無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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第61話 期末テスト前に

 楽しく彩られた日々。

 学習授業は中学までの応用や延長なれど、雄英高校での数か月の日々はあまりに濃厚。

 自らの夢であり目標であるヒーローに成る為のヒーロー基礎学は、毎回毎回学ぶことは多くも自身が一歩ずつ確実に進み、歩んでいるのを実感する。

 試験や訓練、体育祭での桁違いの規模に圧倒され、間近で体感するプロヒーローの凄さ。

 ヴィラン連合襲撃など危険なハプニングはあったが、それを乗り越えて仲間と共に進歩の道を突き進む。

 辛い事もある。

 厳しいと思う事もある。

 周りと比べてと劣等感に浸る事も当然ながらあるだろう。

 しかしそれもまた雄英高校での学園生活を彩り、同じ夢へと切磋琢磨する仲間と共有する。

 忙しく目まぐるしい日々であるも楽しい青春の一ページ。

 だが残念な事に楽しいばかりの日々を送れる訳もない。

 感情とは一つではない。

 “喜怒哀楽”の格差と落差を知っているからこそ人はその感情を認識するのである。

 つまり何が言いたいかというと今日この日に絶望を与えられた……。

 

「夏休みに林間合宿がある」

 

 相澤先生の一言に教室中のほとんどが盛り上がった。

 多くの学校の夏休みでは大量の宿題が出されるも一か月の休みを満喫する事だろう。

 当然雄英高校にも夏休みは存在するも丸々休めるのではなく、合間に林間合宿が入り込んでいる。

 友達と一緒に寝泊まりして何かをする。

 それだけでも盛り上がっている中で肝試しや花火、カレーなどさらに話を膨らませる。

 わいわいと騒ぐ生徒をいつも通り眼光で黙らせる相澤だったが、次の一言でゆるっとして静まった空気が一変した。

 

「その前に期末テストで合格点に達しなかった奴は―――学校で補修地獄だ」

 

 クラスメイトが寝食共にして和気藹々としている最中、自分達は学校で勉強机に向かってのお留守番。

 想像した面々はやる気に満ちるというよりは必死の形相を見せる。

 

「マジでどうしよう!」

 

 一期の中間テストの結果発表をされたばかりで、自分の学力や順位に不安を持つ者は絶望しているのだ。

 入学してから通常授業に加えてヒーロー基礎学や新たな学園生活で覚える事が多く、雄英体育祭や職場体験に授業参観など行事が目白押しで忙しかった分、勉強に費やす時間や意識が薄れていたのは少なからずある。

 頭を抱える上鳴(21位)に諦めからか笑っている芦戸(20位)

 戸惑いや不安を抱く者も当然ながら多い。

 なにせ中間テストは筆記試験のみだったが、期末は筆記だけではなくて演習試験もあるのだ。

 どのようなものが出るのかと不安に駆られるのも当然。

 一切焦らず自然体なのは爆豪を始めとした一部だけだろう。

 

「皆、頑張ろうよ!やっぱり全員で林間学校行きたいもん!!」

「うむ!」

「……普通に授業受けてりゃ赤点は出ないだろ?」

「言葉には気をつけろよ!!」

 

 上から四位(緑谷)二位(飯田)六位()の高順位三名の応援が鋭利なナイフ並みに上鳴に突き刺さる。

 特に轟のは言の葉が刺さるとか響いたとかそんなレベルでなくクリティカルヒットで瀕死なレベル。

 これが嫌味で言われたなら怒鳴り返す選択肢もあったが、素で摩訶不思議そうに言われては何とも言い難い。

 

「お二人共。座学ならお力添え出来るかも知れませんわ」

「ヤオモモ!」

「マジで!!」

 

 中間テスト21名中一位の八百万からの言葉に芦戸と上鳴は顔を輝かせる。

 まるで後光が降り注いでいるように見えた二人だったが、次の瞬間にはどんよりと淀んだ空気が漂い始めた。

 

「演習の方はからっきしでしょうけど………」

 

 まだ授業参観でのダメージが響いていて、他とは別の意味で実技に不安を抱えていた。

 無論あれから反省点は洗い出し、改善点を自分なりに出しはしたが、それとこれとは別で立ち直れはしていない。

 そんな八百万に耳郎(八位)尾白(九位)瀬呂(十八位)が申し訳なさそうに近づいてくる。

 

「二人ほどじゃないんだけどさ。二次関数の応用で躓いちゃって……ウチも教えて貰っても?」

「悪ぃけど俺も!古文で躓いちゃって!」

「僕も良いかな?」

 

 頼られている事からか寧ろ八百万の方が嬉しそうに顔を緩ませる。

 続けて予想外にももう一人近づいて来た。

 

「すまんが俺も良いか?最近忙しくって成績が落ちてな」

 

 そう言ったのは五位(・・)の扇動であった。

 本来なら一位(八百万)は無理でも少し上の順位は狙えた筈であった。

 クラスメイト同様に行事に追われはしたが、授業の方がHUCのバイトやコネで中学までに教わった事が予習になって多少楽ではあったのだが、放課後の特訓のメニュー作りやHUCのバイトでクラスメイトの指示書や説明書の制作、さらに音楽と脚本などなど仕事も重なりに重なって勉学が疎かになってしまったのだ。

 

 まさか扇動から頼み込まれるとは思いもしなかった八百万は「勿論良いですとも!!」といつになく嬉しそうでやる気に満ちた声を出した。

 打って変わって第三位の爆豪に頼むクラスメイトは居らず、「これが人徳の差だな」と呟いた切島(十六位)に対して、「教え殺したろうか!」とビキビキと怒りが漏れ出しながら爆豪は返す。

 以降ファミレスにて怒鳴り散らしながらも一対一で勉強を切島に教えている爆豪の姿が目撃されるのだった。

 

 

 

 

 

 

「扇動君、少し良いかな☆」

 

 林間合宿の話が相澤より伝えられたその日。

 午前中の授業を終えた昼休みに大食堂へ飯を食べに行こうとした扇動は呼ばれた事で足を止めた。

 振り返った先には青山 優雅がフフンと笑っていた。

 別に用事という用事もなくシュガードーナツの入った紙袋があるので多少ご飯を抜いても、栄養面の話は別として腹的には問題はない。

 基本大食堂に向かう者が大半なので自然と昼休みの教室は人が少ない。

 居るのは教室で一人食事をしている青山ぐらいなもので、何用かは知らないが二人っきりとなる教室で済ますかと思えば、屋上まで連れ出されてしまった。

 周囲を確認した青山は柵に凭れながら余裕のある笑みを浮かべてこちらを見つめる。

 

「で、どうしたよ?」

「……どうして扇動君はヒーローを目指したのかな?って☆」

「あー、そりゃ昔、イズクに発破をかけた事があってな。その責任を取る的なものもあるが……」

 

 わざわざ屋上にまで来てどんな用かなと思っていただけに少し肩透かしを食らった気分になる。

 何回か答えた事のある内容を口にしたところで青山は首を横に振るった。

 

「そうじゃなくて―――どうして無個性なのに(・・・)ヒーローになろうと思ったの?」

 

 不思議だった。

 人は無意識に自分と相手の差を口にしてしまう場合がある。

 今まで個性を持っているがゆえに無個性でも(・・)と言われる事が多かった中、青山はなのに(・・・)と口にした。

 たった小さな差であるも妙な興味を惹かれた。

 

「無個性ってだけで周りから外される(・・・・)。それなのにどうして君はそうしていられるんだい……?」

 

 悪意―――ではないな。

 興味の方が強い気がするが単なる興味本位という訳でもなさそうだ。

 顔は笑っているけれども何処か不安を感じる。

 目もこちらをジッと見ずに多少ながら泳ぎ、握っている拳に力が籠っている。

 不安だけでなく恐れ?

 観察しながらも問いに頭を悩ませる。

 

 青山が問いかけているのは原点ではなく性質の類。

 確かに無個性だからと馬鹿にする奴らも居たには居た。

 だけど前世という人生経験がある分、ある程度は流せる術を持っていたし、何か仕掛けてきた連中の黙らせ方(・・・・)も多少心得があったのも大きい。

 前世での経験があったからと答えた所で彼が求めている答えにはならないだろう。

 

「どうしてって言われてもなぁ」

 

 頭を掻きながら考え込む。

 沈黙が続くも青山は黙って返答を待つ。

 観念したかのように扇動は一息ついて答えを口にする。

 

「外野がどうこうよりも言おうが、やりたい事があったからこうしている(・・・・・・)だけなんだ」

 

 緑谷に発破をかけた責任。

 両親を殺したヴィランに対する復讐。

 あの日の後悔を胸に刻み、先輩を自らの手で摑まえる。

 

 友への想いに憎しみ、悲壮を宿した言葉に青山は「……そうなんだ」と答えて空を見上げて、ぼんやりと眺めながらぽつりと口を開く。

 

「もし…もしもだよ。取引で個性が手に出来るとしたらどうするのかな?」

「その手の話は二度目だな」

「――え?」

「別にどうもしねぇよ。当然取引内容にも寄るだろうが要るモンだったら貰うし、要らんかったら突っぱねるさ」

 

 これに関しては即答できる。

 前にもイズクから言われた事もあるし、別段悩む様なモンじゃない。

 あまりにはっきりと言い切った事で青山は少しばかり口を開けたまま呆然と言った様子で見つめて来る。

 

「どうした呆けて?」

「予想外だったよ。だって扇動君は無くともここまで来れたじゃないか☆」

「逆だ。無いからこそ(・・・・・・)ここまでこれたんだろうが」

 

 個性を持っていたらそれはそれで別の道を歩んでいたんだろうか。

 想像の世界に羽搏きそうになった思考を「何考えてんだか」と笑って振り払う。

 それにしても取引で個性か。

 力を使う度に大事な記憶を失ったり、周りの記憶から自身の存在が消えたりなどライダーであったなと思い出す。

 だが力を行使する為の代償ではなく、力を得る為の取引となればまた話は違うか。

 

「そう聞くからにはC.C.またはV.V.みたいな奴でもいたんか?」

 

 冗談交じりにコード保有者(コードギアス)の名を出したことろで青山はキョトンとするばかり。

 当然そうなるか、と扇動は青山に「なんでもねぇよ」と苦笑を浮かべなら言葉を返す。

 

 ここで話を振り返った扇動はふとある仮説を組み上げた。

 突飛な考えで馬鹿げたような冗談話。

 けれどワン・フォー・オールなんて話もあったのだからあってもおかしくは無い……。

 

「お前さぁ―――…」

「―――見つけました!!」

「……発目?」

 

 言いかけた所で扉が勢いよく開けられ、発目が登場した事に面食らう。

 それは青山も一緒で表情こそ崩さなかったが強張って、肩をびくりと大きく揺らしていた。

 

「なんか用事か?いや、約束してた……か?なんにしても探させたようで悪かったな」

「いいえ、用があって来ました!!」

 

 ウィザードガンの修理や新コスチュームにバイクなどサポート科には頼み過ぎているので、何か約束を忘れてしまったかと頭を下げたがそうではないようだ。

 また相談か新たなアイテムの試験か何かだろう。

 ……そう思っていた…。

 

「追加機能を付けたので見て貰いたく!」

「……まさかウィザードガンにか!?アレには余計な追加はしなくて良いとあれほど」

「大丈夫です!機能的には納得してくれる筈です!!」

「違う!アレは再現アイテムだから以上や追加武装はいらないんだよ!!」

 

 何してくれてんだ!と抗議の視線を向けるも発目は発目で“新機能に自信有り”といった態度を崩す事は無かった。

 ため息交じりにとりあえず話だけは聞くかと立ち上がる。

 するとでは早速と言わんばかりに手を引いて連れて行こうとする発目。

 

「――っと、青山。何にお前さんが何に悩んでんのか知らんが話せるようになったら話に来いよ。困ってんなら出来る限り手も貸してやれるからさ」

 

 発目に連れられて行きながら扇動はそう残りた

 見送った青山は薄っすらと笑いながら俯く。

 

「扇動君……君は本当に凄いんだね」

 

 青山は悲しそうに呟き、ギュッと今まで以上に拳を握り込んで閉まった扉を見つめるのであった………。

 

 

 

 

 

 

 八百万の家で勉強会が開かれる事になった。

 上鳴を始めとした不安のある面々は頼んで受け入れてくれた時は喜んでいた。

 なにしろ八百万は学力が高いだけでなく面倒見が良い。 

 それにお金持ちの家というのも多少なり興味を持っていたのもある。

 されど日が近づくにつれて疑問というか疑念が生まれては大きくなり始めた。

 

 ―――普段着で良いのだろうか?

 

 奇抜過ぎや相手を不快にさせるような衣装なら兎も角、友達の家に遊びに行くだけなら普段着で問題ないだろう。

 けれど相手は大金持ち。

 家に行った事のある扇動に聞けば、豪邸で使用人もあるとの事……。

 普段着で大丈夫ですと八百万が言ったけれども徐々に不安は大きくなり、勉強会が開かれる二日前の放課後。

 耳郎と芦戸はショッピングモールを訪れていた。

 近場で選んだのでさすがに県内最大規模ほどではないが中々の品揃えだった。

 

「うーん、良い買い物だった」

「思ってたより結構買っちゃったけどね」

 

 洋服店で軽い服選びのつもりだった筈が、あっちやこっちと見て回った結果、衣類が入った紙袋がどんどんと増えてしまった。

 当初の目的である衣類に加えて欲しかった服に手頃で良い感じの品、話しながら見ていて気に入った物などなど。

 買った事に満足しても予算的にはかなりオーバーしてしまった。

 

「私も予定外の出費だったなぁ」

「ならバイトする?」

「んー、時間もないし授業の後となると……」

「だよね。内容によってはバテて出来るかどうか怪しいもんね」

 

 雄英高校ヒーロー科は七限目まであり、午後の授業にはヒーロー学が予定されている。

 情報学や座学に近い授業ならまだしも救助や実技となると疲労も大きく、それを抱えたままバイトとなると難しく思える。

 なによりヒーローに成る為にと扇動の放課後の特訓にも出ているので時間がよりない。

 特訓も毎日やっている訳ではないので空いている日はあれど、そういう日は帰りに遊んだり自由に時間を使ったりしているので、出来れば潰したくないのが本音だ。

 

「そうだ!またあのバイトとかないの?」

 

 私、良い事思いついたと言わんばかりに振り返った芦戸は、二人の後を歩いていた扇動に問いかける。

 男子達は「ヤオモモが良いって言ってるし大丈夫だろう」と服装の事には別段思っている事はなく、何度か八百万宅にお邪魔した事のある扇動を誘ったのだ。

 八百万同様扇動も問題ないだろうと言うものの、不安ならと快く付いて来てくれた。

 

「あれは人手不足だったからな。早々ないだろうな」

「そっかぁ、それは残念」

「本当に割り良過ぎでしょ。あのバイト」

「依頼料も多くてほとんどが出張だから正社員になると給料もっと良かったぞ。ただ覚える事は山ほどあるが」

「うへぇ、今でも勉強で大変なのにぃ……」

 

 他のバイトと比べて時給はかなり良かったので、試しにと言ってみたものの即座に返された返答にやっぱりだよねと諦める。

 無いと言われた事は予想していただけに何でも無かったが、テスト前で勉強に焦っているのにそんな話を聞かされては気分がより滅入ってしまう。

 がっくりと肩を落とす様に苦笑されるも、芦戸はモール内の看板を見て頬を緩ませた。

 

「ちょっと寄って行こうよ」

「晩飯前だが大丈夫か?」

「お菓子は別腹だって」

「普通は飯食った後の言い訳だろソレ」

「大丈夫、大丈夫」

 

 見つけた看板はモール内に出店している洋菓子店。

 ケーキ専門店という訳ではなくてアイス系やクッキー系など幅広く扱っており、さっさと注文を済ませてテーブル席の一つを占拠する。

 何層にも重なっているパフェにスプーンを突っ込んで、すくったクリームや果実類を含んだ芦戸は幸せそうに頬を緩めた。

 

「美味しいよこれ!」

「扇動じゃないけどあんまり食べ過ぎない方が良いよ」

「大丈夫だって。今日色々歩いた分だよ」

 

 カロリー計算的に採算が合わないんだがなどと野暮な事は耳郎も扇動も口にしなかった。

 いや、食べずとも美味しいのが解かるほど満面の笑みで幸せそうな表情をしている芦戸に言うのも無粋というべきか。

 軽いケーキを口にしながら耳郎は扇動の皿を見て小首を傾げる。

 品揃えが豊富な洋菓子店なのでドーナツもあったのに、扇動が注文したのはビターのガトーショコラに珈琲だった。

 

「あれ?扇動って甘党じゃないんだ」

「程度はあるが辛いのもしょっぱいのも苦いのも好きだが、なんで甘党って事になったんだ?」

「だっていっつもドーナツ食べてたじゃん」

「違う違う、甘いのがという訳じゃなくてシュガードーナツが好きなんだ」

「そういえば学校でもシュガードーナツばっかりだったね」

 

 言われてみれば入学して程なく行われた戦闘訓練を行った日に、皆でドーナツ屋に行った時は色々注文していたけど、それ以降はいつもシュガードーナツ以外のドーナツを食べている所を見たことがない。

 ショーケース内へ目を向ければ、プレーンやチョコレートはあれどシュガーは見当たらなかった。

 特にシュガードーナツが好きなんだなと再認識している途中で思い出してしまった。

 

「あ!言うのが前後しちゃったけどついて来て貰ったけど本当に大丈夫だった?」

「元々特訓も仕事も予定してなかったから。だけど轟には悪いことしたかな」

「何かあったの?」

「帰るの遅くなるから外食で済ませてくれって頼んじまって。渡したお金で足りるとは思うんだけど、預かってる身としては無責任かなと……」

「扇動って同年代だよね?たまに年上っぽく見えるのなんで?」

 

 問いかけに対して扇動はクスリと微笑むばかりで答えず、店員にカフェオレの注文を伝える。

 

「俺の事は然程気にしなくて良い。寧ろ役得と言えるだろう」

「どゆこと?」

「両手に華な上に美少女のファッションショーに呼ばれたん―――痛ッ!?」

「余計な事言わなくて良いから!」

 

 照れた耳郎のツッコミ(イヤホンジャック)が扇動を襲う。

 商品の確認の為に試着をした際に、着替える度に似合っているか見て貰っていたのは事実ながら、そう言う言われ方をされると照れ臭い。

 もし扇動が弄り目的で口にしていたら恥ずかしさよりも苛立ちなどもあったが、こういった事に関しては素で答えているだけに余計に照れ臭さが増すというもの。

 避ける事も払う事もせずに受けた扇動はツッコまれた所を軽く押さえて苦笑いを浮かべる。 

 そこに芦戸がにんまりと笑みを浮かべて追撃を仕掛ける。

 

「何処が良かったか聞いても良い?」

「ちょ、何聞いて……」

「折角見て貰ったんだから聞いておかないと」

「……解って言ってるでしょ」

 

 ニンマリと嫌らしい笑みを浮かべる芦戸はイジッて来ているのは見れば解かる。

 ムッとしながら芦戸を見つめるも暖簾に腕押し。

 なので問われた扇動を睨むと少し考え込んで逆に芦戸に返す。

 

「それ本当に聞きたい?」

「―――ッ、い、いや!やっぱり言わなくて良いよ!」

 

 余裕のある態度と悪戯っぽい微笑を前にヤバイと判断した芦戸が退いた。

 ここで聞きたいと答えれば耳郎だけでなくて芦戸に関しての感想も素で言われた事だろう。

 さすがにそれは芦戸も恥ずかしいと思ったのか、逆転したがゆえに耳郎は弄ってみたいという気持ちに襲われるも、同じような返しが来るのは目に見えているので口には出さない。

 照れ隠しで残っていたパフェを掻き込む芦戸に扇動は追加で注文したカフェオレを差し出す。

 

「温かいの飲んで落ち着けよ」

「扇動のでしょ?」

「俺は珈琲飲んだ」

 

 芦戸が注文したのはパフェとキンキンに冷えた炭酸のジュース。

 胃が冷えてるだろうと最初っからそのつもりで注文したのかと納得する二人だが、なんだが余裕綽々な様子に眉を潜める。

 こうもやられっぱなしというのは納得はいかない。

 

「何か扇動って弱点無いの?」

「本人に聞くか?様子からどう考えても良い事になりそうにないんだが?」

「だって悔しいじゃん」

 

 クツクツと余裕のある態度を崩さない事に芦戸の言葉から耳郎は何か引っかかって考え込む。

 弱点というか何かあったようなと記憶を探り、あった(・・・)と思い出してニヤリと笑う。

 

「そう言えば楽器類苦手だったよね?」

「へぇ、そうなんだ」

「……勘弁してくれ」

 

 余裕のある表情が崩れて肩を竦ませた。

 やり返せたと目を合わせてクスリと笑う。

 落ち着いた所で楽器コーナーへ連れて行き、無理言って楽器の腕前を披露して貰うとその後、ゲームセンターで散々な目に合う事に……。

 

 

 ただ扇動と芦戸のリズムゲームやダンスゲームは異次元なぐらい上手過ぎて、参加する気力はなくとも見ごたえは充分であった。

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