

「俺に命令してんじゃあねぇ!!」

 

 襲い掛かる分身体と迫るコンクリートの包囲網。

 まだ頭上が空いているものの足元の氷柱を伸ばすも間に合わない。

 急な方向転換ゆえに間に合わないと判断した爆豪は、命令された事に文句を言うも爆破で轟を上へと吹き飛ばした。

 

 抜けた事を目撃したがセメントスもエクトプラズムも緑谷と爆豪を優先する。

 なにせ炎は兎も角として轟の“氷結”個性は空中では機能しないのだから……。

 

 

 

 轟 焦凍は内心焦りを感じていた。

 クソ親父(エンデヴァー)の暴力的に特訓を強いられる事で鍛えられ、両親の個性を二つ受け継いだ事で身体能力・個性共に協力である。

 されどそれは入学当初から然程変わらない。

 急成長を続ける緑谷に抜群のセンス(才能)を活かして上へと昇る爆豪。

 すぐ近くで観ていただけに実感し、爆豪に至っては体育祭で戦ったことから肌身で感じた。

 

 対して自分は前には進んでいるには進んでいる。

 けれど二人に比べれば決定的に遅い。

 炎を使えば今までと異なり幅が広がるどころか炎と氷の両方のデメリットを相殺する事が出来て、個性の扱いにおいても戦闘面においても何倍も強化される事になるだろう。

 しかしながら未だに使用に躊躇いや、氷結を使ってしまう()が付いてしまっていた。

 

 ―――「お前の個性“氷結”の本質は()を凍らせる事で氷を生み出せる事だ」

 

 扇動は特訓する中でそう語ってくれた。

 「炎の錬金術師は雨の日に無能になるが、お前の場合は雨の日こそ氷結の本領発揮なんだよ」と解らない話を交えながら一枚のメダルを渡された。

 重みも材質も機能も特別なんて事は一切ない何の変哲もない単なるメダル。

 なんでもメダルでなくとも良いそうなんだが、誰かに渡すとなるとメダルが脳裏に過ったからそうしたとかまた訳の分からない事を言っていたが、確かにこれは丁度良いお守りとなった。

 

 氷を生み出すのではなく、軸を経て氷を生み出せる。

 

「こう使えって事だよな扇動!」

 

 ポケットに忍ばせていたコインを()として氷結で凍り付かせ氷を広げていく。

 氷を大量に発生された事で身体に霜が一気に降り始めるも、躊躇いはあるも形振り構わず反面炎を纏う。

 霜が炎によって払われ、赤々とした炎を氷が乱反射して空に朱く輝く大輪の華を咲かせた。

 摩訶不思議で美しい様は離れている保護者達の目にも映り、誰もが感嘆の吐息を漏らす程に魅入られた。

 それは生徒も教員も同様であるが対峙している二人だけはそうはいかない。

 

 高い位置で生み出された巨大な氷の華は浮遊している訳ではない。

 重力と引力から当然降って来る。

 もはや質量兵器と言っても過言ではないそれを見惚れたまま受けるなど死を意味する。

 

 慌てて体勢を整える前に何本も地上に向けて氷柱が伸ばされ、爆豪と緑谷を包み込もうとしていたコンクリート群外縁にその足【氷柱】を降ろし、質量と落下も加わった衝撃と共に伝って来た氷結がそのままコンクリートを呑み込み、根を張った氷の大輪は降りる事無く上より見下ろすばかり。

 

「ホウ、コレハ見事ナ」

「これは少々……いえ、かなり分が悪くなってきましたかね」 

 

 降り注いだ氷柱はコンクリートの壁のみに在らず。

 セメントスとエクトプラズム本体にも向けられて回避や防御に手一杯。

 そもそも二人の個性では空中戦は出来ず、行えるのは迎撃のみ。

 

「俺を無視すんなや!!」

「ありがとう轟君!!」

 

 当然回避防御に集中せざる得ない状況下で緑谷と爆豪まで相手取れずに、氷結されたコンクリートの隙間を塗って脱出。

 慌てて分身体を解除して新たに作り出すがそれを許す訳もない。

 上から伸びている氷柱の何本かを爆豪が爆破、または緑谷が蹴り砕く事で破砕した氷の塊が教員二人へと降り注ぐ。

 自分の身を護るも分身体は次々と降り注ぐ氷塊で倒され、フルカウル状態の緑谷と爆破で加速しながら氷塊の雨の中を突っ込んで来る爆豪、そして氷の華より龍のように氷結を伸ばして迫る轟。

 イケると確信した三名だったが、それは打ち砕かれる事はなくとも霧散する事になる。

 

 ―――ヴィラン側(教員)勝利の放送をもって…。

 

 

 

 

 

 

 海難救助訓練や護衛・避難訓練を終えて、教室にて用意していた保護者への手紙を渡し、保護者のほとんどは(エンデヴァーを除く)嬉しそうな表情を浮かべて授業参観は無事に終わった。

 その後は折角だからと懇親会が開かれ、多くの保護者が子供を連れて参加。

 エンデヴァーや一部を除いて多くが近場の飲食店に集まる事となった。

 

 ちなみに扇動 無一の祖父である流拳も懇親会に参加する予定だったが、爆豪が職場体験のリベンジと称して挑んだ事で雄英高校OBの流拳が根津校長に頼み込んで、今頃は体育館を借りて手合わせをしている事だろう。

 

 和気藹々と談笑と料理を楽しんでいる雰囲気の中、一角だけどんよりと重たい空気が纏っていた。

 

「………私が不甲斐ないばっかりに……」

「暗い!暗いよヤオモモ!」

「元気だしなって。悪いのは扇動なんだから!」

 

 保護者の避難誘導で指揮を執っていた八百万は訓練での失態に一番思い詰めていた。 

 セメントスとエクトプラズム両名を倒しに行った三名は最終的に優勢。

 スナイプを抑えに行った扇動率いる別動隊は勝利。

 飯田達は偵察兼脱出経路を確保に成功。

 後は保護者の避難を完了させるだけだった。

 人手を割いて薄くなったのともうすぐ完了出来るという油断をヴィラン役の教員に突かれ、保護者を人質にされるという最悪の結果で敗北してしまったのだ。

 そのヴィラン役の教員というのがまた厄介で、海難救助訓練から側にいた相澤と13号である。

 

 訓練の説明や一緒にいた事で無意識にヴィラン役の可能性を外してしまったがゆえの失態。

 勿論ズルいだの卑怯だとの抗議の声を上げる者もいたが、誰も自分達がヴィランでないと言った覚えもないし、無意識に除外したヒーロー側に問題があると言い返されてしまった。

 さらには実際に同じ事が起こっても卑怯と喚きたてるつもりか?と言われては何も返せなかった…。 

 付け加えて相澤も13号もハンデの重りを最初から付けており、扇動は動きがいつもと違う事から察して注意を八百万に促していただけに余計に落ち込んでいるのだ。

 当然慰めている面々のジト目はサポート科の発目にウィザードガンの修理を頼み、遅れてやってきた扇動に突き刺さる事になる訳だ。

  

「扇動もちゃんと教えて上げれば良いのにさ」

「そうだ、そうだ!」

「いつも俺が居る訳じゃねぇんだ。そういう所も伸ばして行かねぇと」

「まぁ、そう言われたらそうなんだろうけどさ」

 

 確かにと納得する反面、納得し切れないと不満を表情で表される。

 しかしどうするべきかと落ち込む八百万を眺めながら考える扇動。

 それを隣の蛙吹が下唇に指を当てて悩んだ後にトントンと肩を叩いて振替させる。

 

「扇動ちゃん、アフターケアは必要だと思うわ」

 

 蛙吹の一言に対して一瞬きょとんしたした扇動であったが、意図を理解して即座に返す言葉を持ち合わせてはいなかった。

 生徒として授業に取り組むのであればしっかりと教えるべきで、今回のように成長を促すのは教員の役目。

 そう考えると不親切で役目を勝手に変更した行動自体が、授業に不真面目であったと言わざるを得ない。

 さらに周りに尻拭いを任せている状況下であり、蛙吹に“自分の尻は自分で吹け”と示唆された事で、自分の未熟さと思い上がりを思い知らされる。

 至らなさを実感し、指摘ではなくあえて遠まわしに教えてくれた蛙吹に頭を下げる。

 

「そうだな……すまんな梅雨ちゃん。そして、ありがとう」

「ケロッ、どう致しまして」

「確かにヒントだけで俺の行為は不親切で不遜で迷惑を掛けた。詫びと言っては何だが俺に出来る事ならなんでもしよう」

「なら誰か女子紹介しろよ扇動!」

「すぐにそっち方面の反応示すよな」

「そう言う事だからお嬢。あんまり気にするな」

「ですが私が気付かなかったのも確かなので……」

「反省すべきところは今後活かせば良い。今回改良点が見つかった事で成長出来ると考えよう。後ろ向きでなく前向きに」

 

 少し不満そうではあるが八百万は頷いた。

 そしてそれをきっかけにというのもおかしな話だが、扇動に嵐のように注文や頼み事がなだれ込む。

 無論、峰田の頼みは却下したが……。

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